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AクラスVSBクラス
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「イオ。リオ。」
「「おばあ様。」」
この学園の理事長であり、自分たちの祖母であり、ヒカフル一族の間でも最強の女と呼ばれるマリアンヌの登場に、イオ達の背筋は自然と伸びる。
「うふふ、2人とも大きくなったわね。」
久しぶりの孫たちとの再会だ。少し背が伸びたかしら?孫の成長を内心喜ぶマリアンヌだが、その目は冷たい。なぜなら、マリアンヌの心を支配する感情はそれだけではないのだ。
「ですがーー」
マリアンヌは老人とは思えぬ素早い動きでイオの懐に入り込むと、イオの体をがっしりと掴んで投げ飛ばした。イオは地面に体をぶつけて、顔を歪ませる。
「イオ。」
地面に倒れたイオを慌てて、リオが起き上がらせる。
「愚か者は助ける必要はありません。担任のサラから話は聞いています。せっかく、自分が尊敬する剣の使い手であるソフィアを見付けたのに追いかけないとは、何事ですか。」
マリアンヌの言葉にイオがはっとする。
「弱い者は私の孫には不要です。ソフィアの元で学ばせて貰いなさい。きっとあなたを強くするでしょう。」
「はい、おばあ様。」
どんなに凄い騎士や剣士と出会う時でも、イオをこれほど笑顔にした者はいただろうか。いや、いないだろう。笑顔のイオとは違い、リオは複雑そうな顔をする。
リオの知るイオは、無口でクールな騎士。他人を寄せ付けぬ威圧感を放ち、家族以外とは必要最低限しか会話をしない。そんな子だった。兄であるリオはイオの将来を心配しながらも、内心は喜びで満ちていたのだった。
(自分にしか素で話さない弟、超カワイイ。)
そう、リオは隠れブラコンだった。女の子に甘い言葉を掛けるのも、自分に興味を惹き付け悪い虫がレオに付くのを防ぐため。イオと同じ剣の道に進まなかったのは、カワイイ弟との戦いが出来ないからだ。
リオの行動の全ては、イオを中心として行われていた。だからこそ、突然現れたソフィアに納得がいかないのだ。リオの方がイオを知っている筈なのに、リオの知らないイオの顔をソフィアには向ける。リオはソフィアに嫉妬していた。
「ですが、イオが水城の泉に向かう前にふたつ私からお願いがあります。ひとつはリーフをイオのシャドウをリオの使い魔として契約をすることです。」
「おばあ様の使い魔と契約なんて出来ません。」
『そうよ。私たちずっと一緒。』
「私はもう年です。死ぬ前に自分のパートナーを自分の信頼する孫たちに託したいのよ。それに、リーフはソフィアに恩がある。きっとレオの役に立つわ。」
マリアンヌが首を横に降る。子供の頃からずっと一緒に居たリーフを手放すのだ。簡単な覚悟ではなかっただろう。イオは拳を握ると、リーフに向き合った。
「イオ・ヒカフルだ。将来はおばあ様を越える騎士になるつもりだ。」
『私はリーフ。まだ貴方を完全に認めてないけど、レオを仮の主人として認めるわ。』
「契約成立ね。」
マリアンヌの右手から、葉っぱの形の紋章が消えていく。そして、イオの右手に先程マリアンヌの右手から消えたのと同じ形の紋章が浮かび上がった。その紋章はマリアンヌに合ったのと比べて、色は薄く形も小さい。だが、イオとリーフの契約が成立したことを現していた。
「リーフ、イオを支えてあげてね。」
『ええ。』
マリアンヌは微笑む。そして、思い出したというようにふたつめのお願いを口にした。
「そうそう。イオたちの屋台だけど大変なことになっているわよ。凄い行列よ。私がこの学園の理事長になって、こんなに行列の出来る屋台は初めて見たわ。お客さんの相手しっかりお願いね。」
「大変だ。おい、ルース。屋台に戻るぞ。」
時間を確認した2人は顔色を悪くする。午後の屋台の開店まで10分しかない。イオは遠くでリアムや大勢の人と話すルースに大声で声を掛ける。
「はーい。そうだ。クロードとリアムも手伝ってよ。」
「良いですよ。」
「僕もです。変わりに、後で僕にもクッキーをくださいね。」
「最上級使い魔と王族に手伝わせるな。…って、ルースも最上級使い魔か。」
自分の言葉にイオは突っ込む。ルースが近くに来たのを確認すると、イオたちは屋台に向かって走った。
「おばあ様?」
「リオ。シャドウをお願いね。この子は野望があるみたいなの。きっと、リオと仲良くなれるわ。」
走ろうとしたリオの手を掴み、マリアンヌは耳もとでそっと囁いた。そしてシャドウをその場に残すと、イオたちの走っていった反対方向に歩きだした。
「どういう意味だ。」
マリアンヌの言葉の意味は気になるが、今は時間がない。リオは急いでシャドウと契約するとイオたちの後を追った。
後にこの学園祭は伝説に残る。入学したての1年生が、上級生を抑えて売上のトップに輝いたのだ。ソフィアのクッキーのお陰だ。
最上級使い魔と美形集団が販売したクッキーは平民だけではなく、貴族や王族までを魅了したと言われた。だが、その後この味を再現できた者はいない。なぜなら、販売した者の全員が学園を去ったからだ。しかし、全員が去ってもAクラスは学園を卒業するまで売上のトップを守り抜いた。スタンプ作戦や、クラス全員で強力する大切さを学んだ彼等は卒業後、全員が優秀な商人になったのだった。
「「おばあ様。」」
この学園の理事長であり、自分たちの祖母であり、ヒカフル一族の間でも最強の女と呼ばれるマリアンヌの登場に、イオ達の背筋は自然と伸びる。
「うふふ、2人とも大きくなったわね。」
久しぶりの孫たちとの再会だ。少し背が伸びたかしら?孫の成長を内心喜ぶマリアンヌだが、その目は冷たい。なぜなら、マリアンヌの心を支配する感情はそれだけではないのだ。
「ですがーー」
マリアンヌは老人とは思えぬ素早い動きでイオの懐に入り込むと、イオの体をがっしりと掴んで投げ飛ばした。イオは地面に体をぶつけて、顔を歪ませる。
「イオ。」
地面に倒れたイオを慌てて、リオが起き上がらせる。
「愚か者は助ける必要はありません。担任のサラから話は聞いています。せっかく、自分が尊敬する剣の使い手であるソフィアを見付けたのに追いかけないとは、何事ですか。」
マリアンヌの言葉にイオがはっとする。
「弱い者は私の孫には不要です。ソフィアの元で学ばせて貰いなさい。きっとあなたを強くするでしょう。」
「はい、おばあ様。」
どんなに凄い騎士や剣士と出会う時でも、イオをこれほど笑顔にした者はいただろうか。いや、いないだろう。笑顔のイオとは違い、リオは複雑そうな顔をする。
リオの知るイオは、無口でクールな騎士。他人を寄せ付けぬ威圧感を放ち、家族以外とは必要最低限しか会話をしない。そんな子だった。兄であるリオはイオの将来を心配しながらも、内心は喜びで満ちていたのだった。
(自分にしか素で話さない弟、超カワイイ。)
そう、リオは隠れブラコンだった。女の子に甘い言葉を掛けるのも、自分に興味を惹き付け悪い虫がレオに付くのを防ぐため。イオと同じ剣の道に進まなかったのは、カワイイ弟との戦いが出来ないからだ。
リオの行動の全ては、イオを中心として行われていた。だからこそ、突然現れたソフィアに納得がいかないのだ。リオの方がイオを知っている筈なのに、リオの知らないイオの顔をソフィアには向ける。リオはソフィアに嫉妬していた。
「ですが、イオが水城の泉に向かう前にふたつ私からお願いがあります。ひとつはリーフをイオのシャドウをリオの使い魔として契約をすることです。」
「おばあ様の使い魔と契約なんて出来ません。」
『そうよ。私たちずっと一緒。』
「私はもう年です。死ぬ前に自分のパートナーを自分の信頼する孫たちに託したいのよ。それに、リーフはソフィアに恩がある。きっとレオの役に立つわ。」
マリアンヌが首を横に降る。子供の頃からずっと一緒に居たリーフを手放すのだ。簡単な覚悟ではなかっただろう。イオは拳を握ると、リーフに向き合った。
「イオ・ヒカフルだ。将来はおばあ様を越える騎士になるつもりだ。」
『私はリーフ。まだ貴方を完全に認めてないけど、レオを仮の主人として認めるわ。』
「契約成立ね。」
マリアンヌの右手から、葉っぱの形の紋章が消えていく。そして、イオの右手に先程マリアンヌの右手から消えたのと同じ形の紋章が浮かび上がった。その紋章はマリアンヌに合ったのと比べて、色は薄く形も小さい。だが、イオとリーフの契約が成立したことを現していた。
「リーフ、イオを支えてあげてね。」
『ええ。』
マリアンヌは微笑む。そして、思い出したというようにふたつめのお願いを口にした。
「そうそう。イオたちの屋台だけど大変なことになっているわよ。凄い行列よ。私がこの学園の理事長になって、こんなに行列の出来る屋台は初めて見たわ。お客さんの相手しっかりお願いね。」
「大変だ。おい、ルース。屋台に戻るぞ。」
時間を確認した2人は顔色を悪くする。午後の屋台の開店まで10分しかない。イオは遠くでリアムや大勢の人と話すルースに大声で声を掛ける。
「はーい。そうだ。クロードとリアムも手伝ってよ。」
「良いですよ。」
「僕もです。変わりに、後で僕にもクッキーをくださいね。」
「最上級使い魔と王族に手伝わせるな。…って、ルースも最上級使い魔か。」
自分の言葉にイオは突っ込む。ルースが近くに来たのを確認すると、イオたちは屋台に向かって走った。
「おばあ様?」
「リオ。シャドウをお願いね。この子は野望があるみたいなの。きっと、リオと仲良くなれるわ。」
走ろうとしたリオの手を掴み、マリアンヌは耳もとでそっと囁いた。そしてシャドウをその場に残すと、イオたちの走っていった反対方向に歩きだした。
「どういう意味だ。」
マリアンヌの言葉の意味は気になるが、今は時間がない。リオは急いでシャドウと契約するとイオたちの後を追った。
後にこの学園祭は伝説に残る。入学したての1年生が、上級生を抑えて売上のトップに輝いたのだ。ソフィアのクッキーのお陰だ。
最上級使い魔と美形集団が販売したクッキーは平民だけではなく、貴族や王族までを魅了したと言われた。だが、その後この味を再現できた者はいない。なぜなら、販売した者の全員が学園を去ったからだ。しかし、全員が去ってもAクラスは学園を卒業するまで売上のトップを守り抜いた。スタンプ作戦や、クラス全員で強力する大切さを学んだ彼等は卒業後、全員が優秀な商人になったのだった。
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