この恋は始まらない

こう

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第六十五話・夏休みはじまります

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七月末のイベント。
俺達の草むしり検定編が始まる。
期末テストを合格しなければ、夏休み返上で夏期学習がある。
先生曰く。
夏休みは娘と遊びに行きたいから、マジで赤点だけはやめてくれ。
先生に夏休みをくれ。
この通りだ。
高校生に頭を下げて、真顔で語る先生。
……うん。
なんか、すみません。
俺達が不甲斐ないばかりに、いつも先生達に迷惑を掛けている。
夏休みは少しでも娘と一緒に居たい。
高校生のクソガキよりも愛娘だ。
親だからこその切実な願いである。
愛娘との夏休みを人質に捕られているのであれば、俺達は死ぬ気でテストを頑張るしかないのであった。
学生の本分は勉強だ。
先生だって無理難題を押し付け、死ぬ気で頑張れと言うわけではない。
授業で受けた内容を復習し、普通にこなすだけだ。
しかしながら、三馬鹿。
特に、中野ひふみがアホ過ぎて、授業で教わった基本部分すら苦労したが、無事に赤点回避してくれていた。
みんな。
ありがとう。
みんなの頑張りがあったから、俺達は乗り越えることが出来たんだ。
嗚呼、俺は幸せだよ……。
ありがとう。
「ハジメちゃんが灰になって消えそう!?」
頼む。
少しだけ、休ませてほしい。
「死亡フラグ立てんな!」
「身体が半分崩れている?!」
「コーヒーぶっかけろ!!」
自然の流れでコーヒーかけるな。
異世界転生もののポーションみたいな用途で使用しないでくれ。
普通にコーヒーを口から飲ませろ。
「ハジメちゃん、メイド服の写真を見せると元気になるよ! デスクワークで疲れた時によくやってる!!」
小日向、うるさい。
静かにしてくれ。
耳元で叫ぶから、鼓膜が破れる。

「だれかぁ! SNSで自撮りしているメイドさんの写真を早く持ってきてえええ!」
「はあはあ、メイドさんあったよ!」
「でかした!」
彼岸島ネタやめてくれ。
相変わらず、ギャグが古いんだよ。
若者向けのネタにしてくれ。
三馬鹿は俺にコーヒーを飲ませながら、メイドさんの写真を見せてくる。
「東っち、メイドさんだよ!」
ご主人様江。
ココに注目!!
メイドさんはメイドさんでも、メイドさんであった。
うわきつ。
二十代後半のメイド服着たシルフィードの最古参を出してくるのだった。
あの人がやるギャグ。
全体的に古いんだよな。
今の若い子しらないよ?
はぁ、これで元気を出すのしんどいけど、性格以外は名実ともに一流のメイドだから我慢するか。
メイド検定も合格しているのだ。
誰が何と言おうとメイドなのだ。
不本意ながらも、メイド要素を摂取したら、元気が出てきた。
あと、この人、シルフィードの公式アカウントで何してんの?
自分のツイッター使えよ。
「すまないな。ありがとう。元気出たわ」
三馬鹿のおかけで、何とか動けるようになる。
「コーヒーとメイドで復活するのなんなん?」
「いや、別にそれは関係ないぞ……」
「東っち、腕にコーヒーぶっかけたら、切れた腕が繋がりそう」
いやそれもう、化物だわ。
取り敢えず、俺達の山場である期末テストが無事に終わり、誰も赤点を取らなかったわけだ。
大変だったが、みんな問題なくてなによりである。
さて。
あと数日で一学期が終了だ。
そうなってくると、学校に来るのは一ヶ月後。
俺達学生は、夏休みに入る前に教室の掃除をして綺麗にする必要がある。
教室を使わせてもらってきたのだから、たまには綺麗にしてあげる。
それが日本人の心だ。
俺達は協力して掃除をし、机やロッカーを片付け。
机に仕舞いっぱなしの教科書や私物を鞄に移して、教室を綺麗にする。
俺も面倒なことはやらないタイプだから、机の中は汚いけどさ。
ちらほら見える俺以上の猛者。
スノードーム持ってきているやつがいるんだが??
え、何で?
馬鹿なの??
夏休み前に、スノードーム???
理数系のクラスは一つだけで、二年生からクラスメートはずっと同じだが、教室の階は一つ上の階に変わっているから、スノードームがある理由が不明なんだが??
このクラス、頭いいんだよな?
それなのにやっていることがやばいやつ多過ぎである。
スノードームを振ってキラキラさせるとこの世の全てを忘れられて、幸せになれる。
ううん……。
大丈夫か。
今度ゆっくり話を聞いてあげないといけない人がいるんだけど。

まあ、そんなやばいやつを筆頭に、男子連中なんて、自由人ばかりであった。
馬鹿過ぎて、ロッカーにカップラーメンを常備していた。
佐藤が学校で紅茶をよく淹れてくれるから、その給湯ポットを借りているのだ。
育ち盛りの男の子は、お弁当だけでは満足出来ない。
なら、カップラーメンを食べるのである。
俺の胃袋は宇宙だ。
何でもありかよ、この学校。
いや、ふざけてはいるが、ちゃんと先生の許可は得ている。
俺達は怒られないように、先生に相談はしていた。
しかし、先生は申請したら何でもオッケーするから、日に日にカオスになっていた。
初台高校は、生徒の自主性に任せている進学校とは名ばかりの、完全なる放任主義であった。
というのか、後ろのロッカーの上に食卓の調味料置いたやつ誰だよ。
醤油や塩を常備すんな。
今話題のブラックペッパー置いてあるやん。
粉チーズと一緒にカップラーメンにかけると、味変出来て深みが増すから美味しい……。
いや、なんというか。
頼む。
頼むから、先生も少しは注意してほしい。
衛生面の問題と、調味料でいたずらするやつがいるかも知れないんだぞ。
いやまあ、うちのクラスには、他人の調味料を無断で使って遊ぶような非常識なやつはいないだろうけどさ。
そもそも、学校に調味料持ってくる時点で常識ないけど。
学もなければ常識もない。
こいつらは、初台高校のブランドを落としている。
三馬鹿は言う。
「何が高校のブランドだよ。どうせFランなんだからいいじゃねぇかよ。最初から底辺なんだから傷ついたって大して変わんねーよ」
「なんだとぉ……」
名前もいえない作品のネタを全力で拾うなよ。
いやまあ、俺達が問題起こしても学校内で済む話。
はっちゃけているだけだ。
それで済ませられる内容なだけ、高校生としては真面目なんだろうが。
三馬鹿に苦言を呈する。
「東っちも自分家から、コーヒー豆持ってきてんじゃん」
「暑い日に温かいコーヒー飲まないでよ。あんた、季節感いかれてんのか」
「……」
橘さんはもっと喋って。
この作品では我を出していかないと、出番が少なくなるよ。
ぶっ飛んだ内容は駄目だが、ある程度印象を残さないといけない。
キャラ付けとは、難しいものだ。
駄目な子ほど可愛がられる。
そんなもんだ。
「いや、俺はコンビニで氷の入ったカップ買ってきてアイスコーヒーにしてるから大丈夫だぞ」
流石の俺でも、夏にホットコーヒーはしんどいので、昼休みに学校抜け出して、アイスのボックスを買ってきている。
「普通にコンビニでアイスコーヒー買ってきてえええ。何で氷だけ買ってるのよおおお」
「昼休みにサラッと学校抜け出してんなよ!一番やべえやつやん!!」
「昼休みだぞ。絵を描け、絵を」
印象残すように喋ったら喋ったで、五月蝿い奴等だ。
最近はずっと、こいつらのテスト勉強を手伝っていたのに、この言い様である。
少しは労れよ。

まあ、夏コミの新刊の準備も終わっているから、正直暇だ。
俺の予定なんて、色紙を描きながら、夏コミが来るのを待つだけだ。
印刷データを送った後は、毎日頑張って昼休みに絵を描く必要もない。
三馬鹿は話を振ってくる。
「そういえば、東っちが絵を描いているところ見たことないわ」
「だべだべ」
「東山くんって、人前で絵を描くの苦手なの?」
「いや、別にそんなことはないけど? 色紙くらいなら直ぐに描けるぞい」
オタクだからって気を遣われるのも嫌だし、今描くか。
色紙を取り出す。
マッキーでペン入れする。
「下書きしないん?」
「ああ、まあ。別に本気で描くものじゃないからな」
色紙と言っても、サイン用のラフ画だ。
事務所のプレゼント企画も含めたら数百枚も描くものだし、細かい線画を入れていたら時間がいくらあっても足りないわ。
本来ならば鉛筆で軽く描いて、線入れするんだが、今回は一発描きをする。
描くのはまあ、慣れている小日向でいいか。
「絵を描くのはそんな難しくないぞ。ここをこうして、こうや」
いつもの流れでイラストを描く。
サインも描き慣れたものだ。
失敗出来ない油性ペンでも、緊張することなく筆を走らせ、小日向の可愛いイラストを描き上げる。
サラサラ。
「ほら。簡単だろ?」
数十秒もあればサインは描ける。
「……今のところ巻き戻して」
戻せるか、ボケえぇぇ!
「中野め、お前が描けって言ったんだから、ちゃんと見ておけよ」
もう一枚色紙を描く。
同じ手順で進める。
サラサラ。

ーードンッ!!

「今、ぜったいに時が飛んでるやん! 飛んでる音がしたよ!!」
「はあぁぁ、飛ばせるわけねぇだろうがッ!!」
ちゃんと世界の法則に従って描いとるわ。
お前が、まばたきするからだろ。
漫画の世界じゃないんだから、時が飛ぶわけがないんだよ。
現実世界では、ジョジョに出てくるような擬音はしないんだよ。
ちゃんと見ておけ。
まばたきを忘れ、目が乾くレベルで集中しろ。
一瞬たりとて油断するな。
もう一度ペンを走らせ、描く手順を分かりやすく中野ひふみに見せる。
ここをこうして、こうや。

ーードンッ!!

どやっ。
「なっとるやろがい!!」
張り手で吹き飛ばされる。
「そうはならんやろ!!」


二人のコントを遠巻きに見ている夢野ささらと、橘明日香であった。
「ああはならんとこ」
「あの二人、初台高校の恥だわ」
真性の馬鹿は、ハジメとひふみだけだ。


数日後。
夏休み前の学校最終日。
朝一から体育館で、校長先生の挨拶を聞いて、教室に戻ってくる。
それからは担任の先生の話を聞いて、夏休みに羽目を外さないように注意を受ける。
深夜まで出歩いたり、友達の家で寝泊まりしたりしてはいけない。
また、学生としての本分を忘れずに、遊んでばかりではなく、勉強をして課題をこなすこと。
続けて、ネットリテラシーに対しての講習を受ける。
学生特有の身内のノリで、軽はずみな動画撮影をしてはいけない。
もし、炎上した場合、家族及び学校にも多大なる迷惑が発生する。
ネットの利便性は素晴らしきことだが、物事にはメリットがあれば同じだけのデメリットもあるものだ。
昨今の時代背景として、学校側で教育出来ることには限界があり、各自の判断で自己防衛する必要があるのだ。
だからこそ、学生であっても注意しなくてはならない。
……あれ、俺に言ってないか?
よく先生と目が合うんだが。
すみません。
俺のアカウントは定期的に炎上しているけど、神輿を担いだ祭みたいなもんだから許してほしい。
最近話題の炎上商法だ。
プロレスのように、仲のいい身内でコメントをしているだけだ。
俺のコメント欄で、大喜利大会をする人間が悪い。
ツイッターなんて特に面白いことを言ったら勝ちな世界だから、燃え上がりやすい。
学生のノリではっちゃけて問題を起こすなという意味では、俺は頭を下げるしかないが、俺だけではどうしようにも……。
俺のファンを止める方法があるならば、そのやり方を教えてほしい。
それに、本気で非難されて炎上していたら、ずっと前に俺のアカウントが凍結しているはずだ。
そのことは、先生も把握してくれていた。
俺達の先生は基本的にちゃらんぽらんだが、面倒見はいい。
俺や小日向含め、学校外の生徒の動向も気に掛けてくれる。
たまにいいねくれるし。
ネットの管理も仕事の範囲とはいえ、学校や生徒の誹謗中傷がないか巡回する先生も大変である。
それ以外の説明は割愛し、ホームルームを終えて、一学期最後の授業は終了する。

各々、先生に挨拶をして、お別れをする。
クラスメートと会うのもこれっきりだが、夏休みには旅行もあるし、グループラインで会話すればいつでも会えるので、そんなに寂しくはない。
男同士のノリは軽く、会おうと思えばいつでも会えるので気楽である。
仲良くなったのもあるが、みんな、フットワークが軽い。
ちいかわみたいなもんだ。
最近の男子は、わーいしか言ってない。
野郎同士なら、知能レベル低下した状態でも遊べるから、居心地がいいのだろう。
放課後には、みんなで遊戯王したりラーメン食べたり、男だから出来ることは楽しい。
クラスメートと挨拶を交わし、何かあったらラインするように言っておく。
別に会話しなくとも、ツイッターのアカウントも知っているから、生存確認は出来る。
一条や佐藤はまあ、別に。
陰キャの俺が気にするほどではないので放置する。
高橋は、白鷺の撮影で何度か会うし、夏コミも手伝ってもらうから大丈夫か。
男子連中とは、順当な流れでお別れをする。


問題は女子だ。
「……また二学期な」
「露骨な表情で嫌な顔しないでよ!」
「ウッス」
中野さんはちょっと……。
「ああ、夢野や橘さんはまた今度な」
夢野や橘さんとは普通に挨拶をする。
「三人の中で優劣を付けないで! アタシ達、三姉妹じゃないの!?」
全然ちげえよ。
人間って部分しか共通点ねえよ。
中野ひふみに、優しくしろと言われても困る。
「お前には一番苦労しているからな。……無理な話だ」
三年屈指の問題児。
中野ひふみのせいで、うちのクラスは無法地帯である。
こいつが委員長キャラなのバグだからな。
少しはクラスを管理しろよ。
他の奴らは真面目だから、中野がゴミカスでもクラスとして纏まりがあるけれど、一人でもヤンキーがいたら瓦解しているわ。
「でもさ、ヤンキーは理数系に来ないからね」
「そういうことじゃねえよ」
しばき倒すぞ。
お前がクソみたいに適当だから、他の女子が司会進行役をしてくれていたり、男子連中がプリント配ってくれたりしているのだ。
いや、こいつも委員長として会議にはちゃんと参加しているようだが、貰ってきた書類を黒川さんや田中さんに丸投げしてくるからな。
気弱な人を狙って仕事を投げるとか、ジュリねぇと同等だわ。
いや、社会人として給料を貰っている分、ジュリねぇの方がやばいか。
……人間性としては二人とも屋根裏のゴミ以下だが、総じてそんなクズのバンドマンみたいな性格の人間は、人に頼るのは誰よりも上手いから人の上に立つ分には優秀である。
その点では、中野は委員長として色々なやつに声を掛けて、手伝って貰っていた。
純粋な優等生なら、黒川さんや西野さん。
男子含めた纏め役なら、秋月さんや橘さん。
あと、そもそも顔が広い小日向や白鷺あたりによく泣き付いている。

「いえーい」
中野ひふみちゃん、ダブルピース。
ホンマ、いいご身分だよな。
他人を頼らなければ生きていけないくせに、社会に迷惑をかけている自覚がない。
本当なら怒るべきことだが。
それもこれも。
二年の時に、委員長は自分じゃなければ誰でもいいと、適当に中野に押し付けてしまった俺達のせいである。
中野を通して、選挙権の重要さを身に染みて味わうことになろうとは思わなかった。
……まあ、中野の場合、委員長やっていましたっていう学校からの評価がなければ、大学受験も危ういから、こいつが委員長で良かったのか?
陸上部の特待生制度で大学の推薦をもらう方法もあるが、馬鹿のまま大学生になったら中野が苦労するから、出来るだけ勉強をさせている。
高校三年生。
俺達が居なくなったら、誰よりも苦労するのは中野だからな。
今だけは優しくしてあげよう。
「ふっ」
「え? なに、そのちいちゃんみたいな笑みは」
誰がちいかわだよ。
……その時の俺達は知るよしもなかった。
中野との、この関係が根深いものであり、呪いと化すとは。

大学編に続く。

いや、続かねぇよ。
こいつとの関係は、今ここで断ち切るのだ。
中野は仁王立ちして、豪快に笑っていた。
「がははは、東っちはアタシのこと大好きやけんなぁ!」
「中野。もう喋ることもないだろうし、二学期もよろしくな」
「こいつ、二泊三日の旅行で一切会話する気がないやんけぇー!?」
うっさいなぁ。
お前のツッコミ長いって言われない?
ボケとツッコミは、分かりやすく勢いで攻めるものだ。
コンパクトにしろ。
お前のセリフに合わせる俺が大変なんだよ。
「はい。ひふみ帰るよ~」
「ぎょえぴぃ」
橘さんに連れられて、中野は退場させられる。
首を締め落とされていたが、強く生きろ。
お前は強い子だ。
いつも騒がしい三馬鹿を見送り、準備組の面々にも挨拶をする。
小日向は寂しさからか、西野さんに抱き付く。
「月ちゃん、また二学期でね」
「あ、いえ。小日向さん……。私も旅行に行きますので……」
感動している小日向にマジレスする西野さんであった。
この人も真面目だから、冗談が通じないというか。
優等生の西野さんが、小日向のテンションについていけても困るんだが……。
西野さん、うちのアホがすみません。
こいつは勢いで喋るから、気にしないでくれ。
頭が残念なんだ。
可愛さと、カリスマ性以外にステ振りを忘れているんだ。

俺達のクラスは仲がいいとはいえど、各々の住んでいるところが違ったり、夏休みにはやることが多いから、会おうと思っても会えないものだ。
学校は、数十人が毎日強制的に通うことで顔合わせが出来る大規模なコミュニティってわけだな。
陰キャには厳しい空間だが、そうでもしないと会話しないしな。

どんなに仲がいい彼氏彼女であっても、毎日会うわけでもないのだから、クラスメートとだと数回会うのも難しい。
ずっと会えなくて寂しくなるのは普通である。
西野さんも旅行やお祭りには参加してくれるから、夏休み中にまったく会えないわけじゃない。
しかし、ちゃんと話す回数は限られてしまう。
準備組は、地元が一緒だから最悪、俺経由で西野さん達を遊びに誘うことは出来るが、彼女がいる男の俺から軽はずみにお誘いは出来ないのであった。
まあ、準備組とは一条の方がよく話しているから、そっちから色々聞いておこう。
よんいち組の連中は、事前に連絡しておけば予定を合わせてくれる。
または、当日であっても、暇な場合はフットワークは軽い方だし、予定を合わせるのは難しくないはずだ。
小日向は話す。
「月ちゃん、手帳空白ばっかりだね。私が埋めとくね」
西野さん?!
気が付いたら、畜生に手帳を奪われていた。
小日向の予定に、暇な日なんてあったっけ?
そう思いつつも、半休の日に遊ぶ予定をぶち込まれていた。
……俺のスケジュールと合致した予定を組むなや。
女子だけで遊べ。
女子だけで。
俺は、西野さんとあんまり話したことがないんだぞ。
このメンバーに慣れ過ぎているが、普通は男女で遊んだりしないんだよ。
「いや、それは陰キャのオタクだからじゃね?」
もえぴぃ。
優しくしてぇ。
しかし、普通に考えてみてくれ。
男女で仲良く遊ぶなんて、不純異性交遊である。
いやらしいわ。
嫁入り前の年頃の女の子がそんなことをしていたら、世間から何と言われるだろうか。
「ごめんなさいね。この子、頭オーパーツだから気にしないでね」
れーなぁ。
駄目だ。
秋月さんもここ最近、俺への当たりが強いのであった。
萌花に小声で話す。
「俺、秋月さんになにかしたっけ?」
「しらん」
何で若干キレているんですの?!
白鷺は……。
「……」
あかん。
こちらも機嫌が悪い。
本人の表情はいつもとまったく変わらないが、目を合わせてくれない。
白鷺のぷんぷんモードである。
可愛い。
写真に納めて、お義父さんに写真を送りたい。
いや、じゃなくて。
マジで俺がなにか。
……また俺なにかやっちゃいました?
「ネタを見付けたからって、嬉々として言い直すな」
もえぴぃ。
二度も殴ってきた。
彼女達に、袋叩きされる。
終業式後に問題を起こすな。
言葉は頭で考えてから口に出すものであって、考える前に口にするものじゃない。
セミより五月蝿い。
スラアクが好きそうな面しやがって。
パンパンセミ。
子供が五月蝿くして走り回るのは子供の仕事だから仕方ないけど、お前の場合は許さない。
ボロカスに言ってきやがる。
流石、ずっと俺と一緒に居るだけあってか、俺の心を的確に抉るのが上手くなってきていた。
ほぼほぼ萌花だけ、だけどな。
気まずくなる前に、黒川さんは流れを変えてくれた。
「あ、でも、私達は夏休み中でも学校に来ますよ? 部活がありますので」
美術部や漫研は夏休みでも部活がある。
運動部と同じく、夏には展示会やコンクールがあったり、部員全員で美術館に行ったりする。
美術館いいなぁ。
俺も行きたいくらいだ。
美術部の部活も楽しそうである。
なので、黒川さん達は夏休みの何割かは学校に来ているとのことだ。
まあ、俺も暇な日は学校で部活をするだろうし、会話する機会はあるかも知れないな。
三馬鹿やサッカー部の連中も何だかんだ部活だったりするし、予定が合えば昼御飯くらいは一緒に食べてもいいかもな。
そう考えたら、夏休みでも結構会う人はいるのであった。
それが羨ましい小日向だった。
「いいなぁ。私もみんなでお昼食べたい。でも部活やってないし、私とかは学校に入れないよね?」
「ああ、どうだろうな。……まあなんだ。先生に許可貰えるか俺が聞いておくよ」
別に小日向が学校に居ても問題ないと思うけど、これでも小日向は有名人だからアポ無しで学校をウロウロするのは先生も困るはずだ。
「うん。ハジメちゃんありがと!」
「別にいいよ。部活がある日に聞くだけだし」
「ね~、夏休みに学校に来るって楽しそうだよね!」
「そうか? 校舎には誰も居ないし暇なだけだぞ」
「え~、それがいいんだよ。静かな学校を探索するの、ぜったいに楽しいよ。あ、でも、ハジメちゃんはずっと絵を描いているから、一緒に探索は出来ないか」
一人では行きたくないらしい。
いや、別に気を遣わなくていいのだが。
いつも通り、俺の仕事を見ているだけでもいいらしい。
部活中は、黙々とイラストを描いているだけだから、俺の隣に居ても詰まらないだけだぞ。
「まあ、小日向がそれでいいなら構わないが……」
小日向はウザいやつだが、絵を描いている時は絶対に邪魔してこないから、別にいいけどさ。

もえぴは、むすっとしていた。
「……ふうには甘いよな」
「ま!」
返事を簡略化するのやめて。
誰が喋ったか分からんくなるやん。
「いや、別に小日向には甘くないだろ」
「甘いな」
「甘いでしょ」
「あめーって」
……だからって、三人でキレんなよ。
三人で同時に殴り掛かってくるとか、勝てるわけがない。
こんなん、ARKの世界で、出会い頭にユタラプトル三匹にぶん殴られるようなものだ。
クソゲーだわ。
無防備な人間が、恐竜に勝てるわけないだろうが。
ドロマエオサウルス亜科系女子だ。
そうでなくとも女の子は、一つの言動で簡単に好感度が上下するから、陰キャには対応出来るわけがなかった。
いきなり選択肢を迫られても困る。
学校に居る時は、疲れているから何も考えていないんだぞ。
頭空っぽな時は、みんなあるはずだ。

「いつもだろ」

萌花さん。
マジレスやめて。
たまにはちゃんと考えているよ。
それに、女の子の好きは減点方式だが、男の子の好きは加点方式だ。
そもそもの感性が違うのだ。
今日も彼女が可愛いから、+10点
しか思ってないのが野郎である。
毎日学校で会うだけで、ログインボーナスが貰えるのだ。
少しは男の子に配慮してほしい。

「ハジメちゃん、うちのパパみたいなこと言ってる」
「私のお父様もお母様には甘いからな」
「どこの家も同じようなものよね」
「もえんとこは、そーでもないな。年中ブチ切れられて、しばかれてるけど」
「……いや、あんたも一緒でしょ。何なら東山くんのこと、一番好きなの萌花だし」
「は?」
自然の流れで喧嘩すんな。
ヲン!
萌花。やめろ。
秋月さんに全力肩パンすんな。
殴られた秋月さんが、人が発しない呼吸音出してるやん。
他の人がドン引きしているから、キャットファイトやめて。
俺を取り合って喧嘩しないでくれ。
俺は、四人が一緒なのが好きなのだ。
誰か一人でも欠けていたら、よんいち組ではない。
そう、俺はみんなを愛しているのだ。

「先にこいつを殺すか」
「ええ」
げぇ。
いつの間にか、矛先が俺に向けられていた。
力の秋月麗奈。
技の子守萌花。
何で共通の敵になった時は、連携力が高いんだよ。
息の合った攻撃を繰り出す。
あ、こいつら、毎日喧嘩するくせに親友やったわ。
何で相手の性格が嫌いと言いつつも、本当に嫌わないのか。
「いえ、普通に萌花は嫌いだけど」
「好かれるところあるか。こいつ」
「え?」
「あ?」
類友やんけ。
性悪同士で結束すんなよ。
なまじ二人の優しいところを知っているせいか、準備組が唖然としている。
子供には見せられない醜い喧嘩しているが。
大丈夫です。
これでも二人はずっともだ。
小日向や白鷺が喧嘩を放置して、ツイッターでジェムプリの新作グッズ見ているくらいに、余裕だからな。
いや、二人はもっと気に掛けてあげてよ。
何で毎回俺が二人を止めないといけないのだ。
唐突に殴られた。
つらいのだ。
つらいさんなのだ。
小日向や白鷺が止めに入ると、殴られることはないが流石に危ないから仕方ないか。

秋月さんや萌花は、本当は互いに信頼しているから、口が悪くてもいい。
何を言っても許している。
嫌われないし、嫌わない。
そうじゃなければ、人との距離はここまで縮まらないだろう。
だから親友と呼べるのである。
挨拶がてら、殴り合うのは違うけど。
俺も、喧嘩しても仲良しな友達が欲しい。
ツンデレみたいな口調で、ののしられたい。

放送禁止用語で罵倒される。
……いや、なんでガチやねん。
ツンデレでお願いしますって言ったじゃん。
ついでの如く、俺にも罵詈雑言を吐くなよ。
隣接するキャラクターにもダメージ与えてくるタイプかよ。
はあ、この二人が仲良くなる未来があるのか正直分からん。
揉めないでくれればどんなに嬉しいのに。
生傷が絶えない。
「ここから入れる保険ってあるんですか?」

「「そんなもんねーよ!!」」
やっぱ仲良しやんけぇ。


それから数分後。
怒り狂う二人。
俺は身体を張って何とか宥めるのだった。
色々ごたついて悪いが、いつもこんな感じだから許してほしい。
うちのクラスはいつも騒がしいのだ。
改めて、準備組の面々と別れの挨拶をして、最後に残ったよんいち組の俺達は帰る準備をする。
最終日だから、いつもより早く授業が終了したので、お昼前だし暇をもて余していた。
みんな、話し足りないようだし。
「じゃあ、俺んち来るか?」
俺の家に来てくれるのであれば、美味しい紅茶を淹れてあげよう。
最近良い茶葉を仕入れたから、みんな満足してくれるはずだ。
「チッ、平然と言うなよ」
「なしてぇ……」
舌打ちされた。
女の子が彼氏に言われたいことランキング。
堂々一位。
デートしたい場所ランキング。
堂々一位。
彼氏のお家デートで二人っきりになって、二人の距離がとっても進展するかも?!
小日向は、今日も元気である。
いや、何でファッション雑誌風に言ったんだ?
あと、俺んちマッマいるけど。
毎度毎度、バムロールとルマンドとシルベーヌ出してくるくらいの絡み方するぞ。
同じテーブルに相席するし。
やりたい放題だ。
そもそも、よんいち組全員居るのだから、二人っきりですらない。
新鮮さもクソも、何ならお前ら、結構な頻度で俺んち来るやん。
一人は常駐している。

「まあなんだ。母親が、用事がなくても呼んで来いって言っているから仕方ないだろ」
よんいち組のことを、可愛い娘が出来たみたいに捉えているから、みんなには悪いが付き合ってやってほしい。
じゃないと、俺が文句を言われるのだ。

母親曰く。
ママ、寂しくて死んじゃう。
若い子のエネルギーが欲しい。

強制的に奪う側である。
若い子に合わせてキャッキャするのは構わないが。
はあ、そんなババ臭いことばかり言っていたら嫌われるぞ。
母親とはいえ、三十代後半のテンションには付き合い切れない。
いつまでも若くないのだ。
自分の年齢に合わせて、謙虚に生きて欲しいものだ。
「ほーん。真央さんに言っとくわ」
「やめてぇ」
秒速で俺を母親に売るなよ。
損切り早すぎぃ。
案の定、萌花だけでなく、四人とも母親の肩を持つのだった。
女同士で結託するなよ。
アホな俺よりも母親の味方をする方が将来的に考えて有益である。
そう言われたらそれまでだが、口にするなよ。
男よりも女の方が強い。
それはどの家庭でも同じこと。
……うん。
よんいちママはみんな強いのだから、その娘も等しく強いのは道理である。
子は親を真似るというように、母親が上手く父親を転がす姿を見てきたのだ。
母親は偉大だ。
日頃から家庭や子供を守り、家族の為に長く生きていれば、楽しいことや辛いこと。
色々なことがある。
その中で、母親として戦う術を学んでいく。
名付けるなら、母親利用闘法。
どうあがいてもママには決して逆らえぬのが男の道理である。
だからって、実の娘に男の心臓を掌握する秘奥義を伝授すんなよ。
花嫁修業の概念が崩壊していた。
愛はパワー。
好きな人に振り向いてもらいたい。
今よりも好きになってほしい。
そんな娘の可愛いらしい質問に、母親達はこう答えるのだった。

レベルを上げて物理で殴ればいい。

おい。
クソゲーから人生を学ぶな。
恋愛で小細工をする暇があったら、自分のレベルを極限まで上げて殴ればいい。
いやだから、娘の恋愛を物理攻撃で解決させようとしないでほしい。
愛はパワーじゃない。
恋を物理で解決させるな。

とはいえ、当の本人は真面目に自分磨きを頑張っているのだから、否定も出来ない。
彼女達の両親から家庭環境まで。
彼女のことを知る俺だからこそ、拙いながらもその頑張りを理解出来るのだ。
方向性おかしいけど。
愛のパワーでねじ伏せてくるけど。
それはまあ、置いておくか。
……俺の母親とも仲良いしな。
それは感謝している。
女の子がこれだけいて、ギスギスしていないだけマシだ。
人の幸せを喜ぶことが出来る、素直な子ばかりなのは幸いである。

萌花は、語る。
「こっちの手札が如何に多くても、受け手に女の子の気持ちを察する能力がないから、分かりやすいパワーで攻めるしかないんだよ……」
俺のせいでした。
すみません。
怒られているわけじゃないのに、謝ってしまうオスである。

隣では、何も知らない小日向風夏がはしゃいでいた。
夏休みが楽しみだからか。
妙にテンション高い。
「ヤーッ!」
ちいかわというか、なかやまきんに君やん。


俺の家に到着すると、案の定母親が出迎えてくる。
「あらあら、いらっしゃい」
連絡入れてから十数分しか経ってないのに、化粧直しをして完璧にキメていた。
ええ、こわっ。
キメ顔すんな。
「今日もお綺麗ですね!」
「あらあらまあまあ。ありがとう。みんなも可愛いわよ」
小日向の頭をなでなで。
……煙が出ているぞ。
褒められて調子に乗る系マッマ。
他人の娘さんを捕まえて、ちゅっちゅすんな。
「あらあら、ハジメちゃんも??」
俺はいらん。
高校三年生だぞ。
実の母親から、バブみを感じておぎゃる属性はないんだよ。
俺には、メイド属性しかないのだ。
「ツッコミを入れるところが違うだろ……」
そんなこと言っている暇があったら、母親から助けてくれ。
高校生になっても母親からなでなでなんかされたくないわ。
こちらの間合いに入られないように、両手を上げて身構える。

何ということだ。
驚くことに。
奇しくも同じ構えだ。

「いや、親子だからだろ……」
萌花は淡々と吐き捨てる。
見捨てんの早すぎ。
生物として身体能力が劣っているとしても、母親が息子に負けるわけがない。
母親は、強い。
母親になるということは、子供の為に人生と命を捨てているのだ。
自己犠牲こそ、母親の愛のかたちだ。
いや、アンタが捨てているのは、モラルだろ。

モラルがないやつがモラルを語るな。
全員から、そんな顔をされる。
いや、図々しい態度を取っているのは知っているが、ここは俺んちなんだ。
多少は許してほしい。
いつもは、東山家のカースト最下位争いを親父としているのだ。
たまにはイキりたい。
「ハジメちゃんはさておき、今日はゆっくりしていってね。我が家のように寛いで構わないからね」
俺をもっと可愛がれ。
「あらあらまあまあ?」
いや、やっぱりやめてください。
じりじりと近付くな。
その目が怖いからやめてくれ。
深淵に潜むものである。
玄関から廊下までのやり取りが、無駄に長過ぎるんだよ。
早くリビングに案内してほしい。
玄関から一歩も動いてないぞ。

「その前にご挨拶だけしてもよろしいでしょうか?」
そう言ったのは、白鷺である。
家に訪れて一番最初に仏間に入り、挨拶をするのが常識なあたり、我々とは住んでいる世界が違うわけだ。
「あらあら、いつもありがとうね。お母様達も喜ぶわ」
出来た娘さん達だから、母親もウキウキしている。
他の面々も何回も通っていたら慣れたご様子で、東山家のお仏壇に線香をあげてくれる。
別に恋人同士の付き合いでも、そこまでしてくれる人を求める親は少ないのだから、気にしなくていいのにな。
お前らだって、手一杯だろうに。
表情は冷静にしているが、内心はかなり緊張しているやつもいる。
軽く挨拶するくらいで問題ないと思う。
まあ、彼女達の思惑は分からんが、女同士の心理戦が繰り広げられているのだ。
俺が触れたら、やけどするのは確定だろう。
スルー安定だな。
「じゃあ俺は、その間に紅茶でも淹れておくわ」
は?
あいつ、逃げたな。
そう思われたとしても、逃げるが勝ちだ。
それに、紅茶を淹れることしか、今の俺には出来ないしな。

リビングに移動して、全員分の紅茶を淹れる準備をしておく。
はあ、毎日がドタバタ騒ぎ。
明日から夏休みに入るというのに、騒がしいのはあんまり変わらん。
これならば、逆に毎日学校に行っていた方が平和だった。
亭主元気で留守がいい。
そんな言葉があるように、学校で勉強している時間だけは、一人で居られる分幸せだった気がする。
夏休みになれば、よんいち組の奴らに色々付き合わされるんだろう。
はぁ、俺はインドアなんだが。
今みたいに冷房が効いた部屋で、コーヒーしばきながらゆっくりしていたいわ。
夏休みの都心。
どこに行っても人混みばかり。
太陽の真下でデートしたところで、干からびてしまうだけだ。
俺みたいな虚弱体質では、ミンミンゼミよりもミンミンしているだろう。
だから夏は嫌いである。
炎天下続きでは、汗もかいてしまうし、食欲もなくなってくる。
悪いことばかりだ。
だが、夏休みにならないと彼女の可愛いワンピースも浴衣姿も水着姿も見れないのだから、難しいものである。
暑くなると女の子は薄着になるわけだし。
肩や鎖骨。胸元が丸見えになる。
ふーん。
……なるほど、リア充が夏休みを楽しみにしていて、はしゃいでいた理由がこれか。
よっしゃ!
夏休み編はじまるよ!!


夏休み初日。
炎天下。
延々と庭の草むしりをさせられていた。
えっ、死ぬ。
何で俺一人だけなのか、教えて欲しい。
あいつら平然とした表情でクーラーガンガンの部屋で寛いでいるんだが??
秋月さん??
「あらあら、若い子って今、草むしりが流行っているんでしょ? ママはよく分からないけれど、親孝行で助かるものね……」
わァ……。
泣いちゃった!

俺だけの草むしり検定編。
閉幕。
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