上 下
1 / 1

ちゃぼ茶のショートショート 「帰省」

しおりを挟む
おれは見た目よりも重くないキャリーケースを引いていた
幾度も通った駅の改札を抜け、シャッターが目立つ商店街を歩く

「久しぶり」

聞こえた方を見ると、そこには見覚えのある顔があった
が…名前が思い出せない

「帰ってきたんだな、里帰りか?」

あーそうだ、こいつは中学校の時の同級生
おれよりはるかにバカで、運動もできないやつ
名前だってすぐに思い出せないほどに

「まぁな」

「東京の大きな会社なんて俺たちの誇りだよ、お前は」
「今回は弟くんに会いにきたのか?」

心の中で当たり前だろ、お前らとは違うんだよ…そう思いながら適当に返事をする

「まぁな」

「久しぶりの帰省楽しめよ」

そしてまた飲みにでも行こうと社交辞令のような挨拶で別れた

弟と会うのは母親の葬式以来だ
母は1人で俺たちを育ててくれた

しかし、弟とは仲が悪いのだ
昔から何か合わない
性格も、行動も、周りからの信頼も
全て俺より劣ってると思っていたのに…いつのまにか

そんなことを考えていると着いてしまった、弟の家に
緊張を隠すように無理して笑顔を作りチャイムを押す

「はーい」

返事とともに出てきたのは久しぶりの弟
しかし弟から出たのはきつい言葉だった

「何しにきたんだよ」

「いや、久しぶりに弟のお前に会いたくなってな」

「ふざけんな、帰れよ」

「少しの間でいいんだ」

「また、仕事辞めたのか、どうしようもない人間だな」

「あそこは俺に合わなかったんだよ、頼む泊めてくれ」

「母親がいなくなったら今度は俺か」
「すぐしやがって」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

1分完結 ちゃぼ茶のショートショート 「泥棒体質」

ちゃぼ茶
大衆娯楽
私ちゃぼ茶は遺伝って怖いと思うのです…なぜなら両親の悪いところは遺伝で自分に似てしまうのでは…?という考えがあるからです。 そういえば私の父髪の毛が…まぁ考えるのはやめにしましょう

ちゃぼ茶のショートショート 「目覚まし時計と甘い男」

ちゃぼ茶
大衆娯楽
目覚まし時計には、毎朝おこしてもらい感謝している人も多いのでは?まぁそれが仕事というのもあるのですが…

ちゃぼ茶のショートショート 「金髪男とイヤホンBBA」

ちゃぼ茶
大衆娯楽
私、ちゃぼ茶は優先席はが空いていてもなかなか座れないタイプです。 優先席はあくまで、座るべき人がいれば譲るのが正解ですが… それでも何故か座りにくいと思ってしまいます…

ちゃぼ茶のショートショート 「マスク」

ちゃぼ茶
大衆娯楽
マスクが外せない時代が来るとは思ってもいなかったですよね?まぁ現在とも限らないですけど…

1分で読み終わる ちゃぼ茶のショートショート「恐怖症」

ちゃぼ茶
大衆娯楽
閉所恐怖症気味な私ちゃぼ茶です。 きには色々ありますよね…高所恐怖症など どうやらこの3人もおかしな恐怖症に振り回されているようです…

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

ちゃぼ茶のショートショート 「ホワイトクリスマス」

ちゃぼ茶
恋愛
クリスマス…お相手がいる方は楽しいでしょうね。別にいなくても楽しい1日だとちゃぼ茶は信じています…

10000累計ポイント突破!ちゃぼ茶のショートショート まとめ 【週に一本目指してます】

ちゃぼ茶
大衆娯楽
ショートショートのまとめです。それぞれ個別でも投稿していますが読みやすいようにまとめてみました。1分で読める作品が数多くあります。ちょっと時間ができた際にぜひ!

処理中です...