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第七章 アイリス六歳
その26 アフタヌーンティー(2)マクシミリアンの初恋
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26
マクシミリアンが目覚めたのは、見知らぬ部屋だった。
仰向けに横たえられた身体には軽くて温かな黒い布が掛けられていた。
布に触れたマクシミリアンは、それが最高級のカシミア山羊の毛で織られたものだとわかった。父ダンテスの商会で扱っているので知っている。きわめて高価な品物だ。
「カシミア?」
それだけを呟いたとき。
「おや、気がついたね」
優しい声が降ってきた。
「気分はどうかな?」
美しい女性が覗き込んでいる。
まっすぐな長い黒髪が、頬に触れていた。八年間の人生で、今まで見たこともないような、神々しいほどの美貌。微笑むだけで、そこに花が咲いたような、上品で清楚な女性がいた。
「だ、だいじょうぶです!」
勢いよく起き上がろうとして、激しい頭痛と吐き気に襲われた。
「うぐう。おえええ~」
「まだだめ。じっとして」
吐き気と戦うマクシミリアンを、黒髪の美女は優しくなだめ、背中をさすってくれた。
なぜか、そうしてもらっていると吐き気もおさまり、頭が冴えていくようだった。
(きもちいい……このひとは、だれなんだろう?)
「君は急性アルコール中毒で倒れたんだから、すぐには起きられないよ」
「……きゅうせい……あるこーる?」
「気にしないで。ゆっくり休んでいきなさい」
淡い青。水精石アクアラ色の瞳が、マクシミリアンを射貫く。
この色は、絵本に出てきた精霊(セレナン)さまと同じだ。
(もっと……このひとの声を聞いていたい)
「放っておけばいいんですよ師匠」
若い男性の声がした。
「子供のくせに酒をのんで倒れたんですから。カルナックお師匠様が命にかかわる急病人だとおっしゃるので、仕方なく受け入れましたが、できれば回復次第、出て行ってもらいたいのです。ここは、わたしたち家族のために用意した控室で、緊急避難部屋ですから」
マクシミリアンは、声のしたほうを見やる。
背の高い青年がいた。
レンガ色の髪、こげ茶色の目。
身にまとう白い亜麻の衣は、魔法使いの衣だと聞いている。
魔法使い。炎や水や風を出したり、土を操ったり雷を自在に落としたりと、奇跡のようなわざを行使する人々。
魔法使いの組織、魔導士協会は、聖堂教会と協力してエルレーン公国、大公閣下の治世を支え続けている、国家に欠くことのできない両輪と言われる、尊敬と称賛を集める人々である。
ゆえにエルレーン公国では、持って生まれた魔力の量が、人生の可能性さえ大きく左右するのだ。
「まあまあ、怒るな、エステリオ・アウル。我々が関わる晩餐会で、子供が死んだりしたら困るじゃないか。何より寝覚めが悪いだろう」
優しい声は頭上から聞こえる。
膝枕されているのだ、と、突然、気がついた。
マクシミリアンに掛けられていた黒いカシミヤは、美女の纏っていたローブだった。
「すみません、あなたのローブですね」
「気にしないで。魔法を織り込んであるから、回復を早める効果があるんだ」
ふと、思った。
できるならずっとこのまま、この美しいひとの優しい声に包まれていたい。
「あなたは……わたしは、どうしたんでしょう」
「私はカルナック。魔導士協会の長をしている。君は茶会で倒れたんだよ」
このとき極めて重大な情報をカルナックは告げたのだが、マクシミリアンは頭がはっきりせず、記憶できなかった。ただ一つ覚えたのはカルナックという名前だけ。
「そうだ……喉が渇いて、父上の前にあったグラスを飲み干したら……身体が熱くなって」
はっと目を開けて周囲を見やる。
居心地の良い小さな部屋だ。
自分が膝を借りている、黒髪の美女と。
少し怒っている、レンガ色の髪の青年の姿が見えた。
そのほかにも、数人の人物がいるようだ。
「茶会では酒を出していなかったのですが、彼の父親が持ち込んだものでした。息子が飲んで倒れたのは予想外だったようで。父親のほうは相当な酒豪ですよ。強い蒸留酒を何本も持っていますね」
てきぱきとした声がした。裾の広がった黒い膝丈のスカートに真っ白なエプロンのメイド服を着た、十六、七歳くらいと思われる少女だ。
プラチナブロンドの真っ直ぐな長い髪。色白の肌。儚げなのに意志の強そうな、はっきりした目鼻立ちだ。
「父親は商人のダンテス・エドモント。なかなか良心的な商いをしています。妻子との関係も良好。不審な点はありませんでした」
もう一人メイドが言った。
彼女のスカートはふくらはぎまでと、長い。
二十歳くらいの、黒髪に黒い目、肌色はミルクティーみたいな綺麗な若い女性だ。
「ルビー、サファイア。ダンテスを再調査する必要があるな。ただ、君たちの任務はアイリスの護衛だ。調査は会場に詰めている『耳』と『目』たちに任せなさい」
マクシミリアンを膝にのせている美女が、きりりとした表情で言う。
「了解です、お師匠様」
「ただちに」
二人のメイドが引き下がる。
と、同時に。
「ねえ、あなた倒れたのよ。だいじょうぶ?」
幼い少女の声がした。
かたわらに現れたのは、まるで光の精霊そのもののような少女。
絹糸のつややかさを持つ黄金の長い髪と、きれいな明るい緑の目をした、華奢な女の子だった。
八歳のマクシミリアンよりも幼い。
細かな三つ編みをいくつか作って編み込まれた髪には白銀の小さなティアラが飾られ、ひざ下まである白絹のドレスは金と銀の羽衣を纏う神話の女神の衣のようだった。
くすっ、と、笑った、妖精のような少女は、興味深そうにマクシミリアンのほうに身を乗り出した。
「気分はどう? カルナックさまが診てくださったから大丈夫だと思うけど。あなたは、だぁれ?」
名前を尋ねられている!?
マクシミリアンは緊張のあまり、声が出てこなかった。
かわいすぎる。きれいすぎる。儚すぎる!
田舎の実家で元気に走り回っている、マクシミリアンの妹たちとは、まるで、存在自体が違う。
本当に実在している女の子なんだろうか?
この子の名前は、なんていうんだろう。
いろいろな考えが同時に頭の中をぐるぐる回る。
「ま、マクシミリアンです」
やっとのことで答えたときだった。
彼と少女の間に、レンガ色の髪をした青年が立った。
「マクシミリアン君、お披露目前なんだ。家族以外の前に出せない。勝手を言ってすまないが、ここでは出会っていないということにしてもらえないか」
マクシミリアンは慌てて、身体を起こそうとしたのだが、動けなかった。
「申し訳ありません。わたしもお披露目前なのです。正式には人前に立てませんが、父の連れとして参加させて頂きました。もちろん、出会っていないということにします」
「ありがたい。了承いただいて喜ばしい限り。君とお父上は我が家の客人だ。今宵は、わたしの可愛い姪が六歳を迎え、世間へのお披露目となる晩餐会を催す。客人として歓待させていただく」
慇懃無礼ともとれる言葉と態度だったが、マクシミリアンは気分を害されることはなかった。
もし自分でも。こんなかわいい姪がいたら、ぜったい溺愛する。
どこの馬の骨ともわからない人間なんか突然現れたら、酔っぱらって倒れたから保護するなどという理由があったって、全力で排除するにきまってる。
こんなふうに、エステリオ・アウルというレンガ色の髪をした青年に共感したのだった。
「それから、この部屋には他にも家族が入ってくるんだが気にしないでもらえるかな」
「はい?」
言われて初めて気づいた。
六歳の幼女アイリスの影の中から、二頭の巨大な獣が姿をあらわした。一頭は純白の毛並み、もう一頭は漆黒の毛並みに覆われている。
「シロ、クロ。おとなしくしててね」
アイリスが声をかけると、二頭はすぐさま、ぺたりと腹を床につけて腹ばいになった。
まるで猫のようにゴロゴロと喉を鳴らしている。
マクシミリアンは驚愕した。
「魔獣! 『大牙』と『夜王』が! なんで街に、家の中に! 早く討伐しないと! みんな食い殺されるっ」
そう叫んで、飛び起きた。
起きたとたんに激しいめまいに襲われて立っていられなかったが、懸命に、こらえた。
「うわあああああっ! 早く逃げろ! 俺が引き付けてる間に!」
動転したあまりに、それまで取り繕っていた冷静な態度が崩れ、言葉遣いも「わたし」から「俺」へと変わっていたが本人は気づいていない。
夢中で、懐から取り出した小さな布袋をあけて自分にかけ、魔獣の口に飛び込んだ。
「おおっと。『停止』『無効』!」
マクシミリアンの前に立ちふさがったのはエステリオ・アウルだった。
「退け!『……』炎!」
短いスペルで強い効果をあげるのがエステリオ・アウルの特技である。
しかしそれは、マクシミリアンに達する直前に、かき消された。
「魔法が消えた!?」
「逃げろ……!」
炎は消えたが、同時にマクシミリアンの周囲の空気も変質していた。炎を燃やせない性質のものに。
マクシミリアンは息ができなくなり、意識を失った。
「なんだこれは!」
エステリオ・アウルの叫びも、マクシミリアンには聞こえなかった。
※
「いったいどういうことです!」 と、アウル。
「こんなの見たことない!」 と、ルビー。
「見たことあるけど。まさここでねぇ?」
一人、冷静なのは、サファイアだった。
「よく起き上がれたものだなあ」
興味をひかれたように、カルナックは呟いた。
「アウルも、ティーレ、リドラも、落ち着きなさい。この子、使えるよ。保有魔力は多くは無いが魔法耐性が優れている。たとえば学校に通うことになったら、アイリスには護衛がいたほうがいい。できれば同じ学院の中に、とかね……鍛え甲斐がありそうだな」
悪い笑みを浮かべているのはカルナックだったが、幸いなことにマクシミリアンは気絶しているので、憧れの美女(とマクシミリアンは思っている)の、理想が崩れ去ることはなかった。
マクシミリアンが目覚めたのは、見知らぬ部屋だった。
仰向けに横たえられた身体には軽くて温かな黒い布が掛けられていた。
布に触れたマクシミリアンは、それが最高級のカシミア山羊の毛で織られたものだとわかった。父ダンテスの商会で扱っているので知っている。きわめて高価な品物だ。
「カシミア?」
それだけを呟いたとき。
「おや、気がついたね」
優しい声が降ってきた。
「気分はどうかな?」
美しい女性が覗き込んでいる。
まっすぐな長い黒髪が、頬に触れていた。八年間の人生で、今まで見たこともないような、神々しいほどの美貌。微笑むだけで、そこに花が咲いたような、上品で清楚な女性がいた。
「だ、だいじょうぶです!」
勢いよく起き上がろうとして、激しい頭痛と吐き気に襲われた。
「うぐう。おえええ~」
「まだだめ。じっとして」
吐き気と戦うマクシミリアンを、黒髪の美女は優しくなだめ、背中をさすってくれた。
なぜか、そうしてもらっていると吐き気もおさまり、頭が冴えていくようだった。
(きもちいい……このひとは、だれなんだろう?)
「君は急性アルコール中毒で倒れたんだから、すぐには起きられないよ」
「……きゅうせい……あるこーる?」
「気にしないで。ゆっくり休んでいきなさい」
淡い青。水精石アクアラ色の瞳が、マクシミリアンを射貫く。
この色は、絵本に出てきた精霊(セレナン)さまと同じだ。
(もっと……このひとの声を聞いていたい)
「放っておけばいいんですよ師匠」
若い男性の声がした。
「子供のくせに酒をのんで倒れたんですから。カルナックお師匠様が命にかかわる急病人だとおっしゃるので、仕方なく受け入れましたが、できれば回復次第、出て行ってもらいたいのです。ここは、わたしたち家族のために用意した控室で、緊急避難部屋ですから」
マクシミリアンは、声のしたほうを見やる。
背の高い青年がいた。
レンガ色の髪、こげ茶色の目。
身にまとう白い亜麻の衣は、魔法使いの衣だと聞いている。
魔法使い。炎や水や風を出したり、土を操ったり雷を自在に落としたりと、奇跡のようなわざを行使する人々。
魔法使いの組織、魔導士協会は、聖堂教会と協力してエルレーン公国、大公閣下の治世を支え続けている、国家に欠くことのできない両輪と言われる、尊敬と称賛を集める人々である。
ゆえにエルレーン公国では、持って生まれた魔力の量が、人生の可能性さえ大きく左右するのだ。
「まあまあ、怒るな、エステリオ・アウル。我々が関わる晩餐会で、子供が死んだりしたら困るじゃないか。何より寝覚めが悪いだろう」
優しい声は頭上から聞こえる。
膝枕されているのだ、と、突然、気がついた。
マクシミリアンに掛けられていた黒いカシミヤは、美女の纏っていたローブだった。
「すみません、あなたのローブですね」
「気にしないで。魔法を織り込んであるから、回復を早める効果があるんだ」
ふと、思った。
できるならずっとこのまま、この美しいひとの優しい声に包まれていたい。
「あなたは……わたしは、どうしたんでしょう」
「私はカルナック。魔導士協会の長をしている。君は茶会で倒れたんだよ」
このとき極めて重大な情報をカルナックは告げたのだが、マクシミリアンは頭がはっきりせず、記憶できなかった。ただ一つ覚えたのはカルナックという名前だけ。
「そうだ……喉が渇いて、父上の前にあったグラスを飲み干したら……身体が熱くなって」
はっと目を開けて周囲を見やる。
居心地の良い小さな部屋だ。
自分が膝を借りている、黒髪の美女と。
少し怒っている、レンガ色の髪の青年の姿が見えた。
そのほかにも、数人の人物がいるようだ。
「茶会では酒を出していなかったのですが、彼の父親が持ち込んだものでした。息子が飲んで倒れたのは予想外だったようで。父親のほうは相当な酒豪ですよ。強い蒸留酒を何本も持っていますね」
てきぱきとした声がした。裾の広がった黒い膝丈のスカートに真っ白なエプロンのメイド服を着た、十六、七歳くらいと思われる少女だ。
プラチナブロンドの真っ直ぐな長い髪。色白の肌。儚げなのに意志の強そうな、はっきりした目鼻立ちだ。
「父親は商人のダンテス・エドモント。なかなか良心的な商いをしています。妻子との関係も良好。不審な点はありませんでした」
もう一人メイドが言った。
彼女のスカートはふくらはぎまでと、長い。
二十歳くらいの、黒髪に黒い目、肌色はミルクティーみたいな綺麗な若い女性だ。
「ルビー、サファイア。ダンテスを再調査する必要があるな。ただ、君たちの任務はアイリスの護衛だ。調査は会場に詰めている『耳』と『目』たちに任せなさい」
マクシミリアンを膝にのせている美女が、きりりとした表情で言う。
「了解です、お師匠様」
「ただちに」
二人のメイドが引き下がる。
と、同時に。
「ねえ、あなた倒れたのよ。だいじょうぶ?」
幼い少女の声がした。
かたわらに現れたのは、まるで光の精霊そのもののような少女。
絹糸のつややかさを持つ黄金の長い髪と、きれいな明るい緑の目をした、華奢な女の子だった。
八歳のマクシミリアンよりも幼い。
細かな三つ編みをいくつか作って編み込まれた髪には白銀の小さなティアラが飾られ、ひざ下まである白絹のドレスは金と銀の羽衣を纏う神話の女神の衣のようだった。
くすっ、と、笑った、妖精のような少女は、興味深そうにマクシミリアンのほうに身を乗り出した。
「気分はどう? カルナックさまが診てくださったから大丈夫だと思うけど。あなたは、だぁれ?」
名前を尋ねられている!?
マクシミリアンは緊張のあまり、声が出てこなかった。
かわいすぎる。きれいすぎる。儚すぎる!
田舎の実家で元気に走り回っている、マクシミリアンの妹たちとは、まるで、存在自体が違う。
本当に実在している女の子なんだろうか?
この子の名前は、なんていうんだろう。
いろいろな考えが同時に頭の中をぐるぐる回る。
「ま、マクシミリアンです」
やっとのことで答えたときだった。
彼と少女の間に、レンガ色の髪をした青年が立った。
「マクシミリアン君、お披露目前なんだ。家族以外の前に出せない。勝手を言ってすまないが、ここでは出会っていないということにしてもらえないか」
マクシミリアンは慌てて、身体を起こそうとしたのだが、動けなかった。
「申し訳ありません。わたしもお披露目前なのです。正式には人前に立てませんが、父の連れとして参加させて頂きました。もちろん、出会っていないということにします」
「ありがたい。了承いただいて喜ばしい限り。君とお父上は我が家の客人だ。今宵は、わたしの可愛い姪が六歳を迎え、世間へのお披露目となる晩餐会を催す。客人として歓待させていただく」
慇懃無礼ともとれる言葉と態度だったが、マクシミリアンは気分を害されることはなかった。
もし自分でも。こんなかわいい姪がいたら、ぜったい溺愛する。
どこの馬の骨ともわからない人間なんか突然現れたら、酔っぱらって倒れたから保護するなどという理由があったって、全力で排除するにきまってる。
こんなふうに、エステリオ・アウルというレンガ色の髪をした青年に共感したのだった。
「それから、この部屋には他にも家族が入ってくるんだが気にしないでもらえるかな」
「はい?」
言われて初めて気づいた。
六歳の幼女アイリスの影の中から、二頭の巨大な獣が姿をあらわした。一頭は純白の毛並み、もう一頭は漆黒の毛並みに覆われている。
「シロ、クロ。おとなしくしててね」
アイリスが声をかけると、二頭はすぐさま、ぺたりと腹を床につけて腹ばいになった。
まるで猫のようにゴロゴロと喉を鳴らしている。
マクシミリアンは驚愕した。
「魔獣! 『大牙』と『夜王』が! なんで街に、家の中に! 早く討伐しないと! みんな食い殺されるっ」
そう叫んで、飛び起きた。
起きたとたんに激しいめまいに襲われて立っていられなかったが、懸命に、こらえた。
「うわあああああっ! 早く逃げろ! 俺が引き付けてる間に!」
動転したあまりに、それまで取り繕っていた冷静な態度が崩れ、言葉遣いも「わたし」から「俺」へと変わっていたが本人は気づいていない。
夢中で、懐から取り出した小さな布袋をあけて自分にかけ、魔獣の口に飛び込んだ。
「おおっと。『停止』『無効』!」
マクシミリアンの前に立ちふさがったのはエステリオ・アウルだった。
「退け!『……』炎!」
短いスペルで強い効果をあげるのがエステリオ・アウルの特技である。
しかしそれは、マクシミリアンに達する直前に、かき消された。
「魔法が消えた!?」
「逃げろ……!」
炎は消えたが、同時にマクシミリアンの周囲の空気も変質していた。炎を燃やせない性質のものに。
マクシミリアンは息ができなくなり、意識を失った。
「なんだこれは!」
エステリオ・アウルの叫びも、マクシミリアンには聞こえなかった。
※
「いったいどういうことです!」 と、アウル。
「こんなの見たことない!」 と、ルビー。
「見たことあるけど。まさここでねぇ?」
一人、冷静なのは、サファイアだった。
「よく起き上がれたものだなあ」
興味をひかれたように、カルナックは呟いた。
「アウルも、ティーレ、リドラも、落ち着きなさい。この子、使えるよ。保有魔力は多くは無いが魔法耐性が優れている。たとえば学校に通うことになったら、アイリスには護衛がいたほうがいい。できれば同じ学院の中に、とかね……鍛え甲斐がありそうだな」
悪い笑みを浮かべているのはカルナックだったが、幸いなことにマクシミリアンは気絶しているので、憧れの美女(とマクシミリアンは思っている)の、理想が崩れ去ることはなかった。
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