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第一部 神殺しの陰謀 第二章 氷の国の王

従者の受難

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 ——— 城内の商店街
 
 城の中にはショッピングセンターの様に様々な商店が並んでいる。見たこともないような食材を扱うお店や日用品のようなものを扱う店、そして衣服やゲームの中でしか見ないような武器防具屋が立ち並んでした。

 「マードックさん、なぜ平和そうなこの城に武器防具屋があるんですか?」

 本当に純粋な疑問からその質問にいたったのであった。

はたから見ると、愛犬を散歩している主人がしゃべらない愛犬にずっと話しかけているような光景である。しかし、マードックは人面犬であり、千暁とのコミュニケーションをしっかりと取っている。

 「禁忌の者の話は聞きましたよね。それとそいつらがたびたびこの城に侵入するので、それに備えてといったところですかね。」
 「そうなんですね…。禁忌の人達は何を狙っているんですかね。」

 何気ない質問は、この世界の抱える闇に対しての率直な質問であった。その質問はマードックには深く受け止められてしまい困らせてしまったようであった。

 「千暁さん、禁忌の者たちはある古き神々を崇拝しています。その者の復活のためかはたまた、時代の崇拝者になろうとしているのかは不明です。より強くより邪悪になるために、禁忌を犯すのです…。そして禁忌を犯すためには贄が必要になります…。」

 マードックが暗い顔をして話していることに気づいた私は自分の軽はずみな質問を悔やんだ様子でその場に立ち止まり、そのことについて謝っていた。

 マードックもそのことに対して、重く受け止めすぎたということで、ショッピングの続きをしましょうということで、また歩み始めた。

 「確か服が気になっていたとのことで服を見に行きましょうか。この城の服屋は種類が多いですよ…、凍える大地でもアストラル体を保護してくれるということで有名です。」
 「それは楽しみです。早くいきましょうか。」

 私が先行し、そのあとにマードックが続くように走り、その散歩のような構図に城の住人たちはあたたかな笑顔を向けてくれていた。

 案内を受けた服屋は武器防具を扱うような店であり、常世の服屋とは全く様相が違った。最も異質だったのは服も売っていると言いながら、どちらかというとアクセサリーショップに近い様相で服らしき服は全く売っていなかった。

 私たちがコンシェルジュに渡されたようなアクセサリに近い物が陳列されている。

 「マードックさん、こちらの服はアクセサリのような形状なんですね。こっちに来た時に初めて知りましたよ。」
 「そうなんですよ。私も見たときは驚きましたよ。まぁ、いまは体がこんななので服なんていらないんですがね。」

 マードックなりの鉄板ジョークであったのであろうか、服屋の店員たちは大うけしていた。しかし、私は笑ってよいものなのかわからなかったので、愛想笑いレベルの笑いししなかった。

 「千暁さんに似合うものは…。いやぁ、人用の服を着なくなってから久しいもので…、迷いますね。」

 マードックはまだ先ほどのネタを引きずっているようだ…。私のことをチラチラとみながら、人であったアピールをすごくしている。

 私もそれに対して愛想笑いを浮かべた。
 
 マードックもあまりに受けないものなのであきらめた様子で普通にふるまい始めた。

 「こんな服はどうでしょうか?」

 すごくおどろおどろしい髑髏が描かれたネックレスを持ってきた。その中身は防寒性に優れるこの凍土に生息する牛の革(アストラル体)を用いて作られたという、革のジャンパーであった。

マードック的には犬だけに骨というギャグであったのであろうが、私は気付かなかった。

 髑髏のチャームを叩くとその革のジャケットが姿を現した。
 常世では染めてしか出せないような淡い青色のそのジャケットはドレスの上からでもしっかりと体にフィットするようにアストラル体になじむ。

実際の使用方法は私たちがこちらに来た時の様にネックレスの様に体に装着してチャームを叩くやり方がまっとうらしい、そうすると勝手に服がアストラル体に装着されるようだが。
 
 「千暁さんのドレスは少々露出が多いような気もしますので、あとはこのブレスレットもどうでしょうか。手袋になりますよ。」

 そういって持ってきたものはやはり髑髏があしらわれている…。ドーベルマンという体がそうさせているのであろうか。はたまた、マードックは元ロッカーかバイカーであったのかというくらい、ハードめな服装にこだわりがあるようだ。

 しかし、それが似合ってしまうのが不思議であり、私も悪い気はしていない。

 ブレスレットを装着し、髑髏のチャームを叩いた時、あまりもの凶悪な手袋に驚いた。こぶしを握るとメリケンサックの様にこぶしを硬いアストラル体が包み込むのだ。

 「どうでしょう。おしゃれじゃないですか?見てくださいよ、アカシック文字で”死者に安らぎあれ”って浮き出るんですよ。」
 「ほんとだ、文字は読めないのでわかりませんが、かわいいですね。」

 私は一目見てその手袋を気に入ってしまった。今までにない自分がこの死者の世界では作れるそんな気がしてならなかった。
 マードックもおすすめした甲斐があったと満足そうにしていた。

 最後に自身の姿を確認した時に何かが足りないと思ってしまった。革のジャンパー、凶悪な手袋…。

 「武器も行っちゃいましょうか!」
 私はマードックに宣言した。
 マードックはどこか焦りを見せたようで武器はやめた方がよいと私に言い含めた。

 ここにある武器は重く使いこなすのが難しいという話であったが、それ以外に何かを隠しているような雰囲気を見せる。

 しかし、私はあきらめきれずに、店員さんに武器を出してもらうように要求した。
 
 様々な武器を出してくれた、剣、槍、ハンマー、そしてひと際目立つ大斧…。
 
 「これ!」
 私は到底持ち上げられるとは思わなかったが、武器に呼ばれたような気がした。

 その武器を手に取った時奇妙な感覚がアストラル体に廻った。

 手に持った瞬間、その大斧は虹色に光り電気のような力を帯びさせた。

 「かっこいい!!これください。」

 その言葉に店員は目を輝かせた。しかし、マードックの顔色は見る見るうちにわるくなっていった。

 マードックは私を先に店に出した後、店員と何か話し込み、なかなか出てこなかった。そして出てきたころには、よくわからないがげっそりとした顔色になっていた。

 後々わかったのだが、虹色に光るあの大斧は幻獣キリンからもらい受けた角が材料として活用されており、国宝級の価値があったということである…。

マードックは男気を見せた…。

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