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過去から繋がっていく未来
しおりを挟む深夜、俺達は途中の乗り換え駅で別れる事になった。
「今日は付き合ってくれてありがとうね北斗!」
泣き腫らした目だったが凛は最初の時と同じく元気ハツラツになっていた。
あの後、日が完全に沈むころに街へ戻った俺達はもう少し時間があるからと実家の夕食を頂いた。
凜も来ていると最初から言っていたので、凜も分もあり、ちゃっかり食べている。
食後に母さんが俺に今日は泊まらないの?と聞いてきたが、明日はバイトがあるから断った。
途中まで凜も送るよと言うと、男前になったねーとニヤニヤしながら言ってきた。
食事を終え、帰宅するかというところで、凜が「あ!」と声を出す。
「またタイムカプセル作ろうよ! 一時間くらい遅れても大丈夫でしょー!」
拒否権がなかった。
うーんうーん考えて、お互いに10年後の自分へ当てた手紙を書く。
俺は今日のタイプカプセル捜索の事を簡単に書いて入れた。ついでに凛への怨みつらみもちょろっと付け加えている。
当分、書いた内容が忘れられそうにない。
10年後も覚えているかもしれないなぁと苦笑いだ。
俺は紙一枚。凜はなんと三枚だ。
それを丁寧に糊付けして、雨水避けの袋に入れて、タイムカプセル缶に入れて綺麗に蓋をする。
「よし! じゃぁまた犬小屋跡地に埋めようね!」
子供の時に埋めた場所と同じ所へ埋めることになった。
興味津々の母さんと凛に見守られ、俺の手で缶が土の中に埋まった。
「楽しいことするわね」
「ね! 十年後またお邪魔させてください、おばさん」
「あら、凛ちゃんならいつでもいいわよ。連絡頂戴ね」
「はい!」
そのたびに俺も同伴するだろうから、止めてほしいと内心思う。
「じゃ、またな母さん」
「お邪魔しましたー!」
俺達はタイムカプセルを埋めた足で即効それぞれの場所へ帰ることになった。
「気にすんな、元気出たみたいで良かったよ」
俺が微笑むと、凜が少し頬を赤らめながら電車から駅のホームに降り立ち、すぐに振り返った。
「私やっぱり宝探しして良かったって思う」
「タイムカプセルだろ?」
「うん、そーだね。タイムカプセルだけど宝だったよ。お陰でしこりみたいなの取れた気分」
「謎が解けてすっきりってか?」
「それもあるけど、何より、私の鬱の原因ってのが理解できたから」
俺はちょっと黙った。凛は続ける。
「やだぁ~。そんな顔しないの」
「凛」
「私、ショックだったんだって分かったからもう大丈夫! 気持ち切り替えて立ち直れる! 北斗の言葉、嬉しかったよ」
「俺の?」
「うん! そ!」
プルルルルルル!
電車の発車ベルが鳴り、凜が下がった。
「またメールするね!」
「ああ、分かった」
俺が「じゃ」と手を挙げると凛と目が合った。彼女は両手をメガホン代わりにし大きな声で言った。
「今日は感謝してるぞ! ありがと! 貴方がいてくれてよかった!!」
「ああ! 俺も…」
俺は慌てて身を乗り出すような仕草をしながら、他の乗客の迷惑を顧みず大声で答えるが、電車のドアが閉まった。
「楽しかった! ありがとな! 凛!」
声は聞こえてないと思うがその意味はしっかり伝わったらしく、凛はとても嬉しそうに微笑みながら手を振った。
電車が動き始め景色が流れてその姿はすぐに消えた。
「はは…」
俺は軽く笑いながら、空いている席に座った。
今日一日、とても忙しかったが充実した日だった。
電車のゆりかごに身を預けながら目を瞑る。
もしかしたら、寝過ごしてしまうかも……? と不安が過ったが、まだあと30分も時間がある。
多分、大丈夫だ。
電車を降りたら、いつもの日々に戻る。
忙しさに追われ、あっという間に時間が浪費されるだろう。
でも今は、この心地よさに任せて夢を見よう。
未来の夢を見よう。
きっと今日みたいにバタバタして、手紙を読んで最後に笑うに違いない。
三十代、俺はどんな大人になっているんだろう。
『十年後に出逢う、今より大人になった俺へ。牧田北斗より』
実家で母さんに言われ、その手紙に入った缶を掘り起こした。
わんわん子犬が鳴く声と、あうーだうーと赤子が鳴く声がする。
ほら、あったよ。と凜に見せながら、凜は懐かしいー!と笑顔を見せた。
母さんに赤子を少し見てもらって、俺と凜は一緒に手紙の中身を読む。
まだ友達だった時期の物で、「ふふふふ」と凛がはにかむように笑った。
「この当時はまだ友達だったのにね」
「ほんとにな」
俺は少し照れながら笑った。
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