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第六十六話 巨大ナメクジ戦

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 巨大ナメクジはベチャベチャと音を立てながらこちらに向かってくる。音も本当に気持ち悪い。
 僕達は警戒を強めながらジリジリと後ろに下がる。コジロウは僕達から十メートルくらい離れたところの岩陰に隠れている。【燕返し】なら唾液の攻撃を跳ね返せるのではと思っていたが、戦ってくれそうにない。

「六明神! 炎! ピュアスアローウ!」

 トモの放った矢がナメクジの体に穴を開けるが、ナメクジはすぐに再生する。この再生能力は今後、厄介になりそうだ。ナメクジは十分に僕達に接近すると胴体から手を出現させる。

「きもい! 手が出た!」
「本当に気持ち悪いですね!」

 僕とムサシは鳥肌が立つのを感じる。ムサシは戦国モードになるのを忘れている。ツキナ達も引いている。誰も接近しようとはしない様子だ。
 それを良いことにナメクジは拳を握り、連続で殴り付けてくる。体に当たりそうなものは剣を使って避けつつ、回避する。
 どうやら剣にデバフが付くということはなさそうだ。ここままでは拉致が開かない。

「六明神! 炎!」

 僕は剣に炎を纏わせ、ナメクジの手を斬り飛ばす。ナメクジにダメージが入る。ナメクジは数歩、後退する。
 どうやら作り出したものには【自己再生】機能はないらしい。本体に攻撃するよりも作り出したものを確実に潰していったほうが、ダメージ効率が良い。

「みんな、ナメクジが作り出したものを潰していってくれ! 本体に攻撃するよりはダメージ効率が良い!」

 みんなの返事が返ってくる。ナメクジはちびナメクジを弾丸のように飛ばしてくる。僕達は一匹一匹、確実にちびナメクジを炎属性攻撃で焼いていく。
 ちびナメクジを一匹消滅させるたびにナメクジのHPが減っていく。大きさも少しずつだが小さくなっているような気がする。何かを作り出すときに全長が縮むという弱点があるみたいだ。

「この調子でどんどんナメクジのHPを減らしていきましょう!」

 アサガオがみんなの士気を上げるべく、発言をする。気持ち悪いモンスターと戦うときはいかにして、メンタルを持たせるかが勝敗の鍵になる。アサガオの発言は的確だと言える。
 ちびナメクジの弾丸は治った。ナメクジの大きさは今の攻撃で五十センチくらいになっている。これでもまだでかいが、HPが半分以下になっているので、まずまずの結果だ。
 かなりのダメージを受けたナメクジは体の下に足を作り出す。反撃が来るかもしれないので、身構えているとナメクジは百八十度回転させ逃走を始めた。二本足で走るナメクジ異様な光景だ。

「こら! 逃げるな!」

 僕は再び復活して、攻撃されても困ると思ったので慌てて追いかけようとするが、ナメクジの足が急に切断されたので追うのをやめる。
 
 何が起きたんだ? 勝手に足が切れたぞ

「引っかかってくれた」

 リリが微笑を浮かべながら言ってくる。リリは手にワイヤーを持っている。

「何をしたんだ?」

 僕はすかさずリリに質問する。

「実は、ちびナメクジの弾丸攻撃をしてきたときにワイヤートラップを設置しておいたんだ~」

 リリは胸を張って言う。ナメクジが逃げる可能性があると予想してワイヤートラップを仕掛けていたらしい。さすがと言うべきか、とにかくすごい。

「リリ、俺より用意周到じゃないか」
「当たり前だよ、生産職だからね」
「さすがは俺の彼女!」
「あ、ありがとう」

 トモの褒め言葉にリリは顔を赤らめながら答える。仲が良くて何よりだ。それはそうとしてまだ逃げようとしているナメクジにとどめを刺さないと、さてと、SPはゼロになるけどあれを使おう。SP回復薬もちゃんと用意してあるし。

「ツキナ! シールドを貼ってくれるか?」
「分かったわ! 何をする気?」
「とっておきを使う!」
「そう!」

 今から使おうとしているスキルは対象を指定できるように設定されていないと敵と味方を見境無く攻撃する殺戮兵器になりかねないので、もちろん制御は可能だ。
 だが、初めてこのスキルを使うので、念のためにツキナにシールドを張ってもらうことにしたのだ。ツキナがシールドをしっかりと張ったことを確認した後、スキルを発動した。

「灼熱!」

 猛炎がツキナ達を避けて、あたり一面を焼き尽くす。制御はしっかりとできたようだ。ナメクジは跡形もなく消滅していた。
 SPが零になっているので、すごい脱力感に襲われた。僕はすぐにSP回復薬を三本ほど手に出現させ、飲み干す。

「ヒビト、すごい攻撃だったわね! それよりなんでそんなにSP回復薬を飲むの?」
「それは……このスキルがSPを全て消費するからだよ」
「デメリットが大きいじゃない! なんで今使ったの?」
「それは、もちろん。どれだけ威力が出るか確かめたかったからだよ」
「心配だから、程々にしなさいよ」
「はーい」

 ツキナは心配そうな表情をしている。僕は(心配させて、ごめん)と思いながらツキナに言葉を返した。
 ナメクジを無事に倒すことができたので、地下迷宮の探索に本格的に入ることにした。ナメクジみたいに厄介なモンスターがこの地下迷宮には複数体いる可能性があるので気をつけて進まなければ……。
 コジロウはナメクジが消滅した瞬間にいつも通りの調子に戻り、何事もなかったかのように振る舞っている。色々、言いたいことがあったが、今はそっとしておく。
 地下迷宮は道が迷路のようになっており、どこが正解の道なのかが、よく分からなくなっていた。

「あれ? ここさっきも通らなかったか?」

 トモがそんなことを呟く。

「確かに見た事があるような……」
 
 僕は周りの景色を確認した後、トモに返事を返す。先程から全く進んでないような気がしていたのだ。何か目印になるものを置いておかないと永遠にさまよってしまうかもしれない。

「目印になるようにこれを置いとくね」

 僕の意を汲んだのか、リリは僕達が腰につけているランタンと同じタイプのものを地面に置く。
 三つの分かれ道、さっきは真ん中を進んでいった気がしたので、今度は右側に進んでいく。分かれて探索するという選択肢もあるが、こういう場所はなにが起こるのか分からないので、別れるのは危険だと思われる。
 今回はリリのランタンが置かれた場所に戻ってこなかったので、正解だったようだ。僕達は迷路みたいな道を順調に進んでいく。
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