ぎゅっ。

桜花(sakura)

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キミの涙。心が切なくて

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「気づいてらしたんですね……補聴器のこと。それに……」  

 拓眞は、 話をしている マミを見つめながら 。  

(マミちゃんて、話をする時ジッと相手の表情、目を見つめるんだなぁ。可愛いな) 

  心が、ぎゅっ。

って なる感覚を覚えていた。

  「……あの、私、間違えて書きましたか? マメって。マミです」  

 けど、ジッと見つめて来る、その大きな瞳は不安そうに揺れていて。
  
(あ、ヤベ)  

 拓眞は、 自分が感じた想いと。口に出した言葉がマミにとっては……  

「ごめんなさい。マミちゃん。大丈夫。書き間違えてなんかないよ。マミちゃん って、名前もだけどさ。なんか可愛い子だなぁ。マメちゃんて感じだなぁ、なんて思っちゃって」   

 ボッ。   

  マミは、なんか、照れちゃうような言葉で答えた拓眞に、ほっぺたが熱くなって   

  
     ぎゅっ。   


  って、心から音がして。  


  「色々とごめんなさい。本当に」 

 「なんで謝るの?」  

 なんでか急、に謝ってきたマミに。拓眞は  。

(ん?)   



  って思って。

  優しく聞き返す。  


「昨日は急いでいたとはいえ、助けていただいたのにお礼も言わずに帰っちゃうし。今日も。図書館では、貴方に気がつかないで。オマケにいつも下を向いて……とか。今まで失礼な態度ばかりとってきて。このお店に来る前には。ぎゅっ。って、で、でづ、かさんのコートつかんじゃうし。本当にごめんなさい」  

 マミが、大きくて綺麗な、二重の瞳に涙を浮かべて謝るのを。拓眞は。  


 ぎゅっ。  

 って心締め付けられて。心が苦しくなって。      



「マミちゃん。謝らないで。キミは悪くないから。スーパーではあの親父がっ。間違いなく悪いし!   自動支払機の存在を知らなかったんだし。耳……の事とかね。透明マスクを使用するとか。店側が対を応検討しなきゃなんなかったしね。それは俺も同じ。図書館で。接客業で働いている者としてね。恥ずかしいよ。さっきも言ったけど。あの子たちは、人の迷惑も省みず大声で話して。周囲に目を配らないで歩いてたのが悪いしね」 
 

  「だから、今日は透明マスクをしてたんですか?」    

「用意してたんだよ。なのにさ……」


    「私も、持っているんです。透明マスク……使用するには、ちょっと勇気いりますもんね」     

  透明マスク。接客業など。人と関わる仕事をする人間にとっては、 相手の口元が見えて話している内容も、感情も。表情で分かって。便利な反面。中々浸透していなくて。街中でしながら歩いていると、どうしても振り返られちゃって。  

   (恥ずかしい……)      

   が、先に立っちゃって。  


  「私……右耳は 生まれつき聞こえないんです。左耳は補聴器を外すとほとんど……」   

     マミの告白。   とっても悲しくて。心が切なくて痛くなる告白だった。   
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