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二章:暦の一族との邂逅

第23話:共闘試練

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 刀を構えて暫く戦ってから気付いた。
 これ、相性と状況が悪いと――多分九曜の狙いは俺等の共闘。
 冷気を無差別に操る俺にとって割と思っていたが共闘という行為が多分苦手……今この部屋から出るには俺等が共闘する姿を見せるという必要があるだろうから、かなり分が悪い。

冷刃一掃れいじんいっそう

 とりあえず囲まれすぎたから一気に刀で薙ぎ払い、俺はまだ状況が飲み込めてないだろう一人の少年に近付いた。

「お前は何が出来る?」
「ぼ、僕!? えっと召喚が出来……ます?」
「家名は?」
「え、あ……極月です」
「ってことはうり坊か――なぁ、出せる中で一番大きいの召喚してくれ」
「なんで、ですか?」
「……ん? 切り抜けるためだな」

 この多数戦を考えるに巨大なうり坊が居れば突破力は上がるだろう。
 うり坊と原作でこの少年が使っていた相棒のキャラ。
 未来では今とは似つかないマッチョになる彼は数多くの猪を召喚して戦っていたのを覚えている。
 まだ年齢的にあまり数は出せないだろうが、描写を思い出す限りこの年でも巨大うり坊は出せる筈だ。
 数秒悩んだように視線を彷徨わせる少年、だけど何か思ったのかこくんと頷きこう言った。

「時間はかかりますが、大きいのは出せます。だけど、その間に僕は無防備に」
「了解、なら俺が守る。頼んだのは俺だしな」

 そういう事に決めたので、俺はこの少年を守ることを第一目標に定めて戦い方を倒す戦いから守る戦いへ変える。
 不慣れだが、これも訓練だと思って頑張ろう。
 周りを少し確認する。横目で見た限り、好き勝手に暴れる龍華と如月家の令嬢がいた。様子としては龍華はいつも通り植物を操り、如月家の子は雷を纏った刀で敵を切り裂いている。

「あとは、水無月の子だけど……あそこだな」

 時折何もない場所から蛇をもした炎が上がっており、一部の敵を焼き殺している。
 それどころか多数の蛇がケモノに群がりもしているし、きっと今あの子は透明にでもなっているのだろう。
 水無月家が崇める神は炎蛇、姿を消し群れを成しそして獲物を狩るのを得意とした神である。天才である彼女はこの年からその力を存分に使えるようで共闘する気は一切ないようだ。

「まじで自分勝手だな共闘する気ないだろこいつら――まぁ、それは俺もか」

 少年を巻き込まない範囲で冷気と霊力を解放する。
 そしてギリギリの範囲で彼を守るように数本の冷刃を配置し、全力で彼に迫るケモノを狩り続ける事にした。
 迫る敵の首を刎ね、触れる距離の奴に触れ凍結させる。
 一瞬で凍ったケモノ達は氷像となってその場に残り完全に動かなくなった。

「い、行けます!」 
「了解だ。なら固定は任せろ」

 うり坊の特性、それは召喚された直後は嬉しさのあまり一直線に突撃すること。
 それを覚えている俺は真っ直ぐいるケモノ達の足場を全て凍らせて固定した――そして身体強化で一気に跳び上がり、突撃を待つ。

「いくよ、うり坊!」
 
 そして放たれる少年を乗せた猪神の突撃。 
 一瞬で全てを轢き殺した猪の神はそのままケモノだけを狙って暴れ始めた。

「よし、これで安心だ。ならあとは好き勝手にやるか!」

 ガバかもしれないが、少し協力したしこれでなんとかなってくれ、そんな事を思いながら、俺は刀を再度構えて突撃した。

             ◇ ◇ ◇ ◇

 ……何かやると思っていたけど、やっぱり九曜様はやった。
 そんな事を俺は考えながら水晶に映る息子の姿を見る。
 冷静に冷酷に、同世代からすると圧倒的だろう実力を見せる彼を……。

「あの子は素晴らしいですね、術の練度に状況判断実行する実力に桁違いの霊力――どれをとっても子供とは思えません」
「へぇ由衣が褒めるのは珍しい。ま、やっぱり凄いな刃は」
「……流石姉様の子供ですね、カスの血が混じってるのは不服ですが姉様似なのでまだ存在を許せます」

 珍しく他者を褒める如月由衣に相変わらずの逢魔と静。
 自分の子供が褒められているのに素直に喜べないのはきっと今までこいつらと関わってきたからだろう。

「倒した数は圧倒的ね。卯月の子が多いと思ったけれど、期待通りだわ。逆に極月の子は性格的に戦えないと思ったけれど、あの子と干支神のおかげでよく戦えてるわ」
「俺の自慢の息子だからな! まだあまり戦いには慣れておらぬが、召喚する力は長けている。術は覚えきれてないが、将来的には俺に並ぶだろう! 見た目もな!」
「あの美少年が烈と同じ容姿になったらバグを疑うぞ流石に……」
「なんだ逢魔、我ら極月の血を舐めるなよ? それに知ってるであろう、俺の見た目もああだったことを!」

 そうだよなぁ、烈の奴は昔は誰もが振り返るレベルの美少年だったんだよなぁ。それが今ではなんか知らんがめっちゃマッチョに……血って怖ぇわほんと。

「それにしてもカスが慌てないのはおかしいですね、貴方の事ですしこういう催しは反対するのかと思いました」
「……刃が弱ければなそりゃあ反対もしたさ、だけどな――あいつは天才だこの程度じゃやられないだろ」

 俺は父親としてあいつとかなりの時間の鍛錬をした。
 それ故あいつの実力を誰よりも信じてるし、この程度ではやられないと分かっている。それに優しいあいつは他の子供が傷付かないように冷気で守ってるし余裕がかなりあるんだろう。

「それもそうね、このままじゃ共闘が見れないわよね……ならこうしましょう?」

 確かにと頷いた九曜様が、水晶に霊力を込めたすると無制限に湧き続けていたケモノモドキ達が一つになり巨大な牛頭の鬼へと姿を変えたのだ。
 
「最近作った地獄の獄卒を元にした子よ? 確か牛頭だったかしら? これなら共闘も見れるわよね」
「おい昴、お前のせいだぞ?」
「……すまん刃、頑張ってくれ」

 ここまでされても不安じゃないのは、俺があいつの実力を信じているからだ。
 でも一つの懸念がある。それはやり過ぎないかの心配だ。実力を出しすぎてここに居る三家に目を付けられたら……神降ろしの才能はバレないだろうが、なんか不安になってきたな――いや、こんな事になったとはいえ、やりすぎるなとは言ったはずだし……大丈夫だと信じよう。
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