上 下
22 / 27

第21話 ルリ - 裏エピローグ -

しおりを挟む
「れ、レイ様、いや、レイ……!! 貴様、この村を滅ぼす気か……!?」
「ユキちゃんが可哀想だもの。同じ報いを受けてもらわないと……ね?」
「うふふふふ……。勿論ですわぁ? レイさんが言うことは全て正しいんですもの♡ でしたかしら?」

今はもう居ないカエデの真似をしながら、クロエは村長と村人達を捕縛していた。
そんな中、カエデの代わりに出張って来たのは『空間水没』カオルだった。
そしてもう一人、この中でリーダー格と同じ並びに居たのは盗賊団・赤猫団裏外交『千手』レイト。
彼女を再びサポートキャラにしようとしたが、世界規模での改変になってしまうため、サポートキャラにまでは出来ず、また『闇ギルド』のギルドマスターとして首を挿げ替えることも出来なかった。
既に男達の首は刎ね飛ばしており、少女達はそのままの年齢で裸足にされ、隷属の首輪を付けられていた。

「これはこれは、選り取り見取りね?」
「そうですわね。でも……残念、貴女はこちらですわ」

突如村娘を一人を選び、レイとルリの二人の前に差し出される。
困惑する彼女の両足を開き、彼女は途端の奇行に顔を真っ赤にして足を閉じようとする。
けれども魔族であるクロエの腕力は華奢な見た目に反して力強く、そのまま大きく股を開いてしまう。
その太腿の内側、小さな魔法陣が描かれていた。

「これは、ミリアの紋章ですわね。あの子が四天王になったのね?」
「………!! し、知りません! 離して下さい、離して!」
「どうしても口を割らないと言うのであれば、あの子のこと、身体に聞きますわ」

元々魔族を表す赤い瞳を持つクロエではあるが、その瞳を更に妖艶に輝かせる。
なすすべも無い少女は、なんとか逃げようと必死にもがこうとする。
けれどもクロエの力は決して彼女を離しはしない。
そして、彼女の恐怖を更に煽るかのように、クロエの背後から2本の尾がちらついた。

「本当にっ! 本当に何も知らないんです! お願いです、信じて下さい……!!」
「クロエ、多分彼女何も知らないわよ。私の"改変デバッグ"を使っても何も出なかったもの」
「なんですの、期待して損しましたわ。では彼女も奴隷送りですわね」
「いいえ。彼女は四天王の一人、ミリアの息がかかっているんですもの。今はこう言うのを野放しには出来ないわ」
「では、どうするんですの?」
「ルリ」
「ん、なんか最近私の出番が無いから忘れられていたのかと思ってたわ」
「彼女の尋問をお願いするわ」
「……なんで私が」

ルリは一瞬で少女の背後に回ると手刀を打ち込み意識を奪う。
少女にとってルリの姿を見失うのと、自身の意識が失われるのはほぼ同時だったことだろう。



少女が目を覚ますと、椅子に両手両足を固定され目隠しもされている状況だった。
何も見えないが、肌で感じるのはじめじめした香りとねばつくような湿気、生ぬるい空気、座っている椅子もボロボロで湿気っていた。
それだけ情報があれば地下の何処かに閉じ込められているか、或いは森の洞窟……いや、洞窟はまだもう少し湿度はマシだろう。
その状態で微かに聞こえるカサカサというような、カチカチというような音、気配は何か感じる。

「私が聞くこと以外に何か話せば、の餌食になるから気を付けなさい」
「は、はい……」

そう言われて目隠しを外され最初に見た光景は、胸に大きく穴が開いた少女の死体、その横にあるのは顔もギリギリ原型を留めてるだけでほぼ身体が潰れている少女の死体だった。
その周囲には、体長1m程の毒蜘蛛が数匹、その一番奥には5m程の毒蜘蛛が構えていた。
それだけで直ぐに彼女は察する、ここは生贄の洞窟であるということに。
だが、それが分かってもなぜ彼女が使役出来ているのかについてまでは分かっていない。

「まず貴女の名前は?」
「えっと、シラスです。シラス・メーリア」
「年齢は?」
「今年で16になります」
「右利き? 左利き?」
「右利きです」
「家族は?」
「えっと、父と母の3人です」
「字は読める?」
「いえ。字は読めません」

尋問と言って周囲に生贄の時に使われる魔物が用意されているにも関わらず、来るのは簡単な質問ばかり、それに首を傾げそうになる。
けれどもこれはフット・イン・ザ・ドアテクニック(段階的要請法)と呼ばれる簡単なお願いの後に、難しいお願いをする心理術なのである。多少時間は掛かるが、クロエが核心に近いミリアや東の魔王城について尋ねるも知らないと結局答えてしまう。
直ぐ間近に蜘蛛の魔物をおいても答えが変わらないところを見るに、余程隠蔽の魔法が掛けられているのか、この紋章自体がフェイクの可能性まであった。

「ともすれば、貴女のこと、やっぱり用済みということになるのよね」
「ひっ! いやっ! 待って、お願いします!!」
「私の""でも分からなかったし、ただ気絶している間に描き込まれただけかもしれないのよね。なにせ、貴女の足にある紋章からは魔力的な何かが感じられなかったし」
「本当に、私、何も知らないんです……!!」
「もう分かったから。分かったから、もう死んで頂戴」
「えっ――」

突如世界が反転した。そして頭が地面に落ちる頃には理解する。
彼女の首が刎ね飛ばされたことに。
首があった場所から血が噴き出して、血の雨が降り注ぐ。
そんな彼女の死体に、ルリは彼女の胸を揉み、そのまま股を手でこする。
かつて彼女だったもの、つい数秒前まで怯えて命乞いをしていた少女の身体が、そう、身体だけがそこにあった。
そのままルリは死姦する、彼女だった器を使い。
結局得られた情報は何もない、それはレイもクロエも分かっていた。
だからルリを残飯処理に使っていた。
血に染まったルリが、赤い瞳を輝かせる。
舌なめずりをしながら、周囲の蜘蛛たちも彼女達ユキとレンの遺体に群がってその肉片に食らい付く。
彼女達も朝までには生きていた、生きる希望を無くしたユキは、その恐怖と痛みから初めて逃げ出したいと泣き叫んだ。けれどもそう思ったころにはもう遅い。
レンはユキと共に逃げだそうとした、けれども村人にはばれていた。
だから彼女が目を覚ました時には捕らえられ、一服盛られたのだと後から気付く。
こうして彼女達は生贄として、16年もの間の人生を簡単に生きていた証を奪われる。
この世界はそうした理不尽で出来ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

邪悪な魔術師の成れの果て

きりか
BL
邪悪な魔術師を倒し、歓喜に打ち震える人々のなか、サシャの足元には戦地に似つかわしくない赤子が…。その赤子は、倒したハズの魔術師と同じ瞳。邪悪な魔術師(攻)と、育ての親となったサシャ(受)のお話。 すみません!エチシーンが苦手で逃げてしまいました。 それでもよかったら、お暇つぶしに読んでくださいませ。

【R18】復讐者は公園で眠る

黄泉坂羅刹
ファンタジー
元は一般家庭で暮らしていたけれども、とある貴族の令嬢に嵌められて学園を追いやられ、スラム街では余所者を受け入れられないために、私は近くの公園で過ごすことになった。 盗みや残飯漁りだけで、明日も見えない、来年には死んでいるかもしれない日常で、私は自分の人生を呪った。 だけど、今日でそれも終わりだ。 私は路地裏から、これから行くべき場所を見た。 スラム街の出口にある門を潜ると、その先には広い石畳の道があり、道の先には、この国唯一の教育機関である学園が聳え立っていた。 その学園の名は、王立クレム学園。 貴族から平民まで、様々な身分の人間が通う王立の学校である。 その学園を入学するには、高い教養と才能、そして入学試験を突破する学力が必要とされる。 その中に、私をこんな生活においやった伯爵令嬢が居る。 もう私は死んでも構わない、私は伯爵令嬢に復讐するために、王立クレム学園へと潜入した。

俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・

白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。 その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。 そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。

モブでヘタレな俺だけど、異世界に召喚されたらキラキラ王子に溺愛されて困ってます。

古紫汐桜
BL
俺、神代多朗はKing of 平凡。 モブの中のモブの俺が、何故か学校一のリア充でイケメンの和久井奏叶と異世界に飛ばされてしまう。飛ばされた世界で、和久井が勇者だと歓迎ムードの中。どうやら召喚された勇者は俺らしい。はぁ?俺が勇者? しかも、この国のキラキライケメン王子に溺愛されて、俺のモブ人生はどうなっちゃうの?

【R18G】門地旅館

黄泉坂羅刹
ホラー
修学旅行。小学5年生、11歳の少女達が旅館着を身に纏い、仄かなシャンプーの匂いを漂わせる。20時就寝指示の元に部屋に戻る児童達。そんな彼女達の中で旅館に纏わる都市伝説を実行し、地獄の門が開かれる……

【R18G】呪い師

黄泉坂羅刹
ホラー
恋愛成就のお呪いが、インターネットとスマートフォンを通じて広がって行く。 成功例はほんの一握りではあるお呪いを、呪いに変えてしまう人間が居た。 彼女はこの世の全てを憎み、幸せに縋る少女達を次々と壊していく。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【注意事項】 1.このお呪いは男女では行えない。女友達、姉妹、従姉妹が理想。 ※男子同士は検証したこと無いから分からないが、個人的にやめてほしいw 2.丑三つ時に効果が高まるため、女子会序に手頃に出来る 3.用意するのは赤い糸、エンジェルナンバーとして2mのものを用意 4.恋は盲目、目的を見失えば二度と届かない ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【手順】 1.足首に赤い糸を巻き、パートナーの足首と繋ぐ。貴女が右足首ならパートナーは左足首に。 ※赤い糸は朝を迎えるまではずさないように。 2.丑三つ時になる前に同じ布団で寄り添って眠る。この際手を繋ぐと尚良し 3.目を瞑って好きな人とパートナーの顔を両方交互に浮かべると、どちらかが成就、強化される。 4.それぞれ10回思い浮かべたら、抱き合ったまま呪文を唱える。 呪文は「teshito、nicgji、wochita、shitwa」で、「テシオ、ニックグジ、ウォチタ、シットワ」。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「呪い師」は「まじないし」なのか「のろいし」なのか ※予約投稿にて毎日22時に投稿、3月10日に完結。 ※本作はスマホ、パソコン、Fireタブレットで作成されているため、変換ミスや表記揺れがある場合があります。万全を期してはいますが、酷い場合には感想等にてご報告いただければ幸いです。

悩ましき騎士団長のひとりごと

きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。 ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。 『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。 ムーンライト様にも掲載しております。 よろしくお願いします。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...