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へっぽこ召喚士、気持ちの答えを知る④
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「えっと……?」
状況把握が出来ない中、ミアの隣にやってきたリヒトが面倒くさそうに溜め息を零す。
凛としたエルザの裏顔は、あまりにも想像とかけ離れていて、忠告してきたあの威厳は今の彼女には持ち合わせていない。
「昔からエルザはフェンリルの虜なんだ。縁談の話もいくつか上がっているというのに、フェンリルの事で頭がいっぱいだからと、全て断っているらしい」
「縁談?!」
「一応公爵令嬢だからな。家の仕来りで苦労するはずなのに、自分の感情に一切嘘は付かずに突き進んでるすごい女だ、あいつは」
エルザを見つめるリヒトの瞳は、頼れる仲間を見つめる時と同じものだった。
ハッキリと分かった答えに、自分一人が誤解して落ち込んだり、勝手に這い上がったり……思えば思う程恥ずかしい。
「俺とエルザの関係がどうとか言ってたが、何のことだ?」
痛い所を突かれ、顔は瞬く間に赤く染まる。
隠しきれない反応に、リヒトはどこか挑発的に笑う。
「何か誤解してたのか?」
「べっ別に……」
「ふーん、そうか」
今すぐこの場から逃げ出して、獣舎で恥ずかしい感情を叫びたい。
そう思って唇を噛み締めたまま、リヒトを無視して訓練場から出ようと歩き出した。
ほんの僅かに地面が揺れた、そう感じた次の瞬間――。
「グゥァァアッ!!」
鼓膜を裂くようなけたたましい鳴き声に、咄嗟に振り返るとフェンリルが苦しむように暴れ出す。
フェンリルだけではない。エルザと共にやって来たグリフォンも、騎士達の相棒の魔獣達までも苦しむように鳴き声を上げて牙を、爪を向ける。
手を出せない騎士達は、自身の安全を守るので精一杯だ。
「みんなっ!」
恐怖よりも先に体が動いたミアは、魔獣達の元へと駆け寄り様子を伺う。
苦しむ彼らに涙目になりながらも、瞳を一匹ずつ合わせてやれば、一瞬正気を取り戻し気を失って倒れていく。
残されたフェンリルの元へと歩み寄れば、朦朧とした目の中に恐怖を抱くフェンリルに恐れることなく抱きつくと、そのまま体を預けるように倒れた。
「どうしたの?!お願いっ、しっかりして!」
「ハイロンを呼べ!大至急だ!!」
リヒトの指示により動き出す騎士達すら視界に入らない。ぐったりと倒れる魔獣達に、溢れる涙を止められない。
ただ狼狽えるミアを支えるように、リヒトが肩を抱き締めた。
「落ち着け、ミア。獣舎に魔獣達を戻す。手伝ってくれ」
荒波のように乱れた心を静める、リヒトの声に深呼吸して気持ちを落ち着かせると、真っ直ぐな瞳で見つめられる。
今自分が取り乱しては、魔獣達の苦しみを取り除くのに時間が掛かってしまうと、涙を拭いて力強く頷いた。
(……大丈夫。きっと良くなるからね)
願いを込めて立ち上がり、全速力でミアは言われた通り獣舎へと向かい魔獣達を迎え入れる準備を進める。
緊急事態にざわめく心を誤魔化しながらも、救ってみせるという気持ちを強く持って、魔獣医が来るのを待つ。そんなミアを嘲笑うかのような三日月が、夜空にぽつりと浮かんでいた。
「えっと……?」
状況把握が出来ない中、ミアの隣にやってきたリヒトが面倒くさそうに溜め息を零す。
凛としたエルザの裏顔は、あまりにも想像とかけ離れていて、忠告してきたあの威厳は今の彼女には持ち合わせていない。
「昔からエルザはフェンリルの虜なんだ。縁談の話もいくつか上がっているというのに、フェンリルの事で頭がいっぱいだからと、全て断っているらしい」
「縁談?!」
「一応公爵令嬢だからな。家の仕来りで苦労するはずなのに、自分の感情に一切嘘は付かずに突き進んでるすごい女だ、あいつは」
エルザを見つめるリヒトの瞳は、頼れる仲間を見つめる時と同じものだった。
ハッキリと分かった答えに、自分一人が誤解して落ち込んだり、勝手に這い上がったり……思えば思う程恥ずかしい。
「俺とエルザの関係がどうとか言ってたが、何のことだ?」
痛い所を突かれ、顔は瞬く間に赤く染まる。
隠しきれない反応に、リヒトはどこか挑発的に笑う。
「何か誤解してたのか?」
「べっ別に……」
「ふーん、そうか」
今すぐこの場から逃げ出して、獣舎で恥ずかしい感情を叫びたい。
そう思って唇を噛み締めたまま、リヒトを無視して訓練場から出ようと歩き出した。
ほんの僅かに地面が揺れた、そう感じた次の瞬間――。
「グゥァァアッ!!」
鼓膜を裂くようなけたたましい鳴き声に、咄嗟に振り返るとフェンリルが苦しむように暴れ出す。
フェンリルだけではない。エルザと共にやって来たグリフォンも、騎士達の相棒の魔獣達までも苦しむように鳴き声を上げて牙を、爪を向ける。
手を出せない騎士達は、自身の安全を守るので精一杯だ。
「みんなっ!」
恐怖よりも先に体が動いたミアは、魔獣達の元へと駆け寄り様子を伺う。
苦しむ彼らに涙目になりながらも、瞳を一匹ずつ合わせてやれば、一瞬正気を取り戻し気を失って倒れていく。
残されたフェンリルの元へと歩み寄れば、朦朧とした目の中に恐怖を抱くフェンリルに恐れることなく抱きつくと、そのまま体を預けるように倒れた。
「どうしたの?!お願いっ、しっかりして!」
「ハイロンを呼べ!大至急だ!!」
リヒトの指示により動き出す騎士達すら視界に入らない。ぐったりと倒れる魔獣達に、溢れる涙を止められない。
ただ狼狽えるミアを支えるように、リヒトが肩を抱き締めた。
「落ち着け、ミア。獣舎に魔獣達を戻す。手伝ってくれ」
荒波のように乱れた心を静める、リヒトの声に深呼吸して気持ちを落ち着かせると、真っ直ぐな瞳で見つめられる。
今自分が取り乱しては、魔獣達の苦しみを取り除くのに時間が掛かってしまうと、涙を拭いて力強く頷いた。
(……大丈夫。きっと良くなるからね)
願いを込めて立ち上がり、全速力でミアは言われた通り獣舎へと向かい魔獣達を迎え入れる準備を進める。
緊急事態にざわめく心を誤魔化しながらも、救ってみせるという気持ちを強く持って、魔獣医が来るのを待つ。そんなミアを嘲笑うかのような三日月が、夜空にぽつりと浮かんでいた。
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