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第四章
十
しおりを挟む「はは、成程、そうか」
那都の話に咲久夜は笑った。邪魔になると思い、今は照灯がしている座学の部屋から抜け廊下を歩いている。
「キキは術もあまりやりたがりません。照灯はキキならば神楽を必ず舞えると言っているのですが」
「ふむ……」
確かにキキのような真っ直ぐな子、術も神楽も成せるというのは咲久夜も思う。が、キキがやりたがらないというのも逆に不思議な感じがした。
「キキ自身が神だからかもしれぬな」
「だから、神楽をしようとしない……」
まさか、と言いそうになって、そう言えない自分がいることにも気づき那都は益々苦笑した。
「咲久夜様から言われると、本当にそうではないかと思ってしまいます」
「わしも自分で話していて、そうではないかと思えてきた」
互いに笑い、そして、足を止め外を見つめた。
「暑くなってきたな」
「はい」
夏至から一ヶ月あまり、季節は大暑――
「宇加はもう出雲に着いた頃でしょうか」
「そうだな」
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