俺と間男と昇り龍

ルルオカ

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俺と間男と決闘

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視界に細かいものが散らばって、体や顔に当たったのに、相手は「な!?」と踏みとどまって、目元を腕で庇った。
痛みがないから、目くらましと判断してだろう。

すぐに目元を庇う腕を外したものの、その腕にくっついたのが放られて、床に落ち揺れるのを目の当たりにし、とたんに顔を青ざめ絶句したようになる。

床に同じものが散乱しているのを見回し、足にもくっついているのに気づくと「っ!」と声にならない叫びをあげて、足を振り回しながら、尻餅をついてしまった。

一つだけ放り忘れたそれを指に挟んで揉みながら、相手の不様なさまを、にやにやと見下ろす。
俺が持っているのはスライムだ。

学校の科学の実験でよく作るゼリー状の物体で、おまけとして細かい一つ一つに目のシールを貼ってあり、ゲームが実写化したように、よりリアルなものになっている。

俺にすれば、触り心地がよいものの、相手は違うらしい。
手に持つスライムを投げるふりをすれば、あきらかに、目を見開き慄くような表情を見せる。

逃げたいだろうところ、腰が抜けたのか、足元のスライムに目を泳がせて、小刻みに震えているばかりいる。
口を利ける余裕もなさそうだったので「お前のことは、調べさせてもらった」と手に持つスライムを見せつけつつ、説明をしてやった。

「まあ、調べるだけむかつくほど、周りの評判はよくて、欠点も目立ってなかった。
そんな、あざとく武士っぽいキャラをしていたら、笑い者にされそうだけど、周りに恵まれていたんだな。

空気が読めなかったり、感覚がずれていたり、抜けているところも『可愛い』ときたもんだ」

良い評判ばかり聞かされていたときのことを思い出し、忌々しい気分になりながらも「ただ、『可愛い』で済まされないことがあったようだな」と鼻で笑った。

「小学校の実験でスライムを作ったときだ。
お前はいつものように馬鹿真面目に実験していたけど、完成品を前にして、豹変した。

顔色が悪くなって、触ってみなよってスライムを近づけられたら、教室からダッシュで出て行ってしまった。

体調が悪かったからっていう説明に、疑問を持った奴もいたけど、なんとなく問いつめたらいけないように思って、誰もツッコまなかったらしいな。
そのうちの一人なんか、とんでもないものを目撃したっていうのに」

顔を強ばらせ、瞬きもせずにいるのは、心当たりがあるからだろう。
やっぱりな、と思いつつ、勝ち誇った気分で言ってやった。

「お前のズボンが濡れているように見えたって」

屈辱で苦々しげに歪む表情を堪能しながら、やおら片足を伸ばして、相手の股間をかるく踏みつける。

肩を跳ねて太ももを閉じそうになったのに、ポケットに突っこんでいる、もう片手を動かすそぶりを見せれば、またスライムを撒かれることを恐れてだろう、咄嗟に太ももを留めた。

「さすがに今は漏らしてないな」と足の裏で確かめるように股間を揉むと、相手は息を詰めつつ「卑怯な・・・!」と睨みつけてきたので「卑怯?」と一笑に付す。

「俺が卑怯に見えるのは、お前が傲慢だからだ。
どうせ、俺のことを事前に調べなければ、決闘に向けて戦略を立てもしなかったんだろ。

調べていたら、俺が中学で喧嘩負け知らずがとかの武勇伝が嘘だってのも、分かっただろうからな。

そんなことも知らずにいたのは、別に関係ないと思っていたからだ。
相手がどうだろうと勝てる自信があった。

自信があるのはいいけどな、何もしないのは怠慢だし、どんな相手でも勝てると思うのは傲慢だろうが!
違うか!?」

一喝すると共に股間を踏みつけたら「んっ」と目を瞑り、しばし押し黙っていたものの「君の言うとおりだ」と悔しげに俯きながらも言った。

「僕の怠慢と傲慢が招いた結果ならしかたない。
この状態のままで決闘をつづけてもかまわない」

潔いといえば聞こえはいいけど、すこしへ理屈をこねただけで降参するとは、やっぱり頭が足らない。

「じゃあ、遠慮なくつづけさせてもらう」と尻のポケットからスマホを取り出したのを見て、怪訝そうにしているあたり、本当に純粋に決闘することしか頭になかったらしい。

スマホを動画モードにしてから、股間を揉むように足を動かしだすと「なっ!なに、をっ!」と腰が抜けた状態ながら、腰を引いて痙攣させる。
太ももを閉じようとするのに、ポケットの膨らみを揺らして牽制しつつ「お前潔癖なんだってな」と股間を踏みつづけた。

「武士っぽいキャラだからか、結婚するまでセックスしないだとか、無闇に抜くのは汚らわしいことだとか言って、周りを白けさせているって、聞いた。

まあ、口だけで、抜くのもセックスもしまくっているかもしんねえけど、そんな潔癖ぶっている奴が、思いっきり射精する動画をネットで流したら面白くね?」

こちらが端から決闘するつもりがなかったことに、やっと相手は気づいたようなものの、時すでに遅しだ。

股間を揉まれて、戸惑いの表情を見せながらも、反応してしまうらしく「ん、は、あっ、やめ」と喘ぐように息を切らしている。
「なんで、こんな・・・こと」とやっと言うのに「こんなこと?」と股間を強く踏みつけた。

「はじめに言ったよな。
俺が裏切られた分の報いを、お前らに受けさせないと気が済まないって。

たとえ、決闘して、お前が負けたとしても、俺が求めるだけ屈辱や苦しみを感じはしないだろう。

それに、あいつも『私のために!』なんて悲劇のヒロインぶって喜ぶだけだ。
そんなの冗談じゃない。

お前には死にたくなるほどの恥をかかせてやる。
彼氏の射精している動画が流出したとなれば、あいつにとって一生の汚点になるだろうよ」

「やめろ、はっ、こん、な・・・」と頑なに口では拒みつつ、股間は着実に固くなっている。
「はっ」と嘲って上半身のほうを見れば、はだけだ柔道着から乳首が覗いていたので、股間からするりと足を上に滑らせた。

相手が息を吐いたところで、足の親指と人差し指で乳首を挟んだら「ひ、あっ!」といい声で鳴いて、胸の筋肉をひくつかせた。

結婚までセックスしないという硬派もいいところの、こいつなら、男のそこが愛撫されるなんて、ありえないことなのだろう。

それでいて体の感度はよろしく、性的な好奇心もあるのか「そんな、とこ、っく、あ、はあっ」と頬を染めて、足の指でいじられる乳首をじっと見ている。
乳首が張りつめて赤く腫れたようになってから、指を外してやり、もう片方の乳首もいじめてやる。

快感に体が痺れて、理性が利かなくなってきたからか「あっ、あ、そん、なっ、はあ、りょうほっ、はあぁん」と喘ぎ声を垂流し腰を震わせ、遠慮なく悩ましいさまを見せつけてくる。

その乳首が完全に起ちあがったところで、一旦足を引いて、柔道着をはだけて赤い乳首を起たせ、股間をふくらませている、みっともない姿をばっちり動画におさめた。

「さあ、どうする?」と一時停止ボタンを押して、スマホを下ろすと、せめて顔があまり写らないよう、俯いて目を瞑っていた相手が、浅く息をしつつ、おもむろに見あげてきた。

髪を乱し、真っ赤な顔で涎を垂らしながらも、潤んだ瞳で睨みつける。
まだ自分の立場が分かっていないような相手に、ため息を吐いて「お前の出方しだいだけど」とスマホを振ってみせた。

「俺も、武士の情け?つっうのがないでもない。
こんな恥ずかしい動画を流すのは、さすがに可哀想だと思うからな。

だから、代わりに、お前が土下座をして許しを請う動画を撮らせてくれたら、こっちの動画は、手をつけないでやってもいいと思う」

睨みつける目の力みが、やや緩んだのは、破廉恥な動画を周知されないで済むかもしれないと、望みを見いだしたからだろう。

自身のためもありつつ、彼女のためなら、土下座してもいいと考えているのだろうけど、甘い。
「土下座するだけじゃない」と、その甘さを一蹴するように言う。

「『お前みたいな女と浮気をして、損をした』
『ブスで性格もどブスなお前なんか好きになるなんて、どうかしていた』ってな。

あいつを目の前に罵倒してもらう。
土下座とあいつを罵る動画で許してやるよ」

俺の言葉に相手はぽかんとしてから、みるみる苦虫を噛み潰したように顔を歪めていき「どうして」と呻くように呟いた。

「君は彼女のことが好きなんじゃないのか。
たとえ、好きでなくなったとしても、前は好きだった女性に、なんで、そんな残酷な仕打ができるんだ」

「浮気をされて、それでも好きだとか抜かして、決闘を申し込んでくるお前のほうが、頭がおかしいんだよ。
俺は、俺だけ好きでない奴なんか、大嫌いだ」

相手はすぐに、言い返そうとして唇を噛んだ。
悔しそうに俺を見ていたものの、ふっと気の抜けた表情になって「寂しいやつだ」と囁いて。



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