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へっぽこ召喚士、もふもふに懐かれる②
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天井が高い造りになっており、通気性がよさそうな多数の丸窓が太陽の光を反射させている。
獣舎を前に、魔獣の気配すら感じられないこの場所に本当に魔獣がいるのか疑問でしかなかった。
「魔獣ってこんなに大人しいものなの?」
「いや、普通だったら、こんな大人しくはないんだけど……」
ミアが指摘した異変にシュエルは困った表情を浮かべつつ、獣舎の中へと続く頑丈な扉を開けた。
中へと入ると獣臭さは一切しなく、頑丈な檻の中に入っている魔獣達が息を潜めていた。
スノウベアを床に下ろして一周ぐるりと見渡すと、檻の中の魔獣はどこもかしこも藁の敷き詰められた寝床に身を隠し、こちらを見つめる目はどこか怯えていた。
「魔力を持つ俺ら獣人に怯えて一向に懐かないんだ。魔獣騎士なら本来心を通わせる能力があるのに、ここにいる奴らは皆心を閉ざしちまってる」
「その原因って……」
「ここに来た召喚士が、魔獣を見捨てるように契約を無理やり破棄したのが原因だな。お陰で世話をするのにも一苦労だよ」
やっぱりとミアは召喚士のバッチをきつく握りしめた。
心を許して召喚を認めてやってきた魔獣達にとっての契約破棄とは、相棒となる召喚士に不必要だと突きつけられたようなもの。
そして、契約破棄は互いの命にも直結するような危険極まりない行為を認めた相手にされ、恐怖を植え付けられたのだ。
端から信頼関係を踏みにじられ危うく殺されかけ、おまけに自分達よりも強い獣人を前に本能的に怯え、傷ついた心を癒す余地すら与えられない。
ミアはこんな過酷な状況下で、よく耐えたと労りたい気持ちでいっぱいになった。
確かに魔獣を相手にするのは恐ろしい。仮に自分に懐かなかった場合、襲われる危険性も少なからずある。
だが召喚士として己と契約を結ぶ以上、相手の心に寄り添い、例え言葉が通じなくとも共に歩む相棒相手に、そんな無下にするような行為は召喚士として失格だと怒りが滲む。
あれだけ魔獣を相手にする事に不安と恐怖で支配されていたミアだったが、いざ魔獣達を前にしてその気持ちはどこにもなかった。
「あっ、ミア!そんな迂闊に檻に近づいたら危ないよ!」
身体は勝手に魔獣がいる檻の前へと動いていて、ミアをじっと見つめるブラックダイアモンドのような煌めきを秘めた瞳と目が合った。
額に一本角を生やした一匹の兎――アルミラージが近づいてくるミアに威嚇するように角を向ける。
気性が荒いアルミラージは、自分よりも大型の魔物に対しても攻撃を仕掛けてくる厄介な性格の持ち主。そんなアルミラージを前にしてもミアの恐怖心は何処にもなかった。
檻の前でしゃがみ込み、瞳を離すことなく思いを口にする。
「怖い思いさせてごめんね」
「もきゅっ」
「えっ?」
ミアの言葉に反応するかのように、寝床から飛び出してきたアルミラージは、角を向けて突進して来る。
危険を察知したシュエルが檻から遠ざけようと、彼女の手を引こうとするが、アルミラージの俊敏な動きに間に合うわけもない。
「っ……!」
シュエルの短い悲鳴が獣舎に微かに響き、その声に反応するように魔獣達が小さくざわめいた。
天井が高い造りになっており、通気性がよさそうな多数の丸窓が太陽の光を反射させている。
獣舎を前に、魔獣の気配すら感じられないこの場所に本当に魔獣がいるのか疑問でしかなかった。
「魔獣ってこんなに大人しいものなの?」
「いや、普通だったら、こんな大人しくはないんだけど……」
ミアが指摘した異変にシュエルは困った表情を浮かべつつ、獣舎の中へと続く頑丈な扉を開けた。
中へと入ると獣臭さは一切しなく、頑丈な檻の中に入っている魔獣達が息を潜めていた。
スノウベアを床に下ろして一周ぐるりと見渡すと、檻の中の魔獣はどこもかしこも藁の敷き詰められた寝床に身を隠し、こちらを見つめる目はどこか怯えていた。
「魔力を持つ俺ら獣人に怯えて一向に懐かないんだ。魔獣騎士なら本来心を通わせる能力があるのに、ここにいる奴らは皆心を閉ざしちまってる」
「その原因って……」
「ここに来た召喚士が、魔獣を見捨てるように契約を無理やり破棄したのが原因だな。お陰で世話をするのにも一苦労だよ」
やっぱりとミアは召喚士のバッチをきつく握りしめた。
心を許して召喚を認めてやってきた魔獣達にとっての契約破棄とは、相棒となる召喚士に不必要だと突きつけられたようなもの。
そして、契約破棄は互いの命にも直結するような危険極まりない行為を認めた相手にされ、恐怖を植え付けられたのだ。
端から信頼関係を踏みにじられ危うく殺されかけ、おまけに自分達よりも強い獣人を前に本能的に怯え、傷ついた心を癒す余地すら与えられない。
ミアはこんな過酷な状況下で、よく耐えたと労りたい気持ちでいっぱいになった。
確かに魔獣を相手にするのは恐ろしい。仮に自分に懐かなかった場合、襲われる危険性も少なからずある。
だが召喚士として己と契約を結ぶ以上、相手の心に寄り添い、例え言葉が通じなくとも共に歩む相棒相手に、そんな無下にするような行為は召喚士として失格だと怒りが滲む。
あれだけ魔獣を相手にする事に不安と恐怖で支配されていたミアだったが、いざ魔獣達を前にしてその気持ちはどこにもなかった。
「あっ、ミア!そんな迂闊に檻に近づいたら危ないよ!」
身体は勝手に魔獣がいる檻の前へと動いていて、ミアをじっと見つめるブラックダイアモンドのような煌めきを秘めた瞳と目が合った。
額に一本角を生やした一匹の兎――アルミラージが近づいてくるミアに威嚇するように角を向ける。
気性が荒いアルミラージは、自分よりも大型の魔物に対しても攻撃を仕掛けてくる厄介な性格の持ち主。そんなアルミラージを前にしてもミアの恐怖心は何処にもなかった。
檻の前でしゃがみ込み、瞳を離すことなく思いを口にする。
「怖い思いさせてごめんね」
「もきゅっ」
「えっ?」
ミアの言葉に反応するかのように、寝床から飛び出してきたアルミラージは、角を向けて突進して来る。
危険を察知したシュエルが檻から遠ざけようと、彼女の手を引こうとするが、アルミラージの俊敏な動きに間に合うわけもない。
「っ……!」
シュエルの短い悲鳴が獣舎に微かに響き、その声に反応するように魔獣達が小さくざわめいた。
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