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潰された
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弱点である頭が潰され、残る体も安定の紙装甲。ナイトトロルの振るう木の棍棒により、呆気なく体を叩き潰され地面の染みに変わった。
だが、この殺られ方がよかった。この殺られ方以外であれば、もう生きてはいられなかっであろう。
食べられる箇所が残らない殺され方をした事と、知性の高いモンスターが相手じゃ無かった事により、残った肉片の動きを見て、この後何かが起こるかもしれないと警戒されなかった。
それに加え、持っていた武器......金砕棒がヤツらの琴線に触れ、それを持つ事に執着して同士討ちが始まったのだ。
トロルは知性に恵まれておらず、相手の肉体を潰した所で戦闘が終わったと確信し、戦っていた相手への興味を失ってしまう。
「勝って兜の緒を締めよ」のような、所謂“残心”的な心構えが無かったのだ。
武器の金砕棒と食肉ナイフは戦利品として取り上げられてしまったが、頭がミンチになったおかげで即時の復活が無くなる。そのおかげで復活しなくなるまで延々とリスキルされるという事態を免れる事が出来たのは幸運である。
匠を殺したと思い込んだナイトトロル達は思い思いの行動を始めていた。
彼等は次の侵入者が部屋へと入ってくるまでは自由に過ごせる。そのようにダンジョンを作った存在にプログラムされているのだ。
どのようにしてモンスターにそうさせているのかは、ダンジョンのある世界の住人にもわかっていない。ただ、ダンジョン内のモンスターはそういうモノなのだと言われている。
この事の真相を知る者はダンジョンマスターと呼ばれる存在だけで、他の誰にもわからないのだから......――
◆◆◆
グォォォォ......
グガァァァァ......
何か汚い声が聞こえてくる......暗い......体が動かない......
何が起こってこうなっているんだろう......気持ち悪い......色んな場所が痒くて仕方がない......
こうなる前、自分は何をしていた......
ブォン......ブォン......
......これはなんの音だ?
グシャッ......グギャァァァ......
何かが潰れる音......それと悲鳴に似た叫び声......
何かが戦っている?
............ッ!?
そうだ、自分はナイトトロルと戦っていた......
不意打ちで一体倒したけど、その後は何も出来ずに潰された......
なのに何故意識がある!?
このまま潰し続けていれば、いくら復活し続けるこの身体でも......何れ殺す事ができるのに......
無事ならば早く動いて隠れないと......
............。
ダメだ......動かせない......
体の感覚が無い......
だけど耳は聞こえる。それと考える事は出来る......
これは......自分の体は未だ復活させている最中なんだろうか......
前は完全に復活してから意識が戻ってきたけど......
このスキルと馴染んできた?
それとも今回の殺られ方に違いが?
......ァァァァ......ドチャッ......
......ッッ!! この音は、ナイトトロルが一体倒れたのか?
そうすると残りは二体......決着が着く前にどうにかして体を治さないと......
頼む......早く体の再生を終わらせてくれ......
せめて、目を開くようにしてほしい!
アイツの戦い方がわからないと、この先どうしようもない。今度殺られたら、その時はもう助からないだろう......
何が起こったかわからないけど、仲間割れをしてるみたいだし、今まだ呑気に体を修復出来ているのは多分そのおかげだ......
早く......早く治ってくれ!!
◆◆◆
人間が持っていた金砕棒、戦闘が終わって持っていた人間からソレを奪った。
そこまではよかった。
だが、トロルというモンスターは頭がよろしくない。知能が劣る分は、筋力や体力などの身体能力の方へ割り振られている。
知能が高くない生き物の行動理念とは何だろうか。
それは欲に従って動く事。
欲しい物があれば奪い取り、腹が減れば食べられる物を食べ......食べられる物が無ければ生き物を殺し、喰らう。
眠たければ眠り、子孫を残す為だけに異性と交合い種を残す。
それだけだ。
そして、残ったトロル三体は思った。自身が持つ武器よりも上等な金砕棒が欲しい......と。
欲しがる者は三、しかし金砕棒は一。そうなればやる事は一つ......殺し合い。
欲しければ他者を蹴落としても奪い取れという本能に従い、トロル三体は戦闘を開始した。
......戦闘の最中、ナイトトロルは違和感を感じていた。どこかから視線を感じる。
この場にいるのは自分達だけ、先程の侵入者は原型を留めない殺し方をした筈。
その内、一体の同胞は先程殺したので、この場にいる生存者は目の前の同胞が一体。
実力は互角、一瞬たりとも気が抜けない。しかし、こちらを観察するような粘っこい視線が気持ち悪く集中できない。
目の前の相手はそれに気付いていないように見える。
互角の戦いの最中、他の事に気を逸らせばどうなるか......
互角の戦況は容易く崩れ去り、ナイトトロルは同胞に殴り殺されて肉片へと変わった。
......この時に生き残ったトロルが思考していた少し賢いトロルであれば、今後の展開は違っただろう。
――欲しかった金砕棒を勝ち取って悦に浸るトロルは、自身をジィッと観察する視線に全く気付いていなかった......
──────────────────────────────
吉持ㅤ匠
Lv:53
HP:100%
MP:100%
物攻:40
物防:1
魔攻:10
魔防:1
敏捷:40
幸運:10
残SP:10
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残41.9L
不死血鳥
状態異常耐性Lv2
拳闘Lv4
鈍器Lv4
簡易鑑定
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
肉食ナイフ
布のシャツ
丈夫なズボン
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
丈夫なリュック
鱗皮のナイフホルダー
ババァの店の会員証ㅤ残高135
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だが、この殺られ方がよかった。この殺られ方以外であれば、もう生きてはいられなかっであろう。
食べられる箇所が残らない殺され方をした事と、知性の高いモンスターが相手じゃ無かった事により、残った肉片の動きを見て、この後何かが起こるかもしれないと警戒されなかった。
それに加え、持っていた武器......金砕棒がヤツらの琴線に触れ、それを持つ事に執着して同士討ちが始まったのだ。
トロルは知性に恵まれておらず、相手の肉体を潰した所で戦闘が終わったと確信し、戦っていた相手への興味を失ってしまう。
「勝って兜の緒を締めよ」のような、所謂“残心”的な心構えが無かったのだ。
武器の金砕棒と食肉ナイフは戦利品として取り上げられてしまったが、頭がミンチになったおかげで即時の復活が無くなる。そのおかげで復活しなくなるまで延々とリスキルされるという事態を免れる事が出来たのは幸運である。
匠を殺したと思い込んだナイトトロル達は思い思いの行動を始めていた。
彼等は次の侵入者が部屋へと入ってくるまでは自由に過ごせる。そのようにダンジョンを作った存在にプログラムされているのだ。
どのようにしてモンスターにそうさせているのかは、ダンジョンのある世界の住人にもわかっていない。ただ、ダンジョン内のモンスターはそういうモノなのだと言われている。
この事の真相を知る者はダンジョンマスターと呼ばれる存在だけで、他の誰にもわからないのだから......――
◆◆◆
グォォォォ......
グガァァァァ......
何か汚い声が聞こえてくる......暗い......体が動かない......
何が起こってこうなっているんだろう......気持ち悪い......色んな場所が痒くて仕方がない......
こうなる前、自分は何をしていた......
ブォン......ブォン......
......これはなんの音だ?
グシャッ......グギャァァァ......
何かが潰れる音......それと悲鳴に似た叫び声......
何かが戦っている?
............ッ!?
そうだ、自分はナイトトロルと戦っていた......
不意打ちで一体倒したけど、その後は何も出来ずに潰された......
なのに何故意識がある!?
このまま潰し続けていれば、いくら復活し続けるこの身体でも......何れ殺す事ができるのに......
無事ならば早く動いて隠れないと......
............。
ダメだ......動かせない......
体の感覚が無い......
だけど耳は聞こえる。それと考える事は出来る......
これは......自分の体は未だ復活させている最中なんだろうか......
前は完全に復活してから意識が戻ってきたけど......
このスキルと馴染んできた?
それとも今回の殺られ方に違いが?
......ァァァァ......ドチャッ......
......ッッ!! この音は、ナイトトロルが一体倒れたのか?
そうすると残りは二体......決着が着く前にどうにかして体を治さないと......
頼む......早く体の再生を終わらせてくれ......
せめて、目を開くようにしてほしい!
アイツの戦い方がわからないと、この先どうしようもない。今度殺られたら、その時はもう助からないだろう......
何が起こったかわからないけど、仲間割れをしてるみたいだし、今まだ呑気に体を修復出来ているのは多分そのおかげだ......
早く......早く治ってくれ!!
◆◆◆
人間が持っていた金砕棒、戦闘が終わって持っていた人間からソレを奪った。
そこまではよかった。
だが、トロルというモンスターは頭がよろしくない。知能が劣る分は、筋力や体力などの身体能力の方へ割り振られている。
知能が高くない生き物の行動理念とは何だろうか。
それは欲に従って動く事。
欲しい物があれば奪い取り、腹が減れば食べられる物を食べ......食べられる物が無ければ生き物を殺し、喰らう。
眠たければ眠り、子孫を残す為だけに異性と交合い種を残す。
それだけだ。
そして、残ったトロル三体は思った。自身が持つ武器よりも上等な金砕棒が欲しい......と。
欲しがる者は三、しかし金砕棒は一。そうなればやる事は一つ......殺し合い。
欲しければ他者を蹴落としても奪い取れという本能に従い、トロル三体は戦闘を開始した。
......戦闘の最中、ナイトトロルは違和感を感じていた。どこかから視線を感じる。
この場にいるのは自分達だけ、先程の侵入者は原型を留めない殺し方をした筈。
その内、一体の同胞は先程殺したので、この場にいる生存者は目の前の同胞が一体。
実力は互角、一瞬たりとも気が抜けない。しかし、こちらを観察するような粘っこい視線が気持ち悪く集中できない。
目の前の相手はそれに気付いていないように見える。
互角の戦いの最中、他の事に気を逸らせばどうなるか......
互角の戦況は容易く崩れ去り、ナイトトロルは同胞に殴り殺されて肉片へと変わった。
......この時に生き残ったトロルが思考していた少し賢いトロルであれば、今後の展開は違っただろう。
――欲しかった金砕棒を勝ち取って悦に浸るトロルは、自身をジィッと観察する視線に全く気付いていなかった......
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吉持ㅤ匠
Lv:53
HP:100%
MP:100%
物攻:40
物防:1
魔攻:10
魔防:1
敏捷:40
幸運:10
残SP:10
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残41.9L
不死血鳥
状態異常耐性Lv2
拳闘Lv4
鈍器Lv4
簡易鑑定
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装備:
魔鉄の金砕棒
肉食ナイフ
布のシャツ
丈夫なズボン
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
丈夫なリュック
鱗皮のナイフホルダー
ババァの店の会員証ㅤ残高135
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