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第一章
五
しおりを挟む後は自分の感覚を信じるしかない。剣で石を斬り、岩を矢で射貫くこともあるのだ。技術で足りぬなら、自分の感覚の一念を信じよう。
――そうして訪れた鬼との戦い。
キキは、鬼の首を鉈で斬ることに成功した。
(鬼も人の形をしているならば、首を斬り落とさずとも皮膚と血管さえ斬れればいい)
腕や身体を斬ったところで、どうにもならない。それならば、一太刀で首の筋を狙ったほうがいい。振り下ろしの切っ先で斬る。それで斬れる。
キキは闇に紛れ、家の一つの屋根に上ると、今だ下で人の骨をしゃぶっている鬼に向かって飛び降りた。
小太刀が月の閃光に燦めき――そして、音もなく地に降りると、そのままキキは闇へと走って行く。
後ろでは鬼が首から血を噴き出させ……呻き声と共に倒れ、やがて動かなくなった。
他の鬼達は気付いていない。キキは闇に紛れたまま、一体、また、一体と鬼の首を斬っていく。
五体目で小太刀の切れ味が悪くなったが、村で拾った鉈に代え、斧に代え……鍬で斬ることはさすがに出来ないので、屋根から頭上へ飛び降り際に前転し、鍬を顎の奥に叩き込んだ。
暴れ倒れる鬼の首にもう一度鍬を添え、全体重を込め鍬を踏み込む。例え軽い幼子の体重でも、身体の使い方次第で踏み込みの重さを変えることができる。何度か鍬を踏み込んだ後、鬼は絶命した。
――以前とは違って、村にどれだけの武器、鉈や斧があるか分からないが、運が良かったのだろう。石を使うことなく最後の鬼を殺し、動かなくなるのを確認してから手にした鉈を捨てた。
少し疲れはしたが、それなりに楽しい戦いだった。気付かれず一体一体仕留めていくのは……そう、まさに鬼ごっこのようで楽しかった。今回の場合、鬼はキキだが。
兵士達はまだ来ない。
このままにしているのも哀れと思い、キキはまだ残っている火を移し、村の開けた場所で大きな焚火を作った。死んだ村人と……そして、鬼も燃やしてやろう。死ねば皆同じ骸だ。
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