上 下
30 / 49

30 グレイの嫁!?

しおりを挟む
「イヤだ。スライムたちとおやくしょくしたの。ぜったいにあしょびにいくの。」

「グレイ兄さん助けて。」

「俺かよ。えっと…、またこの町に来るから、その時に来ような。」

「イヤなの。ふぇーん。」

 マオが泣き止まない。スライムたちと遊びたいらしい。でも昨日のグレイの話からして、今日にでも宿を出た方がいい。モドキの話をマオにする訳にもいかないし、本当にどうしよう。

『お昼前に帰る約束で森に行くのはどうですか。今から行けば、2時間くらい遊べますよ。』

「「それだ。」」

「報告はお昼近くでも問題ないだろう。だが魔人は襲ってくる可能性はゼロじゃない。リョウは宿のチェックアウトをしてくれ。俺はマオと森に行ってくる。」

「分かったよ。じゃあお昼にギルドに集合ね。」

「了解。ギルドに行ったら、報告のついでにパーティー登録の手続きもしような。」

 本当ならマオの意見を聞かないで、宿を出るのが正解だろう。しかし僕もグレイもマオには甘かった。マオのワガママを無視出来なかった。




「元気でね。次にフルフッテに来たときは、必ずまたこの宿に泊まってね。」

「はい。」

 お昼が近くなり、宿に出る準備終えた僕は女将さんに別れを告げた。
 カップラーメンの入った段ボールと、グレイの荷物の入ったリュックを背負い、ギルドに向かう。実際に背負ってみて実感したが、このリュックかなり軽い。僕も欲しいけど、幾らするんだろう。

『20万Gで私の所は取り扱っています。』

「急に話し掛けないで。ビックリしたな。」

 僕が呼んでないのに、ガネットがやって来て説明を始めた。値段が判明したのは有り難いが、突然段ボールの上に現れるのは心臓に悪いから止めてほしい。それに僕のスキルレベルが低いので種類が少ない。ガネットが薦めるリュックは1つしかなく色も形も選べない。

『ご主人様の購買欲を察知したのでつい…。失礼しました。』

「またね。」

 でも今後購買するときのの参考になったし良しとしよう。



 

 カラン、カラン。

「まだ来ていないか。」

 ギルドに着いた僕はグレイたちがいないか周囲を探すが見つからない。まだ約束の時間まで30分くらいある。早く宿を出過ぎたようだ。椅子にでも座って待ってよう。

「あのすいません。少しお話しよろしいかしら?」
「はい。」

「神の導きのメンバー、緑の戦乙女だ。森の調査から帰還したのか。」
「会えるなんて超ラッキーだな。」
「他のメンバーは一緒じゃないのか。」

 僕に声を掛けた女性は有名人のようだ。でもこんなに沢山人が周りに居るのに、何で僕に声を掛けたんだ。僕自身に用事でもあるのかな。

「あなたがグレイの大切な人(妻)って本当ですか。」
 
「えっと、多分そうです。一緒の部屋に泊まったり食事をしたり、色々と僕のことを気にかけてくれます。」

「多分って何よ。ふざけるな。グレイは誰ともパーティーを組まずに、ずっとひとりだったの。その幸せアピール今すぐ止めなさい。」

 話が全然理解できない。この女性とグレイとの関係は何。女性が怒っている理由も意味不明だよ。これは次にどんな言葉で答えるのが正解なんだ。

「ご、ごめんなさい。」

 状況の把握は無理だ。僕は詳しく話を聞こうと一応謝ってみたが、火に油を注いだだけだった。選ぶ言葉を間違えたよ。

「謝って済む問題じゃない。私と勝負よ。私が勝ったらグレイと別れなさい。」

「別れるも何も、僕たちはまだ一緒(パーティー)になっていません。」

「そんなの嘘よ。グレイが未婚の相手に手を出して、子どもまで産ませるはずないわ。すぐにバレる嘘を付かないでちょうだい。」

 この女性絶対に何か勘違いしている。それに怒っていて、話が通じる様子ではない。誰かに助けを求めようと辺りを見るが、僕と目が合うと目を反らされてしまう。

「ヴェルディ‼他の人に絡むのは止めなさい。」
「あはは、ヴェルディが我を忘れるなんて珍しい。絶対にグレイが関係しているね。」
「すまんな。俺のパーティーが迷惑を掛けた。神の導きのリーダーのマルコだ。」

「僕はリョウです。凄い困っていた所なんです。助かりました。」

 困っていた僕の背後から救いの手を差し出す人たちがいた。ヴェルディのパーティーの人だ。彼らには話が通じそうだ。ヴェルディは仲間の前では強く言えないようで、僕を睨んでいる。まあ睨まれるだけなら、大きな被害もないし、放っておいて平気だよね。

「それでヴェルディさんは何で怒っているんですか?」
 
「ただの嫉妬だよ。グレイに超美人なお嫁さんと、子どもがいると噂があってね。」

「そんな噂があるんですか。」

 知らなかった。するとヴェルディはグレイのことが好きなのかな。それで噂の女性を見に来たのか。………待てよ。もしも噂の子どもがマオだとすると、グレイのお嫁さんはーー。

「あのそのお嫁さんって。」

「君のことだろう。本当に美人だな。それに服に認識阻害が掛けられている所から考えると、相当大事にされているね。」
「カワイイ妻は他人に見せたくないのか。グレイが独占欲強いなんて意外だな。超受ける。」
「グレイはそんな人じゃない‼このハーフ女に騙されているの。私が助けて目を覚まさせるんだから。」

「誰ですか。」

 至極当然だと言わんばかりに、会話をする神の導きの人たち。またこのパターンですか。確かに女顔なのは認めますよ。でも本人に確認しないで、グレイの嫁扱いされるのは許せない。

「…もう1度聞きます。噂を流したの誰ですか?」

 冷たい声音しか僕の口から漏れない。笑顔で会話していた神の導きだけど、みんなの顔色が急に変わった。

「俺は知らねえ。ユニスは分かるか。」
「私も知らないわよ。それより急に雰囲気が変わったけど大丈夫。」
「そうそう、怒った顔もカワイイけど、女の子は笑った顔が1番だよ。」

「僕は男だ‼」

「「「「えええええええ。」」」」

 そんなに驚くことか。イライラする。この場から去りたいが、グレイとの待ち合わせ場所を離れるのはダメだ。携帯があれば速攻で連絡するのにな。

「お、おお、男の子。」

「ヴェルディ落ち着いて。ちょっとごめんね。…本当に胸がない。」

「貧乳じゃないのか。」

 ユニスが僕の胸を触る。そこまでしないと信じられないのか。

「男に胸があるのか。そんな常識も分からないんですか。」

「すまん。本当にすいません。」

 顔を青くして謝るなら、最初から発言するな。周囲も騒がしいし、本当に早くグレイたち来ないかな。

 カラン、カラン。

「りょうにぃにみっけ。」

「マオ、グレイ兄さん。…それと誰?」

 グレイの隣には帽子を被った見慣れない女の子がいた。

「ルミア。この男に拾われた。」

「人を誘拐犯みたいに「そいつがグレイの奥さんか。」…はぁ?」
「落ち着いて。見た目が全然違う。名前が同じだけの別人よ。」
「イヤ、この声はグレイだ。」
「本物だったのか。だとしても落ち着け。」
「…穢らわしい。」
「誤解だ。」
「たくさんあそんだの。」

 グレイに早く来てほしかったが、余計に面倒になった。カオスだ。神の導きはヴェルディがルミアに襲いかかるのを防ぎ、ルミアは自分の体を腕でガードしてグレイを警戒して、グレイは必死に誤解を解く。そしてマオは騒ぎを無視して僕に森でのことを話す。

「誰かこの状況何とかして~。」

 誰かに助けを求めずにはいられない涼だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話

亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。

処理中です...