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35 スキル都市ラルハンス
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「あそこがスキル都市ラルハンスだ。」
「やっと見えたぁ。」
「歩き続けてたったの5日。やっとと言うほどの距離ではない。」
「リョウの体力アップは必要だな。この程度の距離でそんなに疲れていたら、戦闘時に真っ先にヤられるぞ。」
反論できない。でも山道をずっと歩きっぱなしなのだ。日本育ちで車移動に慣れた若者なら、誰でもキツいよ。グレイたちの体力が異常なのだ。
「マオも全然疲れてないのにな。」
「マオげんきぃ。」
「すいません。体力アップ頑張ります。」
そうなのだ。僕の体力はマオよりない。ただ言い訳をさせてもらうと、マオの体力が子供の割りに高いのだ。同じ魔人のルミアが驚くほどだ。だが、子供より体力がないと言われるのは、精神的に堪える。
「リョウがこの調子だと、今日は依頼は受けられないな。」
この状態で魔物は倒せない。因みにラルハンスに到着するまでの道中で何度か魔物に遭遇した。最初は魔物を攻撃するのを躊躇した。だが『エサ。』『くイタイ。』しか言わない魔物に攻撃するのを躊躇わなくなった。
とは言え、それは僕の体力がある時だけである。殆んどの戦闘に僕は参加せず立っていただけだった。
「仕方ない。今日は買い物の日にすればいい。休息は大切。」
「じゃあ行くぞ。」
「グ、グレイ兄さん。降ろしてよ。」
グレイがリュックをルミアに渡すと、僕をおんぶする。これで町に行くと絶対に人に見られる。恥ずかしい。
「我慢しろ。それにリョウの身長なら子どもにしか思われないよ。」
「ウソだ。ギルドで僕グレイの嫁に間違えられたもん。僕は大人だ。」
今は僕が『購入』で買った服を着ている。周りにハッキリとおんぶされている自分が認識される。降ろしてほしくて暴れるが、グレイは全く気にしない。
「リョウをドワーフと人間のハーフだと勘違いしただけだろう。」
「認識疎外の服を着ていたなら尚更勘違いされる。ハーフは迫害の対象になることがある。自分の正体がバレないように、服を着ていたと判断されただけのこと。」
「りょうにぃにもこども。」
そうですか。僕は子どもなのか。自分の背が低い現実を、突き付けられた気分だ。そのまま僕は暴れるのを止めて、大人しくすることにした。
「到着だ。取り敢えずその辺の店を適当に見ていくぞ。」
「うわぁ、色々あるんだ。…って高い。」
どれも店に並んでいる商品は10万Gより高い。高額な商品の数々に涼は目を白黒させる。うん。
何度確認しても僕が値段の桁を見間違えた訳ではない。本当にこの値段なのだ。ガネットが僕に鞄をオススメしたときがあったが、あの鞄だけが特別高い訳ではなかったのか。
「この辺の店全部スキルが付加されているからな。この値段は妥当な金額だぞ。」
「それにこの店は安いほう。貴族や王族の御用達の店は、倍の値段はする。」
金銭感覚の違いか、2人はさほど驚かない。商品を普通に手に取り、どんな効果があるのか確認していく。
「この靴なんかどうだ。速力の付加があるから足が早くなるぞ。」
お値段は25万G。
「ダメ。リョウは体力がない。スタミナ軽減の付加がある靴の方が良い。」
お値段は30万G。
「マオはこれがいい。しゅごそう。」
脚力アップの靴。…お値段50万G。
僕のことは無視して買う物を決めようとする3人だが、僕の話も聞いてほしい。
「そ、そんなに高いのいるかぁ!?」
「僕はいつまでもグレイのお金に頼りたくないの。あんなに高いのを同じパーティーでも、貰う訳にもいかないの。」
少し遅めの昼食を食べながら、僕は自分の意見を伝えた。スキルが付加された物を買うにしても、自分の稼いだお金で払える範囲の物がいい。
「装備を全部揃えるだけの財力リョウにはないだろう。ここは甘えておけ。後で返せば問題ない。」
「この間ギルドでお金を受け取らなかったのは誰だよ。」
だがグレイも引き下がる様子はない。このまま口論になると思われたが、次のルミアのひと言で解決した。
「ならリョウが自分スのキルを付加して、交換所に持って行くといい。出来が良ければ、かなり良い物と交換ができる。」
「自分のスキルが付加できるの。」
「ええ、私がリョウにあげた鞄は、私が付加の練習で作った『透明』のスキルを付加した腕輪と交換した物。材料費も5千Gくらいだった。」
お店で買うよりもそんなに安く作れるのか。自分で作った物を他人と交換した方が断然お得ではないか。
「だが交換所にリョウに必要なスキルの物があるとは限らないだろう。」
「その時はお金と交換する。あそこは新人の付加師も利用するから、買い付けに来る商人ギルドの人がいる。その人に売ればいい。特にリョウの持つ『鑑定』は欲しがる人多い。高値付く。」
ルミアの言葉に涼はキラキラした眼差しでグレイを見る。
「スキルの付加は難しいと聞く。失敗すれば原形すら留められない物も多い。それに付加に成功しても、効果が薄く実戦で役に立たない物が完成するかも知れない。それでも挑戦するのか。」
僕の才能しだいでは、材料費が全部無駄になるのか。しかし成功すれば格段に安く装備が手に入る。挑戦するメリットは大きい。
「やるよ。」
「分かったよ。リョウの好きにするといい。」
「食事を終えたら、私が付加を習った人の所へ案内する。」
どんな風にスキルを付加するんだろう。ワクワクしながら僕は昼食を食べ進めた。
「やっと見えたぁ。」
「歩き続けてたったの5日。やっとと言うほどの距離ではない。」
「リョウの体力アップは必要だな。この程度の距離でそんなに疲れていたら、戦闘時に真っ先にヤられるぞ。」
反論できない。でも山道をずっと歩きっぱなしなのだ。日本育ちで車移動に慣れた若者なら、誰でもキツいよ。グレイたちの体力が異常なのだ。
「マオも全然疲れてないのにな。」
「マオげんきぃ。」
「すいません。体力アップ頑張ります。」
そうなのだ。僕の体力はマオよりない。ただ言い訳をさせてもらうと、マオの体力が子供の割りに高いのだ。同じ魔人のルミアが驚くほどだ。だが、子供より体力がないと言われるのは、精神的に堪える。
「リョウがこの調子だと、今日は依頼は受けられないな。」
この状態で魔物は倒せない。因みにラルハンスに到着するまでの道中で何度か魔物に遭遇した。最初は魔物を攻撃するのを躊躇した。だが『エサ。』『くイタイ。』しか言わない魔物に攻撃するのを躊躇わなくなった。
とは言え、それは僕の体力がある時だけである。殆んどの戦闘に僕は参加せず立っていただけだった。
「仕方ない。今日は買い物の日にすればいい。休息は大切。」
「じゃあ行くぞ。」
「グ、グレイ兄さん。降ろしてよ。」
グレイがリュックをルミアに渡すと、僕をおんぶする。これで町に行くと絶対に人に見られる。恥ずかしい。
「我慢しろ。それにリョウの身長なら子どもにしか思われないよ。」
「ウソだ。ギルドで僕グレイの嫁に間違えられたもん。僕は大人だ。」
今は僕が『購入』で買った服を着ている。周りにハッキリとおんぶされている自分が認識される。降ろしてほしくて暴れるが、グレイは全く気にしない。
「リョウをドワーフと人間のハーフだと勘違いしただけだろう。」
「認識疎外の服を着ていたなら尚更勘違いされる。ハーフは迫害の対象になることがある。自分の正体がバレないように、服を着ていたと判断されただけのこと。」
「りょうにぃにもこども。」
そうですか。僕は子どもなのか。自分の背が低い現実を、突き付けられた気分だ。そのまま僕は暴れるのを止めて、大人しくすることにした。
「到着だ。取り敢えずその辺の店を適当に見ていくぞ。」
「うわぁ、色々あるんだ。…って高い。」
どれも店に並んでいる商品は10万Gより高い。高額な商品の数々に涼は目を白黒させる。うん。
何度確認しても僕が値段の桁を見間違えた訳ではない。本当にこの値段なのだ。ガネットが僕に鞄をオススメしたときがあったが、あの鞄だけが特別高い訳ではなかったのか。
「この辺の店全部スキルが付加されているからな。この値段は妥当な金額だぞ。」
「それにこの店は安いほう。貴族や王族の御用達の店は、倍の値段はする。」
金銭感覚の違いか、2人はさほど驚かない。商品を普通に手に取り、どんな効果があるのか確認していく。
「この靴なんかどうだ。速力の付加があるから足が早くなるぞ。」
お値段は25万G。
「ダメ。リョウは体力がない。スタミナ軽減の付加がある靴の方が良い。」
お値段は30万G。
「マオはこれがいい。しゅごそう。」
脚力アップの靴。…お値段50万G。
僕のことは無視して買う物を決めようとする3人だが、僕の話も聞いてほしい。
「そ、そんなに高いのいるかぁ!?」
「僕はいつまでもグレイのお金に頼りたくないの。あんなに高いのを同じパーティーでも、貰う訳にもいかないの。」
少し遅めの昼食を食べながら、僕は自分の意見を伝えた。スキルが付加された物を買うにしても、自分の稼いだお金で払える範囲の物がいい。
「装備を全部揃えるだけの財力リョウにはないだろう。ここは甘えておけ。後で返せば問題ない。」
「この間ギルドでお金を受け取らなかったのは誰だよ。」
だがグレイも引き下がる様子はない。このまま口論になると思われたが、次のルミアのひと言で解決した。
「ならリョウが自分スのキルを付加して、交換所に持って行くといい。出来が良ければ、かなり良い物と交換ができる。」
「自分のスキルが付加できるの。」
「ええ、私がリョウにあげた鞄は、私が付加の練習で作った『透明』のスキルを付加した腕輪と交換した物。材料費も5千Gくらいだった。」
お店で買うよりもそんなに安く作れるのか。自分で作った物を他人と交換した方が断然お得ではないか。
「だが交換所にリョウに必要なスキルの物があるとは限らないだろう。」
「その時はお金と交換する。あそこは新人の付加師も利用するから、買い付けに来る商人ギルドの人がいる。その人に売ればいい。特にリョウの持つ『鑑定』は欲しがる人多い。高値付く。」
ルミアの言葉に涼はキラキラした眼差しでグレイを見る。
「スキルの付加は難しいと聞く。失敗すれば原形すら留められない物も多い。それに付加に成功しても、効果が薄く実戦で役に立たない物が完成するかも知れない。それでも挑戦するのか。」
僕の才能しだいでは、材料費が全部無駄になるのか。しかし成功すれば格段に安く装備が手に入る。挑戦するメリットは大きい。
「やるよ。」
「分かったよ。リョウの好きにするといい。」
「食事を終えたら、私が付加を習った人の所へ案内する。」
どんな風にスキルを付加するんだろう。ワクワクしながら僕は昼食を食べ進めた。
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