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第二十六話 束の間の休息と初乱入クエスト
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アサガオが眠ってしまってから二十分くらいが経ち、僕たちは他のプレイヤーに襲われることなく船に到着していた。
船に上陸した当初は五十人くらいいたのに今は半分の二十五人くらいしかいなくなっていた。
少女を襲っていたプレイヤーとライオンに襲われていたプレイヤーの姿は無かった。HPがゼロになって街に戻ってしまっているのだろう。
僕たちは船に乗り込む。これで天魔浄玉が奪われる心配がなくなった。
「全てのプレイヤーが揃ったので、出航します! 各プレイヤーはこの船の客室に入室してください!」
船内アナウンスが流れた。生き残っているプレイヤーはこれだけみたいだ。僕たちは行きに使用していた客室に向かった。
行きと違って一人増えたのだが、この船の客室は十人入っても窮屈にならないぐらいの広さがあるので問題はない。
トモはまだぐっすりと眠っているアサガオをソファーに寝かして座る。座った時に自分の膝をアサガオの枕にしていた。面倒見が良い。
僕たちもトモが座った後にソファーに着席する。
「疲れた……!」
僕はソファーに腰をかけた瞬間に伸びを行う。天魔島では変に神経を使ったので、どっと疲れを感じている。
「トモ! アサガオを助けた時に使っていたスキルは何?」
「あれは、天魔のHPがゼロにした時に手に入れたスキルだ! ここにいる全員が手にしているはずだ!」
トモに言われたので、僕はリンクメニューを操作してスキルを確認する。ツキナとリリは既に分かっているらしく操作をしているのは僕だけだった。
【神の祝福、HPが一の時のみ半径五メートル圏内にいる味方のHPとMPを全回復させる】
【悪魔の加護、HPが一の時のみ自分のSTRを三十倍にする】
デメリットもあるが、これは使い所によっては最強になるスキルだ。あんな簡単に天魔のHPをゼロにしたのにこんなスキルを手に入れてしまうとは……。
「神の祝福、ツキナには相性いいんじゃないか?」
「そうね! でもタイマンで戦うときは向かないわね!」
「それもそうか!」
僕とツキナは笑いながら、普通の会話をする。(それにしてもアサガオの寝顔は本当に可愛いな)僕はまじまじと見てしまう。
「ヒビト、ツキリン、トモ! この船、料理も頼めるみたいだから何か食べない?」
「いいわね! 何か頼みましょ!」
リリとツキナは料理を食べたそうにしているので、料理を頼むことになった。複数ある料理の中から、みんなでつまめるメニューを選択して注文をする。
「奢る人をジャンケンで決めようぜ!」
トモがそんな提案をしてきた。
ヒビト
「絶対負けねぇ!」
ツキナ
「いいわよ!」
リリ
「いいよ!」
僕とツキナとリリはトモの意見に賛成なので、ジャンケンをすることになった。ジャンケンをした結果、僕がチョキで一人負けすると言う形になった。
「くそぉぉ!」
一人負けしたことが悔しかった僕は声を大きく出してしまう。
トモ
「ごちになります!」
ツキナ
「ごちそうになるわね!」
リリ
「ごちそうさま!」
奢る人が決まってから数分が経ち、注文したメニューがテーブルの上に並べられる。美味しそうな匂いに釣られてか、さっきまでぐっすりと眠っていたアサガオが目を覚まし、挨拶をしてきた。
「おはようございます……」
「おはよう、アサガオちゃん」
僕とツキナとリリは同時に挨拶を返す。
「おはよう、アサガオ! よく眠れたか?」
「うん!」
「それならよかった!」
トモは唇をほころばせながら、アサガオの頭を撫でている。まるで父と娘みたいだ。
「お兄ちゃん! これ食べていい?」
「いいぞ! ヒビトの奢りだからな!」
「そうなんですか……ヒビトさんありがとうございます」
「どういたしまして」
アサガオにお礼を言われたので、返事を返す。しばらく食事をしながら話を続け、残り十五分で街に着く距離まで船が到達した頃、船内に災害が起きた時みたいな警戒音が鳴り響く。
「何だ?」
僕は大きい音に飛び上がるほどびっくりしたてしまった。
「船内にいるプレイヤーの皆さん! 至急、デッキに集まってください! 繰り返します! 船内にいるプレイヤーの皆さん! 至急、デッキに集まってください!」
緊急を知らせる船内アナウンスが流れる。
「乱入クエストが発生したわね!」
「乱入クエスト?」
「前情報なしで、突然高ランクのモンスターが出現するクエストのことよ!」
「なるほど……高ランクモンスターね……」
「すぐにデッキに向かうわよ!」
僕たちはツキナの言葉に「おー!」と反応してデッキに向かって走っていく。
デッキに着くと船内にいた二十五人くらいのプレイヤーが既に集まっていた。
「右前方に一角鯨《いっかくくじら》が現れました! すぐに討伐を開始してください!」
船内アナウンスに言われて、右前方を向くと頭に立派な一本の角をはやした鯨がこちらに向かってきていた。全長は二十五メートルを遥かに超えており、シロナガスクジラよりも巨体のようだ。
「ホエェェェルォォォォ‼︎」
一角鯨が鳴き声を上げるとHPゲージが表示される。HPは八十万近くあるようだ。(なんて高い、HPなんだ……)僕は頭に驚愕の色を浮かべる。
「みんな聞いてくれ! 俺の名前はリュウガと言う! 今から一角鯨を攻略するにあたってここにいるプレイヤーでレイドを組みたい!」
立派な赤色の鎧を見に纏い、背中には赤と黒が混ざった大剣を装備している。そして女装をしたら女の子に見えてしまいそうな美男子のリュウガはデッキにいるプレイヤーに向かって声を発した。
高校三年生くらいに見えるリュウガは現実世界では生徒会長をやっているのではないかと思うほど堂々としている。
「ツキナ、レイドって何?」
僕は小声でツキナに質問をする。
「レイドと言うのは、多人数で戦うボス戦の事よ! ちなみにレイドボスはソロやワンパーティー程度では歯が立たない強さを持っているわ!」
「なら一角鯨はレイドボスみたいな扱いか?」
「そうね!」
僕はツキナの説明で一角鯨がどれくらいの強さを持っているのか理解した。
「まず強力なシールドを張れるプレイヤーは一角鯨が船を攻撃してきた時に沈まないようにして欲しい! 遠距離武器をメインで使っているプレイヤーは積極的に角を狙ってくれ! おそらくそこが一角鯨の弱点であり、攻撃の要になっている場所だ! そして近距離武器をメインで使っているプレイヤーは一角鯨が近づいてきた時のみ最大威力の攻撃をぶつけるんだ! 最後に生産職のプレイヤーは攻撃するプレイヤーの援護を頼む!」
的確な分析に的確な指示、こんなにリーダーシップを取れるのは現実世界でそう言う立場に立っている人だけだ。(絶対、この人は生徒会長やってる)僕は確信した。
「みんな! この戦い、絶対勝つぞ!」
リュウガは気合を入れて、大声を出す。
「おー!」
デッキにいるプレイヤーは全員、リュウガの言葉に気合が入ったのか、大きな声で答える。
僕たちも周りのプレイヤーと同じように声を出す。こんなに声を出したのは剣道の全国大会の決勝戦以来かもしれない。
レイドメンバーと一角鯨の戦いがここに開幕した。
船に上陸した当初は五十人くらいいたのに今は半分の二十五人くらいしかいなくなっていた。
少女を襲っていたプレイヤーとライオンに襲われていたプレイヤーの姿は無かった。HPがゼロになって街に戻ってしまっているのだろう。
僕たちは船に乗り込む。これで天魔浄玉が奪われる心配がなくなった。
「全てのプレイヤーが揃ったので、出航します! 各プレイヤーはこの船の客室に入室してください!」
船内アナウンスが流れた。生き残っているプレイヤーはこれだけみたいだ。僕たちは行きに使用していた客室に向かった。
行きと違って一人増えたのだが、この船の客室は十人入っても窮屈にならないぐらいの広さがあるので問題はない。
トモはまだぐっすりと眠っているアサガオをソファーに寝かして座る。座った時に自分の膝をアサガオの枕にしていた。面倒見が良い。
僕たちもトモが座った後にソファーに着席する。
「疲れた……!」
僕はソファーに腰をかけた瞬間に伸びを行う。天魔島では変に神経を使ったので、どっと疲れを感じている。
「トモ! アサガオを助けた時に使っていたスキルは何?」
「あれは、天魔のHPがゼロにした時に手に入れたスキルだ! ここにいる全員が手にしているはずだ!」
トモに言われたので、僕はリンクメニューを操作してスキルを確認する。ツキナとリリは既に分かっているらしく操作をしているのは僕だけだった。
【神の祝福、HPが一の時のみ半径五メートル圏内にいる味方のHPとMPを全回復させる】
【悪魔の加護、HPが一の時のみ自分のSTRを三十倍にする】
デメリットもあるが、これは使い所によっては最強になるスキルだ。あんな簡単に天魔のHPをゼロにしたのにこんなスキルを手に入れてしまうとは……。
「神の祝福、ツキナには相性いいんじゃないか?」
「そうね! でもタイマンで戦うときは向かないわね!」
「それもそうか!」
僕とツキナは笑いながら、普通の会話をする。(それにしてもアサガオの寝顔は本当に可愛いな)僕はまじまじと見てしまう。
「ヒビト、ツキリン、トモ! この船、料理も頼めるみたいだから何か食べない?」
「いいわね! 何か頼みましょ!」
リリとツキナは料理を食べたそうにしているので、料理を頼むことになった。複数ある料理の中から、みんなでつまめるメニューを選択して注文をする。
「奢る人をジャンケンで決めようぜ!」
トモがそんな提案をしてきた。
ヒビト
「絶対負けねぇ!」
ツキナ
「いいわよ!」
リリ
「いいよ!」
僕とツキナとリリはトモの意見に賛成なので、ジャンケンをすることになった。ジャンケンをした結果、僕がチョキで一人負けすると言う形になった。
「くそぉぉ!」
一人負けしたことが悔しかった僕は声を大きく出してしまう。
トモ
「ごちになります!」
ツキナ
「ごちそうになるわね!」
リリ
「ごちそうさま!」
奢る人が決まってから数分が経ち、注文したメニューがテーブルの上に並べられる。美味しそうな匂いに釣られてか、さっきまでぐっすりと眠っていたアサガオが目を覚まし、挨拶をしてきた。
「おはようございます……」
「おはよう、アサガオちゃん」
僕とツキナとリリは同時に挨拶を返す。
「おはよう、アサガオ! よく眠れたか?」
「うん!」
「それならよかった!」
トモは唇をほころばせながら、アサガオの頭を撫でている。まるで父と娘みたいだ。
「お兄ちゃん! これ食べていい?」
「いいぞ! ヒビトの奢りだからな!」
「そうなんですか……ヒビトさんありがとうございます」
「どういたしまして」
アサガオにお礼を言われたので、返事を返す。しばらく食事をしながら話を続け、残り十五分で街に着く距離まで船が到達した頃、船内に災害が起きた時みたいな警戒音が鳴り響く。
「何だ?」
僕は大きい音に飛び上がるほどびっくりしたてしまった。
「船内にいるプレイヤーの皆さん! 至急、デッキに集まってください! 繰り返します! 船内にいるプレイヤーの皆さん! 至急、デッキに集まってください!」
緊急を知らせる船内アナウンスが流れる。
「乱入クエストが発生したわね!」
「乱入クエスト?」
「前情報なしで、突然高ランクのモンスターが出現するクエストのことよ!」
「なるほど……高ランクモンスターね……」
「すぐにデッキに向かうわよ!」
僕たちはツキナの言葉に「おー!」と反応してデッキに向かって走っていく。
デッキに着くと船内にいた二十五人くらいのプレイヤーが既に集まっていた。
「右前方に一角鯨《いっかくくじら》が現れました! すぐに討伐を開始してください!」
船内アナウンスに言われて、右前方を向くと頭に立派な一本の角をはやした鯨がこちらに向かってきていた。全長は二十五メートルを遥かに超えており、シロナガスクジラよりも巨体のようだ。
「ホエェェェルォォォォ‼︎」
一角鯨が鳴き声を上げるとHPゲージが表示される。HPは八十万近くあるようだ。(なんて高い、HPなんだ……)僕は頭に驚愕の色を浮かべる。
「みんな聞いてくれ! 俺の名前はリュウガと言う! 今から一角鯨を攻略するにあたってここにいるプレイヤーでレイドを組みたい!」
立派な赤色の鎧を見に纏い、背中には赤と黒が混ざった大剣を装備している。そして女装をしたら女の子に見えてしまいそうな美男子のリュウガはデッキにいるプレイヤーに向かって声を発した。
高校三年生くらいに見えるリュウガは現実世界では生徒会長をやっているのではないかと思うほど堂々としている。
「ツキナ、レイドって何?」
僕は小声でツキナに質問をする。
「レイドと言うのは、多人数で戦うボス戦の事よ! ちなみにレイドボスはソロやワンパーティー程度では歯が立たない強さを持っているわ!」
「なら一角鯨はレイドボスみたいな扱いか?」
「そうね!」
僕はツキナの説明で一角鯨がどれくらいの強さを持っているのか理解した。
「まず強力なシールドを張れるプレイヤーは一角鯨が船を攻撃してきた時に沈まないようにして欲しい! 遠距離武器をメインで使っているプレイヤーは積極的に角を狙ってくれ! おそらくそこが一角鯨の弱点であり、攻撃の要になっている場所だ! そして近距離武器をメインで使っているプレイヤーは一角鯨が近づいてきた時のみ最大威力の攻撃をぶつけるんだ! 最後に生産職のプレイヤーは攻撃するプレイヤーの援護を頼む!」
的確な分析に的確な指示、こんなにリーダーシップを取れるのは現実世界でそう言う立場に立っている人だけだ。(絶対、この人は生徒会長やってる)僕は確信した。
「みんな! この戦い、絶対勝つぞ!」
リュウガは気合を入れて、大声を出す。
「おー!」
デッキにいるプレイヤーは全員、リュウガの言葉に気合が入ったのか、大きな声で答える。
僕たちも周りのプレイヤーと同じように声を出す。こんなに声を出したのは剣道の全国大会の決勝戦以来かもしれない。
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