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第一部 神殺しの陰謀 第一章 受肉
アストラル体の結合
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翌朝、玄関のインターホンの音で目が覚めた。
インターホンには、いつも通りビシッと決めたスーツのコンシェルジュが立っていた。
「東雲様、おはようございます。昨日手配を仰せつかりました品々をお持ちいたしました。」
「え?」
私は寝耳に水の感覚であった。手に入れられるはずはないと思っていた物が、昨日の今日でもう手配されてきたのだ。
「東雲様、ご要望いただいたものとは若干異なるかもしれませんが機能は同一でござまいす。どうかご容赦を。」
大きな繭の様なカプセルが運び込まれ、使っていない部屋に設置された。
「東雲様、こちらは今流行りのゲーム用のシステムでございますが、それを改良しアストラル体の認知した物を映像化できる様にしてあります。性能テストも済んでおります。」
ゲームシステム、最近の流行りのとは知っていたが、それがこんなにもすぐにアストラル体に対応できる様に改良されるなど考えられなかった。
「使い方を説明いたしますね。とはいえ、難しい事は何もなく、この繭のような機械の中に入りスイッチを押せば全て完了でございます。ゲーム用システムは潰してありますので、ゲームはできませんが、この中でゾンビパウダーを服用すれば全て後はシステムが対応してくれます。いうなれば幽世ベッドですね。」
「なぜそこまで…ゾンビパウダーやアストラル体に関してご存じなのですか?」
「コンシェルジュたる者、ご主人様の顔色で全てを察する事ができる様に訓練されておりますゆえ。」
その時は一流のコンシェルジュはそうものなのかと納得してしまった。よほどのコネと力を有していないと一流のコンシェルジュとしては認められない世界なのかと感心したくらいだ。
「東雲様、それでは…また何かございましたらお申し付け下さい。」
私は軽く会釈し、コンシェルジュを見送った。
あとは日出の連絡待ちだな…そんな事を考えながら、たるみ切った体に活を入れるために、ランニングマシーンで汗を流した…。疲労感と漠然とした不安感が体に重くのしかかる。そして、その汗を洗い流すためにシャワーを浴びていた時にリビングでタイミングが悪く携帯が鳴っていた。
それは案の定、日出からの着信であった。慌てて電話をかけなおしたが電話に日出は出なかった。もしかすると、危ない橋を渡ってもらった事が災いし、窮地に追い込まれているのかも知れないとそんな思いが頭をよぎった。
「くそ!」
そんな声が漏れた…。どうすることもできないイライラ感を紛らわすため、部屋中を歩き回ったり、冷蔵庫を何度も開け閉めしたり、何度も日出に電話をかけなおしたが、一向に事態は好転しない。
そんな時、玄関のインターホンが鳴った。
「東雲様、お届け物でございます。」
コンシェルジュがモニター越しに、届け物ですと笑顔をこちらに向けている。先ほどの幽世ベッドの部品か何かかと思い、コンシェルジュを迎え入れた。
そこにはコンシェルジュと共に部下である日出の姿があった。
「日出!どうした、電話に出なかったから心配したんだぞ!」
「心配かけてすみません、必要な物は持ってきました。」
「いや、無事で何よりだ。しかし、なぜコンシェルジュさんといるんだ?」
コンシェルジュさんはにこやかに一礼し、部屋を後にした。
「まずは…物はありがとう。しかし、コンシェルジュさんが?どういう事なんだ?」
私自身も困惑していていったん落ち着こうと深呼吸をした。
「頼まれた物を持ち出した時に…社長室に呼ばれて…。もう終わりだと思ったんですよ…。」
「それで?」
「社長に持ち出した物を出すように言われまして…。」
私からのお願いで日出の未来をつぶしてしまったのだ…機密文書の持ち出しは懲戒の対象だ。
「そこにあのコンシェルジュさんが…社長室に入ってきたんですよ。すると、あの逢魔社長がぺこぺこ頭を下げて…。そして、コンシェルジュさんが私をそのまま車に乗せてここまで連れてきてくれたんです。」
「全くわからない。」
状況が飲み込めない、なぜコンシェルジュさんがそこに来て社長が頭を下げているんだ。
謎が謎を呼び、もうどうでもよくなってきた。
「全く話は理解できないが、わかった。とりあえず、日出が無事でよかった。」
「東雲さん…、俺どうすれば…。」
「会社には戻れんよな…。俺が巻き込んだ事だ、お前くらい養える財力はあるさ…。」
元は私が蒔いた種だ…、部下を巻き込み、会社にいられなくしてしまった。日出は逢魔製薬の正規の社員で、将来も約束されていた…。
「とりあえず、今日はここにいろ。もし食べたい物とかあればコンシェルジュさんに頼め。」
私はそう言うと、部屋を案内し、日出に空いた部屋に住んでもいいと伝えた。
独り身でかなり大きなマンションを購入した…。使っている部屋も寝室とリビングダイニングくらいのもので、部屋は有り余っている。私には不釣り合いなマンションだが、このレベルでないと有能なコンシェルジュがついていないのだ…。
「東雲さん、これ。」
「あぁ、仮説を書き出してみたんだ。」
日出は概念的な図と数式が書かれたホワイトボードを指差した。
「やはり、アストラル体の結合ですか。」
「あぁ、そう思っている。アストラル体の欠損は事故ではあったが日出が実証してくれたが、今回はもっと酷い。」
「アストラル体の欠損はエーテル体が直してくれますが、結合となると…どう切り離すか…ですね。」
「あぁ、そこなんだ…。」
仮説と仮説をぶつけ合いながら解決策を導こうとするがなかなか納得のいく答えが見つからない。
「まだまだ、アストラル体は本当に未知だらけですね…。通常の科学や物理学の理が全く通じませんね…。」
「あぁ、そうだ…。本当に神のみぞ知るってこのなんだろう。」
こんな議論を続けているうちに、だんだんと日は落ち、あたりは闇に支配されていった。
インターホンには、いつも通りビシッと決めたスーツのコンシェルジュが立っていた。
「東雲様、おはようございます。昨日手配を仰せつかりました品々をお持ちいたしました。」
「え?」
私は寝耳に水の感覚であった。手に入れられるはずはないと思っていた物が、昨日の今日でもう手配されてきたのだ。
「東雲様、ご要望いただいたものとは若干異なるかもしれませんが機能は同一でござまいす。どうかご容赦を。」
大きな繭の様なカプセルが運び込まれ、使っていない部屋に設置された。
「東雲様、こちらは今流行りのゲーム用のシステムでございますが、それを改良しアストラル体の認知した物を映像化できる様にしてあります。性能テストも済んでおります。」
ゲームシステム、最近の流行りのとは知っていたが、それがこんなにもすぐにアストラル体に対応できる様に改良されるなど考えられなかった。
「使い方を説明いたしますね。とはいえ、難しい事は何もなく、この繭のような機械の中に入りスイッチを押せば全て完了でございます。ゲーム用システムは潰してありますので、ゲームはできませんが、この中でゾンビパウダーを服用すれば全て後はシステムが対応してくれます。いうなれば幽世ベッドですね。」
「なぜそこまで…ゾンビパウダーやアストラル体に関してご存じなのですか?」
「コンシェルジュたる者、ご主人様の顔色で全てを察する事ができる様に訓練されておりますゆえ。」
その時は一流のコンシェルジュはそうものなのかと納得してしまった。よほどのコネと力を有していないと一流のコンシェルジュとしては認められない世界なのかと感心したくらいだ。
「東雲様、それでは…また何かございましたらお申し付け下さい。」
私は軽く会釈し、コンシェルジュを見送った。
あとは日出の連絡待ちだな…そんな事を考えながら、たるみ切った体に活を入れるために、ランニングマシーンで汗を流した…。疲労感と漠然とした不安感が体に重くのしかかる。そして、その汗を洗い流すためにシャワーを浴びていた時にリビングでタイミングが悪く携帯が鳴っていた。
それは案の定、日出からの着信であった。慌てて電話をかけなおしたが電話に日出は出なかった。もしかすると、危ない橋を渡ってもらった事が災いし、窮地に追い込まれているのかも知れないとそんな思いが頭をよぎった。
「くそ!」
そんな声が漏れた…。どうすることもできないイライラ感を紛らわすため、部屋中を歩き回ったり、冷蔵庫を何度も開け閉めしたり、何度も日出に電話をかけなおしたが、一向に事態は好転しない。
そんな時、玄関のインターホンが鳴った。
「東雲様、お届け物でございます。」
コンシェルジュがモニター越しに、届け物ですと笑顔をこちらに向けている。先ほどの幽世ベッドの部品か何かかと思い、コンシェルジュを迎え入れた。
そこにはコンシェルジュと共に部下である日出の姿があった。
「日出!どうした、電話に出なかったから心配したんだぞ!」
「心配かけてすみません、必要な物は持ってきました。」
「いや、無事で何よりだ。しかし、なぜコンシェルジュさんといるんだ?」
コンシェルジュさんはにこやかに一礼し、部屋を後にした。
「まずは…物はありがとう。しかし、コンシェルジュさんが?どういう事なんだ?」
私自身も困惑していていったん落ち着こうと深呼吸をした。
「頼まれた物を持ち出した時に…社長室に呼ばれて…。もう終わりだと思ったんですよ…。」
「それで?」
「社長に持ち出した物を出すように言われまして…。」
私からのお願いで日出の未来をつぶしてしまったのだ…機密文書の持ち出しは懲戒の対象だ。
「そこにあのコンシェルジュさんが…社長室に入ってきたんですよ。すると、あの逢魔社長がぺこぺこ頭を下げて…。そして、コンシェルジュさんが私をそのまま車に乗せてここまで連れてきてくれたんです。」
「全くわからない。」
状況が飲み込めない、なぜコンシェルジュさんがそこに来て社長が頭を下げているんだ。
謎が謎を呼び、もうどうでもよくなってきた。
「全く話は理解できないが、わかった。とりあえず、日出が無事でよかった。」
「東雲さん…、俺どうすれば…。」
「会社には戻れんよな…。俺が巻き込んだ事だ、お前くらい養える財力はあるさ…。」
元は私が蒔いた種だ…、部下を巻き込み、会社にいられなくしてしまった。日出は逢魔製薬の正規の社員で、将来も約束されていた…。
「とりあえず、今日はここにいろ。もし食べたい物とかあればコンシェルジュさんに頼め。」
私はそう言うと、部屋を案内し、日出に空いた部屋に住んでもいいと伝えた。
独り身でかなり大きなマンションを購入した…。使っている部屋も寝室とリビングダイニングくらいのもので、部屋は有り余っている。私には不釣り合いなマンションだが、このレベルでないと有能なコンシェルジュがついていないのだ…。
「東雲さん、これ。」
「あぁ、仮説を書き出してみたんだ。」
日出は概念的な図と数式が書かれたホワイトボードを指差した。
「やはり、アストラル体の結合ですか。」
「あぁ、そう思っている。アストラル体の欠損は事故ではあったが日出が実証してくれたが、今回はもっと酷い。」
「アストラル体の欠損はエーテル体が直してくれますが、結合となると…どう切り離すか…ですね。」
「あぁ、そこなんだ…。」
仮説と仮説をぶつけ合いながら解決策を導こうとするがなかなか納得のいく答えが見つからない。
「まだまだ、アストラル体は本当に未知だらけですね…。通常の科学や物理学の理が全く通じませんね…。」
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