最強使い魔軍団を従えて

K.K

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ドジっ子ルース登場

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「実は昨日の夜に誰が会長になるかで討論になって、誰もなりたくないからトランプで決めようという事で話が纏まり、私が負けてしまったんです。」

 トランプ。モコが調合で作った数字やハートなどのマークの書かれた紙のことだ。最初はこの紙でどう遊ぶかソフィアは分からなかったが、クロードにルールを教えてもらい、屋敷中で大流行している遊びだ。

「…因みにトランプは何の勝負をしたの?」

「ババ抜きです。」

 それは負ける。ソフィア達の心の声が重なる。せめて勝負がジジ抜きなら、ルースにも勝機はあった。だが、ルースは考えが顔に出やすく、ババを取ろうとすると笑顔に、それ以外の物を取ろうとすると顔が青くなる。勝負内容が決定した時点で、ルースが会長になる事は確実であった。

「なんで、よりによってルースが会長になるのよ。他にクロードとか、もっと適任がいるでしょう。」
 
「ごめんなさい。」

 謝罪するルースの目は涙が溜まっている。

「モコからクロードに会長になるよう頼んでくれない。」
 
『良いけど、クロードは絶対に断るよ。だって、勝負内容を決めたのはクロードだもん。』

 それはつまり、クロードが意図的にルースを会長に仕立て上げたのか。彼の考えることは時々分からない。クロードは何を思いルースを会長にしたのか。今のソフィアの頭では、これだという解答が浮かんでこない。

「事情は分かりました。けれど、少しだけ遅かったですね。先程クロードが商会の手続きをするために屋敷を出ていきました。」

「…それって。」

「ルース。貴女は既にルリアミーナ商会の会長なのよ。」

「無理、無理、無理です。ハンナァ、何とかして下さい。」

 ルースがハンナに縋りつく。余程、自分が会長になるのに自信が無いのだろう。涙を流しながら、何度も首を横に振る。

「分かっています。だから、ルースには暫くの間、ソフィアと一緒に学園に通ってもらいます。」

「学園に通うなんて、聞いていません。」

「今話しましたからね。商会学園。次世代の商人を育てる学園です。貴族の学園に異なり、年齢は問わず何歳からでも入れます。ソフィアの恥ずかしがり屋を克服する意味でも、ちょうど良い機会でしょう。」

 ハンナの発言にルースは涙を引っ込め、ソフィアは口を半開きにして絶句する。急に学園に通うように言われて、簡単に受け入れられる2人ではなかった。

「学園の手続きは私が既にしています。断ることは許しません。」

「そんなぁ。」

 ハンナの発言は絶対だ。ソフィアが学園に通う事実は、当主のクリスであっても覆せないだろう。

「それからソフィア。これは貴女への試練でもあります。学園で優秀な人材を見抜く目を養いなさい。そうすれば、私たちと同じように、ルースが会長に選ばれた理由が分かるわ。ねぇ、モコ。」

『うん。』

 ルースが会長に選ばれた理由?

 ソフィアはルースをじっと見詰める。ハンナが無理だと諦めたルースは、今度はエレナに縋っている。答えは分からない。だが、ルースにはソフィアが考えるよりずっと凄い可能性を秘めていた。
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