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第七幕
大戦争(十二)
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薄暗くて不気味な広間は静寂に包まれ音は一切聞こえなかった。
静かな空間の奥には黑緋神之命が石の座椅子に寄りかかりながら座っていた。
黑緋神之命が瞼をゆっくりと開いた。
さっきまで眠っていたらしい。
悪霊達は今、東京を支配し妖怪達と激しい抗争をしている。
黑緋神之命は、夢を見ていたのだ。それは、遠い昔に起きた夢。
あの世と現世の世界を支配しようと目論む彼を〝神〟の名を奪い無の界へと追いやった憎き天照と彼を非難した神々の姿と様子がはっきりと夢の中に現れたのだ。
あの後、黑緋神之命は、須佐之男(スサノオ)と伊邪那岐(イザナギ)に連れられ無の界へ連れていかれた。
そして、無の界に放り出された黑緋神之命(こくひじんのみこと)は長い長い孤独を過ごした。
草も花も木さえ一本も生えていない。水や海、大地と空は全く無いうえ太陽も月も星さえも見当たらなかった。
まるで、時が止まっているかのように朝なのか昼なのか夜なのかすら全く分からず時差さえ無い。
もちろん、人っ子一人もいなかった。
時間と空間が混沌としているような奇妙かつ不思議な灰色に染まった世界だったのを今でも鮮明に憶えている。
かれこれ200年近くまで無の界に彷徨っていたのだろう。
今頃、天照と神々達は今の地上を見てどう思っているのだろうか。
人類や全ての生き物を支配することこそが〝神〟なのだと黑緋神之命は自覚しつつ諦めていなかった。
神々への復讐と現世にいる全ての生物を消すという強い執念と野望があったからこそ、無の界を脱出し滝夜叉姫と出会いこうして、人間や全ての生き物を淘汰できるようになった。
でも、そう簡単にはいかない事は知っていた。
必ず、悪霊化された仲間の敵討ちをする為に妖怪達が東京に来ると分かっていたのだ。
だが、関東地方はほぼ制圧しているに等しい。次は東北、近畿、日本全国を支配した後、次は日本以外の国を支配して人類を滅ぼし天照と神々に復讐をするという計画を立てている。
今の黑緋神之命にとってこの日が来るのをすごく待ちわびていた。何もない無の界で神々と人類を滅ぼすチャンスを待ち続けながら何もない時間と空間が混沌した無の界でたった一人、力をつけていた。
そして、地獄の最下層に封印していたトコヤミ大神を見つけこの現世に来たのだ。
トコヤミ大神は、神々が創り出した巨大兵器といっても過言ではない。神の名を奪われても黑緋神之命の身体にはまだ神の力が残っている。だからこそ、トコヤミ大神を目覚めさせる事が出来た。
しかし、そう簡単にはうまく行かない事は薄々気づいていた。
聖戦士 草壁正輝が現れたのだ。
今、その草壁正輝はこちらに向かっている事に黑緋神之命は気づいていたのだ。
しかし、黑緋神之命は草壁正輝に負ける気は全く無い。むしろ、自分が勝利を収める事できると自信を持っていた。たかが人間ごときに神の力に抗うなど無駄だと分かっているのだから。
黑緋神之命は、まだ〝神〟の名を持っていた頃、自らの力で人類の少し先の未来を見てきた。
醜くて馬鹿な争いを繰り返す。欲望と傲慢に落ちぶれてしまい進化した文明に溺れている姿。暴力と権力で全て丸く収めようとする罪深い人間の哀れさ。自分の事だけしか考えていない身勝手さ。私利私欲の為に卑劣な行いをする姿。簡単に命を弄んだり消したりする。人間とは思えない残酷さを平気で行う。
人類には見たくないほど許し難い行為がたくさんあった。
そんな、人間という駄作を作ったのが他でもない自分と同じ名を持った神だった。
天照は人類は進化と共に成長し未来を築き上げる生き物だと言っていたが、未来を司っていた黑緋神之命はそれが全く理解できなかった。
神はあらゆる生き物の頂点に立つ存在。なのに、神々は生き物を支配しようとは全くしない。
生き物が命を授かったのは、神のおかげ。神がいたから生物は生きている。
そして、神はあの世とこの世二つの世界を統一している存在でもあって一番力がある。その神々の世界でトップに立っているのが天照なのだ。
しかし、天照の考えは甘すぎて理解し難いと黑緋神之命は思いつつ〝支配〟という固定概念を抱きつつもあった。
そこまでして、人類の事を考え人間を放置している天照と神々の甘さに呆れあの世とこの世の支配を考えた。
あの世とこの世を支配する為にはまず、天照を葬らなければならない。
他の神々は天照を強く慕っているので、本人を葬れば高天原(たかまがはら)の情勢が崩れ他の神々を自らの手中に収まるに違いないと考え反乱を起こしたが、結局捕まってしまった。
黑緋神之命は、天照と神々の考えを全く認めてはいなかった。
争いや悪さを続ける人間を生かして一体、何の得になるのか?
今の人間は残酷非道な行いを犯しつつのうのうと生かしておくのか?
人間は死後、地獄へ行って十王裁判を受ける仕組みになっていて生前、悪事を働いた人間がいたら地獄へ落とすと聞いている。今、ここで人類を滅ぼせば絶滅した人間は地獄で大混乱をするであろう。
でも、それは黑緋神之命にとっては全く関係ないこと。
あの世がどうなろうと知った事ではない。あの世とこの世を支配するのは、黑緋神之命なのだから。
甘すぎるあの世の掟を変えこの世、つまり現世を醜さと欲望がない理想郷を創り直すことが彼の目的なのだから。
そして、いずれは妖怪達が住みよい世の中にする。
だから、代償として妖怪達を悪霊化させたのだ。
彼の思想は神々から恐れられ人間より遥かに上回っている。
黑緋神之命の野望はもう止める事はできない。いや、もう誰にも止められない。
そう。草壁正輝を除いては・・・・
静かな空間の奥には黑緋神之命が石の座椅子に寄りかかりながら座っていた。
黑緋神之命が瞼をゆっくりと開いた。
さっきまで眠っていたらしい。
悪霊達は今、東京を支配し妖怪達と激しい抗争をしている。
黑緋神之命は、夢を見ていたのだ。それは、遠い昔に起きた夢。
あの世と現世の世界を支配しようと目論む彼を〝神〟の名を奪い無の界へと追いやった憎き天照と彼を非難した神々の姿と様子がはっきりと夢の中に現れたのだ。
あの後、黑緋神之命は、須佐之男(スサノオ)と伊邪那岐(イザナギ)に連れられ無の界へ連れていかれた。
そして、無の界に放り出された黑緋神之命(こくひじんのみこと)は長い長い孤独を過ごした。
草も花も木さえ一本も生えていない。水や海、大地と空は全く無いうえ太陽も月も星さえも見当たらなかった。
まるで、時が止まっているかのように朝なのか昼なのか夜なのかすら全く分からず時差さえ無い。
もちろん、人っ子一人もいなかった。
時間と空間が混沌としているような奇妙かつ不思議な灰色に染まった世界だったのを今でも鮮明に憶えている。
かれこれ200年近くまで無の界に彷徨っていたのだろう。
今頃、天照と神々達は今の地上を見てどう思っているのだろうか。
人類や全ての生き物を支配することこそが〝神〟なのだと黑緋神之命は自覚しつつ諦めていなかった。
神々への復讐と現世にいる全ての生物を消すという強い執念と野望があったからこそ、無の界を脱出し滝夜叉姫と出会いこうして、人間や全ての生き物を淘汰できるようになった。
でも、そう簡単にはいかない事は知っていた。
必ず、悪霊化された仲間の敵討ちをする為に妖怪達が東京に来ると分かっていたのだ。
だが、関東地方はほぼ制圧しているに等しい。次は東北、近畿、日本全国を支配した後、次は日本以外の国を支配して人類を滅ぼし天照と神々に復讐をするという計画を立てている。
今の黑緋神之命にとってこの日が来るのをすごく待ちわびていた。何もない無の界で神々と人類を滅ぼすチャンスを待ち続けながら何もない時間と空間が混沌した無の界でたった一人、力をつけていた。
そして、地獄の最下層に封印していたトコヤミ大神を見つけこの現世に来たのだ。
トコヤミ大神は、神々が創り出した巨大兵器といっても過言ではない。神の名を奪われても黑緋神之命の身体にはまだ神の力が残っている。だからこそ、トコヤミ大神を目覚めさせる事が出来た。
しかし、そう簡単にはうまく行かない事は薄々気づいていた。
聖戦士 草壁正輝が現れたのだ。
今、その草壁正輝はこちらに向かっている事に黑緋神之命は気づいていたのだ。
しかし、黑緋神之命は草壁正輝に負ける気は全く無い。むしろ、自分が勝利を収める事できると自信を持っていた。たかが人間ごときに神の力に抗うなど無駄だと分かっているのだから。
黑緋神之命は、まだ〝神〟の名を持っていた頃、自らの力で人類の少し先の未来を見てきた。
醜くて馬鹿な争いを繰り返す。欲望と傲慢に落ちぶれてしまい進化した文明に溺れている姿。暴力と権力で全て丸く収めようとする罪深い人間の哀れさ。自分の事だけしか考えていない身勝手さ。私利私欲の為に卑劣な行いをする姿。簡単に命を弄んだり消したりする。人間とは思えない残酷さを平気で行う。
人類には見たくないほど許し難い行為がたくさんあった。
そんな、人間という駄作を作ったのが他でもない自分と同じ名を持った神だった。
天照は人類は進化と共に成長し未来を築き上げる生き物だと言っていたが、未来を司っていた黑緋神之命はそれが全く理解できなかった。
神はあらゆる生き物の頂点に立つ存在。なのに、神々は生き物を支配しようとは全くしない。
生き物が命を授かったのは、神のおかげ。神がいたから生物は生きている。
そして、神はあの世とこの世二つの世界を統一している存在でもあって一番力がある。その神々の世界でトップに立っているのが天照なのだ。
しかし、天照の考えは甘すぎて理解し難いと黑緋神之命は思いつつ〝支配〟という固定概念を抱きつつもあった。
そこまでして、人類の事を考え人間を放置している天照と神々の甘さに呆れあの世とこの世の支配を考えた。
あの世とこの世を支配する為にはまず、天照を葬らなければならない。
他の神々は天照を強く慕っているので、本人を葬れば高天原(たかまがはら)の情勢が崩れ他の神々を自らの手中に収まるに違いないと考え反乱を起こしたが、結局捕まってしまった。
黑緋神之命は、天照と神々の考えを全く認めてはいなかった。
争いや悪さを続ける人間を生かして一体、何の得になるのか?
今の人間は残酷非道な行いを犯しつつのうのうと生かしておくのか?
人間は死後、地獄へ行って十王裁判を受ける仕組みになっていて生前、悪事を働いた人間がいたら地獄へ落とすと聞いている。今、ここで人類を滅ぼせば絶滅した人間は地獄で大混乱をするであろう。
でも、それは黑緋神之命にとっては全く関係ないこと。
あの世がどうなろうと知った事ではない。あの世とこの世を支配するのは、黑緋神之命なのだから。
甘すぎるあの世の掟を変えこの世、つまり現世を醜さと欲望がない理想郷を創り直すことが彼の目的なのだから。
そして、いずれは妖怪達が住みよい世の中にする。
だから、代償として妖怪達を悪霊化させたのだ。
彼の思想は神々から恐れられ人間より遥かに上回っている。
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