血塗れダンジョン攻略

甘党羊

文字の大きさ
上 下
46 / 146

ババアの店リターンズ

しおりを挟む
 ボス戦の後は確定で現れるババアの店。

 相手からすればただの商機。特にダンジョン内での商売なんていう特定すぎる限られた場所でのみ存在している店だからか、それとも人ならざる存在だからだろうか......

 相手からの視線や言動に負の感情が一切無いのもそうだが、あちらからすれば顧客へのアフターサービスの一環だろうけど自分に対しての気遣いもしてくれる。
 ただただ単純だなと我ながら思うけど、ババアの様な普通の対応に飢えていたんだなと感じる。ダンジョン内にある店じゃなくても、地上に居た時にこんな店があったのならばもう少し生きるのが楽だっただろうし、通っていたかもしれない。

「アハハハ......なんだこれ」

 生き死にが隣人な世界の方が生きやすい自分に戸惑いながらババアの居るエリアに足を踏み入れた......



『イラッシャイ』

 いつも通り、よく来たなという感情しか感じない声色のババアに迎えられる。
 会話はほぼ無い......だが、悪感情を向けられないだけの空間がこんなにも居心地が良く、心を安らげてくれる。

『ヒッヒ、ボウズ......ノロワレテンノカイ、ナラコレハカッテオキナ!』

 自分を一瞥したババアはこちらに向かって一本の小瓶を投げつけてきた。

「......これは?」

 簡易鑑定で名前を確認すると〈解呪ポーション〉という名前の物と判る。

『ノロイニコウカガアルモンダヨ。モノデモヒトデモ、ノロワレテルノナラバソレヲフリカケレバイイ』

 値段は300BPババアポイントとお高めだったが、今の自分に絶対必要な物と理解したので有難く購入させてもらった。

 単位は今適当に付けた。円やドルとか、数字の後に何か無いと呼びにくかったから。

 不要なモノを全て売り払って得たBPは2050でポーション代の300を引いた1750BP。

『カイケイハスンダカラサッサトツカイナ。ソノタイチョウハ、ネレバナオルジャロ』

 ババアの言葉に甘えて早速解呪ポーションを使用する。何処がどれくらい呪われているのかわからないから頭からポーションを被る。物にも使えるってババアが説明していたから使い方は間違っていないはず。

 体から立ち昇る黒い靄、それが霧散していくにつれて軽くなっていく身体。

『ヒッヒッヒ......テッキリノミコムカトオモッテイタガ、タダシイツカイカタヲシタネェ。モウイッポンウレルカトオモッテイタノニ』

 誰もが想像するような魔女の笑い方をしてこちらをおちょくる。まぁ多分ババアはどっちでもよかったんだろう。効果を知ってわかったけど、これは持っていて損は無い......割らないようにしなくてはならないが。

「こういうのもあるのか......もう一本も貰うよ。売り物の説明をしてくれよ。そうすればもっと色んなの買うかもしれないだろ」

『アマッタレンナ。ジブンノメデワカルヨウニナリナ』

 商売っ気が有るのか無いのかわからない。仕方ないから名前だけでも判るだけ恵まれていると思っておこう......今は。

『ハヤクエラビナ』

「わかったよ」



 ◆◆◆◆◆



 ババアの店で購入したのは下着類400BP分、投槍としても近接武器としても使えそうな短槍を二本500BP、解呪ポーション300BPの計1200BP。
 霊体系モンスターに効果がありそうな物は売っておらず、今必要そうな物を揃えた。衣服類の充実......これは地味に嬉しい。

『マイドアリ......ヒヒッ、コレハオマケジャ』

 買い物を終えた自分にオマケと言って鑑定できない枕を渡し、ババアは消えていった。何で作ったのかわからないのが怖いけど、正直助かる。

「......さて、身体を洗って水飲んで寝よう。起きたら体調も良くなってるでしょ」

 湧き水で体を洗い、洗濯をする。そして、金棒や短槍に洗濯物を掛けてから眠った。

 ババアから貰った枕は驚く程に寝やすかった。本当になんなんだろうか、あのババアの正体は......






 ◆◆◆◆◆◆◆




『ヒッヒッヒ......』

『どうしました?  貴女がそんな風に笑うなんて......珍しい事もあるものですね』

『妾を見ても恐れを抱かず、対等に話をするが居たと言われて、お主は信じられるかい?』

『......まさか。俄かには信じ難いですね』

『ヒッヒッヒ......そのまさかよ。最初に其奴は妾の隠蔽を物ともせずに品の選別をしている妾の前に現れおったのよ。流石に驚いたわい......驚きすぎてダンジョン内なのに店主の真似事をしてもうたわ』

『ソレは......本当に人間なのですか?  私たちですら貴女が隠蔽を使用すると感知する事すら出来ませんのに......』

『お主はもっと精進せぇ。それでの、お主たち以外で妾と会話し、正気を保っている者などここ数百年居なかったじゃろ?  それで其奴に興味が出てのぉ、妾の印を与えてしもうたわ......イッヒッヒッヒ』

『......アレを渡しても無事だったのですか?』

『賭けじゃったが、何ともなくすんなりと受け取りよったわい。四度じゃ、今回で四度目じゃ......長生きはしてみるモンじゃの。神の加護を持った者でも、二度目はないというのに......ヒヒヒヒッ』

『またその人物に会いに行くのですか?』

『其奴が生きていればの。今其奴は原初の迷宮を一人で進んでおるでの?  10階層進む毎に出向いてババアの店の店主として会っておるわい』

『............』

『イヒヒヒヒヒ......次は50階層かの?  その時はお主も来るかの?  ただ、妾の正体を明かさない、其奴の言動に一々反応しない、害を加えずに大人しくしている......その三つを約束出来るのならになるがの』

『............それほどまでにその人間を気に入ったんですか?』

『お主ならばわかるじゃろ?  傅かず、媚びず、恐れずに話が出来る存在の貴重さを。お主らはいくら言っても遜るのを止めないからのぉ......』

『わかりました。では次回ご同行させてくださいませ。それと、私たちはいくら貴女が望んだとしても変わることは一切ありません』

『そうかい......あぁそうそう、会ってみて気に入ったら何か渡してやんな。イッヒッヒ、あの坊主は未だに妾が気まぐれで渡した布を大事に持っておるからの......可愛くて仕方ないわい』

『......わかりました。何か用意しておきます』



 ──────────────────────────────

 吉持ㅤ匠
 闘人

 Lv:44

 HP:100%
 MP:100%

 物攻:110
 物防:1
 魔攻:60
 魔防:1
 敏捷:110
 幸運:10

 残SP:10

 魔法適性:炎

 スキル:
 ステータスチェック
 血液貯蓄ㅤ残93.5L
 不死血鳥
 状態異常耐性Lv8
 拳闘Lv5
 鈍器Lv8
 小剣術Lv4
 簡易鑑定
 空間把握Lv7
 投擲Lv7
 歩法Lv4
 呪耐性Lv3
 病気耐性Lv2
 ■■■■■■

 装備:
 魔鉄の金砕棒
 肉食ナイフ
 魔虎皮のシャツ
 悪魔大土蜘蛛のバンテージ
 合成皮革のズボン
 再生獣革のブーツ
 魔鉱のブレスレット
 剛腕鬼の金棒
 圧縮鋼の短槍×2
 丈夫なリュック
 厚手の肩掛け鞄
 黒革のナイフホルダー
 予備の服一式×3セット
 下着類
 ????の枕
 ババァの店の会員証ㅤ残高1290

──────────────────────────────
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで

あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。

異世界召喚されたと思ったら何故か神界にいて神になりました

璃音
ファンタジー
 主人公の音無 優はごく普通の高校生だった。ある日を境に優の人生が大きく変わることになる。なんと、優たちのクラスが異世界召喚されたのだ。だが、何故か優だけか違う場所にいた。その場所はなんと神界だった。優は神界で少しの間修行をすることに決めその後にクラスのみんなと合流することにした。 果たして優は地球ではない世界でどのように生きていくのか!?  これは、主人公の優が人間を辞め召喚された世界で出会う人達と問題を解決しつつ自由気ままに生活して行くお話。  

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

転生したら、ステータスの上限がなくなったので脳筋プレイしてみた

Mr.Six
ファンタジー
大学生の浅野壮太は神さまに転生してもらったが、手違いで、何も能力を与えられなかった。 転生されるまでの限られた時間の中で神さまが唯一してくれたこと、それは【ステータスの上限を無くす】というもの。 さらに、いざ転生したら、神さまもついてきてしまい神さまと一緒に魔王を倒すことに。 神さまからもらった能力と、愉快な仲間が織りなすハチャメチャバトル小説!

ちょっとエッチな執事の体調管理

mm
ファンタジー
私は小川優。大学生になり上京して来て1ヶ月。今はバイトをしながら一人暮らしをしている。 住んでいるのはそこらへんのマンション。 変わりばえない生活に飽き飽きしている今日この頃である。 「はぁ…疲れた」 連勤のバイトを終え、独り言を呟きながらいつものようにマンションへ向かった。 (エレベーターのあるマンションに引っ越したい) そう思いながらやっとの思いで階段を上りきり、自分の部屋の方へ目を向けると、そこには見知らぬ男がいた。 「優様、おかえりなさいませ。本日付けで雇われた、優様の執事でございます。」 「はい?どちら様で…?」 「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」 (あぁ…!) 今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。 「え、私当たったの?この私が?」 「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」 尿・便表現あり アダルトな表現あり

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

処理中です...