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第五話 スキル進化とレベ上げ

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 僕がリンクメニューを開いてアイテムの項目を開くとツキナが覗き込んできた。

「本当にレアアイテムをゲットしたのね!」
「信じていなかったのか?」
「レアアイテムなんて、運が良くないとなかなか取れないから……」
「そうなんだ!」

 めったに取れないレアアイテムを、ゲームを開始してすぐにゲットできるなんて天が僕の味方をしてくれているに違いない。きっとそうだ!
 【幸運を呼ぶネックレス】にはどんな効果があるか気になったので、タップしてみる。

【幸運を呼ぶネックレス、パーティー全員のレアアイテムのドロップ率が二十パーセント上がる】と書かれていた。

「ドロップ率って何?」
「ドロップ率はモンスターを倒した時にアイテム(素材)が手に入る確率のことよ!」
「と言うことは……このアイテムすごいぞぉぉ‼」

 僕は息を弾ませて言う。
 パーティー全員のレアアイテムドロップ率を上げるということは全員が希少なアイテムを獲得できる確率が上がるという事、そしてレアアイテムは強いというイメージがあるので(最強の集団ができるんじゃねぇの‼)

「どうしたの? 急に大きい声を出して!」
「すごい、アイテムをゲットしちゃったんだよ!」

 僕はツキナに幸運を呼ぶネックレスの説明を見せる。

「これはすごいわね!」
「だろ! だろ!」

 僕は興奮のあまり、ツキナのお尻をたたいてしまう。

「どこ触ってるのよぉぉ‼」

 強烈な衝撃が僕の頬を襲う。

「いってぇ‼ 何するんだよ‼」
「それはこっちのセリフよ‼」

 ツキナは熱湯に入ったかのように顔をホカホカさせながら言ってくる。
 (やべぇ……やっちまった……)僕はその時、大変なことをしてしまったことに気づく。

「本当に‼ 大変、申し訳ございません‼」

 僕はツキナの機嫌を直すために、人生で初めて土下座をして何度も何度も謝罪をするはめになってしまった……。
 数分後、やっと機嫌を直してくれたらしく再びレベ上げを始めた。
 今度はアブが出てきた。このフィールドにはどうやら昆虫の敵しかいないらしい。

「虫ばっかだなぁ……」
「文句は言わないの! レベ上げするわよ!」
「へいへい」

 僕はアブの攻撃をかわして脳天に攻撃を決めていく。

「一本とれた気になれて楽しい」

 僕は一発で敵を仕留めることができて、愉快な心持になっていた。

【レベルが15になりました‼ 狙い上手Ⅰが狙い上手Ⅱに進化しました‼ 弱点突きⅠが弱点突きⅡに進化しました‼】 

「スキルが進化するってどういう事?」
「すべてのスキルに熟練度と言うものが存在していて、それがマックスになると進化するの! 熟練度を上げるためにはヒビトで言うと【狙い上手Ⅰ】を獲得した条件を進行する必要があるの!」

 つまりは【狙い上手Ⅰ】を獲得した条件、同じ個所を三十回攻撃するというやつを四十回、五十回と数を増やしていけば進化するということだ。

「よし! これから出てくるモンスターはすべて同じ倒し方で行こう!」

 僕は現れる敵をすべて同じ倒し方で倒していく。

【レアアイテム、ヒーリングブレスレットを手に入れました‼ レベルが17になりました‼ 狙い上手Ⅱが狙い上手Ⅲに進化しました‼ 弱点突きⅡが弱点突きⅢに進化しました‼】

「たくさんメッセージが表示されたぞ!」
「それなら一回、ステータスやスキルの確認などしてみたら?」
「そうだな!」

 僕は最初にステータスの画面を開く。

ヒビト(Lv17) 
ステ振り可能なポイント33
HP 900
MP 260

【STR+10】 
【VIT+0】
【DEX+5】
【AGI+0】 
【INT+0】

「ポイントが三十三かぁ……どうしよう。攻撃に多めに振るのは絶対だから二十振る。あとは確率が上げるためにすべて確率に……」

 次はスキルを見ようと思いスキルの項目を表示させ、説明を確認する。

【狙い上手Ⅲ、攻撃がクリティカルになる確率が六十パーセント上昇する 進化条件、同じ箇所を七十回攻撃する】
【弱点突きⅢ、モンスターの急所に命中すると攻撃力が1.8倍になる 獲得条件、モンスターの急所を七十回攻撃する】
【麻痺耐性(小)、麻痺への抵抗力を少し上昇させる 獲得条件、モンスターの麻痺攻撃を十回受ける】

「攻撃がクリティカルになる確率が六十パーセントってヤバくねぇか! 急所を攻撃したら攻撃力が1.8倍とかも、さらに攻撃に多めに振っているから威力がめっちゃ出るかもしれない……」

 僕はツキナに聞こえない声で呟く。

「またレアアイテムを手に入れたみたいだしそれも確認しとこ」

 僕は静かにアイテムの項目を開く。

【ヒーリングブレスレット、一秒間にHPを百回復する】

「きたぁぁぁ!! これがあれば百ダメージ以上の攻撃を受けない限り絶対、死なないじゃん!!」

 僕は心の中で叫ぶ。

「ツキナ! レアアイテムってどうやって装備するの?」
「なんか嬉しそうだわね!」
「気のせい、気のせい」
「レアアイテムの名前を触ったら、〔装備〕と言うボタン表示されなかった?」
「確認してみる」

 僕は必死に自慢してやりたい気持ちを抑えて、レアアイテムの名前を触ってみる。

「あった!」
「それをタップすれば、装備できるわよ」
「了解!」

 僕は手に入れたレアアイテムを二つ装備する。今ならツキナにも勝てるかもしれない‼
 その後も僕たちはレベル上げを続けた。

【レベルが20になりました‼ 狙い上手Ⅲが狙い上手Ⅳに進化しました‼ 弱点突きⅢが弱点突きⅣに進化しました‼ 麻痺耐性(小)が麻痺耐性(中)に進化しました‼】

 ゲームを始めてから戦闘ばっかりだったので、集中力が切れてきた。さらに三日間、森の中をさまよい歩いた子供のようにぐったりと疲れてきた。
 こんなに疲労したのは、全国大会の決勝戦以来だ。 
 あの時は精神的にも身体的にもかなり疲労をしていたことをはっきりと覚えている。今はその時と同じような感覚なのだ。
 それに今の現実世界の時刻は十二時になっている。ツキナに聞いたのだが、このゲームはリンクメニューを開くと現実の時間が表示されるみたいだ。

「……はぁ、疲れた……休憩したい……」

 僕の顔には、ため息を押し殺すような表情が滲み出ている。
 僕の表情を見て、ツキナは気を利かせて提案をしてくれた。

「ご飯でも食べましょ! 奢るわ!」
「ありがとう! それって現実世界で、ですか?」

 僕は現実世界のツキナに会ってみたかったので、質問をしてみる。叶うはずないけど……。
 
「そんなわけないでしょ!」
「ですよねぇ! でもツキナに会ってみたかったな!」

 僕はツキナに会いたいと何度も言ってみる。

「そこまで言うなら、現実世界で会ってあげてもいいわよ!」
「マジで!」

 まさかの返事に僕は驚いたように目を見張った。

「近かったらだけど。それと現実世界だったら奢りはなしよ!」
「分かってるって! 住所、教えてよ……」
「いいわよ!」
「そんなにあっさり教えちゃっていいのか?」
「ヒビトだから言うのよ!」
「そうっすか……」
  
 ツキナは僕の耳元でこっそりと教えてくれた。
 ツキナの住んでいるところは僕の家から電車を使って四十分くらいかかるところだった。
 予想以上に近かったのだので、僕もツキナに住所を教えて現実世界で会う約束をした。
 僕とツキナはレベ上げを終了して街に戻り、宿を取ってゲームの世界から現実世界に帰還した。
 
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