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追憶のキミ29

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-西の対の屋- に近い *西櫓(ヤグラ)

 心紀と倫


(な、何だ?人の泣き声みたいな… 誰だ?そこにいるのは?倫か?)

ガラっ

倫「心紀様ぁ」

心紀「当たりだ… 何を泣いているのだ?何があった?」

(そうだ …倫は、倫の父親に話があると呼ばれて行ったんだった…)

 倫は、櫓の中、隅に座り、膝を抱え顔を埋めて泣いていて

心紀「倫?大丈夫か?私の伯父上の妄執にそなたの父は… 伯父上の家臣とはいえ… 意にそぐわない命に従わねばならず、苦しんでいるのだな。本当にすまない…」

倫「家臣の勤めですから…」

心紀「…本当に何があった?正直に答えなさい?お前が泣いているという事は… まさか… 伯父上の妄執に同意しているのは数人と聞いている。その数人が、風の若君を… そんな… そのような事を 本当にしようとしているのか?!」

(いつも穏やかな心紀様が、顔色を変えて怒りに震えていらっしゃる。一つ上の心紀様は、お優しくて。小姓である私や全ての、下々の家臣にまでお優しい方で…)


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