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へっぽこ召喚士、美人副団長と出会う①
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いつにも増して召喚術に気合いを入れるミアは、訓練に向かう魔獣達の隣を歩いていた。
昨夜の出来事を思い出すだけで幸せに包まれ浮かれるミアを、フェンリルは喝を入れるべく訓練場へと向かわせたのだ。
監視役として斜め後ろから着いて歩いてくるフェンリルだが、まだ浮ついた様子の彼女を呆れた顔で見つめている。
(今日はどんな魔獣を召喚しようかな~!)
手に魔力を注ぎ込みながら、頭に思い浮かべる魔獣の姿。それはどれも伝説上の魔獣達ばかり。
今にも鼻歌が零れそうになるのを何とか堪えて、思い描くものを膨らませていく。
一気に自信を身につけたのはいいが、空回りするのではないかと一緒に歩く魔獣達は若干ソワソワしている。そんな魔獣達の心を読み取ったシュエルが、ミアに声を掛けた。
「ミア、何をそんなに張り切ってるの?」
「もちろんっ、召喚士としての勤めよ!!」
「訓練に参加してくれるのはいいけど、今日は本部から副団長が来るから実戦ばかりだよ?」
「副団長って、ユネスさんのこと?」
知らない情報に浮かれていた気持ちが、地面へと着地するようにミアに冷静さを引き戻させた。
キョトンとする彼女に、シュエルは閃いたように口を開く。
「そっか。ミアはまだ会ったことないもんな。うちの騎士団には副団長が二人いるんだ。ユネスさんと、もう一人」
「そのもう一人が今日ここへ?」
「うん。本番を兼ね備えた実戦になりそうだから、今日は中々にハードだと思う」
シュエルの言葉に、周りにいた騎士達は顔を曇らせながら小さく溜め息を零す。
「あの人女だからって舐めると、痛い目に遭うもんなあ……」
「前来た時に医務室行った奴、何人だったっけ?」
「覚えてる限りだと七人とか?そのくらいか?」
「もっと多かった気がするけどなあ……」
「えっ?!副団長って女性なの?!」
驚きのあまり大きな声で食い気味で話を遮るが、騎士達は怯えた様子で頷いた。
「騎士団で唯一の女性騎士にして、副団長を勤める強者さ。腕前は団長ともほぼ互角で、何と言うか兎に角隙がないって感じの人……かな」
「戦いの途中で目が合ったら最期だと言ってもおかしくない。それくらい出来る人だな」
「す、すごい人なんですね……」
騎士達が怯える程の強さを持つ女性を、簡単に想像出来ずにいると、耳を疑う話が入ってくる。
「副団長って確か昔、団長と付き合ってたっていう噂あったよな?」
「え?今も付き合ってるって噂を前に聞いたぜ?獣人をカモフラージュするのもそうだけど、本部に二人していると周りの目があるからって理由で、団長はここに来たんだろ?」
「どちらにしろ、強さを持つ二人だ。お似合いだよな~」
「近寄り難いけど美人だし、頭いいし」
浮かれていた自分を埋めてやりたい程の衝撃に、ミアの心の中で何かに亀裂が走る。耳を塞ぎたくもなるが、それがどうしてなのか分からない。
ぐっと唇を噛み締めて乱れた心を押さえつけていると、話はいつの間にか別の話に変わっていた。
ただそこに、ミアを取り残して。
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