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太陽と向日葵1
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君は太陽。俺は君を追い続ける向日葵――
冬は寒い。寒い時には、温めてもらうのが一番だ。
つーことで、寒空の下で中庭掃除の当番を終えた俺は、太陽の光を浴びに走るのです。
コンコンコンコンコン……
「陽太、昼飯行こー」
コンコンコンコンコン……
ノック連打56打目で、やっと出てきてくれた俺の太陽。
冬空のせいで薄暗い室内で、自慢の白肌もち肌が、より強調されている。
衝動にかられて、その頬にそっと掌を当ててみると、段々と桜色に染まっていった。
あぁ、どうしよう。すっげーキスしたい。
ごくんと生唾を飲み込んだ音が凄く大きく感じられて、俺だけが理性の無い獣のような気がして恥ずかしくなって手を戻した。
あれ? 今、陽太の奴、あ、って顔した。それって、期待してたってこと?
くー、奪っちゃえば良かったかも。
「行こっか」
陽太の手を握ると、凄く温かかった。
今まで、暖房の効いた部屋にいたせいかな?
この寒い中を歩いてきた俺の手が、冷たすぎるのかな?
それとも、陽太の体の中が熱くなっているってこと?
「どうした?」
黙って手を握られたまま、俺の後をついてきた陽太だったけど、人気のない廊下から食堂に続く回廊へ出ようとすると、急に立ち止まってしまった。
「……手」
「手?」
「……離せよ」
分かった、って頷いて手を解く。
本当はさ、陽太とだったら手を繋いで学園内を歩くのは勿論、全校生徒の前でチューしちゃっても全然平気なんだけど、陽太が嫌だって言うのに無理矢理したくない。
俺って、紳士だからね。
昼飯を食べ終わって、中庭を散歩しながら寮の部屋まで戻る。
肌を刺す空気は凄い冷たいんだけど、心ん中がほかほか温かいから全然寒く感じない。
寮の前まで来ると、入口脇にある自販機の、あったか~い、と書かれた文字が目に入った。
「陽太、何か飲む?」
「……コーヒー」
あいよって頷き、リクエスト通りコーヒーのボタンを押して陽太に渡す。
サンキュ、って呟いてそれを受け取った陽太の顔が、段々と不機嫌になっていく。
「どうした?」
「……冷てぇ」
差し出されたそれを受け取ると、確かに冷たい。
ホットを買ったつもりだったんだけどな。
冷たいものを温かくするには……。
ぱっとひらめいて、プルタブを開けて冷たい液体を口内に流し込んだ俺を見て、怪訝そうな顔をする陽太。
口内の熱が液体の冷たさを吸い込み、段々と人肌に近い温度になっていく。
このくらいで、いいかな。
「んちんんちぃ」
口を指して懸命に伝えるが、陽太は理解できていないようで首を傾げている。
言葉で伝えるのは無理だから、体で伝えるしかないな。
がしって陽太の肩を掴んで、コーヒーを一杯に含んだ唇を陽太の唇に近づける。
愛がいっぱい詰まったあったかいコーヒーを、俺が飲ませてやるからな。
「ゲホッ」
脇腹に、衝撃が走った。
陽太の為に温めてやったコーヒーが、ビシャッと勢い良く地面に広がる。
「イデデ、何するんだよっ」
脇腹を押さえながら、暴力反対って陽太を見上げる。
「汚ねっ」
「何だよぉ。陽太の為に温めてやって、親切にも口移しで飲ませてやろうと思ったのに」
酷ーいって泣き真似をしている俺の掌の中から缶を取り上げた陽太は、冷たいままのコーヒーを口に運んでいく。
ゴクゴクゴクと三回喉を鳴らした陽太は、無言で缶を俺に返してきた。
捨てとけってことか? 仕方ねーなー。
「あれっ?」
空だと思った缶を受け取ると、ピシャッとまだ中に液体が入っている音を立てた。
何で?って缶を見つめる。
「……お前の分」
小さな声で呟いた陽太が、背を向けて歩き出した。
残ったコーヒーを一気に飲み干し、缶をごみ箱に投げ捨ててその後を追う。
「陽太、ありがとねー」
「……」
「あっ、間接チューしちゃったねー」
「……」
「でもやっぱ、間接じゃなくて直接チューがしたいなー、今すぐっ!」
「うるせぇ」
背中に顔を擦り寄せてゴロゴロ言っている俺の頭を、思いっきり叩く陽太。
ボコッて凄い音がしたけど、これ以上馬鹿になったらどうしてくれるんだよ。
一生、介護してもらうからな!
冬は寒い。寒い時には、温めてもらうのが一番だ。
つーことで、寒空の下で中庭掃除の当番を終えた俺は、太陽の光を浴びに走るのです。
コンコンコンコンコン……
「陽太、昼飯行こー」
コンコンコンコンコン……
ノック連打56打目で、やっと出てきてくれた俺の太陽。
冬空のせいで薄暗い室内で、自慢の白肌もち肌が、より強調されている。
衝動にかられて、その頬にそっと掌を当ててみると、段々と桜色に染まっていった。
あぁ、どうしよう。すっげーキスしたい。
ごくんと生唾を飲み込んだ音が凄く大きく感じられて、俺だけが理性の無い獣のような気がして恥ずかしくなって手を戻した。
あれ? 今、陽太の奴、あ、って顔した。それって、期待してたってこと?
くー、奪っちゃえば良かったかも。
「行こっか」
陽太の手を握ると、凄く温かかった。
今まで、暖房の効いた部屋にいたせいかな?
この寒い中を歩いてきた俺の手が、冷たすぎるのかな?
それとも、陽太の体の中が熱くなっているってこと?
「どうした?」
黙って手を握られたまま、俺の後をついてきた陽太だったけど、人気のない廊下から食堂に続く回廊へ出ようとすると、急に立ち止まってしまった。
「……手」
「手?」
「……離せよ」
分かった、って頷いて手を解く。
本当はさ、陽太とだったら手を繋いで学園内を歩くのは勿論、全校生徒の前でチューしちゃっても全然平気なんだけど、陽太が嫌だって言うのに無理矢理したくない。
俺って、紳士だからね。
昼飯を食べ終わって、中庭を散歩しながら寮の部屋まで戻る。
肌を刺す空気は凄い冷たいんだけど、心ん中がほかほか温かいから全然寒く感じない。
寮の前まで来ると、入口脇にある自販機の、あったか~い、と書かれた文字が目に入った。
「陽太、何か飲む?」
「……コーヒー」
あいよって頷き、リクエスト通りコーヒーのボタンを押して陽太に渡す。
サンキュ、って呟いてそれを受け取った陽太の顔が、段々と不機嫌になっていく。
「どうした?」
「……冷てぇ」
差し出されたそれを受け取ると、確かに冷たい。
ホットを買ったつもりだったんだけどな。
冷たいものを温かくするには……。
ぱっとひらめいて、プルタブを開けて冷たい液体を口内に流し込んだ俺を見て、怪訝そうな顔をする陽太。
口内の熱が液体の冷たさを吸い込み、段々と人肌に近い温度になっていく。
このくらいで、いいかな。
「んちんんちぃ」
口を指して懸命に伝えるが、陽太は理解できていないようで首を傾げている。
言葉で伝えるのは無理だから、体で伝えるしかないな。
がしって陽太の肩を掴んで、コーヒーを一杯に含んだ唇を陽太の唇に近づける。
愛がいっぱい詰まったあったかいコーヒーを、俺が飲ませてやるからな。
「ゲホッ」
脇腹に、衝撃が走った。
陽太の為に温めてやったコーヒーが、ビシャッと勢い良く地面に広がる。
「イデデ、何するんだよっ」
脇腹を押さえながら、暴力反対って陽太を見上げる。
「汚ねっ」
「何だよぉ。陽太の為に温めてやって、親切にも口移しで飲ませてやろうと思ったのに」
酷ーいって泣き真似をしている俺の掌の中から缶を取り上げた陽太は、冷たいままのコーヒーを口に運んでいく。
ゴクゴクゴクと三回喉を鳴らした陽太は、無言で缶を俺に返してきた。
捨てとけってことか? 仕方ねーなー。
「あれっ?」
空だと思った缶を受け取ると、ピシャッとまだ中に液体が入っている音を立てた。
何で?って缶を見つめる。
「……お前の分」
小さな声で呟いた陽太が、背を向けて歩き出した。
残ったコーヒーを一気に飲み干し、缶をごみ箱に投げ捨ててその後を追う。
「陽太、ありがとねー」
「……」
「あっ、間接チューしちゃったねー」
「……」
「でもやっぱ、間接じゃなくて直接チューがしたいなー、今すぐっ!」
「うるせぇ」
背中に顔を擦り寄せてゴロゴロ言っている俺の頭を、思いっきり叩く陽太。
ボコッて凄い音がしたけど、これ以上馬鹿になったらどうしてくれるんだよ。
一生、介護してもらうからな!
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