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女王様

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 団体さんがこちらへやってきた。

 ......うん、色んな動物がいるね。

 モフみが足りずに禁断症状が出ている俺だけど、ここで自我を失って暴走するのは悪手だとわかる。そしてあんまりこのモブモフらにはソソられない。


 猫科が多く、猫科以外の他の生物までこちらを警戒しまくっている姿勢なのも、自制できている要因なんだと思うけど。

 でもなー......完全についでだけど、せっかく解放してあげようと思って来ているのに、ここまであからさまな態度を取られると、やる気無くすなー。コイツらは望んで奴隷という立場に甘んじているように見えてきちゃって、こいつらが今後どうなってもよくなってきたなー。

 ......はぁ、やる事やって早く帰ろう。
俺は、敵意を剥き出しにしてくる相手だろうが誰彼構わず助けちゃうような聖人ではない。警戒心から来る威嚇以外をしてきたヤツは、帰り際にどうにかして処分するとしようかな。

 そんな奴隷達の内訳は......

 ヒョウとかチーターみたいな猫科が三十匹程、コレらはもう完全放置。俺を威嚇してるし、喋れないだろうしどうでもいい。

 トラとかライオンみたいなタイプが二十匹程、知性が感じられず、げっそりしていている。最初はガチ威嚇していたが、今は俺が解体していたトカゲ肉を血走った目で見ている。コイツら可愛くない。

 そして厳つい狼タイプが二十匹程、コイツらも威嚇してきてるからどうでもいい。どうせコイツらも、じゃれていると見せかけて首を狙ってくるんでしょ。放置安定。

 ここまではまぁ前座ですよ。ここからがメインだ。初めて見る魔族や亜人種。

 オーガみたいな鬼が三体。
 全員生きるのを諦めたような目をしている。ツノは小ぶり。ゴリマッチョが二体に細マッチョが一体。

 エルフっぽいのが五体。
 完全に無になっている。美形なんだろうけど、どいつもこいつも人形みたいで気持ち悪い。女はちっぱい。

 そしてラミアかナーガみたいなの。 
 下半身が蛇で、上半身がかなり魔物寄りの亜人っぽい姿をしているのが二体。子どもっぽい姿で怯えている。ラミアはもっと人寄りな気がするから、一旦ナーガとしておこうか。

 最後にキメラっぽいのがいた。
 コウモリっぽい羽と馬の下半身に加え、鹿だと思われる上半身。角が立派。
 何だこれは。トカゲより強そうなのに、何故捕まっていたんだろうか......ヤツはおめめが見た目にそぐわない可愛さだった。キラッキラしていてやばい。

「お前らの境遇とかはどうでもいいからサクサク行こう。えー、俺と会話ができるヤツは俺の右側に。トカゲと俺の両方と会話ができるヤツは俺の左側にきてくれ。
 俺が気に食わないヤツや、協力したくないヤツは俺に攻撃してくればいい。俺を無事倒す事ができれば自由、負ければ死......わかりやすくていいだろ」

 俺の言葉の前半に反応したのはキメラとナーガ。後半に反応したのは猫科のほとんどと、狼全員にエルフ全員。威嚇してきたヤツの処分もついでに行えて一石二鳥の案だ。よく思いついたぞ俺!

 言われた言葉に素直に従い、俺の横まで移動したキメラとナーガには待機しててと伝え、俺に立ち向かおうとしている愚か者共と対峙する。

「ついでに死にたいと思っている奴も出てきていいよ。そちらは苦痛を感じる事無く、一瞬で殺してあげるから」


 付け足した言葉に反応したのはオーガと猫科の残り。

 結局俺は異世界にきても猫科には好かれないんだなと理解した。もうやだ。

 いくらモフいのが好きだとしても、全てを愛するなんて芸当......俺には無理だ。
 話せばわかる、誠意を持って対応すれば~なんて事は幻想。動物相手だと一度嫌われたら次のチャンスなんて来ない。そこで試合終了なんだよ。

「さぁどっからでも掛かっておいで」

ㅤいつでも飛びかかれるような体勢を取る動物達と、動物を盾にしながら作戦会議をしているエルフ共が見える。

ㅤさぁて......どうやって対処しようかな。実験に付き合って貰うのがいいのかな?

 ここで一撃でも食らってしまえば、きっと獣臭により遊んでいた事がバレてしまう。
 帰る日を遅らせればバレないだろうけど、それは俺が耐えられない。

 あぁ......魔王ごっこして遊んでいた頃が懐かしいわぁ。最近の俺、ガチで魔王と言われてもおかしくない働きをしている気がする......

 なんか悲しくなってきた。

 よし、さっき使った鞭攻撃が結構良かったからまた使っちゃおうかな......ついでに名前でも付けちゃうか。

 どうせなら最高に巫山戯た技名にしちゃおうかな。HAHAHA!!


「......よし、決まった。マゾ豚共よ、覚悟しろ【愚かな豚を打つ闇鞭女王様からのご褒美】」

 おふざけ全開な名前の割りに、発動した瞬間に結構な魔力が使われる。そしてガチめなヤバさを感じたので、ナーガとキメラを隔離。運び屋をしてくれたトカゲは......別に気を使う必要は無いか。

 明確なイメージが出来たからだろうか......
 俺の発動させた闇鞭は、想定以上のアップデートが成されていた。

 まず鞭の種類が増えた。多種多様の鞭が縦横無尽に振るわれている。

 ここまではまだいい。ここまではいいんだ。


 ただ、鞭じゃないヤバいモンが発現したのが頂けない。

 ......うん。鞭が乱舞する技だと思っていたのに、どうしてこうなった......


 はーい。皆さんSM嬢を想像してくだーい。


 そう問い掛ければ、十人中九人はこんな格好を思い浮かべるんだろうなーって姿の女王様が俺の背後に現れたの。
 髪の毛はメデューサと同じく蛇で、肌は青白くてオーラがやばい。

 鑑定しても何も見えないから、ナニかやべーのを召喚してしまったって訳ではないっぽいのが不幸中の幸い。
 魔力が具現化したモノとでも言えばいいのか......まぁもう出来ちゃったのはどうにもならない。

「後はお任せします」

 そう言い残して部屋の隅に移動する。
 この時点で歯向かってきたヤツはガクブルしている。

 俺もガクブルしている。

 部屋の隅へ移動しながら、死を望んでいたヤツらだけは吸引してあげた。

 残ったヤツらはどうにでもなーれ★

 大人しく部屋の隅に座り、ヤツらの様子を観察していたら動きがあった。

 不意にニタァって女王様が笑ったと思った瞬間、先頭に居たライオンの頭が弾けた。一拍遅れて風切り音と破裂音が二つ。

「お、音を置き去りにしている......」

 思わずモブみたいな解説をしちゃった。
 いやぁ......鞭のスピードが早すぎじゃないっすかね......

 一度振るった事で力の入れ加減を確認出来たのか、二度目に振るった鞭は相手の表皮を裂く程度に留めていた。

 楽しそうにしながらジワジワと相手の肌を削っていく女王様。


 ......これは放っておいてもよさそうだね。
 俺の予定が終わるまで、ブタの調教を楽しんでいてください。

『ラァァァァァー♪』

 思っていた事が伝わったらしく、ラ〇エルさんみたいな声を発し、上機嫌で鞭打ちを楽しむ女王。思っただけで伝わるとか怖い。

 俺はその光景を後目に、隔離したヤツらの元へと向かっていった。



 ◇◇◇



 隔離空間に入ると、ビクッとしやがったトカゲとナーガ。
 キメラは......なんと言うか読めない相手。何考えてんだろう。

 オドオドしすぎて可哀想だからナーガは無視してキメラに話し掛ける。

「確認なんだけど言葉は話せるんだよな?」

『ハ、イ』

 カタコトで話すのに慣れてなさそうだけどしっかりわかるからオーケー。口が動いていないけど、何故か耳に声が届いている。

「じゃあそこでグルグル巻きになっているトカゲから、俺の聖域に手を出そうとした理由を聞き出してほしい。よろしくね」

『ワカ、リマタ』

 キメラがトカゲに向かっていったので、今度はナーガに向き合う。

「そんなに怯えなくてもいい。君たちは喋れるんだよな?」

 二人で寄り添い、小刻みに震えながらも俺の方をしっかり見ながら頷いたナーガ。

「別に危害を加えようとしてるわけじゃない。一度喋ってみてくれないかな?」

『私たちが、憎くないんですか?』

 綺麗な声でビビった。
 それと、憎いってなんだ?

「憎いとか言われてもわからない。人間となんか確執があったりするのか?」

『過去、魔族と人族が争い、双方大打撃を受けました。それ以降、人族は、魔族を見ると、「憎い」「敵だ」「殺せ」と、狂ったように叫びながら、大人数で、私達に襲いかかってきました』

 過去の争いをいつまでも根に持って、魔族を狩っていたんだろう。
 合言葉は「憎い」「敵だ」「殺せ」......きっと狂国が主導したんだろうなぁ。

「過去の戦って何年くらい前に起きた事なのかな?」

『正確な事はわかりませんが、五百年以上も、前の事です』

 人間はもう誰も覚えてないね。それっぽい事は書物とかには残っていた気がするけど、誰も気にしていなかったな。

「そっかぁ......それで君たちは他のヤツらに比べて結構綺麗だけど、いつ頃トカゲに捕まったの?」

『五ヶ月くらい、前に、人間に襲われて、それから必死に、山の中に逃げて、この子と暮らしていたんですけど......一ヶ月前くらいに、ドラゴンに見つかって......』

 ......襲ったの狂国だろうなぁ。

 ......そして、俺を偵察した帰りのトカゲに見つけちゃったんだろうなぁ......

「俺が協力してほしいと思った事をやってくれたら自由にしてあげるから」

 どっちも巻き込まれただけだけど、俺も関係のあった事なので、この子らはしっかり自由にしてあげようと思う。ごめんね。
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