俺の推しは人気がない

ルルオカ

文字の大きさ
上 下
27 / 29

雷迷走恋模様

しおりを挟む





友人は雷が怖い。くせに、真っ青な顔をしつつ「雷?え?気づかなかった」と(間抜けなほど、あきらかに)すっとぼけたふりをするし「べつに笑わないって」と云うも「はあ!?笑うってなにがあ!?そもそも、雷になんとも思ってませんけどお!?」と(いっそ図星のように)激昂して、言い訳がましく、まくしたてるし。

「笑わないって」と宥めたように、友人が雷にびびろうが、かまわないし、むしろ認めて、ありのまま、びびってくれたほうが、対処がしやすい。涙目でチワワのように震えて「雷でびっくりするわけないだろ!子供じゃないんだから!」と負け犬の遠吠えをするほうが鬱陶しく、外出先で雷鳴がしたときなど「なんなら雷に打たれてみたいっつうの!ほら、いこうぜ!」と無駄に奮起するから面倒くさい。

いつまでも、頑なにヒステリックに否認するから、そのこと自体鬱陶しく「素直になれ」と促すのも面倒くさくなって、このごろは放置。とはいえ、全国で一番、雷が落ちる地域に生みおちた皮肉な運命なれば、口だししなくなっても「俺、雷、怖くないもん!」アピールはやまず。「水責めして白状させてえ!」と苛立ちながらも、まともに取り合わないよう、耐えつづけての、ある日のこと。

友人と所属する大学の「ホラー研究会」。拠点の小部屋で友人と二人、遅い昼ご飯を食べ、俺はソファで昼寝。友人は期限の迫るレポート執筆。

空は雲がかっていたものを、春の陽気がして、ちょういい加減の涼しげなそよ風が吹きこみ、そりゃあ、涎を垂らして、ぐっすり。晴れわたったお花畑で「待てよお☆」「つかまえてみなさい☆」と女の子と追いかけっこをしていたのが「ドンビラガッシャーン!」が耳を打ったのと、鳩尾に打撃を食らったので「うぐはあ!」と強制お目覚め。

起き抜けながら、部屋が発光したのに「ああ」と。すこしして、また「ドンガラガッシャーン!」と騒音がして、やや壁が揺れたのは、近くに雷が落ちてのこと。

誰かさんと同じく全国一の地域に生まれ育って、でも、誰かさんとちがって、幼いころから平気だった俺にとって、飽きるほど慣れ親しんだものだが、腹の衝撃は不明。下半身のほうを見やると、うつ伏せで腹におおいかぶさっている友人が。

発光した直後に、俺の腹にダイブしたと思われる。が、理由は謎。「お」い、と呼びかけようとしたら発光し、肩を跳ねつつも友人は雷鳴に負けじと「か、かか、か、雷様をあなどるなあああ!」と絶叫。

「雷様」と聞き、とたんに腑に落ちた。「雷が落ちたとき、腹をだしていると、雷様にヘソをとられる」との迷信を真に受けているのだ。とあって、発光したときに、俺が眠りながら、シャツをめくったのを目にし「危なーい!」と大真面目も大真面目に助けようとしたのだろう。

大学生にもなって?と呆れるところ「ホラー研究会」の断トツ一等のビビりにして、どんなに、うさん臭く荒唐無稽な怪談や都市伝説でも、鵜呑みにするヤツだ。なるほど、正確には「雷様」を畏敬していたから「雷でチビらねーよ!」とむきになって正しているつもりだったのか。

いや、でも、その違いだけで「俺を信じないお前は人でなしだ!」と否定しきれるものか?とひかっかるものを覚え、いまだ腹に乗っかている友人を眺めて、ぴんときた。

勘なれど、確信満点に「ヘソフェチか・・・!」と思わず、頭を叩いて。肩を跳ねながらも、顔を上げず、腹にしがみついたまま、再三、発光したのに涙ながらに訴えたものだ。

「雷様あ!どうか、こいつのヘソは、ご勘弁くださあああああい!」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました

及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。 ※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19

好きな人が「ふつーに可愛い子がタイプ」と言っていたので、女装して迫ったら思いのほか愛されてしまった

碓氷唯
BL
白月陽葵(しろつきひなた)は、オタクとからかわれ中学高校といじめられていたが、高校の頃に具合が悪かった自分を介抱してくれた壱城悠星(いちしろゆうせい)に片想いしていた。 壱城は高校では一番の不良で白月にとっては一番近づきがたかったタイプだが、今まで関わってきた人間の中で一番優しく綺麗な心を持っていることがわかり、恋をしてからは壱城のことばかり考えてしまう。 白月はそんな壱城の好きなタイプを高校の卒業前に盗み聞きする。 壱城の好きなタイプは「ふつーに可愛い子」で、白月は「ふつーに可愛い子」になるために、自分の小柄で女顔な容姿を生かして、女装し壱城をナンパする。 男の白月には怒ってばかりだった壱城だが、女性としての白月には優しく対応してくれることに、喜びを感じ始める。 だが、女という『偽物』の自分を愛してくる壱城に、だんだん白月は辛くなっていき……。 ノンケ(?)攻め×女装健気受け。 三万文字程度で終わる短編です。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話

蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。 終始彼の視点で話が進みます。 浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。 ※誰とも関係はほぼ進展しません。 ※pixivにて公開している物と同内容です。

罰ゲームから始まる不毛な恋とその結末

すもも
BL
学校一のイケメン王子こと向坂秀星は俺のことが好きらしい。なんでそう思うかって、現在進行形で告白されているからだ。 「柿谷のこと好きだから、付き合ってほしいんだけど」 そうか、向坂は俺のことが好きなのか。 なら俺も、向坂のことを好きになってみたいと思った。 外面のいい腹黒?美形×無表情口下手平凡←誠実で一途な年下 罰ゲームの告白を本気にした受けと、自分の気持ちに素直になれない攻めとの長く不毛な恋のお話です。 ハッピーエンドで最終的には溺愛になります。

処理中です...