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第七十一話 女王蟻

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「ツキリン! 今の何?」
「ハントスキルよ!」

 リリが質問するので、ツキナはすぐに回答する。【ハント】と言った時点で、十五匹のアルメールアントを捕獲したということを教えているようなものだ。どうやらツキナはアルメールアントを食べたことがあると言う事実を隠さないらしい。

「やっぱり、ツキリン。食べたことがあったんだね」
「柔らかくて美味しかったわよ。もうヒビトにばれちゃったから隠さないわ」
「隠さないも何も、ツキリンは嘘が下手だから分かってたよ」
「もう、リリったら恥ずかしいから辞めてよ!」

 リリの言葉に顔を赤らめるツキナ。みんなもツキナが嘘をつくことが下手だと言うことを分かっているので、納得しているようだ。やっぱり、顔を赤らめたツキナも可愛い。

「ツキナ! ここから出たら美味しい料理を楽しみにしてるよ! それよりも早い事、女王を片付けようぜ!」

 みんなでツキナの話題で盛り上がっているとトモがそんな提案をしてくる。
 ツキナの話題で盛り上がっていたので、半分忘れかけていたが、今はアルメールアントの女王の部屋の前にいる。

ムサシ
「そうですね! 女王を倒しに行きましょう!」

アサガオ
「早く倒しましょう!」

 ムサシとアサガオが真っ先に答える。僕もツキナの手料理を楽しみにしつつ、集中をする。
 女王を倒せば、ギルドメンバーを強化するスキルが手に入るかもしれない。絶対に負けるわけにはいかないのだ。僕達は扉を開け、中に入っていく。
 入ってすぐ女王の姿が目に入った。全長は予想していた通りに、どのアルメールアントと比較にならないほど大きく。部屋中に卵が配置してある。さすがは蟻、繁殖力が高い。女王と戦闘している時に孵化する可能性があることを懸念している。
 女王は雄のアルメールアントみたいに口から針状のものを飛ばしてくる。女王が先制攻撃を仕掛けてきたのだ。女王が攻撃した事で戦闘がスタートした。

「氷の舞! アイシクルスピア!」

 ツキナは氷の氷柱を作り出し、女王の針状のものを迎撃する。ツキナが針状のものを打ち落としている間に僕とムサシ、そしてアサガオが接近する。
 コジロウも近距離攻撃専門だが、今回は戦うことをやめ、ツキナの後ろに隠れている。どうやら先程の戦いで、限界が来てしまったようだ。

「六明神! 土!」

 僕は剣に土属性を纏わせ、下から斬り上げる。

「分身! 炎撃!」

 続けて、アサガオが追撃をかける。

「霧雨!」

 さらにムサシが連続技で女王に攻撃する。全ての攻撃を受けた女王は少しだけ後退する。
 後退したことにより、口から飛ばしていた針状のものも同時に止まる。そして残っていたツキナの【アイシクルスピア】が女王を襲う。 
 女王は大顎をすり合わせ、「キリキリ」と言う音をたてながら僕たちを威嚇する。
 女王は口から斧を出現させる。そのまま勢いよく僕達に接近してきて上から振り落とす。僕とムサシとアサガオはそれを受け止める。三人がかりでやっと止めれるほどの威力。直撃していたらただでは済まない。

「六明神! 水! ピュアスアローウ!」
「行けー!」

 僕達が長くは持たないと判断したトモとリリがレーザー銃と矢で攻撃してくれる。素晴らしい援護である。

ヒビト
「オラァッ!」

ムサシ
「ハァッ!」

アサガオ
「イヤァッ!」

 僕達は短く声を出しながら、女王の力が緩んだ瞬間に斧を弾き返す。女王はのけぞったものの、すぐに体勢を立て直し、斧を僕に向かって投げてくる。
 (何で、僕なんだ!)と思いつつ、斧をギリギリのところで回避する。予想以上にスピードが速かったので、もっと余裕を持って回避したつもりだったのが、ギリギリのタイミングになってしまった。女王はそのまま僕に向かって針状のものを飛ばしてくる。

「おいおい! マジかよ!」

 ヘイトを取っているつもりはなかったのに集中的に狙われている。

「シールド!」

 ツキナがギリギリで回避した事でバランスを崩していた僕を守ってくれた。攻撃を受けてしまいそうだったので、非常にありがたい。「ありがとう」とツキナに感謝する。

「ヘイトをとってくれて感謝でござる! 雪時雨!」

 ヘイトを取っているつもりはなかったが、武士モードになったムサシにお礼を言われたので、「どういたしまして」と言っておく。
 ムサシは十連撃技を女王に叩き込む。攻撃が当たるたびに氷が発生し、女王を氷やられ状態にした。女王の動きが止まる。

「炎撃!」

 アサガオも僕が女王のヘイトをとっている間に接近しており、攻撃をしていた。

「六明神! 炎! ピュアスアローウ高速三連射!」

 トモもアサガオに続いて攻撃し、女王を炎やられ状態にする。女王は再び動き出したが、継続ダメージでHPを減らしていく。

「みんな! ナイス!」

 僕は地面で体勢を立て直すと、女王に近づく。属性やられ状態になっている今なら十分な火力が期待できるからだ。

「雪・月・花!」

 このスキルは僕が持っているスキルの中で一番火力が出る。これで女王のHPを半分以下にしたい。女王もタダではやられてはくれない口から剣を出現させ、迎撃してくる。

「オラァァァッ!」
  
 僕は部屋中に響き渡るような大声を出し、二連撃目で剣を浮かせる。そして女王の体に残りの二連撃を叩き込んだ。

「雷の舞! イカズチ!」
「え———い!」

 ツキナとリリも僕に続けてダメージを与える。女王の真上から雷が落ちる。そしてレーザーが女王の体に直撃した。
 女王の二十万近くあったHPが半分を下回った。さすがは地下迷宮と言うべきか、階層ボスモンスターの耐久力を侮ることはできない。
 女王が再び「キリキリ」と大顎をすり合わせ威嚇してくる。女王が威嚇を行うと部屋中に配置してあった卵からアルメールアントが孵化する。懸念していたことが現実になったのだ。
 孵化してくるアルメールアントは働き蟻ほどの大きさではなく、その半分以下だった。しかし数が多いので、非常に面倒くさそうである。

「うわぁっ! たくさん出てきた!」

 トモが嫌そうな顔をしながら言う。確かにこの量を相手にするのは面倒である。ざっと数えても百匹はいる。働き蟻ほどの耐久力はないが、集団でかかってこられればひとたまりもない。
 アルメールアントの子供がゾロゾロとこちらに近づいてくる。ここを出来るだけHPを減らさずに乗り越えることができれば、有利になるに違いない。僕達はアルメールアントの子供を倒す作業に入る。
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