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セゾンとシキ
思い出の場所
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小さな四角い部屋。
壁一面に、錆びかけのロッカーが並んでいる。
外へと繋がる二つの壁の一方には扉、もう一方にはうっすら光の入る磨り硝子の窓がある。
その下にはサッカーボールが、籠の中に山盛りに積まれている。
柔らかな光を落とす蛍光灯の下には、大きな机が一つと、それを囲むパイプ椅子が数脚。
三年間、毎日通い続けた部室。
何度この部屋で泣いて、怒って、笑ったか……。
目を閉じると鮮明に浮かんでくる、数々の光景。
これを青春って言うのかな?
思い出の中の俺の隣には、いつもアイツがいる。
そうだ、この部屋で泣いた時、怒った時、笑った時、いつもアイツと一緒だった。
アイツが俺の体を抱きしめて、好きだ、と告げてくれたのもこの部屋。
「シキ、こっち来いよ」
ロッカー内の整理をしながら、手に持った物の思い出を一つずつ振り返っていたら、後ろからセゾンの呼ぶ声がした。
立ち上がり、セゾンの腰掛けている隣の椅子を引き、そこに座ろうとする。
「違う。座るのはここ」
俺の方に椅子ごと体を向けたセゾンが、太股の上をパンパンと叩く。
「何言って……」
「寒ぃんだもん。シキで暖めてよ」
戸惑っていると強引に腕を引かれ、体勢を崩した俺はセゾンに向き合う形で腰をおろしてしまった。
手をかけていた椅子が、バタンと凄い音を立てて倒れる。
余りにも恥ずかしい体勢に立ち上がろうとすると、ぐいっと引き寄せて俺を離さまいとするセゾン。
心臓の前にセゾンの顔があって、自分でもびっくりするほど早く打つ心音を聞かれたら絶対にからかわれるから落ち着けと念じるのに、裏腹にそれは激しさを増していく。
「シキ、すっごいドキドキしてるな。心臓壊れちゃうんじゃねぇ?」
「うるせぇ」
恥ずかしくて、顔がクラクラするほど熱くなる。
たぶん、耳まで赤くなっているんだろうな。
そんな顔を見られて、これ以上からかわれるのは勘弁だと、セゾンにしがみついて肩に顔を埋める。
「嘘だよ。自分の心臓がドキドキ言い過ぎて、シキの心臓の音なんか聞こえねぇもん」
くしゃっと俺の頭を触って、そのまま髪に指を通しはじめたセゾン。
「シキ、何かいい匂いするな」
「安物のシャンプーしか使ってねぇぞ」
何度も何度も同じ事を繰り返しながら、クスクスと笑うセゾンの息が首筋にかかる。
「ん……」
擽ったくて腰が反るようなその感覚に、思わず声が漏れてしまう。
「シキは首が弱いもんな」
執拗に息を吹きかけてくるセゾンにしがみつき、背筋を駆け抜ける甘い痺れに必死で耐える。
「ごめん、ごめん」
細かく震えだした俺にやっとそれを止めたセゾンが、優しく頭を撫でてくれる。
息を止めて声を出すのを我慢していた俺は、大きく息を吸って呼吸を整える。
「なぁ、顔見せてくれよ。キスしよ?」
「あぁ……」
さっきのセゾンの意地悪で体の中が熱くなってきた俺は顔が真っ赤なことも忘れ、しがみついていた腕を解いてセゾンの背中に絡めて顔を見合わせる。
セゾンの頬も桜色に染まっていて、セゾンもドキドキしているんだって分かり、愛しくてたまらなくなった。
腰に巻かれたセゾンの腕が、俺の体を引き寄せる。
ゆっくり目を閉じると、温かく湿った感触が唇を包んだ。
暫く触れ合ったまま抱きしめ合っていると、セゾンの唇が俺の下唇だけを挟み、左右に動き始めた。
セゾンの唇によって下げられた下唇。その隙間から生温かい肉の塊が入ってくる。
反射的に逃げてしまった俺の舌をセゾンの舌が追い掛けて絡め取ると、磁石のように引っついた二つの舌は、一つの生物のように二つの口内を動き回る。
「んぁ……」
我慢出来ずに声が漏れてしまう。
どちらのものか分からない唾液が、口の端から流れ落ちる。
「シキ……しよ?」
「あぁ」
熱に侵された俺は、本能のままに頷く。
机に寝かされた俺。ギシギシと音を立てて、セゾンもそこに乗ってくる。
ゆっくりと俺の学ランのボタンを外し、脱がしたそれを椅子の背にかけると、今度はシャツのボタンを一つずつ外し始めたセゾン。
肌が冷えた外気に触れ、毛穴がぎゅっと締まる感覚がする。
「すぐ暖かくなるから、ちょっとの我慢だからな」
俺を気遣って優しく笑いかけてくれたセゾンの唇が、俺の首筋に吸い付く。
「っ……」
さっき感じたのの何倍もの感覚に、大きく腰が反ってしまう。
その振動で、机が大きな音を立てた。
「机……壊れちまう……」
「大丈夫、大丈夫」
お構いなしにセゾンは唇を這わせ続ける。
「ん……あぁっ……」
ねっとりとした舌が、胸の突起を転がすように動く。
体の芯がツーンとする。
体の一点に集まった熱が、張り裂けそうで痛い。
セゾンの背中に回した腕に力を入れ、学ランをぎゅっと掴む。
セゾンの唇が、もう片方の突起に移る。
ゴソゴソと下半身で動く感覚に視線をそこに向けると、手探りで必死にベルトを外しているセゾンの手が見えた。
「やめっ……」
初めてじゃないけれど、やはり欲望まみれの自分を見られるのは恥ずかしい。
体を回転させて拒むと、冷たい机の板が体の熱を吸い取っていく。
「シキのすげー綺麗だよ。だから、恥ずかしがらないで見せてくれよ。な?」
「でも……」
「大丈夫。俺のもこんなになっちゃってっから」
俺の手を掴んで、自分自身に当てるセゾン。
布の上からでもそれが、硬く天を向いていることが分かる。
くるっと体を元の体勢に戻した俺に、微笑んだセゾンが軽く口付けをくれる。
自らの学ランを脱いで床に落としたセゾンが、俺のベルトを外してファスナーを下ろし、ズボンに手をかけて下着と共にゆっくり下ろしていった。
自らの欲望を見るのが恥ずかしくて目を閉じる。
外気にさらされ、さっきと同じ様に毛穴が締まる感覚がする。ただ一点を除いて。
「シキ……綺麗だ……」
セゾンの掌が、俺自身を包む。
触れてくる掌は、火傷しそうなほどに熱い。
セゾンの体も熱くなっているのか?
「シキのもっと綺麗なとこ見せてくれよ」
膝に引っかかっていたズボンを床に落とし、はだけたYシャツと靴下だけを身にまとっている俺の太腿を掴んで、グッと開いて持ち上げたセゾン。
セゾン以外に見せたことのないそこに顔を埋めたセゾンは、ピンと天を向く俺自身にはわざと触れず、その下の双袋を交互に口に含んで転がし始めた。
「ん……はぁん……」
敏感になっている俺の体は、何をされても快感にしかならない。
セゾンの口内に俺自身が飲み込まれると、羞恥心を絡めとるように動く舌に同調するように腰が動き出してしまう。
「くっ……」
ひんやりとした感覚に腰が反る。
ローションを付けたセゾンの長い指が、俺の中に入ってきた。
「あぁっ……」
セゾンだけが知っている秘密の花園が一気に花開き、体中に快楽の花が咲く。
「もぉ俺、限界。シキ、いい?」
「あぁ。来いよ」
両手を広げてセゾンを見上げると、ズボンを脱ぎ捨てたセゾンがそこに自身をあてがい、俺の上に覆い被さってきた。
「いくぞ?」
「あぁ」
耳元で囁かれた声に答えるように、ぎゅっとセゾンの背中を掴む。
「ひゃぁっ……あぁ……」
「力抜いて」
まだ慣れていない異物感と、限界まで広げられた入口が張り裂けそうで、生理的な涙が頬を伝う。
萎えてしまった前を扱いてもらい、ゆっくり息を吐いて体の力を抜くと痛みは薄れていき、段々と快感が広がり始めてきた。
「上手に出来ました」
セゾンも自身で俺の変化が分かったのか、子供を褒めるように言いながらチュッと音を立てて口付けをくれた。
「動くな」
「いいぞ」
ゆっくりと腰を動かし始めたセゾン。
セゾンのが内壁を擦れる度に、ジンジンと快感が走る。
セゾンに合わせて俺も腰を振りはじめると、俺自身もセゾンの腹で擦れ、新たな快感が生まれて増大していく。
「くぁ……あぁぁ……」
ガタガタとひっきりなしに音を立てる机。
サッカーボールが一つ籠から落ち、コロコロと机の下を転がっていく。
「シキ……大好き……」
「セゾン……」
俺もセゾンが大好きだ。
ずーっとこうやって繋がっていたい。
この三年間のように、これからも思い出の中の俺の隣にはセゾンに立っていて欲しい。
泣きそうな俺を慰めて。怒っている俺を宥めて。悩んでいる俺の話を聞いて。一緒に笑って。
卒業後は、遠く離れた別々のチームで、プロサッカー選手の道を歩んでいく俺達。
もうこれからは、今まで通り隣に立っていることが出来ないと分かっているのに、まだまだこの距離での関係が延々と続くような気がして、そんなことを考えてしまった。
自分勝手なのは俺の方だな。
自分達のことを考えて、それぞれに選んだ道だ。
その時が来たら、ちゃんと前を見て進んでいくから。
だから、まだこの距離でいられる間は、少しでも長くセゾンの隣にいたい、セゾンに触れていたい。
青春の思い出を、まだまだいっぱい作ろう。
その頃、部室の前では――
「あれ? お前ら何やってんの?」
荷物を整理しようと部室を訪れた副キャプテンの目に映ったのは、扉の前で耳まで真っ赤に染めて、もじもじしている一年生三人組だ。
「あっ、副キャプテーン」
副キャプテンの声に、一人が泣きそうな顔で彼を見る。
「セゾンさんとシキさんが……」
副キャプテンの同級生の名を呟くと俯いてしまった。他の二人は放心状態で、立っているのがやっとという感じだ。
彼らの方に足を進めると、盛りのついた猫のような声が聞こえてきた。それは部室の中からしてきて、五センチほど開いた扉の隙間から中を覗くと……。
「俺らが卒業するまでの我慢だから。今日は部室入れないから帰ろう。何か飯奢ってやるから元気出せ。な?」
溜め息をひとつつくと後輩の肩を抱き、魔の部室を後にする副キャプテンなのでした。
壁一面に、錆びかけのロッカーが並んでいる。
外へと繋がる二つの壁の一方には扉、もう一方にはうっすら光の入る磨り硝子の窓がある。
その下にはサッカーボールが、籠の中に山盛りに積まれている。
柔らかな光を落とす蛍光灯の下には、大きな机が一つと、それを囲むパイプ椅子が数脚。
三年間、毎日通い続けた部室。
何度この部屋で泣いて、怒って、笑ったか……。
目を閉じると鮮明に浮かんでくる、数々の光景。
これを青春って言うのかな?
思い出の中の俺の隣には、いつもアイツがいる。
そうだ、この部屋で泣いた時、怒った時、笑った時、いつもアイツと一緒だった。
アイツが俺の体を抱きしめて、好きだ、と告げてくれたのもこの部屋。
「シキ、こっち来いよ」
ロッカー内の整理をしながら、手に持った物の思い出を一つずつ振り返っていたら、後ろからセゾンの呼ぶ声がした。
立ち上がり、セゾンの腰掛けている隣の椅子を引き、そこに座ろうとする。
「違う。座るのはここ」
俺の方に椅子ごと体を向けたセゾンが、太股の上をパンパンと叩く。
「何言って……」
「寒ぃんだもん。シキで暖めてよ」
戸惑っていると強引に腕を引かれ、体勢を崩した俺はセゾンに向き合う形で腰をおろしてしまった。
手をかけていた椅子が、バタンと凄い音を立てて倒れる。
余りにも恥ずかしい体勢に立ち上がろうとすると、ぐいっと引き寄せて俺を離さまいとするセゾン。
心臓の前にセゾンの顔があって、自分でもびっくりするほど早く打つ心音を聞かれたら絶対にからかわれるから落ち着けと念じるのに、裏腹にそれは激しさを増していく。
「シキ、すっごいドキドキしてるな。心臓壊れちゃうんじゃねぇ?」
「うるせぇ」
恥ずかしくて、顔がクラクラするほど熱くなる。
たぶん、耳まで赤くなっているんだろうな。
そんな顔を見られて、これ以上からかわれるのは勘弁だと、セゾンにしがみついて肩に顔を埋める。
「嘘だよ。自分の心臓がドキドキ言い過ぎて、シキの心臓の音なんか聞こえねぇもん」
くしゃっと俺の頭を触って、そのまま髪に指を通しはじめたセゾン。
「シキ、何かいい匂いするな」
「安物のシャンプーしか使ってねぇぞ」
何度も何度も同じ事を繰り返しながら、クスクスと笑うセゾンの息が首筋にかかる。
「ん……」
擽ったくて腰が反るようなその感覚に、思わず声が漏れてしまう。
「シキは首が弱いもんな」
執拗に息を吹きかけてくるセゾンにしがみつき、背筋を駆け抜ける甘い痺れに必死で耐える。
「ごめん、ごめん」
細かく震えだした俺にやっとそれを止めたセゾンが、優しく頭を撫でてくれる。
息を止めて声を出すのを我慢していた俺は、大きく息を吸って呼吸を整える。
「なぁ、顔見せてくれよ。キスしよ?」
「あぁ……」
さっきのセゾンの意地悪で体の中が熱くなってきた俺は顔が真っ赤なことも忘れ、しがみついていた腕を解いてセゾンの背中に絡めて顔を見合わせる。
セゾンの頬も桜色に染まっていて、セゾンもドキドキしているんだって分かり、愛しくてたまらなくなった。
腰に巻かれたセゾンの腕が、俺の体を引き寄せる。
ゆっくり目を閉じると、温かく湿った感触が唇を包んだ。
暫く触れ合ったまま抱きしめ合っていると、セゾンの唇が俺の下唇だけを挟み、左右に動き始めた。
セゾンの唇によって下げられた下唇。その隙間から生温かい肉の塊が入ってくる。
反射的に逃げてしまった俺の舌をセゾンの舌が追い掛けて絡め取ると、磁石のように引っついた二つの舌は、一つの生物のように二つの口内を動き回る。
「んぁ……」
我慢出来ずに声が漏れてしまう。
どちらのものか分からない唾液が、口の端から流れ落ちる。
「シキ……しよ?」
「あぁ」
熱に侵された俺は、本能のままに頷く。
机に寝かされた俺。ギシギシと音を立てて、セゾンもそこに乗ってくる。
ゆっくりと俺の学ランのボタンを外し、脱がしたそれを椅子の背にかけると、今度はシャツのボタンを一つずつ外し始めたセゾン。
肌が冷えた外気に触れ、毛穴がぎゅっと締まる感覚がする。
「すぐ暖かくなるから、ちょっとの我慢だからな」
俺を気遣って優しく笑いかけてくれたセゾンの唇が、俺の首筋に吸い付く。
「っ……」
さっき感じたのの何倍もの感覚に、大きく腰が反ってしまう。
その振動で、机が大きな音を立てた。
「机……壊れちまう……」
「大丈夫、大丈夫」
お構いなしにセゾンは唇を這わせ続ける。
「ん……あぁっ……」
ねっとりとした舌が、胸の突起を転がすように動く。
体の芯がツーンとする。
体の一点に集まった熱が、張り裂けそうで痛い。
セゾンの背中に回した腕に力を入れ、学ランをぎゅっと掴む。
セゾンの唇が、もう片方の突起に移る。
ゴソゴソと下半身で動く感覚に視線をそこに向けると、手探りで必死にベルトを外しているセゾンの手が見えた。
「やめっ……」
初めてじゃないけれど、やはり欲望まみれの自分を見られるのは恥ずかしい。
体を回転させて拒むと、冷たい机の板が体の熱を吸い取っていく。
「シキのすげー綺麗だよ。だから、恥ずかしがらないで見せてくれよ。な?」
「でも……」
「大丈夫。俺のもこんなになっちゃってっから」
俺の手を掴んで、自分自身に当てるセゾン。
布の上からでもそれが、硬く天を向いていることが分かる。
くるっと体を元の体勢に戻した俺に、微笑んだセゾンが軽く口付けをくれる。
自らの学ランを脱いで床に落としたセゾンが、俺のベルトを外してファスナーを下ろし、ズボンに手をかけて下着と共にゆっくり下ろしていった。
自らの欲望を見るのが恥ずかしくて目を閉じる。
外気にさらされ、さっきと同じ様に毛穴が締まる感覚がする。ただ一点を除いて。
「シキ……綺麗だ……」
セゾンの掌が、俺自身を包む。
触れてくる掌は、火傷しそうなほどに熱い。
セゾンの体も熱くなっているのか?
「シキのもっと綺麗なとこ見せてくれよ」
膝に引っかかっていたズボンを床に落とし、はだけたYシャツと靴下だけを身にまとっている俺の太腿を掴んで、グッと開いて持ち上げたセゾン。
セゾン以外に見せたことのないそこに顔を埋めたセゾンは、ピンと天を向く俺自身にはわざと触れず、その下の双袋を交互に口に含んで転がし始めた。
「ん……はぁん……」
敏感になっている俺の体は、何をされても快感にしかならない。
セゾンの口内に俺自身が飲み込まれると、羞恥心を絡めとるように動く舌に同調するように腰が動き出してしまう。
「くっ……」
ひんやりとした感覚に腰が反る。
ローションを付けたセゾンの長い指が、俺の中に入ってきた。
「あぁっ……」
セゾンだけが知っている秘密の花園が一気に花開き、体中に快楽の花が咲く。
「もぉ俺、限界。シキ、いい?」
「あぁ。来いよ」
両手を広げてセゾンを見上げると、ズボンを脱ぎ捨てたセゾンがそこに自身をあてがい、俺の上に覆い被さってきた。
「いくぞ?」
「あぁ」
耳元で囁かれた声に答えるように、ぎゅっとセゾンの背中を掴む。
「ひゃぁっ……あぁ……」
「力抜いて」
まだ慣れていない異物感と、限界まで広げられた入口が張り裂けそうで、生理的な涙が頬を伝う。
萎えてしまった前を扱いてもらい、ゆっくり息を吐いて体の力を抜くと痛みは薄れていき、段々と快感が広がり始めてきた。
「上手に出来ました」
セゾンも自身で俺の変化が分かったのか、子供を褒めるように言いながらチュッと音を立てて口付けをくれた。
「動くな」
「いいぞ」
ゆっくりと腰を動かし始めたセゾン。
セゾンのが内壁を擦れる度に、ジンジンと快感が走る。
セゾンに合わせて俺も腰を振りはじめると、俺自身もセゾンの腹で擦れ、新たな快感が生まれて増大していく。
「くぁ……あぁぁ……」
ガタガタとひっきりなしに音を立てる机。
サッカーボールが一つ籠から落ち、コロコロと机の下を転がっていく。
「シキ……大好き……」
「セゾン……」
俺もセゾンが大好きだ。
ずーっとこうやって繋がっていたい。
この三年間のように、これからも思い出の中の俺の隣にはセゾンに立っていて欲しい。
泣きそうな俺を慰めて。怒っている俺を宥めて。悩んでいる俺の話を聞いて。一緒に笑って。
卒業後は、遠く離れた別々のチームで、プロサッカー選手の道を歩んでいく俺達。
もうこれからは、今まで通り隣に立っていることが出来ないと分かっているのに、まだまだこの距離での関係が延々と続くような気がして、そんなことを考えてしまった。
自分勝手なのは俺の方だな。
自分達のことを考えて、それぞれに選んだ道だ。
その時が来たら、ちゃんと前を見て進んでいくから。
だから、まだこの距離でいられる間は、少しでも長くセゾンの隣にいたい、セゾンに触れていたい。
青春の思い出を、まだまだいっぱい作ろう。
その頃、部室の前では――
「あれ? お前ら何やってんの?」
荷物を整理しようと部室を訪れた副キャプテンの目に映ったのは、扉の前で耳まで真っ赤に染めて、もじもじしている一年生三人組だ。
「あっ、副キャプテーン」
副キャプテンの声に、一人が泣きそうな顔で彼を見る。
「セゾンさんとシキさんが……」
副キャプテンの同級生の名を呟くと俯いてしまった。他の二人は放心状態で、立っているのがやっとという感じだ。
彼らの方に足を進めると、盛りのついた猫のような声が聞こえてきた。それは部室の中からしてきて、五センチほど開いた扉の隙間から中を覗くと……。
「俺らが卒業するまでの我慢だから。今日は部室入れないから帰ろう。何か飯奢ってやるから元気出せ。な?」
溜め息をひとつつくと後輩の肩を抱き、魔の部室を後にする副キャプテンなのでした。
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