ゾンビパウダー

ろぶすた

文字の大きさ
上 下
34 / 54
第一部 神殺しの陰謀 第三章 神殺しの罪人

問題噴出

しおりを挟む
 伝令を受けて、田村丸は王様から事前に話されていた内容を私たちに王座の間までの道すがら話し始めた。

 「皆さん、これから王様より話があり、そのあとコキュートス、八寒地獄にむかうことになるでしょう。」
 「やはり罪人は八寒地獄から連れてくるのですね…。」
 「いや、私たちが八寒地獄の最深部まで出向くことになるでしょう…。最深部の罪人は連れだすことなど困難ですので…。」

 最深部の罪人いったい何の罪でそこに入れられたものなのだろうか。そんなことを考えていたが、それ以上に最深部の罪人でしか耐えきれないほどのメンタル体とは…と不安になった。

 そして、王のあの言葉である、何が起こるかわからない…その言葉が喉に骨がつっかえるように私たちに恐れを抱かせる…。

 王座の間の前に着いた時、私たちは何故か背筋が凍る様な寒さを感じた。

 「客人よ、問題が起こった…。そうそうに動いてもらわねばならなくなった。」

 部屋の雰囲気が先程とは少し違って感じる、ある一点への引力を感じアストラル体が引き寄せられるそんな空気感であった。

 「コキュートスに禁忌の者が侵入した様だ。そのためすぐにでも、コキュートスへ向かってもらいたい…。これを渡しておこう。」

 王様はそう言うと結晶化した様なアストラル体を私たちの前に差し出した。

 先程から感じている違和感はこの結晶から発せられるものであった。

 全てを飲み込む様な引力にも似た力が渦巻いている。まるで、貪欲に全てを喰らいつくそうとするかの様に暴れている。

 「王様、これは?」
 「あぁ、私のツノの一部だ…、とは言っても、私が悪魔と恐れられていた時に折れたツノであるがな。」

 王様は少し恥ずかしそうに、ツノの説明をしてくれた。

 王様が言うに、バアルとして信仰されていた際に、異端の神を貶めるために、バアルゼブブと悪魔に貶められたそんな時があったそうだ。

 その際に、相手がその気なら悪魔になってやると暴れ回った時に折れたツノだとのことであった。暴食の悪魔として恐れられていたそうだ…。

 「このツノはその時の暴食の意思が宿っておる…。全てを喰らいつくそう、とその様な力が宿っておる。このツノに一旦メンタル体を喰らわせるのだ。」
 「メンタル体はどうやって呼び寄せればいいんですか?」
 「それは簡単だ…。お主らが常世に帰りたいとアストラル体に願えばそれに反応するかの様にメンタル体は吸い寄せられるであろう。」

 メンタル体の特性を利用した理にかなったやり方だ。群れようとするメンタル体をうまく引き寄せ、そのメンタル体をツノに吸収させる。

 「王様、メンタル体の確認はどうすれば良いでしょうか。」
 「其方には見えているであろう?ヘイムダルから聞いておる、光る縋り付く手の様な物を見た事があるといったそうだな…。」
 「それがメンタル体だったんですね。」

 あの日こちらに来る時に縋り付き、流れ込んでくる感じがしたそれこそがメンタル体であったのだ。

 ヘイムダルから貰った兜を見つめ、自分を鼓舞した。

 「問題はそこからだ…。メンタル体を吸収したそのツノを罪人に食させろ。抵抗してくるとは思うが…、なんとかやり遂げてくれ。」
 「わかりました…。」
 
 王様は手招きすると、従者達が完全に武装した姿で現れた。

 「ぁあの…王様一つお願いが…。」
 「なんだ、申してみよ。」
 「私はこれを事前にマードックさんに買ってもらっていて…。」

 千暁は巨大な斧を持ち上げ、王様に見えるように掲げた。悠々と持ち上げた姿に王様は目を丸くして千暁を見ていた。

 「おぉ、素晴らしい逸品ではないか!幻獣麒麟か…。」
 「この代金が…。」
 「そうか、良い良い、こちらで持つので問題ない。存分に使うが良い。私と同じ雷を操る事ができるぞ。」

 千暁はマードックの方を向いて、目で合図をした。マードックは解放されたかの様に顔色がみるみると戻り、凛々しいドーベルマンの人面犬に戻った。

 「うむ…、客人に戦ってもらう予定はないが何か用意しておくべきか…。」
 「いえいえ、私たちには必要ございません。千暁がもらったもので十分でございます。」

 その発言に日出は私をにらみつけていた。国からもらえるもの、国宝級の物が何かもらえるのではないかと思ったようであった。

 「そないに睨むでない、お主にも何か渡そう。」
 「王様!本当ですか!本当ですよね!」

 今度は新しいおもちゃを買って貰える子どものようにはしゃぎ始めた。
 なんとも忙しいやつなんだと笑いが込み上げてきた。

 「そうだな…そなたにはこれを渡しておこう。」

 王様はそう言うと、古代文字が彫り込まれた巨大な本を日出に手渡した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

ブラフマン~疑似転生~

臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。 しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。 あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。 死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。  二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。  一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。  漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。  彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。  ――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。 意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。 「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。 ~魔王の近況~ 〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。  幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。  ——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉

処理中です...