異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

文字の大きさ
上 下
17 / 183

アウトドア飯

しおりを挟む
 朝がやって来た。

 座ったまま寝る事にも慣れてきたけど、起きた後はやっぱり体が軋む。そして腰とケツが痛い......クッションを増やすしかないかな?他にも道はあるはずだけど、今のとこ代案は思いついていない。



 この事にはなんか早急に対策を考えなくてはならぬ......ケツがお逝きになられてしまう前に。



 死活問題をどうにかしようと考えているとお嬢様が起きてきたので、目覚めたお嬢様におはようもふもふをキめていく。



 満足できたのでこれから朝食タイムにしますよー。


 買い込んだパンの中にあったバターロールみたいなパンとハム、お湯で溶かすだけのコーンスープに胡椒を少々投入。コーンスープのみだと甘すぎるから胡椒で味を引き締める。


 うーん。凝ったモンもおいしいけれど、ド庶民にはやっぱりこういうシンプルなのが口に合う。


 人は急にセレブリティな食生活には慣れる事はない。慣れ親しんだB級グルメがマブダチです。

 フレンチのフルコースなんかよりも、吉〇家の牛丼、味噌汁、たまご、お新香の方がフルコースに感じる。そんな庶民舌。

 まぁこっち来てからセレブった飯は食っていないけど......強いて言うのならばあの魔力牛くらいだけど、今は日本のB級グルメがものすごく恋しくなっている......



 ケツの死活問題を考えていたテンションが、変な方向へ暴走をしてしまった。情緒が不安定になる時だってある。人間だもの。


 あ、インスタントのスープの素は革命だと思っています。さいこー。


 朝食を食べ終わり、身支度を整えてから出発。
 何故かこの体はヒゲが伸びてこなくなっているので身支度がとても楽。だけどもう髭の渋いダンディなおじ様にはなれないのだろうという寂しさもある。
 剃る時間や整える時間を考えると、生えてこなくても問題はないか。やっぱり少し残念だけど、割り切るしかない。


 昨日テンション上がりまくってたうちのお姫様は、今日はフードの中でまったりしたいらしいのですっぽりと収まっている。


 俺の腕の中に収まってくれてもいいのですよー?ねぇねぇあんこちゃーん!

 あ、フードの中がいいんですね。わかりました。



◇◇◇




 こんな感じの事しか起きない平原をタラタラと進むこと五日間。尻問題についにパーフェクトなアンサーが出たので今日の夜お披露目する予定だ。
 これが不正解だったのなら、もうマットレスを喚ぶしかなくなる。


 この五日間、移動の途中で村なども見つけりしたけれど、村に入る理由も意味も見当たらないのでスルーしながら進み続けていた。
 厄介事も嫌だし、人と絡むのが面倒だったしね。

 今日になって、やっと風景が変わってきてくれた。

 そう、目の前に現れたのは山だ。マウンテンだ。遠目には見えていたけど、近くで見るとなると結構なデカさ。

 分かれ道があって、山を迂回するか、山を登るかの二択を迫られている。

 トンネルなどはないので、でっかい山を越えるか避けるしかないのだ。
 俺とあんこの使う魔法以外、まだ見た事はないけど、土魔法使いとかが頑張って掘ってやればいいと思うのに。


 山越えする場合は、かなり厳しいと思うので準備をしっかりとして、自己責任で挑んでください......そう注意書きが記された看板がある。


 山登りなんてガキの頃にしたくらいだし、平原は飽きてきているので実質一択だ。

 このまま突き進もう。俺は自由だ!!

 ダメそうだったり、キツかったりしたならば途中で引き返してから迂回すればいい。


 時間と言う人類の共通の敵は、今の俺には敵でない。

 そう。殺される、アホな事を試して自滅する......ソレ以外に死因が見当たらなくなってきた事で随分と余裕が出来ているから、選択をミスしても大丈夫。
 時間のロスくらいしかデメリットのない選択肢だけは、俺にはなんのデメリットもない選択肢になっている。


 夜中限定の龍さん以外にも移動手段を模索しなかった訳ではないけれど、変わり映えしないこの道中でも歩いていれば何かしらの楽しみを見つけられるはずだと思うんだ。
 馬車とかは酔いそうなので乗りたくない。



 そんなわけで今までと変わらずダラダラ進んで行く所存でございます。

 今日からは楽しいハイキングですよ。



 ちんたら歩いて行くと道が険しくなってきて、自然が濃くなってくる。ここから本格的に登山になるんだろうなぁって感想。




 山に入ってしばらくすると、やっとこさモンスターらしき気配を感知した。嬉しいな。

 こっちに気付いていて警戒をしてるみたいだけど、こちらに近付いてくる気配は無い。

 知能が高いのか、知性があるのか知らないけれど、こんなに穏やかそうなヤツらなら冒険者に討伐を依頼されることなんてないだろうに......悲しいなぁ、人間の業とやらは。


 さらに進んでいくと大きい石......いや、小さな岩がゴロゴロしていて歩きにくくなってくる。
 地滑りか崩落でもあったんかな?




 岩をでけぇなぁとか思いながら見ていたら、ちょっとだけリアル岩風呂が欲しくなってきた。

 それなりの大きさでいい感じの岩を見つけたら一つ貰っていこう。闇糸で加工する事ができるはずだし。


 こんな発見や思いつきも楽しいもんだ。
 老後の楽しみに似てる感覚なのかなーと悟ったような事を思いつつ、またダラダラと進んでいく。



 途中で休憩を挟みながらも、日が暮れてくるまで歩き続けた。


 ゆっくりした一日を過ごしてるはずなのに、一日が終わるのを早く感じる。

 そんな不思議な気分に戸惑いながら、夕暮れの空を見つつ、休めそうな場所を探す。


 いい感じに太い木が二本あり、視界の確保を出来ながらも隠れられる場所を発見したので、今日はここで休むことに決めた。
 地面は平原よりもゴツゴツとしてるので、ケツが終わると思う。なので寝起きに考えていた事を実行するとしよう。


 山キャンプ風な気分を味わいたいし、ゴツゴツした地面は嫌......ならハンモックであろう。不意打ちを受けたら対応出来ないけど、トラップを完備している今の俺のならきっと問題はない......と思う。

 太い木が二本。その両方を使いハンモックを設置した。
 あんこが乗りたがっていたのでハンモック一番乗りを譲る。今日もお疲れ様でした。


 一作業を終えたので、火を熾していく。
 ハンモックを楽しんでいるお嬢様に、鍋に水を入れてもらってお湯を沸かした。


 この大自然の真っ只中で食べるのならカップヌードルしかないだろうと思っている。次点でカレー。異論は認める。


 あれ普段も美味しく食べれるけど、アウトドア系の時に食べるとアホみたいに美味くなる不思議な食べ物。

 海の家の焼きそば、お祭りでのテキ屋のたこ焼きと並んで、雰囲気補正の恩恵を最大限に引き出しやがる。


 それ一つだと絶妙に腹が物足りないので、塩むすびもお供に添えるのが俺の流儀。


 三分待ったので、ヤツはもう完全体になった頃合いだ。気圧の関係もあるだろうけど、あの麺なら多分もう平気でしょう。

 いざ、蓋をオープン。

 このペラいかまぼこ風のナニか、絶妙なふんわり感のたまごっぽいモノ、そしてお馴染み謎のお肉と、一口飲んでコレしょうゆ味?となる不思議なスープ。

 マーベラス......完璧だぜ。

 麺を啜り、スープを一口飲む。あぁホッとする。

 ......こういうのでいいんだよ。こういうので。

 美味しいわぁ......落ち着くよぉ......。

 麺の合間に謎の肉を口にして、それを追いかけるように口に塩むすび投入......それを飲み込んでからスープを啜る。

 至福だ。永遠にループ出来る。


 あっという間に食べ終えて、満足感に浸る。素晴らしい時間だった。
 ありがとう召喚能力!君は素敵だ!


 あんこはまだユラユラを楽しんでいるので、こちらは食後の一服。体に沁みるわぁ......




 一服を終えた俺は、浴槽を取り出してお湯を注ぎ出す......

 すると、それに気付いたあんこがしっぽブンブンさせて寄ってくる。


 さぁお風呂だよー入るよー。


 大自然の中、着衣を全てパージし、体を洗ってからお湯に入る。


 風景を眺めながらまったりすれば体も心も癒される。気持ちいいなぁ。




 途中でお姫様が逃げ出してしまった......悲しい。悲しいぞ。


 逆上せたのかな?......だとしても辛い。



 悲しみに暮れていたら、あひるのおもちゃを口に咥えて帰ってきた。


 それが欲しかったのね!!それじゃあその子も一緒にいれてあげようねー!!


 ぷかぷかするアヒルを目で追いながら、一緒に浮かぶお嬢様の姿を目に焼き付け、山登り初日の入浴を楽しんだ。



 風呂から上がると、お姫様が氷を浮かべてしっぽぶんぶんでお座りしている。


 そっか。かき氷を食べたいのね。
 気に入ったから氷待機でおねだりしているのか......

 んもう!甘えんぼさんめ!
 やろうとすれば削った後の氷みたいのなんて簡単に出せるはずのに。


 あの削れていくのを見るのが楽しいらしく、早く!早く!と急かされる。

 あーもう!可愛いすぎるよ!仰せのままに、お姫様。


 ガリガリと削っていく......それを見て楽しそうなお姫様。


 今日はブルーハ〇イのシロップだ。フルーツ系?なにそれ。

 一緒に食べ始める。

 舌が青くなるのもまた一興。舌をべーってして青い舌を見せると、真似して青い舌を見せてくれた。

 バカップルみたいでちょっと恥ずかしくなったけど可愛すぎて萌えた。


 その後はゆっくりとしながらルーティンをやり終え、ハンモックに入り、お姫様を抱っこしながら就寝。


 久しぶりの地べた以外。そして横になれたのとハンモックの揺れる気持ち良さで、とっても気持ちよく寝る事ができました。


しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...