8 / 56
【8】
しおりを挟む
「ぐあっ」
全力で走っていたせいで転がるように地面に倒れる。とっさについた掌を擦りむいたみたいでジクジクと痛んだ。だが、すぐに立ち上がり、再び走り出す。
……こけた身体を起こす時間がとれるくらいには距離はあいているんだ。
と、走りながら胸を撫で下ろしかけた時、背中にずしんと重みを感じ上体から滑り込むかたちで道に転がった。……いや、正確には転がされたのだ。
「……っ!」
恐怖で声が出なかった。僕の背中に跨いで乗っている巨漢。ゴツゴツした手によって僕の両腕は後ろ手に纏められている。自由の利く頭を背に向け背後を確認すれば、三つ目爺がゆっくり白髭を撫でながら、
「ジャンプは得意なんじゃ」
と、三つ目を細めて微笑む。
……そうだった。三つ目爺の脚力は半端ないんだった……。
脱力感とともに僕の中に諦めの気持ちが湧いてきた。周りには助けを呼ぶような人はいない。こんなモンスターには僕一人では到底太刀打ちできない。彼女に振られ、腹いせにそのまま旅行に来て、モンスターに会い――。走馬灯のように今までの事が思い出される。
……ああ、せめてフィンランドの美しい景色に思いを馳せながら喰われたい。
背後の三つ目爺が僕の両手を掴んだまま立ち上がる。連動して僕も立たされる。そして白髭を撫でていた手が僕の肩を掴む。くるんと身体を反転させられた僕は三つ目爺と向かい合う。
ゴツゴツした手が肩から離れ今度は僕の目の前にかざされた。「ふんっ」と三つ目爺が力んだ瞬間、かざされた手指の爪がいきなり伸び鋭く光った。
ナイフのような五本の爪。その爪で僕の首筋、鎖骨のくぼみの線を添うように触れてきた。どこから傷付けてやろうかと迷っているみたいだった。
「――!」
その爪が胸に突き刺さった! でもパーカーを貫通しただけでかろうじて生の胸には刺さっていない。
……こんな焦らしはいらない。やるならひと思いにやれ。
そう思っていると、パーカーを刺した爪がそのまま下りて服をビリビリと裂いていった。そこから露わになる僕の貧弱な胸。冷えた外気に乳首が立つ。その乳首に爪が添えられる。
……ちょん切られる!
そう思ったが、意外にも三つ目爺は僕の乳首を上下にぷつんぷつんと爪で弾くだけだった。
「……うっ」
恐ろしさに声が漏れる。
「お前を喰う」
そう言って、僕の右胸にキスをした。『……へ?』ぞわっとしつつも驚いていると、三つ目爺がどす黒いナマコのような太い舌で胸をべろんべろん舐めだした。
『喰う』って……『喰う』って……そっちの『喰う』!?
全力で走っていたせいで転がるように地面に倒れる。とっさについた掌を擦りむいたみたいでジクジクと痛んだ。だが、すぐに立ち上がり、再び走り出す。
……こけた身体を起こす時間がとれるくらいには距離はあいているんだ。
と、走りながら胸を撫で下ろしかけた時、背中にずしんと重みを感じ上体から滑り込むかたちで道に転がった。……いや、正確には転がされたのだ。
「……っ!」
恐怖で声が出なかった。僕の背中に跨いで乗っている巨漢。ゴツゴツした手によって僕の両腕は後ろ手に纏められている。自由の利く頭を背に向け背後を確認すれば、三つ目爺がゆっくり白髭を撫でながら、
「ジャンプは得意なんじゃ」
と、三つ目を細めて微笑む。
……そうだった。三つ目爺の脚力は半端ないんだった……。
脱力感とともに僕の中に諦めの気持ちが湧いてきた。周りには助けを呼ぶような人はいない。こんなモンスターには僕一人では到底太刀打ちできない。彼女に振られ、腹いせにそのまま旅行に来て、モンスターに会い――。走馬灯のように今までの事が思い出される。
……ああ、せめてフィンランドの美しい景色に思いを馳せながら喰われたい。
背後の三つ目爺が僕の両手を掴んだまま立ち上がる。連動して僕も立たされる。そして白髭を撫でていた手が僕の肩を掴む。くるんと身体を反転させられた僕は三つ目爺と向かい合う。
ゴツゴツした手が肩から離れ今度は僕の目の前にかざされた。「ふんっ」と三つ目爺が力んだ瞬間、かざされた手指の爪がいきなり伸び鋭く光った。
ナイフのような五本の爪。その爪で僕の首筋、鎖骨のくぼみの線を添うように触れてきた。どこから傷付けてやろうかと迷っているみたいだった。
「――!」
その爪が胸に突き刺さった! でもパーカーを貫通しただけでかろうじて生の胸には刺さっていない。
……こんな焦らしはいらない。やるならひと思いにやれ。
そう思っていると、パーカーを刺した爪がそのまま下りて服をビリビリと裂いていった。そこから露わになる僕の貧弱な胸。冷えた外気に乳首が立つ。その乳首に爪が添えられる。
……ちょん切られる!
そう思ったが、意外にも三つ目爺は僕の乳首を上下にぷつんぷつんと爪で弾くだけだった。
「……うっ」
恐ろしさに声が漏れる。
「お前を喰う」
そう言って、僕の右胸にキスをした。『……へ?』ぞわっとしつつも驚いていると、三つ目爺がどす黒いナマコのような太い舌で胸をべろんべろん舐めだした。
『喰う』って……『喰う』って……そっちの『喰う』!?
0
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
良い子な二人の内緒ゴト♡ ~水越さんちご兄弟のえっちなお風呂タイム~
そらも
BL
それぞれの学校でも成績優秀品行方正でクラスメイトや先生やご近所さんからもすこぶる評判の良い、水越(みずこし)さんちの仲の良いご兄弟、兄で高校生の怜時(れいじ)くんと弟で中学生な翼(つばさ)くんの『とってもと~っても仲良し♡』な、両親にも内緒な秘密の夜のやり取りのお話です♪
タイトルの通り仲良しな実の兄弟の二人がお風呂の中でこれでもかとイチャイチャスケベえっちしてるだけのお話となっておりますので、そこのところどうぞご注意を!
※ R-18エロもので、♡(ハート)喘ぎ満載です。
※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
【完結】愛しいツンデレラと僕【R18短編エロ/屋外エッチ】
藤屯
BL
歩宜[ほのぶ]と蘭[らん]は同じ大学に通う。付き合い始めて間もない二人。ある日、歩宜と蘭は夏祭りに行くことになった。蘭のことを好きでたまらない歩宜は、蘭の浴衣姿が見たくてダメもとで浴衣を着るように頼むが、断られてしまった。がっかりしたまま先に待ち合わせ場所で待っていると、そこに現れた蘭は――。なんだかんだ言っても、いつも蘭は最後に歩宜のやってほしいことをしてくれるのだ。そんな蘭の可愛らしいツンデレぶりに歩宜は堪らなくなり、外にも関わらず蘭を求める。その時上がった花火の音で歩宜は蘭を好きになったきっかけを思い出して改めて蘭を好きだと認識する。蘭のおかげで世界が変わった。そして、歩宜は蘭を失いたくないからと帰りを急かすのだった。
【2021年11月3日完結、閲覧ありがとうございます】
※ R-18
※ エロ甘。青姦。濃厚エッチ
※ 完結済みの青春BL作品
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
※ 性癖を要約すると【初恋・焦らす・エロい・ツンデレ・花火・コメディ・乳首攻め・雄っぱい・おっぱい・アナル尻・勃起・青春・平凡×可愛い・エロい・性描写・コメディ・浴衣・エロハッピーエンド・青春BL・現代・せつない系】作品が好きという人にも読んでもらいたいと。エロ重視/濃厚H/エロ多め。
「お気に入り登録」も嬉しいのでそれはもう感謝でございます
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
※ イメージ画像は「おにいさんキャラデザ練りメーカー」より
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる