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第四幕
試練(二)
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真っ暗な部屋で一人、正輝は薄い毛布を体に掛けて寝ていた。
水木しげるロードから帰り由夏を自宅まで送り、やっと家に着いたのは夜の20時半過ぎだった。
妖怪博士と名乗るオカルト情報誌「奇奇怪怪」の編集記者 小日向太郎が現れた後、しばらくは由夏と小日向の妖怪トークで盛り上がりしばらく茶屋にいた。
二人がやっとトークが終わったのは夕方の18時過ぎだった。小日向は明日、本社勤務だからといい米子空港で別れ飛行機に乗って帰って行った。
夕飯は由夏と外で食べたので家に着いたらすぐ風呂に入って寝る準備ができて楽だった。
今は、午後22時半過ぎ。本当はまだ起きている時間だったが今日は疲れたので少し早めに寝たのだ。一階には真理子がまだ起きている。入院中の有蔵はもう就寝しているだろう。
窓は網戸にして開けっ放し。正輝が寝ているベッドの近くには扇風機が回っている。夜の夏も昼も朝も変わらないぐらい暑い。タイマーをかけてあって風力は弱いが扇風機の風が正輝の顔から体下まで届き涼しい。
暗い正輝の部屋に広がる静寂の中、ただ聞こえるのは扇風機の風音だけ。寝ている正輝は少し口を開け体を横にしている。体に掛けている薄い毛布はクシャクシャになっていて正輝の寝相の悪さが分かる。シーツは気持ちが良く枕は薄いカバーを使っているので暑い夏の夜にはとても最適。疲れがどっと取れたかのように正輝はよく眠っている。
茶屋で小日向が見えている世界が全てじゃないと聞いた時、亡くなった祖母の事を思い出していた。祖母も見えているモノが全てではなく、見えないモノも必ずいると聞いた事があったので、少し印象に残っていた。
それに、有蔵から祖母が遥か昔に鬼神と戦った聖戦士の子孫だと初めて聞いた時は正直、信じられなかったが嘘をついている様には見えなかった。河童が実在しているという事は、きっと鬼神も実在していたのだろう。
見えている世界が全てじゃない。あながち、間違っていないかもしれない。
妖怪は時代に連れて〝闇〟という憩いの場を失いつつ姿を隠しながら影で慎ましく暮らしている。たまにオカルト系のテレビ番組でUFOやらUMAやらで専門家達が言い合っている場面を見た事もある。オカルト専門家は本物だと言い張るが、科学者や学者は嘘だと否定したりして口論する。これは、何の意味があるのか正輝は口論する専門家や科学者達を小バカにしていたが、河童の川丸と出会った時から彼の他にもいろんな妖怪がこの二十一世紀に実在しているんじゃないのかと少し思うようにもなったりもする。
母親の真理子と祖父の有蔵に河童を見たと話しても信じてはもらえない可能性があるし、妖怪信仰が強い由夏と小日向に話すと食い気味に訊かれたりして面倒になる。だから、自分が本物の河童を見たと彼らには話さず心の中で留めていた。
深く眠っている正輝は寝返りをしながらもクシャクシャになった薄い毛布を抱き枕みたいに抱えながら寝ていると声が聞こえた。優しく揺さぶりながら囁き声で正輝を起こす。
「・・・・お兄ちゃん・・・・お兄ちゃん」
誰かに起こされながら正輝は眠そうな顔をして振り向いた。
「お兄ちゃん」
なんと、正輝を起こしたのは東京に住んでいる元妹の愛菜だった。目の前に現れた妹の姿に正輝は大きく目を見開いて体を勢いよく起こした。突然、妹が自分の部屋に現れた事に正輝は驚きさっきの眠気が見事に吹っ飛んだ。
「愛菜・・・!どうして君がここに?」
愛菜は笑いながら言った。
「お兄ちゃんに会いたくて来たんだ」
「香苗さんと父さんと一緒に来たのか?」
正輝の問いに愛菜は首を振る。
「ううん。一人で来ちゃった」
その言葉に正輝は驚く。まだ幼稚園生なのに一人で来るなんて信じられなかった。でも、愛菜は好きだった兄に会えたのかニコニコと笑っている。
「もしかして・・・母さんに連絡したのか?」
愛菜は頷く。
「うん。ママも久しぶりに会いたいって言ってたから」
真理子も愛菜に会いたがっていたとは知らなかった。愛菜の名前を出すと二度と言うなって告げ口されてから正輝は一度も妹の話をしなかった。それにしても、6歳の女の子が東京から鳥取に来るなんてあまりにも無防備すぎる。でも、正輝は嬉しかった。真理子と父親の離婚後、会う事はできず両親に内緒で電話するぐらいしか方法がなかった。
当時はまだ2歳だったのにも関わらず愛菜はちゃんと正輝の事を憶えていた。正輝は愛菜の頭を撫でた。
「母さんがそんな事を・・・。とにかく、よく来てくれたね」
正輝は微笑んだ。すると、愛菜は
「お兄ちゃん。どっかお散歩しよ」
正輝は時計を見た。針がもう23時近くまで進んでいる。
「ダメだ。今日は夜遅いから明日にしよう」
すると、愛菜はてててっと部屋のドアノブを触れる。
「先にくつ履いて待ってるね」
「ちょっ、愛菜」
愛菜はドアを開けて下へ降りて行った。正輝は愛菜の後を追いかけようとするが、今の自分はパジャマ姿なので服に着替えてから部屋を出た。
一階に降りると部屋は暗かった。居間には敷いた布団の上でお酒を飲みながらテレビを見ている。正輝が廊下を通ると真理子が振り向いた。
「あれ?正輝。こんな時間にどうしたの?」
正輝は居間にいた真理子に話した。
「さっき、愛菜がいたんだ。愛菜が散歩しよって」
すると、真理子は眉を寄せながら
「何言ってるの?愛菜は来てないよ?」
その言葉に正輝は目を丸くした。
「来てないって・・・母さんが連絡したんだろ?」
真理子はお前は何を言っているんだと言いそうな顔でこちらを見る。
「正輝。もう愛菜の名前を出すのはやめてって前にも言ったでしょ?愛菜がうちに来るはずないじゃない。もう、家族じゃないんだから」
家族じゃない。そうだ。愛菜はもう正輝の家族でも妹でもない。
でも、愛菜は家族じゃなくても自分の〝妹〟だという事は変わりなかった。しかし、正輝は確かに愛菜を見た。実際に愛菜が自分の部屋に来ていたのをこの目で見たのだ。
「でも─」
正輝は言い止めた。これ以上、愛菜の事を話し続けたら真理子がヒステリックに陥って喧嘩になるかもしれない。真理子が怒った姿はとても怖いとよく知っている正輝はこれ以上、話を進めるのを止めた。
「いや。ごめん。俺の勘違いかも。多分、寝ぼけてたんだ」
そう伝えると真理子は「もう」と呆れ顔を見せた。
「服に着替えてまで寝ぼけるなんて漫画じゃあるまいし」
パジャマ姿ではない自分を見られ正輝は苦笑した。なんとか、真理子のヒステリックから免れてホッとした。
でも、決して寝ぼけていたわけではない。確かに、正輝は実際に愛菜を見たのだ。
真理子は愛菜の姿は見ていないと言っていた。だとすると、なぜ正輝だけ愛菜の姿が見えたのか。気になりもしたが、ちらりと玄関を見ると愛菜の姿が見える。愛菜が催促するかのように正輝を見ている。
「ちょうど、暑くて寝苦しかったんだ。ちょっと夕涼みに行ってくる」
次は愛菜の名前を伏せて夕涼みに行くと伝えた。
「外は暗いから遠く行っちゃだめよ」
真理子からのお許しが出たので正輝は玄関へ向かいサンダルを履いた。そして、愛菜と一緒に外に出た。
外に出ると暑いのは変わりないが部屋と比べてちょっと涼しかった。
正輝は夜空を見上げたが、星一つも見えなかった。天気が良ければ東京ではなかなか見られない満点の星空が夜空一面に輝いていた。でも、今日の夜は星は見えないが、月だけは見える。
「愛菜。母さんは、君を見てないって言っていたけど、一体どういう」
そう言いかけると愛菜が
「お兄ちゃん。わたし、山に行きたい」
突然、愛菜が山を見たいと言い出すので驚いた。
「何を言ってるんだ?夜の山は危険なんだぞ」
しかし、愛菜は行きたいと言い張る。
「だいじょーぶ。山の中には入らないから。あそこ行きたい。前にお兄ちゃんが言ってたきりん・・・・なんとか」
「麒麟獅子舞?」
「それ。きりんししまいがやっていた山を見たい」
大山の事だと分かった正輝は考えた。この夜遅い時間に大山に行くのは危険だと。でも、山の中に入らないのなら別かと思うと
「分かった。山を見るだけだぞ」
正輝のその一言に愛菜は喜んだ。
水木しげるロードから帰り由夏を自宅まで送り、やっと家に着いたのは夜の20時半過ぎだった。
妖怪博士と名乗るオカルト情報誌「奇奇怪怪」の編集記者 小日向太郎が現れた後、しばらくは由夏と小日向の妖怪トークで盛り上がりしばらく茶屋にいた。
二人がやっとトークが終わったのは夕方の18時過ぎだった。小日向は明日、本社勤務だからといい米子空港で別れ飛行機に乗って帰って行った。
夕飯は由夏と外で食べたので家に着いたらすぐ風呂に入って寝る準備ができて楽だった。
今は、午後22時半過ぎ。本当はまだ起きている時間だったが今日は疲れたので少し早めに寝たのだ。一階には真理子がまだ起きている。入院中の有蔵はもう就寝しているだろう。
窓は網戸にして開けっ放し。正輝が寝ているベッドの近くには扇風機が回っている。夜の夏も昼も朝も変わらないぐらい暑い。タイマーをかけてあって風力は弱いが扇風機の風が正輝の顔から体下まで届き涼しい。
暗い正輝の部屋に広がる静寂の中、ただ聞こえるのは扇風機の風音だけ。寝ている正輝は少し口を開け体を横にしている。体に掛けている薄い毛布はクシャクシャになっていて正輝の寝相の悪さが分かる。シーツは気持ちが良く枕は薄いカバーを使っているので暑い夏の夜にはとても最適。疲れがどっと取れたかのように正輝はよく眠っている。
茶屋で小日向が見えている世界が全てじゃないと聞いた時、亡くなった祖母の事を思い出していた。祖母も見えているモノが全てではなく、見えないモノも必ずいると聞いた事があったので、少し印象に残っていた。
それに、有蔵から祖母が遥か昔に鬼神と戦った聖戦士の子孫だと初めて聞いた時は正直、信じられなかったが嘘をついている様には見えなかった。河童が実在しているという事は、きっと鬼神も実在していたのだろう。
見えている世界が全てじゃない。あながち、間違っていないかもしれない。
妖怪は時代に連れて〝闇〟という憩いの場を失いつつ姿を隠しながら影で慎ましく暮らしている。たまにオカルト系のテレビ番組でUFOやらUMAやらで専門家達が言い合っている場面を見た事もある。オカルト専門家は本物だと言い張るが、科学者や学者は嘘だと否定したりして口論する。これは、何の意味があるのか正輝は口論する専門家や科学者達を小バカにしていたが、河童の川丸と出会った時から彼の他にもいろんな妖怪がこの二十一世紀に実在しているんじゃないのかと少し思うようにもなったりもする。
母親の真理子と祖父の有蔵に河童を見たと話しても信じてはもらえない可能性があるし、妖怪信仰が強い由夏と小日向に話すと食い気味に訊かれたりして面倒になる。だから、自分が本物の河童を見たと彼らには話さず心の中で留めていた。
深く眠っている正輝は寝返りをしながらもクシャクシャになった薄い毛布を抱き枕みたいに抱えながら寝ていると声が聞こえた。優しく揺さぶりながら囁き声で正輝を起こす。
「・・・・お兄ちゃん・・・・お兄ちゃん」
誰かに起こされながら正輝は眠そうな顔をして振り向いた。
「お兄ちゃん」
なんと、正輝を起こしたのは東京に住んでいる元妹の愛菜だった。目の前に現れた妹の姿に正輝は大きく目を見開いて体を勢いよく起こした。突然、妹が自分の部屋に現れた事に正輝は驚きさっきの眠気が見事に吹っ飛んだ。
「愛菜・・・!どうして君がここに?」
愛菜は笑いながら言った。
「お兄ちゃんに会いたくて来たんだ」
「香苗さんと父さんと一緒に来たのか?」
正輝の問いに愛菜は首を振る。
「ううん。一人で来ちゃった」
その言葉に正輝は驚く。まだ幼稚園生なのに一人で来るなんて信じられなかった。でも、愛菜は好きだった兄に会えたのかニコニコと笑っている。
「もしかして・・・母さんに連絡したのか?」
愛菜は頷く。
「うん。ママも久しぶりに会いたいって言ってたから」
真理子も愛菜に会いたがっていたとは知らなかった。愛菜の名前を出すと二度と言うなって告げ口されてから正輝は一度も妹の話をしなかった。それにしても、6歳の女の子が東京から鳥取に来るなんてあまりにも無防備すぎる。でも、正輝は嬉しかった。真理子と父親の離婚後、会う事はできず両親に内緒で電話するぐらいしか方法がなかった。
当時はまだ2歳だったのにも関わらず愛菜はちゃんと正輝の事を憶えていた。正輝は愛菜の頭を撫でた。
「母さんがそんな事を・・・。とにかく、よく来てくれたね」
正輝は微笑んだ。すると、愛菜は
「お兄ちゃん。どっかお散歩しよ」
正輝は時計を見た。針がもう23時近くまで進んでいる。
「ダメだ。今日は夜遅いから明日にしよう」
すると、愛菜はてててっと部屋のドアノブを触れる。
「先にくつ履いて待ってるね」
「ちょっ、愛菜」
愛菜はドアを開けて下へ降りて行った。正輝は愛菜の後を追いかけようとするが、今の自分はパジャマ姿なので服に着替えてから部屋を出た。
一階に降りると部屋は暗かった。居間には敷いた布団の上でお酒を飲みながらテレビを見ている。正輝が廊下を通ると真理子が振り向いた。
「あれ?正輝。こんな時間にどうしたの?」
正輝は居間にいた真理子に話した。
「さっき、愛菜がいたんだ。愛菜が散歩しよって」
すると、真理子は眉を寄せながら
「何言ってるの?愛菜は来てないよ?」
その言葉に正輝は目を丸くした。
「来てないって・・・母さんが連絡したんだろ?」
真理子はお前は何を言っているんだと言いそうな顔でこちらを見る。
「正輝。もう愛菜の名前を出すのはやめてって前にも言ったでしょ?愛菜がうちに来るはずないじゃない。もう、家族じゃないんだから」
家族じゃない。そうだ。愛菜はもう正輝の家族でも妹でもない。
でも、愛菜は家族じゃなくても自分の〝妹〟だという事は変わりなかった。しかし、正輝は確かに愛菜を見た。実際に愛菜が自分の部屋に来ていたのをこの目で見たのだ。
「でも─」
正輝は言い止めた。これ以上、愛菜の事を話し続けたら真理子がヒステリックに陥って喧嘩になるかもしれない。真理子が怒った姿はとても怖いとよく知っている正輝はこれ以上、話を進めるのを止めた。
「いや。ごめん。俺の勘違いかも。多分、寝ぼけてたんだ」
そう伝えると真理子は「もう」と呆れ顔を見せた。
「服に着替えてまで寝ぼけるなんて漫画じゃあるまいし」
パジャマ姿ではない自分を見られ正輝は苦笑した。なんとか、真理子のヒステリックから免れてホッとした。
でも、決して寝ぼけていたわけではない。確かに、正輝は実際に愛菜を見たのだ。
真理子は愛菜の姿は見ていないと言っていた。だとすると、なぜ正輝だけ愛菜の姿が見えたのか。気になりもしたが、ちらりと玄関を見ると愛菜の姿が見える。愛菜が催促するかのように正輝を見ている。
「ちょうど、暑くて寝苦しかったんだ。ちょっと夕涼みに行ってくる」
次は愛菜の名前を伏せて夕涼みに行くと伝えた。
「外は暗いから遠く行っちゃだめよ」
真理子からのお許しが出たので正輝は玄関へ向かいサンダルを履いた。そして、愛菜と一緒に外に出た。
外に出ると暑いのは変わりないが部屋と比べてちょっと涼しかった。
正輝は夜空を見上げたが、星一つも見えなかった。天気が良ければ東京ではなかなか見られない満点の星空が夜空一面に輝いていた。でも、今日の夜は星は見えないが、月だけは見える。
「愛菜。母さんは、君を見てないって言っていたけど、一体どういう」
そう言いかけると愛菜が
「お兄ちゃん。わたし、山に行きたい」
突然、愛菜が山を見たいと言い出すので驚いた。
「何を言ってるんだ?夜の山は危険なんだぞ」
しかし、愛菜は行きたいと言い張る。
「だいじょーぶ。山の中には入らないから。あそこ行きたい。前にお兄ちゃんが言ってたきりん・・・・なんとか」
「麒麟獅子舞?」
「それ。きりんししまいがやっていた山を見たい」
大山の事だと分かった正輝は考えた。この夜遅い時間に大山に行くのは危険だと。でも、山の中に入らないのなら別かと思うと
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