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それぞれの思い
それぞれの思い②
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『変態を助けよう会』という、事情を知らない人が名前を聞いたら盛大に勘違いしそうな会を開いた翌日の放課後。
昨日はいい作戦を思いつくことができなかったので、とにかく栞と話をしようということになったのだが……
「栞が見つからねえええーーー!!!!」
当の変態が見つからなかった。
栞の教室や図書館も寄ってみたがそこにも栞の姿はなく、ちらほらと文化委員っぽい人がポスターをはっていたり、機材を運んでいたりしていただけだった。
「一度、昴たちと合流するか」
あらかじめ栞を見つけても見つけなくても集合することになっていた。
俺は昴か由依が栞を見つけていることを期待して、一年三組の教室に戻ることにした。
しばらく教室で待っていると、まず由依が戻ってきて残念そうに首を横にふった。どうにも俺と同じように栞を見つけられなかったようだ。
それから2、3分待っていると、昴が戻ってきて残念そうに首を横にふった。どうにも昴も栞を見つけられなかったようだ。ただ、片手にピンク色のわたあめを持っていたが、そこはあまり気にしないでおこう。
別に途中で見かけた、わたあめづくりを楽しそうにしていた女の子が昴のはずがないので、あまり気にしないでおこう。というか、気にしたらなにか負けた気がする。
「えっと、栞は見つかった?」
「ううん、私はダメだった。すばるんは?」
「わたしも見つからなかった。けど、わたあめ貰ったよ」
「そうか、それじゃあ邪魔することになるけど、会議室にいくか」
「うん」
「ちょっと待って、まだ食べ終えてないから」
昴がなにか言っているが、気にせず文化委員会が主に活動をしている会議実に向かうことにした。
三階まで登り廊下を進むと、普段は空き教室となっている場所には『文化祭実行委員会 本部』と達筆な字で書かれた紙が扉に貼られていた。
てっきり、キャッキャウフフしながら適当に仕事をしているのかと思えば、ふざけた声は聞こえず、いたって真面目に仕事をしているようだった。
「よし、入るぞ」
俺がそう言うと、昴と由依が頷いた。
少し緊張する気持ちを押さえながら、扉をノックした。
すると、中からどうぞーと声が聞こえる。
「失礼します。一年の赤城です。文化委員長の青葉さんに用があってきたんですけど……」
教室に入ると数名の生徒がパソコンでカタカタと作業を進めていた。
視線を巡らせるが栞の姿は教室にはなかった。
「青葉さんの友だちかい?」
すると、眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒が代表して話しかけてきた。腕には副委員長の腕章がつけられていた。
「あっ、はい。ちょっと用事があって……栞は別の場所で仕事ですか?」
「そうか、入れ違いになったのかな?青葉さんならさっき帰ったよ」
「帰った?」
「うん。あまり帰りが遅くなると青葉さんに悪いからね。それで帰ってもらったんだ」
……なんだよそれ。
副委員長の言葉に体の底から怒りが込み上げてくる。
「それって、いつものことなんですか」
「うーん、そうだね。だいたい帰りが遅くなりそうなときは僕たちが代わりに仕事をしているよ」
その言葉に周りの生徒も頷いていた。
まるで、いいことをしたみたいに。栞のために早めに帰らせたみたいなその態度に俺の心は限界だった。
一発殴ってやる。
そう思ったが……
「飛翔、顔が怖い」
昴の一言で、なんとか殴らずにとどまった。
「飛翔くん……気持ちは分かるけど」
「二人ともありがと。少し落ち着いた」
頭は落ち着いた。
けれど、心の方はそうはいかない。
栞は「頑張る」そう言っていたのだ。
なのに、こいつらは……
「お前ら、栞の気持ちを考えたことあるのかよ」
我慢できずに、口からこぼれでた。
「ご、ごめんなさい!青葉さんの用事は明日でもいいので、失礼しました!」
由依が慌てた様子でそう言い、俺の腕を引っ張っていく。
昴も一度ペコリとお辞儀をすると、遅れて俺たちについてきた。
階段を降り下駄箱の前で由依は腕を離してくれた。
「飛翔くん……」
きっと怒られるんだろうなぁ。
そう思っていたのだが、由依の口からでた言葉は意外なものだった。
「ナイス!いいこと言ったよ」
由依はそう言って親指まで立てている。
「え?」
「私もそう思っていたから」
「そうだったのか」
隣で昴もうんうんうなずいている。
二人とも副委員長の言葉に思うところがあったのだろう。
そのことが俺には嬉しかった。
「けど……やっぱり、いきなりあの態度はダメだよ。ましてや先輩にあんな言葉遣いは」
嬉しく思ったのも一瞬で、そこからは由依の説教が始まった。
「……ふう。とにかく、我慢してよね。私たちのせいで、あそこにいずらくなるのは栞なんだから」
10分ほど経つと言いたいことも言い終わったのか、ようやく説教も落ち着いた。
「わかった」
「うん、よろしい……さて、これからどうしよっか?」
「そうだな、栞は帰ったらしいし……」
「だったら、家に行けば栞に会えるんじゃないの?」
昴の一言によって、俺たちは栞の家に向かうことにした。
昨日はいい作戦を思いつくことができなかったので、とにかく栞と話をしようということになったのだが……
「栞が見つからねえええーーー!!!!」
当の変態が見つからなかった。
栞の教室や図書館も寄ってみたがそこにも栞の姿はなく、ちらほらと文化委員っぽい人がポスターをはっていたり、機材を運んでいたりしていただけだった。
「一度、昴たちと合流するか」
あらかじめ栞を見つけても見つけなくても集合することになっていた。
俺は昴か由依が栞を見つけていることを期待して、一年三組の教室に戻ることにした。
しばらく教室で待っていると、まず由依が戻ってきて残念そうに首を横にふった。どうにも俺と同じように栞を見つけられなかったようだ。
それから2、3分待っていると、昴が戻ってきて残念そうに首を横にふった。どうにも昴も栞を見つけられなかったようだ。ただ、片手にピンク色のわたあめを持っていたが、そこはあまり気にしないでおこう。
別に途中で見かけた、わたあめづくりを楽しそうにしていた女の子が昴のはずがないので、あまり気にしないでおこう。というか、気にしたらなにか負けた気がする。
「えっと、栞は見つかった?」
「ううん、私はダメだった。すばるんは?」
「わたしも見つからなかった。けど、わたあめ貰ったよ」
「そうか、それじゃあ邪魔することになるけど、会議室にいくか」
「うん」
「ちょっと待って、まだ食べ終えてないから」
昴がなにか言っているが、気にせず文化委員会が主に活動をしている会議実に向かうことにした。
三階まで登り廊下を進むと、普段は空き教室となっている場所には『文化祭実行委員会 本部』と達筆な字で書かれた紙が扉に貼られていた。
てっきり、キャッキャウフフしながら適当に仕事をしているのかと思えば、ふざけた声は聞こえず、いたって真面目に仕事をしているようだった。
「よし、入るぞ」
俺がそう言うと、昴と由依が頷いた。
少し緊張する気持ちを押さえながら、扉をノックした。
すると、中からどうぞーと声が聞こえる。
「失礼します。一年の赤城です。文化委員長の青葉さんに用があってきたんですけど……」
教室に入ると数名の生徒がパソコンでカタカタと作業を進めていた。
視線を巡らせるが栞の姿は教室にはなかった。
「青葉さんの友だちかい?」
すると、眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒が代表して話しかけてきた。腕には副委員長の腕章がつけられていた。
「あっ、はい。ちょっと用事があって……栞は別の場所で仕事ですか?」
「そうか、入れ違いになったのかな?青葉さんならさっき帰ったよ」
「帰った?」
「うん。あまり帰りが遅くなると青葉さんに悪いからね。それで帰ってもらったんだ」
……なんだよそれ。
副委員長の言葉に体の底から怒りが込み上げてくる。
「それって、いつものことなんですか」
「うーん、そうだね。だいたい帰りが遅くなりそうなときは僕たちが代わりに仕事をしているよ」
その言葉に周りの生徒も頷いていた。
まるで、いいことをしたみたいに。栞のために早めに帰らせたみたいなその態度に俺の心は限界だった。
一発殴ってやる。
そう思ったが……
「飛翔、顔が怖い」
昴の一言で、なんとか殴らずにとどまった。
「飛翔くん……気持ちは分かるけど」
「二人ともありがと。少し落ち着いた」
頭は落ち着いた。
けれど、心の方はそうはいかない。
栞は「頑張る」そう言っていたのだ。
なのに、こいつらは……
「お前ら、栞の気持ちを考えたことあるのかよ」
我慢できずに、口からこぼれでた。
「ご、ごめんなさい!青葉さんの用事は明日でもいいので、失礼しました!」
由依が慌てた様子でそう言い、俺の腕を引っ張っていく。
昴も一度ペコリとお辞儀をすると、遅れて俺たちについてきた。
階段を降り下駄箱の前で由依は腕を離してくれた。
「飛翔くん……」
きっと怒られるんだろうなぁ。
そう思っていたのだが、由依の口からでた言葉は意外なものだった。
「ナイス!いいこと言ったよ」
由依はそう言って親指まで立てている。
「え?」
「私もそう思っていたから」
「そうだったのか」
隣で昴もうんうんうなずいている。
二人とも副委員長の言葉に思うところがあったのだろう。
そのことが俺には嬉しかった。
「けど……やっぱり、いきなりあの態度はダメだよ。ましてや先輩にあんな言葉遣いは」
嬉しく思ったのも一瞬で、そこからは由依の説教が始まった。
「……ふう。とにかく、我慢してよね。私たちのせいで、あそこにいずらくなるのは栞なんだから」
10分ほど経つと言いたいことも言い終わったのか、ようやく説教も落ち着いた。
「わかった」
「うん、よろしい……さて、これからどうしよっか?」
「そうだな、栞は帰ったらしいし……」
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