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約束
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「え、街へ出たい?」
「はい……!」
俺のお土産であるリンゴを一緒に食べていると、アリスが突然そんな事を言い出した。
「これまた、唐突な」
「だってシュウさんはいつも街へ出てるんですよね?」
「まぁ、確かにそうだが……」
「シュウさんだけずるいですよ……」
「ずるいって言われてもな」
もし俺が外へ連れ出したとばれれば、今度こそ本当に首を跳ねられかねない。……いや、毎日王女の部屋に忍び込んでるんだから今更ではあるが。
「でもな、最近魔王軍も活発だ。危険だぞ?」
「街の外へ出るわけでは無いのですし、大丈夫だと思いますよ?」
「確かにそうだが、城の中の方が安全ではあるだろ?」
「うぅ……」
俺の言葉に項垂れるアリスを頭を撫でる。これで諦めてくれれば楽なのだが……。
「どうしてもダメですか……?」
「うっ……」
涙目に加え上目遣いだと……!?
なんて凶悪なコンボだ!
「お前……それはずるいだろ……」
「シュウさん……」
その涙ぐんだ声に、凄まじい罪悪感を覚える。俺の良心が悲鳴を上げる。
「わ、分かったよ……。来週、来週な?」
「本当ですか!? えへへ、やった!」
「ったく、こいつは……」
そう言いながら軽く頭を小突く。小突かれた部分を、笑いながら撫でるアリスを見て少しほっこりする。この世界唯一の癒しかもしれない。
「ところで、街なんか行って何がしたいんだ?」
「えっと、洋服を……」
「洋服? お前あれだけあるのにまだ買うのか?」
そう言って部屋の隅にある大きなタンスを指差す。見たことは無いが、きっとあの中には所狭しと様々な洋服が入っているのだろう。
「わ、私のじゃなくてシュウさんのですっ!」
「俺の洋服? 別に俺はいらないが……」
「全部で何着洋服を持ってるんですか?」
「え、全部でか? えーっと……」
まず今着ている学生服。それに加えて騎士団の服が四着あるから……。
「全部で五着だな」
「そのうち騎士団の服は?」
「四着」
「私服は?」
「これ一着」
「……買いに行きましょう」
えぇ……。
「この服とローブだって、ボロボロじゃないですか」
「まぁ、ウィングとの戦いで大分穴とか空いたからな。でも、まだ裁縫すれば全然使え……」
「シュウさん、そういうのをしっかりしない男性は嫌われますよ」
「な、何ッ!?」
衝撃の言葉に崩れ去る。
「ば、馬鹿な……」
「安心して下さい、私だけはシュウさんの味方ですから!」
嬉しいけど、嬉しくねぇ……。
「確かに、そろそろ替え時だよな……」
「ということで、来週は服を買いに行きます! 私が選んであげますね?」
「俺のファッションセンスは壊滅的だからな。そうしてくれると頼むよ」
俺のファッションセンスは10人中13人がダサイって言うレベルだからな。それに、仮に俺のファッションセンスが良くても、日本とこの世界のファッションセンスが同じとは思えない。
あれ、冷静に考えたらファッションとか必要か?魔法の効果が付与された服とかの方が良いんじゃないか?
「なぁアリス。今思ったんだが、別にお洒落じゃなくても、強い防具とか揃えた方が良いんじゃないか?」
「シュウさんは戦う時の服と私服を使い分けないんですか?」
「……使い分けないな」
「ダメですよ、シュウさん。ちゃんと使い分けないと」
「確かにその通りだ……」
返す言葉も無い。
「それで、来週はどうやって外へ行く? 俺が部屋まで迎えに行くか?」
「いえ、城の正面の噴水で集合しましょう」
「出てこれるのか?」
「安心して下さい。城を抜け出すくらい簡単ですよ」
「……そう言えば、ここに来た時も抜け出してたもんな」
「うぅ……あの時はすみませんでした」
俺の言葉にそう力無く謝るアリス。どうやらまだ俺が捕まったことを気にしているようだ。
「気にするなって言っただろ?」
ポンポンと頭を撫でると、気分が良くなったのか俺へと抱き着いて来る。
歳下とはいえ、彼女は絶世の美少女だ。こうくっつかれると流石に意識せざるを得ないのでやめて欲しい。心臓に悪すぎる。
「さてと、そろそろお別れの時間だ。明日もまたこの時間にな」
「はい、楽しみに待ってますね?」
「あぁ、じゃあな」
来週か。ちょっと、楽しみだな……。
「はい……!」
俺のお土産であるリンゴを一緒に食べていると、アリスが突然そんな事を言い出した。
「これまた、唐突な」
「だってシュウさんはいつも街へ出てるんですよね?」
「まぁ、確かにそうだが……」
「シュウさんだけずるいですよ……」
「ずるいって言われてもな」
もし俺が外へ連れ出したとばれれば、今度こそ本当に首を跳ねられかねない。……いや、毎日王女の部屋に忍び込んでるんだから今更ではあるが。
「でもな、最近魔王軍も活発だ。危険だぞ?」
「街の外へ出るわけでは無いのですし、大丈夫だと思いますよ?」
「確かにそうだが、城の中の方が安全ではあるだろ?」
「うぅ……」
俺の言葉に項垂れるアリスを頭を撫でる。これで諦めてくれれば楽なのだが……。
「どうしてもダメですか……?」
「うっ……」
涙目に加え上目遣いだと……!?
なんて凶悪なコンボだ!
「お前……それはずるいだろ……」
「シュウさん……」
その涙ぐんだ声に、凄まじい罪悪感を覚える。俺の良心が悲鳴を上げる。
「わ、分かったよ……。来週、来週な?」
「本当ですか!? えへへ、やった!」
「ったく、こいつは……」
そう言いながら軽く頭を小突く。小突かれた部分を、笑いながら撫でるアリスを見て少しほっこりする。この世界唯一の癒しかもしれない。
「ところで、街なんか行って何がしたいんだ?」
「えっと、洋服を……」
「洋服? お前あれだけあるのにまだ買うのか?」
そう言って部屋の隅にある大きなタンスを指差す。見たことは無いが、きっとあの中には所狭しと様々な洋服が入っているのだろう。
「わ、私のじゃなくてシュウさんのですっ!」
「俺の洋服? 別に俺はいらないが……」
「全部で何着洋服を持ってるんですか?」
「え、全部でか? えーっと……」
まず今着ている学生服。それに加えて騎士団の服が四着あるから……。
「全部で五着だな」
「そのうち騎士団の服は?」
「四着」
「私服は?」
「これ一着」
「……買いに行きましょう」
えぇ……。
「この服とローブだって、ボロボロじゃないですか」
「まぁ、ウィングとの戦いで大分穴とか空いたからな。でも、まだ裁縫すれば全然使え……」
「シュウさん、そういうのをしっかりしない男性は嫌われますよ」
「な、何ッ!?」
衝撃の言葉に崩れ去る。
「ば、馬鹿な……」
「安心して下さい、私だけはシュウさんの味方ですから!」
嬉しいけど、嬉しくねぇ……。
「確かに、そろそろ替え時だよな……」
「ということで、来週は服を買いに行きます! 私が選んであげますね?」
「俺のファッションセンスは壊滅的だからな。そうしてくれると頼むよ」
俺のファッションセンスは10人中13人がダサイって言うレベルだからな。それに、仮に俺のファッションセンスが良くても、日本とこの世界のファッションセンスが同じとは思えない。
あれ、冷静に考えたらファッションとか必要か?魔法の効果が付与された服とかの方が良いんじゃないか?
「なぁアリス。今思ったんだが、別にお洒落じゃなくても、強い防具とか揃えた方が良いんじゃないか?」
「シュウさんは戦う時の服と私服を使い分けないんですか?」
「……使い分けないな」
「ダメですよ、シュウさん。ちゃんと使い分けないと」
「確かにその通りだ……」
返す言葉も無い。
「それで、来週はどうやって外へ行く? 俺が部屋まで迎えに行くか?」
「いえ、城の正面の噴水で集合しましょう」
「出てこれるのか?」
「安心して下さい。城を抜け出すくらい簡単ですよ」
「……そう言えば、ここに来た時も抜け出してたもんな」
「うぅ……あの時はすみませんでした」
俺の言葉にそう力無く謝るアリス。どうやらまだ俺が捕まったことを気にしているようだ。
「気にするなって言っただろ?」
ポンポンと頭を撫でると、気分が良くなったのか俺へと抱き着いて来る。
歳下とはいえ、彼女は絶世の美少女だ。こうくっつかれると流石に意識せざるを得ないのでやめて欲しい。心臓に悪すぎる。
「さてと、そろそろお別れの時間だ。明日もまたこの時間にな」
「はい、楽しみに待ってますね?」
「あぁ、じゃあな」
来週か。ちょっと、楽しみだな……。
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