231 / 309
番外編 世界旅行2(2)
しおりを挟む
曇天の下、林を切り裂くように、舗装された道路がどこまでも真っ直ぐ延びていた。前にも後ろにもただひたすら真っ直ぐで、近くには看板も他の車もなく、遠くには山も見えない。ただ、道に引かれた白い破線が見たことのない間隔なので、日本ではないことだけはわかる。
「初回からいい感じだねぇ」
少し進むと、青色の車に追いついた。車種はわからないし、ナンバープレートにはモザイクがかかっている。右側通行であることはわかったが、まだまったく絞れない。
さらに進むと、何やら宣伝の文字が書かれた車が走っていた。あまり近付けなかったが、「inter cafe」と書いてあるように読めた。絢音は「irder cafs」ではないかと言ったが、確かにそんな風にも読める。もっとも、そうだとしたら、さらにわからない。
「これはやばいね」
絢音が困ったように笑った。どこまで行っても、ただひたすら真っ直ぐで、左右の景色も一向に変わらない。
やがて、シカの絵の描かれた注意を訴える看板があり、下には「1.6km」と書かれていた。ここから1.6km区間、動物注意ということだろう。
絶望したので、一度スタート地点に戻って、反対側に行ってみることにした。
こちらもひたすら真っ直ぐだったが、やがて800m先にガソリンスタンドとレストランがあるという看板が現れた。どちらかと言うと、こっちが正解だったようだ。
さらに進むと、看板のガソリンスタンドが姿を現した。「KULIKOWSKI」と書かれている。これが店の名前なのかガソリンスタンドの名前かはわからないが、とりあえず「SKI」で終わるのは北欧だ。
そう主張すると、絢音が可笑しそうに頬を緩めた。
「GeoGuessrのプロみたいな発言だった」
「時間がなくなってきた。とにかく文字を探そう」
ガソリンスタンドから奥に行くと、民家がポツンポツンと立っていた。白い壁に赤い屋根。どの家も平屋かせいぜい二階建てくらいの高さだ。
そしてその集落の中に、いかにも地名ですという面構えの緑色の看板があり、「Stare Modzele」と書かれていた。ひとまず検索の第一候補にする。
「それにしても、読めないね。ステアー・モドゥゼーレ」
「Stareは、Stateっぽい響きがない?」
「ないねぇ」
集落にはそれ以上ヒントが無さそうだったので、一度ガソリンスタンドまで戻って、走ってきた真っ直ぐの道を進む。今度は、同じような面構えの緑の看板に「Wygoda」と書かれていた。
通り越して反対側を見ると、同じ文字の看板に、赤色で斜線が引かれている。「ここからがWygoda」と、「ここまでがWygoda」という意味だろう。他に、日本なら「売り物件」とでも書かれてそうな白い看板に、「PRZYJME ZIEMIE」と書かれてた。また反省会に使いたいので、とりあえずメモを残す。
さらに進むと、今度は緑の看板に、直進が恐らく「Zambrow」、左が「Kotoki Koscielne」と書かれていた。若干文字にモザイクがかかっていて見にくい上、文字の上に装飾があるので、よくわからない。
「ダイアクリティカルマークだね」
絢音が得意気に言った。アルファベットの上に書かれた装飾記号のことで、アキュートやらウムラウトやら、色々ある。
時間はすでにロスタイムに入っていたので、移動するのはここまでにする。直進が長すぎてだいぶ時間をロスしたが、それなりに地名らしき情報は得られた。
「まあ、短いけどWygodaの方が無難かな」
絢音の意見に賛同する。Zambrowは本当にそう書かれているかもわからないし、何キロ先にそれがあるのかもわからない。日本だって、大阪から東に走れば、「こっちが東京」という案内がある。距離のわからない情報は危険だ。
そういうわけで、別ウインドウでGoogle Mapを開き、大体北欧くらいに移動してから検索窓に「Wygoda」と打ち込むと、ポーランドに同名の地名が現れた。Bialystokという大きな街のすぐ近くで、ベラルーシとの国境近くに位置している。
それっぽい直線の道がないのは気になるが、これ以上時間をかけられないのでクリックすると、正解から73km離れており、4760ポイントだった。
「意外」
絢音が難しい顔で呟いて、考えるように顎に指を当てた。探偵仕草だ。
別ウィンドウに戻って、正解の位置を拡大すると、確かにWygodaという地名があり、ガソリンスタンドがあって、Stare Modzeleもあった。日本で言えば、平和町という地名が全国にあるようなものだろうか。より大きなWygodaという場所に引っ張られたが、73kmしか離れていなかったのは、むしろ運が良かったと言えよう。
他の文字で検索したらどうなっていたかはまた反省会に残し、次のゲームに進むことにした。
「初回からいい感じだねぇ」
少し進むと、青色の車に追いついた。車種はわからないし、ナンバープレートにはモザイクがかかっている。右側通行であることはわかったが、まだまったく絞れない。
さらに進むと、何やら宣伝の文字が書かれた車が走っていた。あまり近付けなかったが、「inter cafe」と書いてあるように読めた。絢音は「irder cafs」ではないかと言ったが、確かにそんな風にも読める。もっとも、そうだとしたら、さらにわからない。
「これはやばいね」
絢音が困ったように笑った。どこまで行っても、ただひたすら真っ直ぐで、左右の景色も一向に変わらない。
やがて、シカの絵の描かれた注意を訴える看板があり、下には「1.6km」と書かれていた。ここから1.6km区間、動物注意ということだろう。
絶望したので、一度スタート地点に戻って、反対側に行ってみることにした。
こちらもひたすら真っ直ぐだったが、やがて800m先にガソリンスタンドとレストランがあるという看板が現れた。どちらかと言うと、こっちが正解だったようだ。
さらに進むと、看板のガソリンスタンドが姿を現した。「KULIKOWSKI」と書かれている。これが店の名前なのかガソリンスタンドの名前かはわからないが、とりあえず「SKI」で終わるのは北欧だ。
そう主張すると、絢音が可笑しそうに頬を緩めた。
「GeoGuessrのプロみたいな発言だった」
「時間がなくなってきた。とにかく文字を探そう」
ガソリンスタンドから奥に行くと、民家がポツンポツンと立っていた。白い壁に赤い屋根。どの家も平屋かせいぜい二階建てくらいの高さだ。
そしてその集落の中に、いかにも地名ですという面構えの緑色の看板があり、「Stare Modzele」と書かれていた。ひとまず検索の第一候補にする。
「それにしても、読めないね。ステアー・モドゥゼーレ」
「Stareは、Stateっぽい響きがない?」
「ないねぇ」
集落にはそれ以上ヒントが無さそうだったので、一度ガソリンスタンドまで戻って、走ってきた真っ直ぐの道を進む。今度は、同じような面構えの緑の看板に「Wygoda」と書かれていた。
通り越して反対側を見ると、同じ文字の看板に、赤色で斜線が引かれている。「ここからがWygoda」と、「ここまでがWygoda」という意味だろう。他に、日本なら「売り物件」とでも書かれてそうな白い看板に、「PRZYJME ZIEMIE」と書かれてた。また反省会に使いたいので、とりあえずメモを残す。
さらに進むと、今度は緑の看板に、直進が恐らく「Zambrow」、左が「Kotoki Koscielne」と書かれていた。若干文字にモザイクがかかっていて見にくい上、文字の上に装飾があるので、よくわからない。
「ダイアクリティカルマークだね」
絢音が得意気に言った。アルファベットの上に書かれた装飾記号のことで、アキュートやらウムラウトやら、色々ある。
時間はすでにロスタイムに入っていたので、移動するのはここまでにする。直進が長すぎてだいぶ時間をロスしたが、それなりに地名らしき情報は得られた。
「まあ、短いけどWygodaの方が無難かな」
絢音の意見に賛同する。Zambrowは本当にそう書かれているかもわからないし、何キロ先にそれがあるのかもわからない。日本だって、大阪から東に走れば、「こっちが東京」という案内がある。距離のわからない情報は危険だ。
そういうわけで、別ウインドウでGoogle Mapを開き、大体北欧くらいに移動してから検索窓に「Wygoda」と打ち込むと、ポーランドに同名の地名が現れた。Bialystokという大きな街のすぐ近くで、ベラルーシとの国境近くに位置している。
それっぽい直線の道がないのは気になるが、これ以上時間をかけられないのでクリックすると、正解から73km離れており、4760ポイントだった。
「意外」
絢音が難しい顔で呟いて、考えるように顎に指を当てた。探偵仕草だ。
別ウィンドウに戻って、正解の位置を拡大すると、確かにWygodaという地名があり、ガソリンスタンドがあって、Stare Modzeleもあった。日本で言えば、平和町という地名が全国にあるようなものだろうか。より大きなWygodaという場所に引っ張られたが、73kmしか離れていなかったのは、むしろ運が良かったと言えよう。
他の文字で検索したらどうなっていたかはまた反省会に残し、次のゲームに進むことにした。
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる