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番外編 七夕(2)
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せっかくの七夕なので、涼夏に努力で叶うと言われた、「涼夏と絢音ともっと仲良くなる」という願い事を掘り下げることにする。
友達と仲良くなるには、やはりたくさん遊ぶのがいいだろう。一応AIにも友達と仲良くなる方法を聞いてみたが、共通の趣味や興味を見つけて積極的に関わるのがいいとのこと。方向性は間違っていないようだ。
七夕にちなんだ遊びということで、願い事ゲームというのを考えてみた。「お好み焼きを」「豪快に」「食べる」みたいに、3人がそれぞれ1つずつフレーズを書いて、1つの願い事を作るゲームだ。
早速休み時間にやってみると、「おっぱいを」「優しく」「放り投げる」という残念な結果になった。これは「放り投げる」を書いた私の戦犯だろう。
「せめて模範解答は用意して」
絢音に言われて、それはそうだと頷いた。何を放り投げれば願い事になるのか、書いた私にもわからない。
2回目は「お尻を」「激しく」「叩く」になって、涼夏がむず痒そうに言った。
「願い事に『叩く』はないでしょ」
「いや、普通に肩とか叩くでしょ」
今度はちゃんと考えたと訴える。もっとも、涼夏がその手の単語を書いてくるのは容易に想像できたので、敢えて外したのは確かだ。
「人生で肩を叩いた記憶がない。まあいいや。とりあえずお尻を叩くから立って」
涼夏にそう促されたが、謹んで辞退した。
3回目は「絢音を」「素早く」「かき混ぜる」になり、かき混ぜて欲しそうな絢音を制しながら涼夏が言った。
「千紗都が動詞を担当してるのがダメだ。私と絢音のチームワークを見せる!」
いかにもフラグっぽい発言である。それでは真ん中を担当すると、「大地を」「じっくりと」「舐め回す」になった。涼夏が頭を抱えて悲鳴を上げた。
「絢音に裏切られた! 突然の大地!」
「大地と戯れる涼夏が見たかったから」
平然と絢音。もし「うなじ」とでも書かれていたら涼夏の求める願い事になっただろうが、そこは絢音が空気を読んでくれた。
何にしろ、このゲームを楽しく出来るのは10分が限界だと、次の休み時間には新しい願い事ゲームを用意した。
「それぞれして欲しいことを書いて、シャッフルする」
「クリスマスパーティーのプレゼント交換みたいだな」
私の提案に、涼夏がふむふむと頷いた。実に的確な喩えだ。生憎私自身はそんなことをした経験はないが。
どうせ二人のことだから、「おっぱいを揉んでほしい」とか書いてくるだろうが、この3人ならどんな組み合わせになっても大事故は起こらない。好きなだけ二人でおっぱいを揉み合ってくれればいい。
帰りまでに3つ用意することになったので、私は「自己紹介をして」「駅まで荷物を持って」「クッキーを焼いてきて」という願い事にした。2つ目はフラグ感があるが、挑戦は必要だ。本当はアイスとか食べたかったが、お金がかかるものは絢音が可哀想だし、私とてそんなに持っているわけではないのでやめておいた。
二人も昼休みが終わるまでには書いたというので、最後の授業の前にランダムに交換すると、「嗅ぎたい」と「脱ぎたてのパンツを10秒握る」、そして私のクッキーの3つになった。想定はしていたが、ひどい願い事だ。
「絢音、このパンツのやつ、何?」
私が半眼でそう聞くと、絢音は驚いたように目を丸くした。
「私が書いたなんて言ってない!」
「いや、絢音でしょ。涼夏っぽくない」
「千紗都は涼夏を理解してない。まあ、私だけど」
あっさりと白状した上、「ちなみに嗅ぎたいのも私」と笑った。最後の一つは無事に涼夏が引いたようで、「両側からバンズになって」という、いかにも絢音らしい願い事だった。
無事と言ったが、自分の願い事だから本来は自分が引いた方が良い。プレゼント交換とは種類が違うし、現に私には脱ぎたてのパンツを握りたい欲求がまったくない。
「あーあ、自分の一つも来なかった」
絢音が楽しそうにそう言いながら、自分の引いた紙を広げた。私の荷物の願い事と、もう2つは「耳元で愛を囁いて」と「笑って」というものだった。どちらも涼夏ので、さっき「おっぱい」とか「お尻」とか「舐め回す」とか書いていた人とは思えない、まともな願い事である。
絢音が「当たりだ」と手を叩くと、呆れたように涼夏が言った。
「この遊びの趣旨は、誰がどれを引いてもそれなりに当たりになるはずだぞ?」
よほど突拍子もないものではない限り、人類の願い事など共通だ。そのはずだった。
「このパンツのやつ、ジョーカー?」
「私は別にバンズでもいい。ただし、外だと暑くて死ぬ」
なお、涼夏が自分で引いた最後の1枚は、「何かくれ」だった。実にシンプルで潔い願い事だ。
まだ最後の授業があるので、この休み時間は各自願い事を確認するだけにした。どう実現するか、帰りまでに考えよう。
「じゃあ、帰りに8個の願い事を叶え合って友情を深めよう」
私が紙をまとめながらそう言うと、絢音が不思議そうに首をひねった。
「8個?」
「パンツの願い事は辞退することにした」
「ルールブックに、引いた願い事は願わなくてはならないって書いてあるよ?」
そんなことはどこにも書いていない。涼夏が「願わなくてはいけない」と復唱しながら笑っているが、もう脱ぐ覚悟を決めたのだろうか。
仕方がないので、せいぜいパンツを握って喜べる精神状態に整えよう。真っ当な状態とは思えないが。
友達と仲良くなるには、やはりたくさん遊ぶのがいいだろう。一応AIにも友達と仲良くなる方法を聞いてみたが、共通の趣味や興味を見つけて積極的に関わるのがいいとのこと。方向性は間違っていないようだ。
七夕にちなんだ遊びということで、願い事ゲームというのを考えてみた。「お好み焼きを」「豪快に」「食べる」みたいに、3人がそれぞれ1つずつフレーズを書いて、1つの願い事を作るゲームだ。
早速休み時間にやってみると、「おっぱいを」「優しく」「放り投げる」という残念な結果になった。これは「放り投げる」を書いた私の戦犯だろう。
「せめて模範解答は用意して」
絢音に言われて、それはそうだと頷いた。何を放り投げれば願い事になるのか、書いた私にもわからない。
2回目は「お尻を」「激しく」「叩く」になって、涼夏がむず痒そうに言った。
「願い事に『叩く』はないでしょ」
「いや、普通に肩とか叩くでしょ」
今度はちゃんと考えたと訴える。もっとも、涼夏がその手の単語を書いてくるのは容易に想像できたので、敢えて外したのは確かだ。
「人生で肩を叩いた記憶がない。まあいいや。とりあえずお尻を叩くから立って」
涼夏にそう促されたが、謹んで辞退した。
3回目は「絢音を」「素早く」「かき混ぜる」になり、かき混ぜて欲しそうな絢音を制しながら涼夏が言った。
「千紗都が動詞を担当してるのがダメだ。私と絢音のチームワークを見せる!」
いかにもフラグっぽい発言である。それでは真ん中を担当すると、「大地を」「じっくりと」「舐め回す」になった。涼夏が頭を抱えて悲鳴を上げた。
「絢音に裏切られた! 突然の大地!」
「大地と戯れる涼夏が見たかったから」
平然と絢音。もし「うなじ」とでも書かれていたら涼夏の求める願い事になっただろうが、そこは絢音が空気を読んでくれた。
何にしろ、このゲームを楽しく出来るのは10分が限界だと、次の休み時間には新しい願い事ゲームを用意した。
「それぞれして欲しいことを書いて、シャッフルする」
「クリスマスパーティーのプレゼント交換みたいだな」
私の提案に、涼夏がふむふむと頷いた。実に的確な喩えだ。生憎私自身はそんなことをした経験はないが。
どうせ二人のことだから、「おっぱいを揉んでほしい」とか書いてくるだろうが、この3人ならどんな組み合わせになっても大事故は起こらない。好きなだけ二人でおっぱいを揉み合ってくれればいい。
帰りまでに3つ用意することになったので、私は「自己紹介をして」「駅まで荷物を持って」「クッキーを焼いてきて」という願い事にした。2つ目はフラグ感があるが、挑戦は必要だ。本当はアイスとか食べたかったが、お金がかかるものは絢音が可哀想だし、私とてそんなに持っているわけではないのでやめておいた。
二人も昼休みが終わるまでには書いたというので、最後の授業の前にランダムに交換すると、「嗅ぎたい」と「脱ぎたてのパンツを10秒握る」、そして私のクッキーの3つになった。想定はしていたが、ひどい願い事だ。
「絢音、このパンツのやつ、何?」
私が半眼でそう聞くと、絢音は驚いたように目を丸くした。
「私が書いたなんて言ってない!」
「いや、絢音でしょ。涼夏っぽくない」
「千紗都は涼夏を理解してない。まあ、私だけど」
あっさりと白状した上、「ちなみに嗅ぎたいのも私」と笑った。最後の一つは無事に涼夏が引いたようで、「両側からバンズになって」という、いかにも絢音らしい願い事だった。
無事と言ったが、自分の願い事だから本来は自分が引いた方が良い。プレゼント交換とは種類が違うし、現に私には脱ぎたてのパンツを握りたい欲求がまったくない。
「あーあ、自分の一つも来なかった」
絢音が楽しそうにそう言いながら、自分の引いた紙を広げた。私の荷物の願い事と、もう2つは「耳元で愛を囁いて」と「笑って」というものだった。どちらも涼夏ので、さっき「おっぱい」とか「お尻」とか「舐め回す」とか書いていた人とは思えない、まともな願い事である。
絢音が「当たりだ」と手を叩くと、呆れたように涼夏が言った。
「この遊びの趣旨は、誰がどれを引いてもそれなりに当たりになるはずだぞ?」
よほど突拍子もないものではない限り、人類の願い事など共通だ。そのはずだった。
「このパンツのやつ、ジョーカー?」
「私は別にバンズでもいい。ただし、外だと暑くて死ぬ」
なお、涼夏が自分で引いた最後の1枚は、「何かくれ」だった。実にシンプルで潔い願い事だ。
まだ最後の授業があるので、この休み時間は各自願い事を確認するだけにした。どう実現するか、帰りまでに考えよう。
「じゃあ、帰りに8個の願い事を叶え合って友情を深めよう」
私が紙をまとめながらそう言うと、絢音が不思議そうに首をひねった。
「8個?」
「パンツの願い事は辞退することにした」
「ルールブックに、引いた願い事は願わなくてはならないって書いてあるよ?」
そんなことはどこにも書いていない。涼夏が「願わなくてはいけない」と復唱しながら笑っているが、もう脱ぐ覚悟を決めたのだろうか。
仕方がないので、せいぜいパンツを握って喜べる精神状態に整えよう。真っ当な状態とは思えないが。
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