上 下
38 / 61
生徒会庶務の夏祭り

生徒会庶務の夏祭り③

しおりを挟む
「ん~!美味しい」

 嬉しそうにりんご飴を食べているのはリンゴちゃん……もとい、リンコ先輩だった。
 リンコ先輩は本当に俺にりんご飴を奢ってくれたのだが、自分も欲しくなったようで結局りんご飴をもう一つ買っていた。 

「美味しいですけど、これ絶対飽きますよね」
「あ~わかるなぁ。最初は美味しいんだけど、だんだんキツくなるし口の回りがベタベタしてくるしで、全部食べるの苦労するんだよね」
「そう言えば、リンコ先輩って昔大きいりんご飴買っちゃって死にかけてましたもんね」

 確か、俺と由依とリンコ先輩がまだ小学生のころ、三人で祭りに来たときそんなことがあった気がする。  

「アハハッ!そんなこともあったね~それからだっけ?あーくんが私のことリンゴちゃんって呼び出したのって」
「そう言えばそうでしたね」
「そうそう、他にも由依ちゃんがかき氷の早食い対決で異常に強かったりしたな~」
「アイツ、今でもかき氷めちゃくちゃ早く食いますよ」
「えっ、本当に!?」

 俺とリンコ先輩は昔遊んでいたころの話をしながらブラブラ歩いていた。
 
 いくつか屋台をまわったあとのことだった。俺たちが金魚すくいの列に並んでいると、二つ隣の屋台の前で小さな女の子が今にも泣きそうな顔で一人ウロチョロしていた。
 
「……これは仕方ないか。リンコ先輩ちょっと仕事が出来たんで適当にまわってて下さい!」
「ちょっとあーくん!?」

 俺は事前に久遠さんから貰った『警備係り』と書かれた腕章をつけて、出来るだけ愛想よく女の子に話しかけた。

「ま、迷子かなにか……かな?」
「う……うん」
「俺はその、警備係りという者なんだが……お母さんとお父さんを探しにいこう?」

 すると、女の子は震えながら首を横に振った。

「知らない人に付いていったらダメって……ママ言ってたもん」

 ……困った、この子変にしっかりしてるなぁ。これだと町内会のテントまで連れていくのも難しいか……
 俺がどうしたものかと悩んでいると、カランコロンと下駄を鳴らしてリンコ先輩がやって来た。

「えっ?あーくん……それは犯罪だよ」

 リンコ先輩は開口一番とんでもないことを言い出したので、きちんと説明をしてあげた。
 すると、リンコ先輩は女の子の目線と同じ高さまでしゃがんで巾着から出したあめ玉を女の子に渡した。

「えっと、お姉さんにお名前教えてくれると嬉しいな」
「ともちゃん4しゃいです」
「おお~ともちゃんはしっかりしてるね。ところで、ともちゃんは今日一人で来たの?」
「ううん、ママとしおりおねえちゃんときたの……でもとちゅうでいなくなって」
「そっか、それは怖かったね。きっとともちゃんのママとおねえちゃんも心配しているだろうから、お姉ちゃんたちと一緒にママとおねえちゃんをさがそっか?」
「うん」

 リンコ先輩は女の子の頭を軽く撫でてあげると、手を繋いで立ち上がった。

「それじゃあ、あーくんも手伝ってね」
「……あっ、はい」
「えっと、何か顔に付いてる?」 
「いえ、なんかすごいなぁと思いまして……俺には何も出来なかったのに」

 すると、リンコ先輩は俺の肩をポンと軽く叩いてきた。

「何言ってるの、あーくんはこの子が困ってることに気が付いたんだから凄いよ」
「…………」

 俺はリンコ先輩の言葉に対して何も言えなかった。

「あーくん何突っ立ってるの~?早くともちゃんのママとおねえちゃんを探すよ~」
「わ、分ってますよ!」

 俺は慌ててリンコ先輩とともちゃんの隣まで走った。
 

 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...