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第二幕
河童の川丸(二)
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日が昇った次の朝
正輝は制服姿で自転車を漕いでいた。
今日も日差しが強くとても暑い。セミの騒がしい鳴き声も聞こえてくる。
正輝は汗を掻きながら炎天下の中、学校まで自転車を走らせていた。
もうすぐ学校に着こうとした時、後ろから正輝を呼ぶ声が聞こえた。
正輝は友人である克己が呼んだ事に気づき振り向いた。
二人は挨拶をした後、正輝は自転車を降りて押しながら歩いた。二人は昨夜の麒麟獅子舞の事を話していた。
「まさか、猩々と麒麟獅子がマッキーを選んだとは思ってもみなかった」
克己は正輝が麒麟獅子に噛まれるとは予想していなかった。
昨夜、正輝は麒麟獅子舞で麒麟獅子に頭を噛まれたのだ。
「今日からマッキーは病気にならないし災いが訪れないぞ」
克己は笑った。
しかし、正輝はなぜ麒麟獅子と猩々が自分を選んだのか全く分からなかった。麒麟獅子に噛まれたからって偉い事ではない。
「なんで、僕を選んだんだろ。別の人の頭を噛めばいいのに・・・」
正輝がそう呟くと克己は「何言ってるんだ」と言い出した。
「麒麟獅子に噛まれた事はすげぇ有難い事なんだぞ。選んでくれた猩々と麒麟獅子に感謝しなくちゃ」
感謝と言われても・・・
正輝は別に好きで噛まれたわけではない。麒麟獅子に噛まれたら病気や災いから守ってくるれるなんて言い伝えにすぎないと今でも思っているのだ。
しかし、克己はこの言い伝えを完全に信じている。彼は昔話でも信じるタイプだから何でも信じそうだ。
「それに、麒麟はとてもめでたい中国の霊獣でもあるんだぞ。麒麟獅子は麒麟をモチーフにした獅子舞だから噛まれた人はすげぇ運がつくんだぞ」
「はいはい」
正輝は熱く語る克己の話を聞き流した。
二人が学校に着き下駄箱から自分達の上履きを取り出そうとすると、隣から誰かに声をかけられた。
「草壁くん」
正輝は隣を見た。正輝の隣声をかけたのは、男子からマドンナと呼ばれ人気者の清水由夏が立っていた。
正輝の後ろにいた由夏に克己は驚いた。
「清水さん!」
周りにいる男子の視線は由夏と正輝の方にいっていた。
正輝は男子達の視線がこちらを向いていると感じた。
「おはよう」
正輝が挨拶をすると由夏は笑顔で「おはよう」と挨拶を返した。
「昨日の麒麟獅子舞で麒麟獅子に噛まれたでしょ?」
それを聞いて正輝は目を見開いた。
「えっ?なんで知ってるの?」
「私も昨日の夜、麒麟獅子舞を観に行ったの。そしたら、草壁くんが麒麟獅子に噛まれた所を見かけたんだ」
正輝は気づかなかったがあの日の夜、由夏は麒麟獅子舞を観に来ていて彼が麒麟獅子に頭を噛まれるシーンを見ていたのだ。
「おめでとう」
由夏に祝福の言葉を言われ正輝は「ありがと」と返事をした。
そして、由夏は「じゃあね」と別れの挨拶をして去って行った。
由夏が去った後、克己は正輝の肩を掴んだ。
「おいおいおい。マッキー。お前、清水さんに声をかけられるなんて羨ましいぞ!この野郎!いつから清水さんと仲良くなったんだ?」
克己は正輝の肩を軽く揺すった。
「べ、別に友達になった憶えないよ」
正輝は肩を揺すられながら否定した。
「嘘つくなよ!この幸せ者~!俺にも紹介してくれよ!」
克己は笑った。
「だから、知らないって」
正輝は誤解だと主張した。
正輝は制服姿で自転車を漕いでいた。
今日も日差しが強くとても暑い。セミの騒がしい鳴き声も聞こえてくる。
正輝は汗を掻きながら炎天下の中、学校まで自転車を走らせていた。
もうすぐ学校に着こうとした時、後ろから正輝を呼ぶ声が聞こえた。
正輝は友人である克己が呼んだ事に気づき振り向いた。
二人は挨拶をした後、正輝は自転車を降りて押しながら歩いた。二人は昨夜の麒麟獅子舞の事を話していた。
「まさか、猩々と麒麟獅子がマッキーを選んだとは思ってもみなかった」
克己は正輝が麒麟獅子に噛まれるとは予想していなかった。
昨夜、正輝は麒麟獅子舞で麒麟獅子に頭を噛まれたのだ。
「今日からマッキーは病気にならないし災いが訪れないぞ」
克己は笑った。
しかし、正輝はなぜ麒麟獅子と猩々が自分を選んだのか全く分からなかった。麒麟獅子に噛まれたからって偉い事ではない。
「なんで、僕を選んだんだろ。別の人の頭を噛めばいいのに・・・」
正輝がそう呟くと克己は「何言ってるんだ」と言い出した。
「麒麟獅子に噛まれた事はすげぇ有難い事なんだぞ。選んでくれた猩々と麒麟獅子に感謝しなくちゃ」
感謝と言われても・・・
正輝は別に好きで噛まれたわけではない。麒麟獅子に噛まれたら病気や災いから守ってくるれるなんて言い伝えにすぎないと今でも思っているのだ。
しかし、克己はこの言い伝えを完全に信じている。彼は昔話でも信じるタイプだから何でも信じそうだ。
「それに、麒麟はとてもめでたい中国の霊獣でもあるんだぞ。麒麟獅子は麒麟をモチーフにした獅子舞だから噛まれた人はすげぇ運がつくんだぞ」
「はいはい」
正輝は熱く語る克己の話を聞き流した。
二人が学校に着き下駄箱から自分達の上履きを取り出そうとすると、隣から誰かに声をかけられた。
「草壁くん」
正輝は隣を見た。正輝の隣声をかけたのは、男子からマドンナと呼ばれ人気者の清水由夏が立っていた。
正輝の後ろにいた由夏に克己は驚いた。
「清水さん!」
周りにいる男子の視線は由夏と正輝の方にいっていた。
正輝は男子達の視線がこちらを向いていると感じた。
「おはよう」
正輝が挨拶をすると由夏は笑顔で「おはよう」と挨拶を返した。
「昨日の麒麟獅子舞で麒麟獅子に噛まれたでしょ?」
それを聞いて正輝は目を見開いた。
「えっ?なんで知ってるの?」
「私も昨日の夜、麒麟獅子舞を観に行ったの。そしたら、草壁くんが麒麟獅子に噛まれた所を見かけたんだ」
正輝は気づかなかったがあの日の夜、由夏は麒麟獅子舞を観に来ていて彼が麒麟獅子に頭を噛まれるシーンを見ていたのだ。
「おめでとう」
由夏に祝福の言葉を言われ正輝は「ありがと」と返事をした。
そして、由夏は「じゃあね」と別れの挨拶をして去って行った。
由夏が去った後、克己は正輝の肩を掴んだ。
「おいおいおい。マッキー。お前、清水さんに声をかけられるなんて羨ましいぞ!この野郎!いつから清水さんと仲良くなったんだ?」
克己は正輝の肩を軽く揺すった。
「べ、別に友達になった憶えないよ」
正輝は肩を揺すられながら否定した。
「嘘つくなよ!この幸せ者~!俺にも紹介してくれよ!」
克己は笑った。
「だから、知らないって」
正輝は誤解だと主張した。
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