9 / 43
キミの涙。心が切なくて
しおりを挟む「気づいてらしたんですね……補聴器のこと。それに……」
拓眞は、 話をしている マミを見つめながら 。
(マミちゃんて、話をする時ジッと相手の表情、目を見つめるんだなぁ。可愛いな)
心が、ぎゅっ。
って なる感覚を覚えていた。
「……あの、私、間違えて書きましたか? マメって。マミです」
けど、ジッと見つめて来る、その大きな瞳は不安そうに揺れていて。
(あ、ヤベ)
拓眞は、 自分が感じた想いと。口に出した言葉がマミにとっては……
「ごめんなさい。マミちゃん。大丈夫。書き間違えてなんかないよ。マミちゃん って、名前もだけどさ。なんか可愛い子だなぁ。マメちゃんて感じだなぁ、なんて思っちゃって」
ボッ。
マミは、なんか、照れちゃうような言葉で答えた拓眞に、ほっぺたが熱くなって
ぎゅっ。
って、心から音がして。
「色々とごめんなさい。本当に」
「なんで謝るの?」
なんでか急、に謝ってきたマミに。拓眞は 。
(ん?)
って思って。
優しく聞き返す。
「昨日は急いでいたとはいえ、助けていただいたのにお礼も言わずに帰っちゃうし。今日も。図書館では、貴方に気がつかないで。オマケにいつも下を向いて……とか。今まで失礼な態度ばかりとってきて。このお店に来る前には。ぎゅっ。って、で、でづ、かさんのコートつかんじゃうし。本当にごめんなさい」
マミが、大きくて綺麗な、二重の瞳に涙を浮かべて謝るのを。拓眞は。
ぎゅっ。
って心締め付けられて。心が苦しくなって。
「マミちゃん。謝らないで。キミは悪くないから。スーパーではあの親父がっ。間違いなく悪いし! 自動支払機の存在を知らなかったんだし。耳……の事とかね。透明マスクを使用するとか。店側が対を応検討しなきゃなんなかったしね。それは俺も同じ。図書館で。接客業で働いている者としてね。恥ずかしいよ。さっきも言ったけど。あの子たちは、人の迷惑も省みず大声で話して。周囲に目を配らないで歩いてたのが悪いしね」
「だから、今日は透明マスクをしてたんですか?」
「用意してたんだよ。なのにさ……」
「私も、持っているんです。透明マスク……使用するには、ちょっと勇気いりますもんね」
透明マスク。接客業など。人と関わる仕事をする人間にとっては、 相手の口元が見えて話している内容も、感情も。表情で分かって。便利な反面。中々浸透していなくて。街中でしながら歩いていると、どうしても振り返られちゃって。
(恥ずかしい……)
が、先に立っちゃって。
「私……右耳は 生まれつき聞こえないんです。左耳は補聴器を外すとほとんど……」
マミの告白。 とっても悲しくて。心が切なくて痛くなる告白だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
Ruby キミの涙 ~初恋と宝石~Ⅴ
桜花(sakura)
恋愛
Ruby キミの涙 ~初恋と宝石~Ⅴ
https://estar.jp/novels/25960145
初恋と宝石シリーズ第5弾
ライターの彼氏×心に傷を追った女の子
〈正義はどこに… 〉
思う様な記事を書けず書かせてもらえず、日々理不尽に、イライラが…
そんな彼
正義が正義ではないと言われた 彼女…
キミは深く傷ついたはずなのに…
いつも慈愛に満ちた瞳をしているね
キミのその涙を
笑顔に変えてあげるから…
Sapphire小悪魔系男子にご注意asobase?〈離れてもマタ巡り逢う〉~初恋と宝石~
桜花(sakura)
恋愛
雪の日出逢った…初恋の人?
初恋と宝石シリーズ4弾
一人で生きて行くから!…って言いたいけど現実は…悔しいけど一人では生きられない…
危なっかしいヤツ…見てらんねぇさてさてどうしようかねぇ?
試練は乗り越えられる人間だけに?嘘だ!絶対に!幸福と苦しみ、人は半分ハンブン平等に与えられる?信じられない!
今は苦しいだろうけど…これからは幸福がオマエに…Sapphire(誠実の石) 誠実に愛する…向き合うよ
色々起こる出来事に…生きる事に少し疲れたの…不思議なアナタいつも助けてくれる…
テーマ
開けない夜は無い.守りたい人を支えてあげるには?それぞれの方法で貴女を守る!.不思議な小悪魔系男子…何者?
彼女を溺愛する彼氏
色々起こる出来事に…生きる事に少し疲れたの…不思議なアナタいつも助けてくれる…
テーマ
開けない夜は無い.守りたい人を支えてあげるには?それぞれの方法で貴女を守る!.不思議な小悪魔系男子…何者?
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる