上 下
69 / 183

鳥頭

しおりを挟む
 お昼を回ったので、ここら辺で一旦昼食休憩をとる事にした。

 俺のテンションはまだ下がったままだけど、まぁまぁ元通りになってはいるので、お嬢様は俺に優しくなってきてくれている。
 もう気持ち悪くなっちゃダメだよ!と念と肉球を押される。気持ちよかったです。

 イエス、マイプリンセス。仰せのままに。

 曇り空の下、レジャーシートを広げてピクニック風のランチタイム。
 食べ物はいつものだから、気分だけのピクニックだけど、それでも楽しい気分にはなれる。

 焼いたお餅とビーフジャーキーを、今日も俺の手から食べさせてあげる。美味しそうに、そして嬉しそうに食べている姿が可愛い。
 直接食べさせてもらうのが嬉しいのってどんな意味があるんだろうか。ちゃんと調べておけばよかった。

 俺の今日のお昼ご飯は魚肉ソーセージを一本。さっきまで団子を食べていたから、全然お腹が空いていなくてこれだけで満足です。

 天使たちとの触れ合いを優先したランチタイム。ずっとベタベタしていたくなるけど、早く移動しないと雨が降ったらやばいので、泣く泣く諦めて移動を優先する。

 午後からの移動はいつ雨が降ってきてもいいように、木が生えている所の近くを進んでいる。

 ここら辺の土地は、特別変わった事など特にないただの草原が広がっているだけなので、何も考えずに移動していく。

 それでも前回の草原が地獄のように思えた感覚は全然やってこないので、穏やかな気持ちのまま進んでいけている。

 移動の途中で鬼ごっこをしたくなったお嬢様に付き合って、走り回る時間があったりもしたけれど、他には何も起きず草原を進んでいった。

 おやつの時間くらいになった頃に、ここまで平和に進んでいた移動の時間が終わってしまった。
 急に空からゴロゴロと雷がスタンバイしている音が聞こえてくる。
 そこから間髪入れずに雨が降ってきた。

 うん、降り出してきやがりましたよ......

 お嬢様が小さくなって俺のシャツの胸元から顔を出すスタイルになる。この位置にいてくれると凄く落ち着く。
 胸ポケットにはピノちゃん、胸元からあんこのスペシャルなコラボとなった。実に素晴らしい。

 今日は雨が降りますよーって予兆は最初から見せていたけど、降りそうになってから降り出すまでが早いよ......

 この感覚は完全にゲリラ豪雨だ。懐かしさすら感じるくらい......よく被害に遭ったもんだ。

 雨粒がデカいし、勢いがすごい。肌にビチビチ当たる。
 探知してみたけれど、近くに避難出来そうな場所が無かったので、雨の中を走って避難場所を探していく。

 走っていると、俺の移動速度で5分ほど離れた場所に建物らしきものを感知。
 人やモンスターの気配は感じられないので、そこまで急いで向かう事に。

 かなり遠い所まで探知できるようになったし、成長したな俺も。

 こんな大雨の中なのに手古摺っていてごめんね。本気を出して移動するからもう少し待っててほしいです。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
 全力で移動してやっと辿り着けた場所は、完全に罠だと思えるような見た目の、怪しい小屋だった。
 普通の掘っ建て小屋の様に見えるけど、外観だけは綺麗な新築っぽさを醸し出している。
 しかし建物の周囲の草は伸び放題、手入れされている形跡は0。

 うん。すっげぇ怪しい。渡りに船な現状と、不自然なキレイさの小屋。

 一応鑑定して罠かどうかを調べてみた。


 ▼魔樹材の小屋

 とある大工が魔樹を使用して作成した小屋
 大工の技術と木材の品質、そして土地の魔力を吸収しているお陰で劣化するスピードが極限まで抑えられている▼

 ......あーうん。怪しい建物ではなさそうですね。
 しかし、また魔樹のチートが明らかになってしまった。木材になっても魔力を吸収して蓄えるのかよ。

 一応ここへ泊まってみても大丈夫か、お嬢様とピノちゃんに確認をとってみる。

 何があっても大丈夫でしょ?とお嬢様とピノちゃんが仰った。
 ここまで信頼されているのに俺が怖気付くのはカッコ悪いか。なにがあっても俺がどうにかしちゃうよ!!

 よっしゃ!今日はここに泊まらせてもらおう。入りづらいし、なんか変な虫がいたら嫌なので、草をブラックホールで刈り取ってから小屋へ入る。

 中には何も家具の類は無くて、家具の残骸らしきモノはあった。
 間取りはただのワンルーム。Kは無い。

 不思議な空間だなぁ......
 どんだけ長い時間放置されていた建物なんだろう。

 念入りに探知をしてみるも、何かが潜んでいる気配は感じられない。
 これなら安心してもいいかな。

 それでも俺だけ被害を受けるならいいけど、うちの天使たちに何かあったらいけない。

 不足の事態に備えて、安心6:警戒心4くらいの気持ちで過ごす事にした。


 家具の残骸や埃を片付けてから、ロッキングチェアと畳を床へ出していく。

 あんこは椅子へ、ピノちゃんは畳の上にそれぞれ向かっていってダラっと寛ぎ始めた。

 この子たちから信頼されている事を、野性味が全く感じられないその姿から感じて少し嬉しい。これからも可愛い姿だけを俺に見せてください。

 誰も侵入出来ないように罠をセット、ここまでやってようやく一息つけた。

 この小屋の中はフローリングと壁、柱と天井だけしかないので、料理や入浴が出来そうもない。

 外に炊事場とかもあったのかもしれないけど、既に何も残っていなかったので、この部屋でやれる事は大人しく寝るくらいしかなさそう。

 魔樹の木の性能がわかったって事だけは収穫だったこの小屋。

 天使たちはもう寝てしまったので、やる事がほんとに無い。

 建物に打ち付ける雨の音と、鳴っている雷の音を聞きながら俺も横になって目を閉じた。



 ◇◇◇



 多分今は夜中なのかな?変な気配を感じて目を覚ました。
 天使たちはぐっすり寝ているのでここは安心。ゆっくり寝てていいからね。

 外に出てみると雨は既に止んでいたが、地面はぬかるんでいて、ぐちょぐちょとしていて気持ち悪い。
 泥が跳ねてくるのは勘弁してほしいっす。


 変な気配のヤツはすぐに見つかった。というか目の前に居る。

 なんかふわふわ浮いている変な黒い鳥だった。
 飛んでいたり、ホバリングしてる訳でもなく、ただふわふわと浮いていた。


 その浮いてる鳥が俺に向けて話し始める。


『ここで何をしている』


 喋る動物は初めてだ。イカつい話し方の割りに声は高い。
 何をしていると言われてもねぇ......ただ雨宿りしていただけだ。素直に答えてみるか。

「急に雨が降ってきたから、雨宿りできる場所を探していたらここを見つけて、そ のまま滞在しているだけだ」ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
 なんかコイツ偉そうだし、こんなヤツに敬語なんて使う必要ないだろということで、態度は変えない。

『ここは隔離された土地であり、人如きが辿り着ける場所ではない。
 貴様何をした?ここに来た本当の目的はなんだ』

 えぇー......ちゃんと本当の事言ったんですけど?
 話を聞く気ないのなら質問しないでほしい。そもそもお前誰なんだよ。


「理由は言った通りで、そんな場所だったなんて知らない。知ろうとも思わない。
 そもそもお前は誰で、ここと何か関係があるのか?人如きに侵入されて焦っちゃったんですかー?」

 コイツのことが気に食わないので少し煽ってみる。
 これで怒るならその程度のカスだし、話なんかできないだろ。

『人間風情が調子に乗りおってからに。ここは隔離された地であり、人如きが来れる場所では無いのだ』

 なるほど。でもお前は誰なんだよ。

「普通には来れない場所だったとは理解できた。それで、お前は誰だって質問には答えないのか?」

『我の名なぞ貴様が知る必要などない。どうしても真実を言わぬと言うのなら、言わぬでも良い。貴様の脳へ直接聞いてやる』

 見下しすぎだろ。このクソ鳥。

 最初から真実しか言ってねぇよ。
 やっぱり鳥は鳥だわ。最初からソレをやれば無駄な問答しなくて済んだだろうに。

 賢そうに話してるけど、こいつバカなの?鳥頭なの?

 こんな事を考えてたら鳥頭がピクッとしたので、現在俺は思考を読まれてるっぽい。

 その能力いいなーと思いました。宝の持ち腐れになってるからちゃんと使ってやれよ。

 なんで俺に絡んでくるヤツって、こう......なんていうか頭のイカれた話の通じないヤツばっかりなんだろう。
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】 宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。 異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。 元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。 そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。 大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。 持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。 ※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

土下座で女神に頼まれて仕方なく転生してみた。

モンド
ファンタジー
ドジな女神が失敗を繰り返し、管理している世界がえらい事になって困っていた。 ここに来て女神は「ここまできたら最後の手段を使うしかないわ。」と言いながら、あるカードを切った。  そう、困ったら「日本人の異世界転生」と言うのが先輩女神から聞いていた、最後の手段なのだ。 しかし、どんな日本人を転生させれば良いかわからない女神は、クラスごと転生を先ず考えたが。 上司である神に許可をもらえなかった。 異世界転生は、上司である神の許可がなければ使えない手段なのだ。 そこで慌てた女神は、過去の転生記録を調べて自分の世界の環境が似ている世界の事案を探した。 「有ったこれだわ!・・何々・「引きこもりかオタクが狙い目」と言うことは・・30歳代か・・それから、・・「純粋な男か免疫のない男」・・どういうのかわからなくなったわ。」 と呟きながら最後は、 「フィーリングよね、やっぱり。」 と言い切ってカードを切ってしまった、上司の許可を得ずに。 強いのか弱いのかよく分からないその男は、女神も知らない過去があった。 そんな女神に呼ばれた男が、異世界で起こす珍道中。

処理中です...