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王太子
しおりを挟む妻の姉を殺した。
理由は単純だ。妻の姉が妻に毒を盛った。だから処刑した。
背景に何者かがいる。それはわかっていた。しかし彼女は何も言わなかった。言わないなら構わない。
快感だった。
妻を殺す想像をすることと同じくらの快感だった。
最高の瞬間だった。
そういえば、俺は彼女と一回結婚しようとしたのだ。
公爵家の娘と結婚する必要があった。どうせなら長女がよかった。より結束を高めるためだ。彼女は扱いやすそうだった。大人しくて、口答えをしない。俺の言葉にすぐに頬を染める単純さ。可愛らしくすらあった。
彼女との結婚生活を夢見た。
しかし、すぐに目は移った。
彼女の妹。
一眼見て、美しいと思った。姉の方には悪いとも思わなくはなかったが、彼女の妹は俺の心を掴んだ。
ああ、さぞ素晴らしいだろう。
あの毅然とした表情。何者にも屈しない意志の強そうな瞳。それをひた隠す、愛らしい笑顔。それが歪む瞬間は。
俺は彼女を気に入った。それで結局姉ではなく妹を選んだ。
後悔はない。
妻はすばらしく優秀で、自慢のできる存在で、俺にとって大事な人になった。
姉の方は人形のように可愛がってもよい性格だったが、妹の方はそのように愛でるのは勿体無い。俺は彼女を気に入ったから、存分に愛した。
叩いた頬が赤くなるのは、最高に気分がよかった。
その妻も今は白い顔をして横たわっている。
毒のせいだ。もはや命も微かなもの。それが惜しくもある。
妻の姉を処刑したとき、さぞ妻の死に顔は美しいだろうと思った。だから妻も同じように処刑したらどんなにいいかと思ったのだが、しかしこのままでは毒で死ぬのを見ることしかできないだろう。
それは虚しくもあった。
けれど愉快でもあって、俺は不思議な気分になっていた。
1人で部屋でワインを飲んでいるときは特に最高だ。誰かに遠慮して表情を隠す必要もない。素晴らしい日だ。ワインもまい。
俺は笑っていた。ワインがうまいからだ。
俺はわらっていた。
意識が途切れるその時まで。
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