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第60.5話・高校三年の夏は早い
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神視点。
朝一。
ウキウキのハジメが学校に登校してきた。
教室の扉を開けて入ってくると同時に、上機嫌のアホを見て一言。
「やっぱこいつが一番問題起こしてんじゃねぇか」
萌花は息巻いていた。
他のクラスメートは、ブチ切れる萌花を宥める。
とはいえ、今回は喜ばしいことなんで素直に祝福するべきだろう。
「みんな、やったよ! コミケ当選した! しかもサークルスペースが念願の島中の誕生日席だったし、俺みたいな弱小サークルが誕生日席なんて普通有り得ないのに嘘じゃないんだぜ!?」
コミケとは才能のある者が集まる世界だ。
絵描きとは、読者モデルの世界と同様に、才能を持ちながらも毎日努力をしている。
SNSに上がる絵とは綺麗で可愛いけれど、血の滲む努力なくしては表現は出来ないのだ。
尊敬している人達に囲まれ、互いに切磋琢磨することで、ハジメは頑張ってきた。
そんなに嬉しいのは理解出来たが。
しらねぇ~。
饒舌だな、こいつ。
いや、教室には一般人が多いのだ。
コミケの話もそうだが、アニメや漫画の話に付いていけない者ばかりだ。
オタク特有の早口言葉で、専門用語を使うな。
ここには、こいつの話が通じる人間は居ない。
コミケに参加したことある人間は、極一部だけだ。
写真立ての一件で仲良くなったクラスメートだけは、意味が分かるようだった。
「わぁ、東山くん。おめでとうございます。東山くんのサークル人気ですもんね。島中だと混雑するでしょうし、今回の誕生日席は妥当な判断だと思います。コミケ側にも頑張りを認めてもらえて良かったですね」
「ありがとうございます。自分には不相応な気もしますが、これからも驕ることなく精進します」
彼等からしたら普通のやり取りではあるが、オタク同士ということもあり、いつもより元気に仲良く話すハジメであった。
ウキウキである。
浮かれているアホだから、女の子と楽しく会話していても何も考えていない。
それは分かるので、他の女の子と親しくしていても嫉妬はしないものの、こういう時に即座にハジメの才能が認められたことを褒めてあげられない。
その役目がクラスの子なのは、悔しかった。
彼女であり、ずっと傍にいるのに、根本的にハジメと生きている世界と趣味が違うのだと痛感させられる。
素直に喜んで褒めるべきなのに、何の話をしているのか全然分からないのだ。
手がボロボロになるまで努力し、好きなものを描き続けているハジメに対して、何て言葉を掛けていいのか。
普通の女の子では、役不足なのか。
そんなことはない。
応援したり、元気付けるだけでも人は喜ぶし、大切な思い出になる。
同じ趣味じゃなくても、構わないのである。
ハジメにとって一番大切なのは、よんいち組だから。
同じ趣味じゃなくても、つらい時は仕事を気遣ってくれる素敵な彼女。
それに、クラスメートも同じようにいつも応援してくれていた。
だから頑張ってこれたのだ。
自分の人生だが、自分だけで歩んできたわけではない。
一人だけの人生ならば、努力は出来ない。
それは、ハジメの言葉で伝えられる。
「他のみんなもありがとう。みんなが色々手伝ってくれたから、俺もここまで頑張れたと思うんだ。この結果は、俺一人だけのものじゃないんだ。本当にありがとう!」
クラスメート全員に深々と頭を下げる。
なんやこいつ。
ぐう聖かよ。
ハジメはコミケで結果を残せたことが嬉し過ぎて、頭のネジが外れていた。
外れているのはいつもか。
普通の時は、今時の高校生らしくクソみたいに無愛想なくせして、今日ばかりは何も考えていないくらいに幸せそうに無邪気に笑っていた。
その笑顔が子供というか。
ただのガキでしかないが、それが可愛いとか格好いいと思えてしまうのだから、よんいち組の面々は本当に彼が好きなのだろう。
努力してきたのを知っている。
それが、長く険しい道だったことも知っていた。
ハジメほど知名度があり、毎日イラストを描いていても、認めてもらえるのに数年以上も掛かる。
同人誌が売れてはじめて評価されるのか。
オタクの世界とは狭き門なのである。
その努力を彼が認められ、褒められれば、自分のことのように誇らしい。
これからも、ずっと彼の傍に居たいという気持ちにさせてくれる。
そこがハジメの良いところだ。
胸がキュンキュンしてしまう。
それが普通の感性だろう。
そんな中。
麗奈は、彼ピの純粋無垢に喜ぶ姿を見て冷静さを欠いていた。
女の子とて、獣。
理性を持っている人間だって、生き物の本質には逆らえない。
血に飢えた雌だ。
だが、まだ何とか首の皮一枚くらいで大丈夫である。
「落ち着くのよ、私……」
こっわ。
必死に、暴走する内なるれーなを抑え付けていた。
隣にいる人間から見たら、中二病が封印されし右腕を抑えているようにしか見えない。
しかし、それは狂っていた。
かろうじて人の皮を被っているだけで、底知れぬ狂気がそこにはあったのだ。
だが、それは仕方がない。
秋月麗奈は、お嫁さんの一件から、ハジメのことが好き過ぎてやばいのだった。
二倍では足りないくらいに。
それこそ、何倍も彼のことが好きになってしまっていた。
そう、一言で表すならば。
麗奈の恋愛感情が界王拳していた。
よんべぇだー!!
自分の愛の重さに身体が耐え切れず壊れそうであっあ。
持ってくれ! 俺の身体ー!!
いや、なんでそうなる。
おかしいだろうが。
何故、風夏や冬華みたくちゃんとした恋愛が出来ないのだろうか。
同じ想いで、同じ人を好きになったのに、まったく違う道を歩むのであった。
秋月麗奈は、王道ヒロインみたいな可愛い女の子になるのは望めないとはいえ、何故そうなった。
ラブコメの 法則が 乱れる!
ええ、……。
よく分からなさ過ぎて、他のクラスメートも麗奈の奇行を野放しにしていた。
なにこれ。
……狂っていやがる。
あんな狂ったやつに巻き込まれたら、絶対にもらい事故になる。
常人には、海より暗き深淵の闇を覗くなど、出来るわけがあるまい。
親友の萌花ですら、麗奈からは一歩引いているのであった。
触らぬ麗奈に祟りなしだ。
そんな流れをぶった切って、三馬鹿の中野ひふみが話す。
「ねーねー。東っち。そういえばコミケって何日にあるの?」
「八月だな。お盆休みだよ」
ハジメは手帳を取り出して、日程を見せる。
コミケのところに丸印が書かれている。
三馬鹿と小日向。白鷺あたりは手帳を見ながら、仕事のスケジュールが埋められたハジメの日程を確認していた。
「へー、風夏ちゃん達の誕生日ちゃんと書いてあるじゃん。やるやんけ」
パラパラとめくると、彼女や家族の誕生日はちゃんと記入されていた。
いや、こいつ結構大切な人に対してはマメなのか?
忘れたら殺されるから書いてあるだけなような気もするが……。
「わたし達も誕生日書いとこ」
ハジメが見てない間に、自分達の誕生日に名前を書いておく。
萌花は問う。
「何の意味があるん?」
「いやだって、書いといたらお祝いしてくれて、プレゼントくれるかも知れないじゃん」
「東山くん、クソみたいに優しいし」
「……人の彼氏から当然のようにプレゼント貰おうとするなよ。あと、貰いたい側がクソ言うな」
お前らは彼氏を作れ。
誕生日まであと、数ヶ月もあるんだから、プレゼントを諦めるなよ。
ハジメと一条。
男子連中が話している最中に、風夏は勝手に夏休みのスケジュールを付け加える。
「ねえねえ。ハジメちゃん見てないし、今のうちに夏休みの予定決めちゃおう」
草。
とんだクソガキである。
サプライズパーティー。
ハジメからしたら、ただのいやがらせでしかないが、風夏ならば怒られるくらいで許してくれるだろう。
風夏ちゃんを楯にして、各々が欲望のままに予定を書き込む。
こいつらも大概、腹黒である。
女の子の武器を全て使ってきていた。
ハジメのことが好きなら、本人に直接言えばいいのに。
恥ずかしくて、それが出来ない女の子である。
こうして、裏工作をすることでしか愛情表現が出来ず。
必死にスケジュールを埋めていく悲しい彼女達である。
初恋の愛は重い。
去年と同じく夏祭りもあるので、ここは欠かせない。
今年も浴衣を着てお祭りに行きたいものだ。
スケジュールには書き込んでおくけれど、真央さんの許可も得ないといけない。
ハジメちゃんの家で勉強会もやりたいな。
書けば書くほど、やりたいことはいっぱいある。
「風夏ちゃん。うちの地元も祭りがあるから、書いといてよ」
「オッケー。お祭りはいっぱい行った方が楽しいもんね!」
橘明日香に言われて、追加でお祭りの予定を入れる。
ハジメが見ていない間に、コミケ以外の日程が勝手に埋まっていく。
ハジメの仕事のピークは、夏コミであり、それが片付けば一気に暇になる。
そうではあるが、前半以上に夏休みをギチギチにするな。
彼女の好きが強すぎだ。
ハジメの人生には、ノー小日向風夏デーはない。
毎日が風夏ちゃんである。
「風夏、一応東山の許可を得るべきだ」
「あい。ハジメちゃん、夏休みの予定入れちゃうね~」
「ん? よく分かんないが、空いている場所ならいいぞ」
ハジメは、男子同士で話していて、遠くからいきなり言われたので、空返事する。
その対応は間違いだった。
風夏は、容赦がない女だ。
全てを埋め尽くす。
夏休みは何日あっても足りない系女子である。
去年の慎ましさなど皆無だ。
いや、前々から図々しいか。
「そうだ。この金土日はみんなで遊びに行こうね」
二泊三日ッーー!?
しれっと書き込む。
「だって。高校最後の夏休みだし、クラスのみんなで旅行したいもん」
「風夏ちゃん……」
可愛い。
抱き締めたくなる可愛さだ。
むぎゅ。
冬華に優しく抱き締められていた。
「そうだな。私も賛成だ」
「えへへ。冬華に抱き締められたのはじめてかも」
いつもとは真逆の立場だけれども、嬉しそうだ。
他の者も異論はない。
受験生ではあれど、三日くらい遊んでも問題ないだろう。
一部を除けば優等生が多いため、羽目を外しても文句は言われない。
彼女達だって、それだけの努力をしてきたのであった。
「折角だから、海にも行きたいよね。去年はプールしか行けなかったし」
ああ、この娘。
ハジメちゃんと海に行きたいだけだわ。
まあ、それでも構わないのだが。
夏休みに遊ぶとなると海は欠かせないし。
「ふむ。となると、コテージみたいなところがいいか。お父様に聞いてみよう」
「キッチンがあったら料理は私が作るわね」
「……じゃあ、魚ならもえが捌くわ」
風夏から冬華に繋ぎ。
麗奈から萌花に繋ぐ。
畳み掛けるように決めていくな、この子達。
ハジメに対する容赦のなさ。
念入りに断れないように隙間を膿めていく。
いや、六月とはいえ、彼女との夏の予定を決められないクソ彼氏が悪い。
ハジメの手帳に書かれているように、コミケの日程や仕事のタイトなスケジュールを数ヶ月前から決めているなら、彼女の予定も決めとけや。
女の子にデートを決めさせるなんて、有り得ない。
男の子なら、率先して女性をリードする気概がないといけないだろう。
女の子はいつだって、お姫様でいたい。
彼氏には、白馬に乗った王子様でいてほしいのだ。
……いや、こいつには無理だな。
王子様ってキャラではないし、プリンスの格好が似合わねぇ……。
アホの子には荷が重い。
能天気なまま、彼女に振り回されて幸せそうに生きるのがハジメにとっては一番の幸せだろう。
麗奈は、冬華に言う。
「あ、そうだ。冬華、お金がたくさんかかると困る人もいるから予算には気を付けてね」
「ふむ。男子の意見も聞く必要があるか。なら、そこら辺は東山の方が適任だな。任せてしまおう」
勝手に予定を決められて、評価を下げられ、責任や予算の仕事まで押し付けられていた。
信頼されていると言えば聞こえはいいが、クラスメートの意見を聞いて旅行を決定させる。
時間さえもらえれば、三十人の話を聞くのは、簡単だ。
他の者でも問題ない。
しかし、完全に裏表のない意見となると難易度はかなり上がる。
小日向達のような、美人の女の子がクラスで旅行に行きたいと話し掛けてきたら、野郎なら漫画やゲームを売り払い、数万円払ってでも付いて行くだろう。
男って馬鹿なので、女の子が絡むとお金の価値を見誤る。
その点、ハジメならば男同士でゆっくりと話し合いが出来る。
文化祭やメイド喫茶の時の経験もあるから、どの男子とも難なく意見交換が行える。
「あいつ。そのあたりは優秀だもんな」
無駄に長いことサークル活動をしているし、お金が掛かることに関して絶対に必要な部分を押さえる。
真面目だから、有耶無耶にせずにバシッと決めてくれるはずだ。
……高校生だよね?
ハジメに託しても、一切の不安はない。
言われたことを普通にこなす未来が見えていた。
責任が取れて、任せるに足る人間だから、こちらからお願いするのだ。
優秀であることは、その意味では有難いのだが。
違うベクトルに能力極振りしている。
高校生ってもっとちゃらんぽらんなのが普通だったよな?
一条や佐藤を見て、まあこんなもんよな。
萌花と三馬鹿はそんな話をしつつ、盛り上がっていた。
「あんなやつでも、自分で金稼いでいる組だしな。働いたことのない人間よりは優秀ってことっしょ」
「ほえぴぃ~」
なんそれ。
「馬鹿にしてんのか」
萌花、切れる。
三馬鹿は変な相づちを打っていた。
ささらやひふみみたいな、部活が終わった放課後にファミチキ食べるくらいしか幸せがない。
お金を使わない人間からしたら、毎日のように仕事をしてお金を稼ぐイメージが難しいのだ。
育ってきた環境が違うから、想像が出来ない。
三馬鹿は、何も考えてなさそうに口開いているアホの子だけど、陸上部の常勝高校として県大会に出たりと活躍しているから、バイトをしている余裕がないのは仕方がない。
お金を稼ぐことは誰でも出来るが、スポーツの才能は天が与えたものだ。
そちらを大切にして、集中して努力することは間違っていない。
逆に、高校生からバイト以上の仕事をしている人間が異常であり、ハジメや風夏だから出来る芸当だ。
二人とも、人が好きだから。
そういった意味では適任者なのだ。
頭がよく優秀な麗奈や萌花だって、他人の面倒を見ながらクラスの纏め役は出来ない。
前提として、人を纏めるのに苦手意識があるから、無理だろう。
好きじゃないと出来ないこともある。
「そうね。東山くんには悪いけど、お願いしようかな……」
「一番楽だしな」
全部任せるわけではない。
足りない部分は誰かが補えばいい。
いつものよんいち組のやり方だ。
別に一人でやる仕事ではないし、黒川さん達の準備組のみんなも手伝ってくれる。
それが分かっているから、みんなで旅行が提案出来るのだ。
クラス全員が仲良しだと楽であった。
「んじゃまあ、あとは東っちに許可もらうべ」
クラスの委員長の中野ひふみが、トコトコ歩いて行き、楽しく話している男子共を蹴散らしていく。
物理的に。
災厄を振り撒く者かよ。
やってること、でかつよやん。
暴力こそ純粋な力だ。
中野ひふみは、それを使うのに一切躊躇しない。
ハジメちゃん絡みの小日向風夏ですら、もっと回りに配慮して輪の中に入っていくものだ。
「……中野、少しはお淑やかにしなさい」
「や、ウチのママみたいなこと言わないでよ」
「いや、言われてんなら直せよ……」
ひふみのお母さんとは授業参観で顔合わせしたが、普通にいいお母さんであった。
自分の娘が学校で馬鹿やっていないか心配してくれるくらい優しいのだから、ちゃんと真面目にするべきだ。
そうでなくとも、ハジメがテスト勉強を見ていたこともあってか、ずっと感謝していて気まずかったのだ。
「んで、何かようか?」
かくかくしかじか。
「なるほどね」
いや、分かるか。
本当にかくかくしかじか言うやつがいるか。
ひふみがよくやる冗談ではあるけれど、突っ込まざるを得なかった。
彼女レベルの気の知れた仲であれば、適当でも分かるかも知れないが、ひふみでは無理である。
体育会系のノリはよく分からない。
男子連中含めて、みんなひふみの話を聞く。
二泊三日の旅行を考えている。
その纏め役をハジメにやってほしい。
女の子と旅行出来ることに浮かれて喜んでいる者も居れば、逆にいつもクラスの尻拭いをする側の人間は苦笑いしていた。
幼稚園児以下の知能指数の者が多い中で、大人数の旅行なんて、無理である。
お前らの精神年齢なんて、遊園地にある身長のバーより下なのだ。
バーと頭の間の空間に余裕がありまくりだ。
もっとこの子達が大きくなってから旅行しましょうね。
そう言われても仕方がない連中の集まりである。
伝統が長く格式高い初台高校の学生の質も落ちたものだ。
「いや、お前らが海とか、絶対溺れるだろ」
海なら溺れて。
山なら遭難する。
キャンプをしたら炎上させる。
こいつら、どこに行っても死亡フラグを全回収するつもりなのか。
そんなん、水着姿でドキドキしているのか、心配し過ぎてハラハラしているのか分からなくなるレベルだわ。
「私達のこと、なんだと思ってるん?」
「うちのクラスのヤバいやつ」
「ほんカス!」
ほんま、カス野郎がッ!の略。
ハジメからしたら、中野ひふみとやり合うつもりはないのだが、無駄に絡んでくるので面倒であった。
悪友だが仲良くしてくれるわけだし、毎日挨拶する仲だからこそ、友達として好いてくれているのは分かる。
それ自体は嫌ではないんだが。
「……まあ、あいつらが乗り気なら、俺も手伝うけどさ。一つだけお願いしていいか?」
「東っちが頑張るなら、やれることはやるよ」
ひふみは胸を張っていた。
手伝ってくれる気持ちは有難い。
運動部だけあり、そこらへんは協力的だ。
「いや、そうじゃなくてさ。……期末テストで赤点取ったら夏休みに学校に通うことになるだろう? 最悪の場合、お前は参加出来ないけど、大丈夫なのか?」
「……大丈夫だ。問題ない(ハジメボイス)」
「お前、ふざけんなよ!」
戦いの火蓋が切られるのであった。
乱闘するな。
ひふみが全面的に悪いが、手を出したら負けである。
六月から七月までの課題は多い。
コミケの準備から、読者モデルの仕事。
夏休みの旅行の企画に、期末テストを乗り切れるように勉強を教える。
コミケではジェムプリのコスプレ合わせがあるだろうから、それも把握する必要があるだろう。
ファンの人用に、色紙も描かないといけない。
「何で一日で滅茶苦茶に仕事が増えているんだよ」
それを全て平然とこなせるお前が悪い。
クラスメートは全員そう思っていた。
今となっては、みんな彼を頼るのであった。
人を認めてくれる人間は、認めてもらえる。
その結果なのである。
朝一。
ウキウキのハジメが学校に登校してきた。
教室の扉を開けて入ってくると同時に、上機嫌のアホを見て一言。
「やっぱこいつが一番問題起こしてんじゃねぇか」
萌花は息巻いていた。
他のクラスメートは、ブチ切れる萌花を宥める。
とはいえ、今回は喜ばしいことなんで素直に祝福するべきだろう。
「みんな、やったよ! コミケ当選した! しかもサークルスペースが念願の島中の誕生日席だったし、俺みたいな弱小サークルが誕生日席なんて普通有り得ないのに嘘じゃないんだぜ!?」
コミケとは才能のある者が集まる世界だ。
絵描きとは、読者モデルの世界と同様に、才能を持ちながらも毎日努力をしている。
SNSに上がる絵とは綺麗で可愛いけれど、血の滲む努力なくしては表現は出来ないのだ。
尊敬している人達に囲まれ、互いに切磋琢磨することで、ハジメは頑張ってきた。
そんなに嬉しいのは理解出来たが。
しらねぇ~。
饒舌だな、こいつ。
いや、教室には一般人が多いのだ。
コミケの話もそうだが、アニメや漫画の話に付いていけない者ばかりだ。
オタク特有の早口言葉で、専門用語を使うな。
ここには、こいつの話が通じる人間は居ない。
コミケに参加したことある人間は、極一部だけだ。
写真立ての一件で仲良くなったクラスメートだけは、意味が分かるようだった。
「わぁ、東山くん。おめでとうございます。東山くんのサークル人気ですもんね。島中だと混雑するでしょうし、今回の誕生日席は妥当な判断だと思います。コミケ側にも頑張りを認めてもらえて良かったですね」
「ありがとうございます。自分には不相応な気もしますが、これからも驕ることなく精進します」
彼等からしたら普通のやり取りではあるが、オタク同士ということもあり、いつもより元気に仲良く話すハジメであった。
ウキウキである。
浮かれているアホだから、女の子と楽しく会話していても何も考えていない。
それは分かるので、他の女の子と親しくしていても嫉妬はしないものの、こういう時に即座にハジメの才能が認められたことを褒めてあげられない。
その役目がクラスの子なのは、悔しかった。
彼女であり、ずっと傍にいるのに、根本的にハジメと生きている世界と趣味が違うのだと痛感させられる。
素直に喜んで褒めるべきなのに、何の話をしているのか全然分からないのだ。
手がボロボロになるまで努力し、好きなものを描き続けているハジメに対して、何て言葉を掛けていいのか。
普通の女の子では、役不足なのか。
そんなことはない。
応援したり、元気付けるだけでも人は喜ぶし、大切な思い出になる。
同じ趣味じゃなくても、構わないのである。
ハジメにとって一番大切なのは、よんいち組だから。
同じ趣味じゃなくても、つらい時は仕事を気遣ってくれる素敵な彼女。
それに、クラスメートも同じようにいつも応援してくれていた。
だから頑張ってこれたのだ。
自分の人生だが、自分だけで歩んできたわけではない。
一人だけの人生ならば、努力は出来ない。
それは、ハジメの言葉で伝えられる。
「他のみんなもありがとう。みんなが色々手伝ってくれたから、俺もここまで頑張れたと思うんだ。この結果は、俺一人だけのものじゃないんだ。本当にありがとう!」
クラスメート全員に深々と頭を下げる。
なんやこいつ。
ぐう聖かよ。
ハジメはコミケで結果を残せたことが嬉し過ぎて、頭のネジが外れていた。
外れているのはいつもか。
普通の時は、今時の高校生らしくクソみたいに無愛想なくせして、今日ばかりは何も考えていないくらいに幸せそうに無邪気に笑っていた。
その笑顔が子供というか。
ただのガキでしかないが、それが可愛いとか格好いいと思えてしまうのだから、よんいち組の面々は本当に彼が好きなのだろう。
努力してきたのを知っている。
それが、長く険しい道だったことも知っていた。
ハジメほど知名度があり、毎日イラストを描いていても、認めてもらえるのに数年以上も掛かる。
同人誌が売れてはじめて評価されるのか。
オタクの世界とは狭き門なのである。
その努力を彼が認められ、褒められれば、自分のことのように誇らしい。
これからも、ずっと彼の傍に居たいという気持ちにさせてくれる。
そこがハジメの良いところだ。
胸がキュンキュンしてしまう。
それが普通の感性だろう。
そんな中。
麗奈は、彼ピの純粋無垢に喜ぶ姿を見て冷静さを欠いていた。
女の子とて、獣。
理性を持っている人間だって、生き物の本質には逆らえない。
血に飢えた雌だ。
だが、まだ何とか首の皮一枚くらいで大丈夫である。
「落ち着くのよ、私……」
こっわ。
必死に、暴走する内なるれーなを抑え付けていた。
隣にいる人間から見たら、中二病が封印されし右腕を抑えているようにしか見えない。
しかし、それは狂っていた。
かろうじて人の皮を被っているだけで、底知れぬ狂気がそこにはあったのだ。
だが、それは仕方がない。
秋月麗奈は、お嫁さんの一件から、ハジメのことが好き過ぎてやばいのだった。
二倍では足りないくらいに。
それこそ、何倍も彼のことが好きになってしまっていた。
そう、一言で表すならば。
麗奈の恋愛感情が界王拳していた。
よんべぇだー!!
自分の愛の重さに身体が耐え切れず壊れそうであっあ。
持ってくれ! 俺の身体ー!!
いや、なんでそうなる。
おかしいだろうが。
何故、風夏や冬華みたくちゃんとした恋愛が出来ないのだろうか。
同じ想いで、同じ人を好きになったのに、まったく違う道を歩むのであった。
秋月麗奈は、王道ヒロインみたいな可愛い女の子になるのは望めないとはいえ、何故そうなった。
ラブコメの 法則が 乱れる!
ええ、……。
よく分からなさ過ぎて、他のクラスメートも麗奈の奇行を野放しにしていた。
なにこれ。
……狂っていやがる。
あんな狂ったやつに巻き込まれたら、絶対にもらい事故になる。
常人には、海より暗き深淵の闇を覗くなど、出来るわけがあるまい。
親友の萌花ですら、麗奈からは一歩引いているのであった。
触らぬ麗奈に祟りなしだ。
そんな流れをぶった切って、三馬鹿の中野ひふみが話す。
「ねーねー。東っち。そういえばコミケって何日にあるの?」
「八月だな。お盆休みだよ」
ハジメは手帳を取り出して、日程を見せる。
コミケのところに丸印が書かれている。
三馬鹿と小日向。白鷺あたりは手帳を見ながら、仕事のスケジュールが埋められたハジメの日程を確認していた。
「へー、風夏ちゃん達の誕生日ちゃんと書いてあるじゃん。やるやんけ」
パラパラとめくると、彼女や家族の誕生日はちゃんと記入されていた。
いや、こいつ結構大切な人に対してはマメなのか?
忘れたら殺されるから書いてあるだけなような気もするが……。
「わたし達も誕生日書いとこ」
ハジメが見てない間に、自分達の誕生日に名前を書いておく。
萌花は問う。
「何の意味があるん?」
「いやだって、書いといたらお祝いしてくれて、プレゼントくれるかも知れないじゃん」
「東山くん、クソみたいに優しいし」
「……人の彼氏から当然のようにプレゼント貰おうとするなよ。あと、貰いたい側がクソ言うな」
お前らは彼氏を作れ。
誕生日まであと、数ヶ月もあるんだから、プレゼントを諦めるなよ。
ハジメと一条。
男子連中が話している最中に、風夏は勝手に夏休みのスケジュールを付け加える。
「ねえねえ。ハジメちゃん見てないし、今のうちに夏休みの予定決めちゃおう」
草。
とんだクソガキである。
サプライズパーティー。
ハジメからしたら、ただのいやがらせでしかないが、風夏ならば怒られるくらいで許してくれるだろう。
風夏ちゃんを楯にして、各々が欲望のままに予定を書き込む。
こいつらも大概、腹黒である。
女の子の武器を全て使ってきていた。
ハジメのことが好きなら、本人に直接言えばいいのに。
恥ずかしくて、それが出来ない女の子である。
こうして、裏工作をすることでしか愛情表現が出来ず。
必死にスケジュールを埋めていく悲しい彼女達である。
初恋の愛は重い。
去年と同じく夏祭りもあるので、ここは欠かせない。
今年も浴衣を着てお祭りに行きたいものだ。
スケジュールには書き込んでおくけれど、真央さんの許可も得ないといけない。
ハジメちゃんの家で勉強会もやりたいな。
書けば書くほど、やりたいことはいっぱいある。
「風夏ちゃん。うちの地元も祭りがあるから、書いといてよ」
「オッケー。お祭りはいっぱい行った方が楽しいもんね!」
橘明日香に言われて、追加でお祭りの予定を入れる。
ハジメが見ていない間に、コミケ以外の日程が勝手に埋まっていく。
ハジメの仕事のピークは、夏コミであり、それが片付けば一気に暇になる。
そうではあるが、前半以上に夏休みをギチギチにするな。
彼女の好きが強すぎだ。
ハジメの人生には、ノー小日向風夏デーはない。
毎日が風夏ちゃんである。
「風夏、一応東山の許可を得るべきだ」
「あい。ハジメちゃん、夏休みの予定入れちゃうね~」
「ん? よく分かんないが、空いている場所ならいいぞ」
ハジメは、男子同士で話していて、遠くからいきなり言われたので、空返事する。
その対応は間違いだった。
風夏は、容赦がない女だ。
全てを埋め尽くす。
夏休みは何日あっても足りない系女子である。
去年の慎ましさなど皆無だ。
いや、前々から図々しいか。
「そうだ。この金土日はみんなで遊びに行こうね」
二泊三日ッーー!?
しれっと書き込む。
「だって。高校最後の夏休みだし、クラスのみんなで旅行したいもん」
「風夏ちゃん……」
可愛い。
抱き締めたくなる可愛さだ。
むぎゅ。
冬華に優しく抱き締められていた。
「そうだな。私も賛成だ」
「えへへ。冬華に抱き締められたのはじめてかも」
いつもとは真逆の立場だけれども、嬉しそうだ。
他の者も異論はない。
受験生ではあれど、三日くらい遊んでも問題ないだろう。
一部を除けば優等生が多いため、羽目を外しても文句は言われない。
彼女達だって、それだけの努力をしてきたのであった。
「折角だから、海にも行きたいよね。去年はプールしか行けなかったし」
ああ、この娘。
ハジメちゃんと海に行きたいだけだわ。
まあ、それでも構わないのだが。
夏休みに遊ぶとなると海は欠かせないし。
「ふむ。となると、コテージみたいなところがいいか。お父様に聞いてみよう」
「キッチンがあったら料理は私が作るわね」
「……じゃあ、魚ならもえが捌くわ」
風夏から冬華に繋ぎ。
麗奈から萌花に繋ぐ。
畳み掛けるように決めていくな、この子達。
ハジメに対する容赦のなさ。
念入りに断れないように隙間を膿めていく。
いや、六月とはいえ、彼女との夏の予定を決められないクソ彼氏が悪い。
ハジメの手帳に書かれているように、コミケの日程や仕事のタイトなスケジュールを数ヶ月前から決めているなら、彼女の予定も決めとけや。
女の子にデートを決めさせるなんて、有り得ない。
男の子なら、率先して女性をリードする気概がないといけないだろう。
女の子はいつだって、お姫様でいたい。
彼氏には、白馬に乗った王子様でいてほしいのだ。
……いや、こいつには無理だな。
王子様ってキャラではないし、プリンスの格好が似合わねぇ……。
アホの子には荷が重い。
能天気なまま、彼女に振り回されて幸せそうに生きるのがハジメにとっては一番の幸せだろう。
麗奈は、冬華に言う。
「あ、そうだ。冬華、お金がたくさんかかると困る人もいるから予算には気を付けてね」
「ふむ。男子の意見も聞く必要があるか。なら、そこら辺は東山の方が適任だな。任せてしまおう」
勝手に予定を決められて、評価を下げられ、責任や予算の仕事まで押し付けられていた。
信頼されていると言えば聞こえはいいが、クラスメートの意見を聞いて旅行を決定させる。
時間さえもらえれば、三十人の話を聞くのは、簡単だ。
他の者でも問題ない。
しかし、完全に裏表のない意見となると難易度はかなり上がる。
小日向達のような、美人の女の子がクラスで旅行に行きたいと話し掛けてきたら、野郎なら漫画やゲームを売り払い、数万円払ってでも付いて行くだろう。
男って馬鹿なので、女の子が絡むとお金の価値を見誤る。
その点、ハジメならば男同士でゆっくりと話し合いが出来る。
文化祭やメイド喫茶の時の経験もあるから、どの男子とも難なく意見交換が行える。
「あいつ。そのあたりは優秀だもんな」
無駄に長いことサークル活動をしているし、お金が掛かることに関して絶対に必要な部分を押さえる。
真面目だから、有耶無耶にせずにバシッと決めてくれるはずだ。
……高校生だよね?
ハジメに託しても、一切の不安はない。
言われたことを普通にこなす未来が見えていた。
責任が取れて、任せるに足る人間だから、こちらからお願いするのだ。
優秀であることは、その意味では有難いのだが。
違うベクトルに能力極振りしている。
高校生ってもっとちゃらんぽらんなのが普通だったよな?
一条や佐藤を見て、まあこんなもんよな。
萌花と三馬鹿はそんな話をしつつ、盛り上がっていた。
「あんなやつでも、自分で金稼いでいる組だしな。働いたことのない人間よりは優秀ってことっしょ」
「ほえぴぃ~」
なんそれ。
「馬鹿にしてんのか」
萌花、切れる。
三馬鹿は変な相づちを打っていた。
ささらやひふみみたいな、部活が終わった放課後にファミチキ食べるくらいしか幸せがない。
お金を使わない人間からしたら、毎日のように仕事をしてお金を稼ぐイメージが難しいのだ。
育ってきた環境が違うから、想像が出来ない。
三馬鹿は、何も考えてなさそうに口開いているアホの子だけど、陸上部の常勝高校として県大会に出たりと活躍しているから、バイトをしている余裕がないのは仕方がない。
お金を稼ぐことは誰でも出来るが、スポーツの才能は天が与えたものだ。
そちらを大切にして、集中して努力することは間違っていない。
逆に、高校生からバイト以上の仕事をしている人間が異常であり、ハジメや風夏だから出来る芸当だ。
二人とも、人が好きだから。
そういった意味では適任者なのだ。
頭がよく優秀な麗奈や萌花だって、他人の面倒を見ながらクラスの纏め役は出来ない。
前提として、人を纏めるのに苦手意識があるから、無理だろう。
好きじゃないと出来ないこともある。
「そうね。東山くんには悪いけど、お願いしようかな……」
「一番楽だしな」
全部任せるわけではない。
足りない部分は誰かが補えばいい。
いつものよんいち組のやり方だ。
別に一人でやる仕事ではないし、黒川さん達の準備組のみんなも手伝ってくれる。
それが分かっているから、みんなで旅行が提案出来るのだ。
クラス全員が仲良しだと楽であった。
「んじゃまあ、あとは東っちに許可もらうべ」
クラスの委員長の中野ひふみが、トコトコ歩いて行き、楽しく話している男子共を蹴散らしていく。
物理的に。
災厄を振り撒く者かよ。
やってること、でかつよやん。
暴力こそ純粋な力だ。
中野ひふみは、それを使うのに一切躊躇しない。
ハジメちゃん絡みの小日向風夏ですら、もっと回りに配慮して輪の中に入っていくものだ。
「……中野、少しはお淑やかにしなさい」
「や、ウチのママみたいなこと言わないでよ」
「いや、言われてんなら直せよ……」
ひふみのお母さんとは授業参観で顔合わせしたが、普通にいいお母さんであった。
自分の娘が学校で馬鹿やっていないか心配してくれるくらい優しいのだから、ちゃんと真面目にするべきだ。
そうでなくとも、ハジメがテスト勉強を見ていたこともあってか、ずっと感謝していて気まずかったのだ。
「んで、何かようか?」
かくかくしかじか。
「なるほどね」
いや、分かるか。
本当にかくかくしかじか言うやつがいるか。
ひふみがよくやる冗談ではあるけれど、突っ込まざるを得なかった。
彼女レベルの気の知れた仲であれば、適当でも分かるかも知れないが、ひふみでは無理である。
体育会系のノリはよく分からない。
男子連中含めて、みんなひふみの話を聞く。
二泊三日の旅行を考えている。
その纏め役をハジメにやってほしい。
女の子と旅行出来ることに浮かれて喜んでいる者も居れば、逆にいつもクラスの尻拭いをする側の人間は苦笑いしていた。
幼稚園児以下の知能指数の者が多い中で、大人数の旅行なんて、無理である。
お前らの精神年齢なんて、遊園地にある身長のバーより下なのだ。
バーと頭の間の空間に余裕がありまくりだ。
もっとこの子達が大きくなってから旅行しましょうね。
そう言われても仕方がない連中の集まりである。
伝統が長く格式高い初台高校の学生の質も落ちたものだ。
「いや、お前らが海とか、絶対溺れるだろ」
海なら溺れて。
山なら遭難する。
キャンプをしたら炎上させる。
こいつら、どこに行っても死亡フラグを全回収するつもりなのか。
そんなん、水着姿でドキドキしているのか、心配し過ぎてハラハラしているのか分からなくなるレベルだわ。
「私達のこと、なんだと思ってるん?」
「うちのクラスのヤバいやつ」
「ほんカス!」
ほんま、カス野郎がッ!の略。
ハジメからしたら、中野ひふみとやり合うつもりはないのだが、無駄に絡んでくるので面倒であった。
悪友だが仲良くしてくれるわけだし、毎日挨拶する仲だからこそ、友達として好いてくれているのは分かる。
それ自体は嫌ではないんだが。
「……まあ、あいつらが乗り気なら、俺も手伝うけどさ。一つだけお願いしていいか?」
「東っちが頑張るなら、やれることはやるよ」
ひふみは胸を張っていた。
手伝ってくれる気持ちは有難い。
運動部だけあり、そこらへんは協力的だ。
「いや、そうじゃなくてさ。……期末テストで赤点取ったら夏休みに学校に通うことになるだろう? 最悪の場合、お前は参加出来ないけど、大丈夫なのか?」
「……大丈夫だ。問題ない(ハジメボイス)」
「お前、ふざけんなよ!」
戦いの火蓋が切られるのであった。
乱闘するな。
ひふみが全面的に悪いが、手を出したら負けである。
六月から七月までの課題は多い。
コミケの準備から、読者モデルの仕事。
夏休みの旅行の企画に、期末テストを乗り切れるように勉強を教える。
コミケではジェムプリのコスプレ合わせがあるだろうから、それも把握する必要があるだろう。
ファンの人用に、色紙も描かないといけない。
「何で一日で滅茶苦茶に仕事が増えているんだよ」
それを全て平然とこなせるお前が悪い。
クラスメートは全員そう思っていた。
今となっては、みんな彼を頼るのであった。
人を認めてくれる人間は、認めてもらえる。
その結果なのである。
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