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第九十話 獣人連合リーダー 前編
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イベント四日目に突入した。昨日は早くゲームを辞めたので、集合時刻は午前九時だ。僕はいつも通りに集合時刻の三十分前にゲームにログインしていた。
「えーい!」
誰かの掛け声と共に僕の背中に衝撃が走る。
「いて!」
僕は犯人が誰かを確認する為に後ろを振り向く。声からして多分、ハルではないかと思うが……。
後ろを振り返って見るとそこには誰も居なかった。【隠蔽】スキルでも使って隠れてしまったのか。もし攻撃してきたのが、ハルであるならば大きな発見ができたと言えよう。
「気のせいか……」
僕はわざと気づいていないフリをし、攻撃を誘うことにした。
「えーい!」
僕の予想通りにもう一回攻撃してきた。声は裏から聞こえるので、手を後ろに回し受け止めた。そのまま手を握り、足をガッチリとロックする。
「バレバレだぞ! ハル!」
僕は足をロックしたまま後ろを見た。
「えへへ……バレちゃった」
「バレるに、決まってるやろ! 隠蔽スキルを使ってるのに声を出す奴がいるか!」
「あっ!」
「あっ! じゃねぇよ。それよりお返しな!」
僕はハルを横まで引っ張ってきて、頭に拳骨をした。
「イッテェー!」
ハルは頭を抱えている。いつまでも舐められっぱなしではいけないと思ったので、少し強めに殴ってしまったが、泣いていないのでよしとしよう。ハルの性格上、一発殴っただけでは懲りずにまたやってくるとは思うが、今日はもうやってこないだろう。
「昨日、聞きそびれたから聞いとくけどどこに住んでいるんだ?」
「えっとね。愛知県、岡崎市!」
「なるほど……僕の家と近いな」
「そうなの? どこ?」
「豊川市だ」
「本当だ! 近い!」
ベッドに座りながら床に届かない足をパタパタとさせているハルが息を弾ませて言う。
ハルと話し始めてから十分が経ち、僕の真横が光り出した。時間からして、おそらくツキナがログインしてきたのだろう。
「おはよう! ヒビト、ハルくん」
「おはよう! ツキナ」
「おはよう!」
ツキナが顔に喜色を浮かべながら言ってくるので、僕とハルはツキナと同じ表情で返事をする。ツキナも含めて、三人で楽しく話しているとみんながログインしてくる。
みんながログインしてきたと言うことは、今は集合時刻の十分前だと言うことになる。三人で話をするのが楽しくてすっかり時間を忘れてしまっていた。
「おはよう! みんな!」
僕が挨拶をするとみんなは「おはよう!」と返してくれた。
「今日はどこに行く?」
挨拶をした後すぐに、今日向かうフィールドを決めることにした。僕がみんなの顔を見渡しているとハルが手をあげる。
「どうした? ハル」
「えっとね、釣り大会に行きたい!」
「釣り?」
「うん! レアな妖怪が生息している池を情報屋が見つけたみたいで、大会が開かれるんだよ」
「なるほど……なるほど……」
釣りは僕が経験した中で、一位、二位を争う苦手な遊びの一つなので、あまり乗る気にはならなかった。たが、立場上みんなの意見を聞かないといけないので、釣り大会に参加するかどうかを聞いた。その結果、僕以外の全員が行きたいと言っていたので参加することになった。
決まってしまったので、もう逃げることはできなくなってしまった。僕は(ツキナに恥ずかしいところを見せないように頑張ろ!)と決意した。
釣り大会が行われる場所はここから徒歩で二十分くらい歩いたところにある大池らしい。幻獣で行くことも考えたが目立ってしまうと思ったのでやめておくことにした。僕達は釣り大会が始まる十時半に間に合うように拠点を出て行った。
大池に着くとそこにはたくさんのプレイヤーが釣り大会開始時刻を今か今かと待ち望んでいる状態だった。屋台まで出ており、ちょっとしたお祭り騒ぎである。
「こんなに多くのプレイヤーが参加するんですね」
ムサシが釣り大会会場をキョロキョロと見ながら言う。ざっと数えても百人以上はいる。
「そうだな。どんな妖怪が出てくるのか、楽しみになってきた」
僕は答えた。レアな妖怪がいると言う情報だけでここまで多くのプレイヤーが集まってくるとは……。他のプレイヤー達も僕みたいにどんな妖怪なのか知りたいと言うことなのだろう。
この大会には参加費が必要らしく、僕達は受付でお金を払って会場内へ入って行った。釣り竿も支給されている。釣り竿の性能で差が出るのを防ぎたかったと言う事だろう。
他のプレイヤーが場所取りをしている中で一箇所だけ人が集まっていない場所があった。どう言う意図であの場所を開けているのだろうか。
「あそこに行こう」
僕は空いているところを指差しながら言う。
「了解!」
みんなが返事を返してくれたので空いている場所に向かっていく。
片手剣使いの男性
「あのプレイヤー達、獣人連合のリーダーのところに向かってるぞ!」
弓使いの男性
「勇気あるなぁ……」
槍使いの女性
「あの人、殺されちゃうよ」
周囲からそのような話が聞こえてくる。僕は《獣人連合》のリーダーがどう言う人かが気になったので、視線を向けると上下が黒色の服で頭にはライオンみたいな黒色のたてがみを装備している男性が、その隣には上下が白色で頭には白色のたてがみを装備した女性がいた。見るからにあの人達のどちらかが《獣人連合》のリーダーに違いない。
遠くからでははっきりと顔が見えないので、僕は興味本位で二人に近づく。ツキナが「むやみに近づくのは良くないよ」と言っていた気がしたが、いまさら引き返す気にはなれなかった。
「なんだ、お前! 俺の縄張りに入ってくるんじゃねぇ!」
二人との距離が残り十メートルとなった頃、黒色のたてがみを装備した男性が突然、大きな声を出しながら僕に右手の正拳突きをしてきた。
「いきなり何するんだよ!」
僕はそれを右手で受け止めた。僕達の周りに突風が発生する。それに男性の攻撃にはずっしりとした重みを感じる。さすがはトップギルドの人だ。この人がリーダーなのかな……。
「ちっ! 幻獣の加護持ちかよ!」
「悪いな! そうなんだよ!」
【幻獣の加護】、これはプレイヤーの全パラメーターを上昇させるもの、さらに一定ダメージを防ぐことが可能なのだ。そのため何のバフもついていない攻撃を無傷で受けることができたと言う訳だ。周囲のプレイヤーの視線が一斉に集まる。僕と男性は笑みを浮かべる。
「えーい!」
誰かの掛け声と共に僕の背中に衝撃が走る。
「いて!」
僕は犯人が誰かを確認する為に後ろを振り向く。声からして多分、ハルではないかと思うが……。
後ろを振り返って見るとそこには誰も居なかった。【隠蔽】スキルでも使って隠れてしまったのか。もし攻撃してきたのが、ハルであるならば大きな発見ができたと言えよう。
「気のせいか……」
僕はわざと気づいていないフリをし、攻撃を誘うことにした。
「えーい!」
僕の予想通りにもう一回攻撃してきた。声は裏から聞こえるので、手を後ろに回し受け止めた。そのまま手を握り、足をガッチリとロックする。
「バレバレだぞ! ハル!」
僕は足をロックしたまま後ろを見た。
「えへへ……バレちゃった」
「バレるに、決まってるやろ! 隠蔽スキルを使ってるのに声を出す奴がいるか!」
「あっ!」
「あっ! じゃねぇよ。それよりお返しな!」
僕はハルを横まで引っ張ってきて、頭に拳骨をした。
「イッテェー!」
ハルは頭を抱えている。いつまでも舐められっぱなしではいけないと思ったので、少し強めに殴ってしまったが、泣いていないのでよしとしよう。ハルの性格上、一発殴っただけでは懲りずにまたやってくるとは思うが、今日はもうやってこないだろう。
「昨日、聞きそびれたから聞いとくけどどこに住んでいるんだ?」
「えっとね。愛知県、岡崎市!」
「なるほど……僕の家と近いな」
「そうなの? どこ?」
「豊川市だ」
「本当だ! 近い!」
ベッドに座りながら床に届かない足をパタパタとさせているハルが息を弾ませて言う。
ハルと話し始めてから十分が経ち、僕の真横が光り出した。時間からして、おそらくツキナがログインしてきたのだろう。
「おはよう! ヒビト、ハルくん」
「おはよう! ツキナ」
「おはよう!」
ツキナが顔に喜色を浮かべながら言ってくるので、僕とハルはツキナと同じ表情で返事をする。ツキナも含めて、三人で楽しく話しているとみんながログインしてくる。
みんながログインしてきたと言うことは、今は集合時刻の十分前だと言うことになる。三人で話をするのが楽しくてすっかり時間を忘れてしまっていた。
「おはよう! みんな!」
僕が挨拶をするとみんなは「おはよう!」と返してくれた。
「今日はどこに行く?」
挨拶をした後すぐに、今日向かうフィールドを決めることにした。僕がみんなの顔を見渡しているとハルが手をあげる。
「どうした? ハル」
「えっとね、釣り大会に行きたい!」
「釣り?」
「うん! レアな妖怪が生息している池を情報屋が見つけたみたいで、大会が開かれるんだよ」
「なるほど……なるほど……」
釣りは僕が経験した中で、一位、二位を争う苦手な遊びの一つなので、あまり乗る気にはならなかった。たが、立場上みんなの意見を聞かないといけないので、釣り大会に参加するかどうかを聞いた。その結果、僕以外の全員が行きたいと言っていたので参加することになった。
決まってしまったので、もう逃げることはできなくなってしまった。僕は(ツキナに恥ずかしいところを見せないように頑張ろ!)と決意した。
釣り大会が行われる場所はここから徒歩で二十分くらい歩いたところにある大池らしい。幻獣で行くことも考えたが目立ってしまうと思ったのでやめておくことにした。僕達は釣り大会が始まる十時半に間に合うように拠点を出て行った。
大池に着くとそこにはたくさんのプレイヤーが釣り大会開始時刻を今か今かと待ち望んでいる状態だった。屋台まで出ており、ちょっとしたお祭り騒ぎである。
「こんなに多くのプレイヤーが参加するんですね」
ムサシが釣り大会会場をキョロキョロと見ながら言う。ざっと数えても百人以上はいる。
「そうだな。どんな妖怪が出てくるのか、楽しみになってきた」
僕は答えた。レアな妖怪がいると言う情報だけでここまで多くのプレイヤーが集まってくるとは……。他のプレイヤー達も僕みたいにどんな妖怪なのか知りたいと言うことなのだろう。
この大会には参加費が必要らしく、僕達は受付でお金を払って会場内へ入って行った。釣り竿も支給されている。釣り竿の性能で差が出るのを防ぎたかったと言う事だろう。
他のプレイヤーが場所取りをしている中で一箇所だけ人が集まっていない場所があった。どう言う意図であの場所を開けているのだろうか。
「あそこに行こう」
僕は空いているところを指差しながら言う。
「了解!」
みんなが返事を返してくれたので空いている場所に向かっていく。
片手剣使いの男性
「あのプレイヤー達、獣人連合のリーダーのところに向かってるぞ!」
弓使いの男性
「勇気あるなぁ……」
槍使いの女性
「あの人、殺されちゃうよ」
周囲からそのような話が聞こえてくる。僕は《獣人連合》のリーダーがどう言う人かが気になったので、視線を向けると上下が黒色の服で頭にはライオンみたいな黒色のたてがみを装備している男性が、その隣には上下が白色で頭には白色のたてがみを装備した女性がいた。見るからにあの人達のどちらかが《獣人連合》のリーダーに違いない。
遠くからでははっきりと顔が見えないので、僕は興味本位で二人に近づく。ツキナが「むやみに近づくのは良くないよ」と言っていた気がしたが、いまさら引き返す気にはなれなかった。
「なんだ、お前! 俺の縄張りに入ってくるんじゃねぇ!」
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「いきなり何するんだよ!」
僕はそれを右手で受け止めた。僕達の周りに突風が発生する。それに男性の攻撃にはずっしりとした重みを感じる。さすがはトップギルドの人だ。この人がリーダーなのかな……。
「ちっ! 幻獣の加護持ちかよ!」
「悪いな! そうなんだよ!」
【幻獣の加護】、これはプレイヤーの全パラメーターを上昇させるもの、さらに一定ダメージを防ぐことが可能なのだ。そのため何のバフもついていない攻撃を無傷で受けることができたと言う訳だ。周囲のプレイヤーの視線が一斉に集まる。僕と男性は笑みを浮かべる。
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