俺の推しは人気がない

ルルオカ

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結婚待ったで恋ははじまるのか

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高校生のとき、友人に告白して玉砕。まあ、いいヤツだったので、そのあとも友人として付きあってくれ、卒業後は別別の進路となり疎遠に。で、十年後、便りが。

結婚式の招待状。しかも相手は俺の幼馴染の女。もっと云えば、高校時代、恋の相談をしていた相手。

もちろん、俺の思い人が誰かも、フラれるまでの経緯も知っていれば、フラれたときに号泣したのを慰めてもらったほどで。結婚式前に幼馴染と面会をして、さらに発覚したのは、高校時代から交際しつづけてのゴールインだと。つまり、友人が俺をフッたのは、すでに幼馴染と交際していたせいでもあるわけだ。

「そんなことある!?なんていうかさあ、そのときは無自覚に交際していたのが、しばらくして『ああ、俺、あいつを盗られたくなかったから、あいつが親しい女子とつきあっていたんだな』って気づいて『遅れてごめん』って俺を迎えにきて、ゴールインするもんじゃないのお!?

そのまま、何事もなくお前とゴールインって、つまんなくね?俺、かわいそうじゃね?ていうか、何気にお前、ひどくね?」

「えーえー!高校のころ、あんたの思い人とつきあっていたくせに、あんたの恋愛相談乗っていた件については、弁解の余地ないし、全身全霊で謝るわ!ごめん!

あんときは、私もまだまだ子供だったからね!云わなくちゃ、云わなくちゃって思いながら、どうしたらいいか分からなかったし、意気地を持てなかったのよ!でも、マジ、ごめん!

ただ、云わせてもらうけど、創作物、読みすぎだから!スキな男子を、女子に盗られなくないからって、その女子と交際するなんて、創作ではマストでも、現実には発生率ゼロパーだから!これからのためにも、その創作物に染まった脳、どうにかしさないよ!」

怒るべき俺が、倍返しに説教しかえされたが、そう糾弾したくもなかったし。だって十年、友人を一途に思ってたでなく、惚れた腫れたのすったもんだがありつつ、今もスキップルンルン男の尻を追っかけているし。

たしかに?白のタキシードをまとった友人を目の当たりにして「イイ男になって・・・」と涎を垂らしそうにはなったけど。

創作物あるある。いや、創作物でもレアケースの「その結婚待ったあああ!」との花婿略奪を、さすがにリアルにやっちまうメンタルはない。「現実は小説より奇なり」なんてことは、案外、起こらないもの。

「幼馴染の苦言も、一理あるなあ」と悔しがりながらも、式の進行を見守り「この二人の結婚に異議のある方はいますか」と神父が問うたとき。まさかの「異議あり!」。しかも勇ましく立ち上がったのは、ドレス姿の女性で「サキ!」と手を差し伸べたのは、花婿ではなく花嫁。

つい先日「現実と創作物をごっちゃにするな!」と叱咤したはずの幼馴染は「映画の撮影か!」とツッコむことなく「馬鹿!ずっと待たせておいて!」と泣きながら手を取り、二人して扉を突き破って、とんずら。

「お前こそ、創作物に染まっているどころか、いっそ超越したリア充じゃん・・・」と呆れかえった俺はまだ、ましなほうで、そりゃあ、置きざりにされた人たちの居たたまれなさったら地獄のようで。それでも、どうにか放心から覚めて、生きた屍となった花婿を皆、宥めようとしたのを「今は、一人に・・・」と控室に引きこもり。どうしてか、俺だけを連れて。

ソファに腰かけ、深深とうな垂れるのに、声をかけあぐねていたら、ふと手を握られた。やおら顔を上げて「お前にひどいことした罰が当たったのかな・・・」なんて、しおらしい懺悔。

ええ男に涙目で見つめられ「おふぅああっ・・・」と胸をどきゅんずきゅんしながら「え!?これどーしたらいいの!?」とパニック!

幼馴染に指摘されたように、俺の恋愛の参考は創作物。恋愛遍歴が悲惨なのは、そのせいなのだろうが、創作物の導きがないと身動きがとれない体質なのだから、しかたない。

でもって、こういうシチュエーションを創作物で見たことがないとなれば、右も左も分からず。「じゃあ贖罪しなよ」と弱みにつけいるべきなのか。「罰なんて、そんな」と否定しつつ「今でも、お前がスキだよ」とやはり、弱みにつけいるべきなのか。

「ああ!創作の神様!」と内心、嘆きながら「ええい!くそお!」とかるく手を握りかえしてやった。花嫁を略奪された花婿を前にして、はじめて創作物の真似をしないでの第一歩。吉とでるか凶とでるやら。








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