血塗れダンジョン攻略

甘党羊

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モンハウ

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 ―――おかしい。
 数えるのも莫迦らしくなるほどの数を殺したのに一向にレベルアップのアナウンスが来ない。

 まさか......まだ、終わりじゃ......ない?

 最低最悪な戦闘を終えた後故に弛緩した空気を引き締める。油断大敵と学んでいても、少し前まで一般人だった匠に常在戦場の心構えを実践するのは難しい。
 一度戦闘モードに入ると驚く程に戦闘へ没頭するのだが、そこは性格の二面性が顕著に現れているとも言える。ここら辺の事は今後の課題と自身でも思っているので、この調子でダンジョン生活を続けていればいつの間にか改善されているだろう。

「............」

 注意深く、周囲を探る。
 地面にある石くれを投げたり金砕棒で壁を殴ったり、撃ち漏らしがいないかを慎重に確認していき......

「......居ない、か」

 何も居ないと結論付けた。

「はぁ......と言う事は、このヒル共はクソザコ過ぎる一周目のモンスター......この階層でこの弱さって事は......」

 推測が二つ、立った。

 数匹のモンスターと一回戦えば自分はレベルが上がる。モノによっては複数レベル上がる筈なのに上がらない。という事はコイツらのレベルは今の自分のレベルを上げるには足りないくらいに低い。あの戦法さえヤられなければこのダンジョンに入りたての自分でも余裕で倒せるレベルだろう。

「戦闘で得た経験値って参加人数での頭割り......格下は倒しても微量の経験値若しくは無し......か、うわぁ......クソ仕様」

 ソロの自分、数えるのがダルくなる程の数がいるヒルのレベルと格差。夥しい数のヒルに経験値が分散されればこの結果にも納得がいく。

 推測だから間違えているかもしれないけど、まぁそういう事だろう。塵も積もれば山となる理論で頑張り続ければなんとかなるのだろうけど自分には無理。役割を決めたパーティプレイとか反吐が出る。うん、ソロで効率良く経験値稼げて良かった。




 それから投擲用に拾えるだけ極小魔石を拾い、安全確認の為に一度周囲を焼き払ってから服も着ずに眠りに就いた。買ったばかりの何とか蚕の服一式を失った事実や虫パニック等、精神的な疲労が凄くて寝てリフレッシュしないとメンタルが保てなかったから。
 体感で五時間程ぐっすりと寝た後、熟睡している間に何か起きてないかの確認をした後に特筆する物の無い普通の服を着て洞穴から出立する。早くこの階層から抜けたい一心で炎を纏わせた金砕棒を振るいながら階段を探す為に早足で進んでいった。

 虫や邪魔な蔓草を焼き払い、枝葉やモンスターを薙ぎ倒しながら進むと漸く階段へと辿り着く。この間にレベルは3上がった。

「はぁぁぁぁぁぁ......」

 ドロドロになったブーツとズボンの裾がテンションを下げる。溜め息を吐きながら階段をトボトボと降りていった。



 ◆◇原初ノ迷宮第六十三層◇◆



「......アハァッ♪」

 情緒不安定と言うのなら言うがいい。
 次もまた面倒そうな階層かなと思っていただけに、目の前に広がる光景はローだったテンションをトップまで瞬時に上げた。

 モンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスターモンスター......

 全て人型や獣型のモンスターが所狭しと詰まった大部屋。俗に言うスタンピードとはこういう感じなのだろうと思わせる光景。

 ここ最近はストレスの溜まる部屋が多すぎた。こういうのでいいんだよ、こういうので。
 最初にヒヨコを使って数を減らすとかはしない。大暴れがしたいんだ。アレはピンチになった時専用にしておく。

 ガントレット、グリーブはしっかりと装備。服はどうせ破けるから勿体ない。なので着用するのは下着のみ。防具とパンツと武器の蛮族スタイルアゲイン。

 荷物はしっかり被害を受けなさそうな場所に置いてきた。さぁ、行っくぞぉ!!


「ヒャーッハァッ!!!」

 部屋へ駆け込むとすぐに跳躍して敵陣のど真ん中へ飛び込む。右手の金砕棒、左手のヌンチャク棒を全力で振り切り敵陣に真っ赤な華を咲かす。これが乱戦開始の合図となり、飛び込んできた異物を排除しようと動き出したモンスターが動き出す。
 モンスターは入室してワンアクション起こさないと始動しないのは何なんだろうね。助かるからいいけど。

「乱ッ戦ッ楽しぃぃぃぃぃぃぃぃい!!」

 絶え間なく襲い来る牙や爪、拳を躱して金砕棒の一閃を叩き込む。血の匂いと肉を殴る感触が心を癒してくれる。

 色んな肉質の物体が弾け飛び、俺に攻撃を避けられたモンスターは勢いそのまま同士討ちとなり血と悲鳴と怒号が飛び交う乱戦パーティー。
 手数が多すぎて避けきれない時もあるが、その時は無理に避けようとせずに影響の少ない部分で受けてやり過ごす。

「ギシャァァァァッ」
「グルルルルルァッ」
「ギャァァァァ」
「グォォォォォッ」

 主人公属性の人間が今の状況を見たら問答無用で介入してくるんだろうな。一手間違えたら即座に数の暴力に飲み込まれる状況なのに、アホな事を考える余裕がある......それに何かモンスターの動きがいつもより良く視えるお陰かな? 状況に酔ってるだけでただの気のせいかもしれないけど。

 タックルをしてくる猪型のモンスターを避けながら足を引っ掛け、目の前で棍棒を振り下ろすゴブリンっぽいヤツの腹に金砕棒を突き入れる。
 腹を貫かれたゴブリンが金砕棒を掴んで踏ん張った所為で少し体勢が崩れた所にウルフ型モンスターが一斉に飛び掛かってくる。視界の端っこでは猪がモンスターを何体か轢いてくれていた。

「......チッ」

 全ては避けられない。だがそれは仕方ない。これは乱戦だから。

「オラァッ!!」

 ゴブリンを貫いたままの金砕棒を振るい飛び込んでくるウルフの頭へ合わせると、ゴブリンとウルフが衝突して互いの頭が爆ぜる。飛び散った血と脳漿が他の飛び掛かるウルフに浴びせられた。

「ハハッ、仲間の血を浴びた程度で怯むなよ」

 突っ込んできたウルフの目に血や脳漿が入って若干動きのキレが悪くなる。腕一本と肩や脇腹が抉られるのを覚悟していたが足捌きと暴力でウルフの波状攻撃は浅い切り傷程度で切り抜け、すれ違い様に隙だらけのウルフをガントレットやグリーブを使用した殴打と蹴りで殺してウルフは駆逐完了。

「オラァ!! さっさと次来いやァァァァア!!」

 楽しい。楽しい。楽しい。

 精神は高揚しているが、思考はとても冷静。とても不思議な感覚がする。加えて相手の動きがとてもよくわかるからとても戦いやすくて......余計な事を考える暇が無い。楽しい。

 前後左右ひっきりなしに攻撃が飛んでくる。
 モンスターも迫ってくる。
 血肉、モンスター、攻撃。認識するのはそれだけでいい。俺がする事は殴る、蹴る、撃つ、避ける。時々顔に付く液体を舐めて燃料補給も忘れない。

「シャアァァァァオラァッ!!」
「グルァァァァ!?」

 何かのモンスターが放ったらしい火の玉を金砕棒で弾くと、その弾かれた火弾が近くにいた熊型モンスターへと当たり引火。燃え盛る。ただやや強引に撃ち返した影響で隙が出来、リザードマンに肩の肉を抉られてしまう。

「......チィッ」

 しくじった。だが次はもっと上手くやる。さぁいいぞ、もっと来い。


「アハハハハハハハハッ!!」


 聴こえるは悲鳴、嗤い声、唸り声、打擲音
 目に映るは血煙、殺意剥き出しのモンスター、死体多数

 それすらも余計な情報として淘汰されていく

 最後に残るは、殺るか殺られるかのみ

 狂乱の宴サバトはまだ始まったばかりだ―――



─────────────────────────────

 吉持ㅤ匠

 半悪魔
 職業:血狂い

 Lv:42→45

 HP:100%
 MP:100%

 物攻:200
 物防:1
 魔攻:110
 魔防:1
 敏捷:170
 幸運:10

 残SP:44→50

 魔法適性:炎

 スキル:
 ステータスチェック
 血液貯蓄ㅤ残387.4L
 不死血鳥
 部分魔化
 魔法操作
 血流操作
 簡易鑑定
 空間認識
 状態異常耐性Lv8
 拳闘Lv8
 鈍器(統)Lv6
 上級棒術Lv2
 小剣術Lv7
 投擲Lv8
 歩法Lv7
 強打
 強呪耐性
 病気耐性Lv4
 熱傷耐性Lv3
 解体・解剖
 回避Lv9
 溶解耐性Lv6
 洗濯Lv2
 ■■■■■■

 装備:
 魔鉄の金砕棒
 悪魔骨のヌンチャク
 肉食ナイフ
 貫通寸鉄
 火山鼠革ローブ
 再生獣革のブーツ
 貫突虫のガントレット
 聖銀の手甲
 鋼鉄虫のグリーブ
 魔鉱のブレスレット
 剛腕鬼の金棒
 圧縮鋼の短槍
 迷宮鋼の棘針×2
 魔法袋・小
 ババアの加護ㅤ残高13680

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