【R18G】門地旅館

黄泉坂羅刹

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終章 地獄門篇

門地旅館

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8月某日、某時刻。日も落ち月明りだけが頼りの山奥に、光が差す。
街から少し離れた山の中に、元道だった物はひび割れ草木が生えていた。
その道を少し外れたところを更に進んでいくと、大きな『門地旅館』と書かれた看板が錆びてボロボロになった状態で掲げられている。
かつて旅館だった建物だが、『Keep Out』と書かれたテープで完全に封鎖されていた。
そこに、3人の人影が近付き、全体を見渡す様に三方向にライトが通る。

そこは地獄の門と繋がった、町の中心部から丁度丑寅の方角にある旅館で、『門地旅館』と呼ばれている。
既に何年も前に廃墟となった旅館で、歴史的価値があるために残されているらしいが、実際は不慮の事故が続き旅館の取り壊しが出来ないためである。
この旅館は地獄から来た鬼の使いによって多くの処女が鬼への供物として捧られたらしい。
なぜそれが分かったかと言えば、何十年も続けば綻びが産まれ、疑心が産まれ、そして供物が用意出来なくなった鬼の使い達が供物としてささげられることになったから、と言うのが伝承として書物に残されていたからだと言われている。
とは言え、結局のところ、その書物の実物は誰も見たことが無く、インターネット上での噂に尾ひれがついたものであると言うのが定説となっていた。
だが、突如誰の記憶にも残っていない廃れた旅館が出て、中から身元不明の女児達の遺体が出てくればそう言った噂も立つと言う物だ。
今では完全に出入り禁止の旅館だが、ホラースポットとして多くの観光客が訪れていた。

「ここが、その旅館なんだね。作りは江戸時代にあった瓦屋根の旅館みたいだね」
「それにしても結構大きいんだね」
「そりゃ旅館だからね」

ホラースポットとして3人の女子中学生が懐中電灯を片手に旅館を訪れる。
それぞれが夏らしい肌を惜しみも無く晒した格好をしており、皆ノースリーブにホットパンツを履いた格好をしていた。
中に入れないとなると、ただ見て帰るだけになるが、それでも雰囲気を楽しむだけでも十分だった。

「あら、貴女達も『門地旅館』見に来たの?」

突如3人の後ろから女子大生がやって来た。
どうやら一人のようで、彼女達と違って山登りメインの軽装備をしていた。

「あ、はい! でももう帰る積もりです」
「あらそうなの。それは勿体ないわね」
「勿体ない?」
「門って言うのは、あくまで入り口なの。でも、貴女達は門を越えずに帰ろうとしてるから」
「越えるも何も、立ち入り禁止のテープが張られて入れないじゃないですか」
「そうね。でも、それはであって、建物の中に入らなければ良いのよ」

何を言っているのか3人は不理解を示す為に首を傾ける。
門を越えるが建物には入らないなど、矛盾も良い所だ。
それを見た女子大生は建物をまっすぐに指を指す。

「建物は封鎖されてるわ。でも、
「「「え?」」」

改めて背後を振り返ると、そこには確かにがあった。
さっきまでは無かったはずのその門に、3人は顔を見合わせる。

「せめて門をくぐって、近くで見てから帰りなさい」
「ありがとうございます」
「暗くてよく見えなかったんだね」

3人は大学生に頭を下げると、門を越えて旅館に近付く。
突如、足の裏に畳の感触がして、足元を3人が見る。
なぜか裸足になっていた3人は、足元が畳になっていることに気付く。
そして顔を見合わせると、3人が旅館着に身を包み、自分たちが旅館の中に居ることに気付いた。

「え、これ、どう言う……?」
「見て、出口が無くなってる……!!」

声を掛けられて背後を振り返れば、そこには壁があり、自分たちは旅館の部屋に割り当てられているようだった。

「「いらっしゃいませ、門地旅館へようこそ」」
「え?」
「若女将を勤めます右月と言います」
「若女将を勤めます左月と言います」

いつの間にか立っていた双子の少女が深々とお辞儀をする。

「聞いたことある、双子の鬼の使い、右月と左月。右月の能力は分からないけど、左月は唾液・血液・涙・尿全ての体液が麻酔薬になる異能を有しているんだって」
「あら、よくご存じで」
「でも、私の異能を知らないのは落第点ですね。では特別に教えて差し上げます」

そう言い終えると同時に左月は一気に近付いて、少女に唾を吐く。
唾を掛けられた少女は一瞬怯むが、その怯んだ隙に唇を押し付けられ、そのまま押し倒される。
濃厚なキス、舌を中に入れられ貪られる少女は徐々に感覚を失っていく。
直接唾液を体内に送り込まれ、全身の感覚が失われているのだ。

「こ、この……!! ……な、何この髪の毛!?」
「髪の毛を使って束縛・切断・操作が可能な異能を持って居るってことは、縛月……!!」
「あの、えっと、ごめんなさい……。若女将、縛月です……」

いつの間にか双子の後ろに控えていた縛月がお辞儀をし、遅ればせながら自己紹介をする。
右月だけがその場に動いていないが、それからゆっくりと彼女が近付いて来る。
それから、彼女は一度目を閉じると、次に目を開けた瞬間少女は両手を広げて両膝を付いていた。
周囲は血肉で出来た水溜り、饐えた鉄さびの様な臭いに思わず顔を背ける。
背けた先では腐った少女の死体が、片方の目を少女に向けていた。

「ひっ……!! いや、うっ……」

胃から込み上げる感覚、胸をかき乱される感覚、膝下にはぶよぶよした感覚に覆われる。
意識と関係無く尿があふれ出し、彼女の旅館着に大きなシミが出来上がる。
全身は汗が噴き出して、寒気が全身を襲う。

「私の異能は受けた者にしか分からない、精神を浸蝕する異能なの」

結膜(白目の部分)が赤黒く染まり、一本の短い角が生えた右月の姿は正しく鬼だった。
右月は彼女の胸に手を当てると、そのまま体内に手を入れ、そこから心臓を取り出す。
そこまでの感覚は何も無かったが、右月がその心臓を握りつぶした瞬間世界が暗転する。



「あの、えっと、ごめんなさい……。若女将、縛月です……」
「うっ……」
「え、何!?」
「ひょっと、へっ!?」

縛月が自己紹介を追えるのと、少女が突如膝を付いて倒れ失禁しだしたのは同時だった。
倒れた少女の横に座ると、彼女の足を持ち上げて舌を這わせる。
白くて柔らかくて冷たい素足、右月はそんな彼女の足裏を咥えると、視線を二人に向ける。

左月は突如全身汗だくになると、少女の旅館着に汗が染みて行く。
我慢と言うことが出来なくなった彼女は尿を漏らして呼吸が出来なくなる。
呼吸する機関も麻痺をしており、痙攣する神経も麻痺をしており、彼女は白目も向けずに真っ直ぐ左月の目を見ていた。
生きているのに死んでいるような彼女は、誰にも知られずに苦しみ、そのまま人知れず息を引き取った。
それすらも誰にも気づかれないままに。

二人が突如動かなくなり、明らかに異常であることを悟った少女は、もがいて逃れようとする。
だが、その髪の毛が突如口の中に入ると、胸の中をかき乱されているかのように苦しくなり、突如大きく跳ねるとそのまま真後ろに倒れる。
彼女もまた、失禁した状態で意識を、命を奪われた。

「終わった?」
「異月姉様……」
「久々に贄が手に入りました。これで、鬼神様も少しはお怒りを鎮められることでしょう……」

前よりも大きくひび割れた空間から、巨大な腕が出て少女3人を異空間へと引き込む。
その門が開くと同時に鬼の使いである少女達は息を呑んだ状態で少女達から離れる。

【お許し下さい、鬼神様!! 何卒、何卒お慈悲を、いや、いやぁぁぁぁぁあああああ!!!】

忘れもしない数年前の光景、噂を作り広めるだけの能力しか無かった三女、美月が鬼の門に引き込まれ殺された。
それと同時に、負の感情を集める事無く、ただ殺すだけだった苦月もまた、多量虐殺した少女達の遺体と共に鬼の門へと連れて行かれ、代わりに鬼の使いの上、鬼の傍月であった次女の異月が鬼の門から現れた。
唯一、旅館の外でも活動が出来る異月は、鬼の使いである少女達を使い、鬼神様の贄を捧げる役割を仰せつかった。

「さて、次に行くわよ。準備なさい」

それだけ言うと異月は踵を返す。残った3人はその背に頭を下げるだけだった。
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