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鬼が嘲りし時優劣崩壊す
悪鬼と式鬼の死闘④
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「誰が式鬼失格だ! ふざけるなああああああああ!」
雄叫びを上げ弾丸のように飛び出すと、目の前に居た悪鬼にタックルをした。ズドン! と悪鬼が地面に倒れると魁は腹の上に乗ってマウントを取った。
ほかの二体が奇声を上げて魁の首筋や背中に噛みつくが、気を取られることなく、高温がこもる手で倒した悪鬼の頭と首を掴んだ。掴んだ部分が熱で焦げていく。悪鬼は『イャアア』と悲鳴を上げながら、じたばたともがいて抜け出そうとした。
「うおおおおお!」
『ギャアア!』
魁は力任せで悪鬼の首を捩じり切った。くぐもった悲鳴と共に悪鬼は塵と化す。
『ギッ!』
魁は首に噛みついていた悪鬼の上顎と下顎をそれぞれ掴んだ。口を広げて首から引きはがすと顎を両断した。
悪鬼は上顎と下顎で分断されたがすぐに再生し始めた。
「烈火よ。我の呼び声に応じ姿を変化させよ! 炎風!」
魁の体が青い炎に包まれる。分断された悪鬼は体全部炎に包まれて『ぎぃっ!』と鳥の鳴き声を上げてから塵に返る。
『ギャアアアア!』
魁の背中の肉を噛みちぎっていた悪鬼も炎に巻き込まれた。悲鳴を上げながら離れたが火は消える気配がない。『アチイ! アチイ!』とその場をぐるぐると走り回った。
火は不浄なモノを焼き尽くし清浄にする。闇を照らし善または智恵の象徴とされる光の源であり、竈神として家庭の守り神とされている人々に身近な神だ。当然、悪鬼にも火による清浄は良く効いた。
魁の炎も悪鬼を焼き殺す力はある。先ほどは気が抜けた炎だったが、鷹尾のエールにより多少は威力が戻ったようだ。
悪鬼は地面をゴロゴロ転がって炎を消そうとしていたので、魁は高く飛翔して悪鬼の腹部に蹴りを入れた。
ドスン。と地響きがなり、悪鬼を中心に地面が凹むと『ゲハ!』と口から黒い液を吐く。
「烈火よ。我の呼び声に応じ姿を変化させよ! 炎風!」
魁が炎に包まれる。踏みつけられている悪鬼にも炎が広がり全身が包まれた。
『ギャアアアア!』
じたばたと手足を激しくばたつかせたものの、悪鬼は成すすべなく消滅した。
魁の足がドスっと地面に着地する。全身を覆っていた炎が消えると、魁は深く息を吐いて右手で額や頬の汗を拭った。
「やればできるじゃないか」
鷹尾は少しだけ笑って、肩たたき棒のように宝棒でトントンと肩を叩いていた。
魁はジト目になると首を左右に振った。
「褒められている気がしない」
「そりゃそうだ。褒めてないから」
怒ったように睨む魁。さっきの言葉を取り消してもらおうと口を開くが、
「魁!」
雪絵が木の幹から離れて魁に駆け寄ったのでやめた。半泣きになった雪絵は魁の胴体にしがみついて泣き始める。
「よか……ごめ、なにもできなくて……ごめんなさい」
泣きながら謝る雪絵を愛おしそうに見つめて、魁は「大丈夫だ」と甘く囁く。血で汚れた手を服で拭いて、頭を撫で始める。
「緊張感のないやつらだな! それは後にしろ!」
鷹尾は憤りをあらわにして怒鳴ると、雪絵と魁から物言いたそうな視線がきた。二人の世界を邪魔された不満を感じて、鷹尾はカチンとしながら地団太を踏んだ。多少の羨ましさもあるが、今はそれどころではない。
「殆ど魄が戦っているのに弱い悪鬼倒しただけで満足するなんてどんな了見だ! まだ終わってないんだぞ! 終わってから甘々イチャイチャやれって言ってんだよ! 二人ともほんっとおおおおおに後で絶対に泣かすからな!」
ホラー映画だと冒頭で死ぬカップルだ! と台詞を吐いていると、魄の声が聞こえて、鷹尾は怒鳴るのをやめた。
「鷹尾! 咲紅さん回収したから、そっちで保護して!」
魄は抱えていた咲紅を地面に下ろして、下半身だけになっている羅刹に向かって術を繰り出した。再生しようとする下半身が細切れにされていく。その一部がふわり、ふわり、と漂い、鬼門の隙間に滑り込んでいるのが見えた。
少し嫌な予感がしたが、すぐに閉めれば大丈夫だろうと、鷹尾は気にしないことにした。
「でも気を付けて。咲紅さんがまだ正気じゃないよ。なにかブツブツ言ってるからケアがいる」
魄は少し曇った表情になり、今度は艮の鬼門を指し示した。
「あと、羅刹の一部が鬼門の中に入ったんだけど大丈夫かな。今なら閉じられると思うから門を押しこようと思ってる」
鷹尾は少し渋い表情をしたが、考えは変わらない。鬼門の封印が最優先だ。
「俺もさっき見た。すぐに閉じれば問題ないはずだ。頼んだ」
鷹尾の指示を聞いて、魄は「オッケー」と返事をした。
「はくちゃん」
ふいに名を呼ばれたので振り返ると、咲紅が両手を胸に置く形で立っていた。
「咲紅姉さん。気づいた?」
魄が立ち止まると、咲紅は表情を消して二歩ほど近づく。
その手に形代が握られている。と気づいた鷹尾が顔色を変えた。
「魄! よけろ!」
きょとん。として魄は鷹尾に視線を向けた。
声をかけるのではなかった。と鷹尾は全力で走る。
「馬鹿! 姉貴をみろ!」
魄が視線を戻した瞬間、咲紅は突進する勢いで近づき形代を魄の胸につけた。
「え!?」
魄の顔色が変わる。そして気づく。彼女はまだ洗脳が溶けていなかったと。
「一殺多生 刀山剣樹 急急如律令」
形代が宝剣を模ると、その刃が魄の胸を貫いた。
雄叫びを上げ弾丸のように飛び出すと、目の前に居た悪鬼にタックルをした。ズドン! と悪鬼が地面に倒れると魁は腹の上に乗ってマウントを取った。
ほかの二体が奇声を上げて魁の首筋や背中に噛みつくが、気を取られることなく、高温がこもる手で倒した悪鬼の頭と首を掴んだ。掴んだ部分が熱で焦げていく。悪鬼は『イャアア』と悲鳴を上げながら、じたばたともがいて抜け出そうとした。
「うおおおおお!」
『ギャアア!』
魁は力任せで悪鬼の首を捩じり切った。くぐもった悲鳴と共に悪鬼は塵と化す。
『ギッ!』
魁は首に噛みついていた悪鬼の上顎と下顎をそれぞれ掴んだ。口を広げて首から引きはがすと顎を両断した。
悪鬼は上顎と下顎で分断されたがすぐに再生し始めた。
「烈火よ。我の呼び声に応じ姿を変化させよ! 炎風!」
魁の体が青い炎に包まれる。分断された悪鬼は体全部炎に包まれて『ぎぃっ!』と鳥の鳴き声を上げてから塵に返る。
『ギャアアアア!』
魁の背中の肉を噛みちぎっていた悪鬼も炎に巻き込まれた。悲鳴を上げながら離れたが火は消える気配がない。『アチイ! アチイ!』とその場をぐるぐると走り回った。
火は不浄なモノを焼き尽くし清浄にする。闇を照らし善または智恵の象徴とされる光の源であり、竈神として家庭の守り神とされている人々に身近な神だ。当然、悪鬼にも火による清浄は良く効いた。
魁の炎も悪鬼を焼き殺す力はある。先ほどは気が抜けた炎だったが、鷹尾のエールにより多少は威力が戻ったようだ。
悪鬼は地面をゴロゴロ転がって炎を消そうとしていたので、魁は高く飛翔して悪鬼の腹部に蹴りを入れた。
ドスン。と地響きがなり、悪鬼を中心に地面が凹むと『ゲハ!』と口から黒い液を吐く。
「烈火よ。我の呼び声に応じ姿を変化させよ! 炎風!」
魁が炎に包まれる。踏みつけられている悪鬼にも炎が広がり全身が包まれた。
『ギャアアアア!』
じたばたと手足を激しくばたつかせたものの、悪鬼は成すすべなく消滅した。
魁の足がドスっと地面に着地する。全身を覆っていた炎が消えると、魁は深く息を吐いて右手で額や頬の汗を拭った。
「やればできるじゃないか」
鷹尾は少しだけ笑って、肩たたき棒のように宝棒でトントンと肩を叩いていた。
魁はジト目になると首を左右に振った。
「褒められている気がしない」
「そりゃそうだ。褒めてないから」
怒ったように睨む魁。さっきの言葉を取り消してもらおうと口を開くが、
「魁!」
雪絵が木の幹から離れて魁に駆け寄ったのでやめた。半泣きになった雪絵は魁の胴体にしがみついて泣き始める。
「よか……ごめ、なにもできなくて……ごめんなさい」
泣きながら謝る雪絵を愛おしそうに見つめて、魁は「大丈夫だ」と甘く囁く。血で汚れた手を服で拭いて、頭を撫で始める。
「緊張感のないやつらだな! それは後にしろ!」
鷹尾は憤りをあらわにして怒鳴ると、雪絵と魁から物言いたそうな視線がきた。二人の世界を邪魔された不満を感じて、鷹尾はカチンとしながら地団太を踏んだ。多少の羨ましさもあるが、今はそれどころではない。
「殆ど魄が戦っているのに弱い悪鬼倒しただけで満足するなんてどんな了見だ! まだ終わってないんだぞ! 終わってから甘々イチャイチャやれって言ってんだよ! 二人ともほんっとおおおおおに後で絶対に泣かすからな!」
ホラー映画だと冒頭で死ぬカップルだ! と台詞を吐いていると、魄の声が聞こえて、鷹尾は怒鳴るのをやめた。
「鷹尾! 咲紅さん回収したから、そっちで保護して!」
魄は抱えていた咲紅を地面に下ろして、下半身だけになっている羅刹に向かって術を繰り出した。再生しようとする下半身が細切れにされていく。その一部がふわり、ふわり、と漂い、鬼門の隙間に滑り込んでいるのが見えた。
少し嫌な予感がしたが、すぐに閉めれば大丈夫だろうと、鷹尾は気にしないことにした。
「でも気を付けて。咲紅さんがまだ正気じゃないよ。なにかブツブツ言ってるからケアがいる」
魄は少し曇った表情になり、今度は艮の鬼門を指し示した。
「あと、羅刹の一部が鬼門の中に入ったんだけど大丈夫かな。今なら閉じられると思うから門を押しこようと思ってる」
鷹尾は少し渋い表情をしたが、考えは変わらない。鬼門の封印が最優先だ。
「俺もさっき見た。すぐに閉じれば問題ないはずだ。頼んだ」
鷹尾の指示を聞いて、魄は「オッケー」と返事をした。
「はくちゃん」
ふいに名を呼ばれたので振り返ると、咲紅が両手を胸に置く形で立っていた。
「咲紅姉さん。気づいた?」
魄が立ち止まると、咲紅は表情を消して二歩ほど近づく。
その手に形代が握られている。と気づいた鷹尾が顔色を変えた。
「魄! よけろ!」
きょとん。として魄は鷹尾に視線を向けた。
声をかけるのではなかった。と鷹尾は全力で走る。
「馬鹿! 姉貴をみろ!」
魄が視線を戻した瞬間、咲紅は突進する勢いで近づき形代を魄の胸につけた。
「え!?」
魄の顔色が変わる。そして気づく。彼女はまだ洗脳が溶けていなかったと。
「一殺多生 刀山剣樹 急急如律令」
形代が宝剣を模ると、その刃が魄の胸を貫いた。
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