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冒険者の街クアント①

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 冒険者の街というだけあって、このクアントという街には改めてみるとたくさんの冒険者がいた。
 クレハに案内されて街を歩いているとすれ違う多くの人は、何か武器を持っていたり、頑丈そうな装備を付けていたり、どこか怪我をしていたりとそういう人たちが多い。中には、プロレスラーじゃないかと思うくらいのガタイのいい冒険者も何人もいた。
「どう!リョウト!この街!すごく冒険者感が強いでしょ!」
「うん。みんな強そうだ。この人たちに混じって俺も冒険者を名乗るのはすごく気が引けるくらいには」
 クレハが、ある店の前で立ち止まった。
「じゃあ、まずはこのお店から紹介するね!」
 そう言って、中に入ろうとしている店は、うん。きっと武器屋だろう。名前は〈ストレンジャー〉かな?店の表に斧が飾られていて、ドアの取っ手が剣の鞘のようになっている。見事な武器やアピールだ。
「ギャビンさーん!お久しぶりでーす!」
 クレハの知り合いがやっているのか、クレハが店の人の名前を言いながら店内に一緒に入る……と一つの衝撃的な事実があった。
 ここは、洋服屋か……。
「おー。クレハか。久しぶりだな!なんだ服でも買いに来たのか?」
「そうそう!このリョウトっていう私の知り合いに服を買ってあげようと思って……ちょっと変な格好だから」
 そういえば、俺、前の世界で死んだときの服装のままだった。上はワイシャツで、下はスーツのズボンだった。なんか、あんまり気にする余裕もないままこの世界に染まりかけてた。
「って、じゃなくて、この店武器屋じゃないんだな……。周りから浮いてたことに気づかされたこともだけど、店の佇まいが思いっきり武器屋だったんだが……。」
「おいおい、クレハ。何も言わずにこの彼氏さんを連れてきたのか?」
「か!?彼氏じゃないよ!さっき知り合ったばかりだもん!!」
 クレハがちょっと赤くなりながら訂正する。
「リョウトが、この街が初めてだから。案内しながら街を歩いてるんだから!……。コホン…。紹介するねこの人が洋服屋のギャビンさん。少し前まで冒険者をしていて、私もいろいろ冒険者として武器の使い方とか素材の収集方法とか教わったことがある、元Cランクの冒険者さんだよ!」
 クレハは、照れを隠すようにギャビンさんの紹介をしてくれる。
「ギャビンさん。初めまして、リョウトです。さっきこの街に来てさっき冒険者になりました。よろしくお願いします」
「あぁ!よろしくご贔屓に。いいもんそろえてるからいろいろ買ってくれていいぞ!」
 俺はギャビンさんと握手をした。
「あ、一つ質問なんだが、なぜこの店の表のあの感じで洋服屋なんだ?」
「そりゃあ、俺の冒険者時代の武器がもったいないからだ!売らないといけないほど金に困っていなかったし、なんていったって、オシャレだろ?でも、あれなんだよな。武器屋かと思ってこの店に入ってくる奴が多いのも悩みだけどな!」
 ギャビンさんは、頭を掻きながらゲラゲラ笑う。
「あ、ギャビンさん!リョウトに合う服を適当に見繕ってくれない?予算はこれくらいで……」

 それから、十数分後。
 クレハがギャビンさんに服の相談をしてくれて、ギャビンさんが見繕ってくれた。
 どうやらクレハはクレハの取り分だったキバノシの報奨金で、俺に服を買ってくれたようだった。
 俺はクレハとギャビンさんにお礼を言い、さっそく着て、店を後にした。
 上は白いシャツに黒のロングコート、下はグレーのロングパンツ。
「いやー、いい買い物だったね!なかなか似合ってるよ!で、次が武器屋よ!行きましょう!」
 そう言い、次の目的地へ歩き出した。
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